ver1.0 脱稿 2012・05/20

メモまとめへのリンク

白昼夢2 ~ファースター・ザン・ザ・スピード・オブ・ライト

嵐山 戌吉

◎目次◎

シーン0 プロローグ

●起 登場人物紹介 平凡でも幸せな時間

シーン◎華潮京子登場

シーン★京子とパンドラ

シーン@白い花

シーンφ マリア登場

●承 事件に巻き込まれるきっかけ

シーン☆ しのぶに会いに行く

シーン★ 枯れた花

シーン○ マリア襲撃事件

シーン◎ 契約の聖櫃

シーン@ しのぶと京子

シーン★ マナの壺

シーン☆ 絶対結界ユニバース

シーン● ゴミと呼ばれたアージュニャー

シーン○ 京子からの贈り物

シーン● 分かり合えない二人

シーン☆ 閉ざされたチャクラ

シーン◎ 3度目の出会い

シーン◎ パンドラとマリア

シーン● コールドジェイル解放 その1

シーン★ すべてのことに意味があるの意味

シーンφ マリアと真帆の真実の答え

シーン● 空白の一週間

シーン☆ 熾天使

シーン● アエリオソメリの魔女

シーン@ コールド・ジェイル解放その2

シーン● 物の急所

シーン@ ピロートーク

シーン@ パンドラの昔話

シーン☆ しのぶの戦い

シーン@ おもちゃと道具

シーン● アズラエルとパンドラ

シーン○アエリオソメリと完全敵対

●転 どんでん返し

シーン● 乱戦

●結 意外な結末

シーン☆ 京子の右腕

シーン● ローマへ

3へ続く 3はマーブロス・ペタローザ編

・おまけ:没シーン

シーン● 直後の出来事

Ψ 白昼夢2 Ψ ~ファースター・ザン・ザ・スピード・オブ・ライト~

シーン0 プロローグ

    「私の一生忘れられない記憶」

    「近所のみんなで大冒険」

    「夏の星空が綺麗な夜」

    「みんなで星座を探すこと」

    「ゆきちゃんと拓ちゃんが私のことも誘ってくれたの」

    「とっても嬉しかったことを私は忘れない」

    「高台にある公園の大きな大きな芝生の広場」

    「みんなで野原に寝転んで」

    「星が綺麗と見ていた」

    「私は流れ星を見つけたの」

    「螺旋を描きながら2つの流れ星が流れてた」

    「私はうれしくなって、みんなに教えてあげたの」

    「ゆきちゃんと拓ちゃんは一所懸命探してくれた」

    「でもみんなは・・・」

 

    『またこんなこと言ってるこいつ』

    『気持ち悪い』

    『嘘つき』

    「本当のことを言ったのに嘘つきだって言われたの」

    「でもあの流れ星の思い出は綺麗な思い出」

    「今思えばあれはDNAの螺旋と同じだったと思える」

    「楽しそうに笑っている声も聞こえたような気がするの」

白昼夢2 ~ファースター・ザン・ザ・スピード・オブ・ライト~

シーン◎華潮京子登場

 大きな公園でサッカーをして遊ぶ女子高生たちがいる

北川真帆「わー、どこけってんのよー」

    「拾いに行くの大変なんだからー」

女子A 「ごめーん」

真帆がボールを捜しに行くが藪の中に入って見つからない

真帆「んー、ないよー」

華潮京子「そっちー、白い花が咲いているその辺だよー」

真帆「えー?白い花ー?」

    「どこー?」

京子「左ー、白い花があるでしょー」

真帆「んー?」

ボールを見つけられない真帆のところに京子が向かう

京子「真帆、そこの白い花見えないの?」

真帆「んー?」

京子「あれ?」

   『白い花がない!?』

   『あっちからは見えていたのに・・・・』

真帆「京子ー、白い花ってどこ?」

京子「おかしいわ・・・」

   「向こうからは見えていたのに」

真帆「ねー、ないでしょー」

京子「いや・・・、そんなはずないわ」

   「真帆、私が来る前の場所から動いてないよね?」

真帆「うん・・・」

京子はいつも髪を頭のてっぺんで結びおでこを出している

そのおでこがジンジンする

京子「それなら・・・左のここのはず」と藪の中に足を踏み入れる

踏み入れた京子の足に虫に刺されたような痛みが走る

京子「痛っ!」

   「なに・・?」

何か虫にでも指されたのかと思いらがら足元を見ると

白い花が見えた

そしてその少し奥にボールを見つけた

京子「あ、ボール見つけた!」

真帆「え?どこ?」

と京子が見ているほうを見るが真帆にはボールが見えない

京子「ん?そこにあるじゃん」

真帆「へ?どこ?」

京子「???」

   「見えないの?」

真帆「へ?」

京子はボールを拾い上げると真帆にボールを投げた

真帆「わっ!」と、驚きながらボールを受け取った

京子はおでこがジンジンして

京子『なにか・・・おかしいわ・・・』と妙なものを感じ足元を見ると

京子『なにこれ・・・・』何かが地面に書いてあるのを見つける

真帆達「京子ー!なにしてるのー!」

     「始めるよ~」

京子「まってー」と言いながら地面に書かれているものを足でかき消した

   「今行く~」

と言いながら元気よく走りサッカーを再開した

京子『あれ・・・・何かしら・・・漫画とかで見る魔法陣みたいだったけど・・・』

   『花やボールが見えなかったのも・・・不思議・・』と思いながらも

京子は大雑把な性格なのであまり気に留めなかった

あくる日の放課後

 京子「真帆ー!今日は何して遊ぶー」

 真帆「んー、町に服でも見に行く?」

 京子「えー!サッカーとかバレーとかしようよ!」

 真帆「・・・・・元気ねー」

    「でも、今日はみんな用事あるみたいだよ~」

 京子「二人でもできるじゃん」

 真帆「無理!一人であなたの相手したらこっちが持たない!」

    「そんなに運動が好きなら部活入ったらよかったのにー」

    「運動神経も抜群だし」

 京子「んー、サッカーかバレーかバスケか・・・空手か柔道か・・・」

    「んー!!!全部やりたいー!選べないー!!」

 真帆「・・・・・」

    「あー・・・・そうだったわね・・・思い出したわ・・・」とあきれ顔

 京子「まあ、いいわ・・・今日は真帆に付き合う」

    「いつも付き合ってもらってるしねー」

 真帆「ありがとー、ドーナツくらいならおごるわよー」

 京子「ほんと!」

    「何個?」

 真帆「え?一個に決まってるでしょ」

 京子「あうっ!」

    「5個くらい食べないと・・食べた気がしないでしょ?」

 真帆「それは食べすぎー」

と馬鹿なことを言いながら街に向かった

町に向かう途中も京子は大人しくしていられないらしく

ガードレールの上を歩いたり石垣の上によじ登ったりしている

 真帆「京子ー、危ないって」

 京子「えー?なにがー?」

 真帆「パンツ見えるわよ~」

 京子「パンツ丸見え上等よ~!」

 真帆「・・・なにそれ・・・」とあきれている

京子はガードレールの上で連続で前転をやり始めた

 真帆「わわわ・・・危ないって…」

    「失敗したら大怪我するよ」

 京子「こんなの楽勝よー、小3の時からやってるから」

 真帆「てか、パンツマジで見えてるんですけど」

 京子「かわいいでしょー、お気に入りなのー」

 真帆「バカ・・・見られたらどうすんのよ!」

 京子「誰もいないじゃん」

    「周辺視野・動体視力も抜群だから」

 真帆「はいはい」

    「街の中では大人しくしてねー」

 京子「はははは、私が街の中でこんなことすると思う?」

 真帆「うん・・・・しそうな気がする」

 京子「・・・・」

    「そうね・・・・するかも」

 真帆「やめれ!」

町に向かう道の途中、いつもみんなで遊んでいる大きな公園の近くを通る

京子は昨日の白い花のことを思い出し

 京子「真帆ー、ちょっと行っててー」と言いながら公園の中に走って行った

 真帆「京子ー!」

 京子「すぐ戻るからー」

 真帆「もう!」

京子の姿がみるみる小さくなっていく

 真帆「はぁ・・・・本当にじっとしてられない子ね・・・」と呆れながら

町に向かって歩き続けた

京子は遠目に昨日の白い花を確認した

京子「あ、あった」

そう言いながら白い花に近づくと

ある一定の距離を越えると花が見え無くなった

京子「あれ?」と言いながらそこで立ち止まり

後ろ歩きでバックし始める

3歩ほど下がると白い花が見える

京子「え?」

ゆっくりと一歩進むと花が見えない

京子「はい?」

   「なにこれ????」

ゆっくりと一歩下がると花が見える

もちろん障害物の影響で見えなくなったりしているのではない

京子「どういうことなの?」

京子のおでこがジンジンする

そこに、上品な日傘をさし濃紺のドレスのような服を着たいかにも高貴そうの女性が現れた

パンドラだ

パンドラは京子のことを観察している

京子が一歩前にいったり一歩下がったりしている滑稽な姿を見て

その女性は笑いだした

パンドラ・デロルレ「ははははは」と高らかに笑う

京子は笑われて不機嫌そうにパンドラのほうを見た

京子「なに?」

パンドラ「何をやってるんだお前」

京子「すっごいモノ見つけたの!」

パンドラ「・・・・」と何も言わないがにやにやしながら京子のほうを見ている

京子「こっちに来て見て」

   「すんごいんだから!」と鼻息を荒くしながらいう

パンドラ「白い花が見えたり、見えなかったりするんだろ?」

京子「へ?」

   「そそ、すんごくない?」

パンドラ「別に・・」

京子はパンドラが自分のおでこばかり見ているのに気づく

京子「何?」

パンドラ「ん?」

京子は手でおでこを隠しながら「何よ」ともう一度言った

パンドラ「お前か」

京子「へ?」

パンドラ「昨日私が書いた魔法陣を消したの」

京子「ああ・・・・ええ、そうよ」

   「てか、あなたが書いたの」

パンドラ「ああ、今書き直したところだから、もう消すなよ」

京子「・・・・・・」

   「あれが原因で花が見えたり見えなかったり・・・するの?」

パンドラ「そうだ」

京子「じゃあ、消すわ」

パンドラ「はぁ?」

京子「あそこらへんにボールがいったら見つけられなくなってしまう」

   「それは私たちだけじゃなくてこの公園で遊ぶみんなが困るもの」

パンドラ「あんな所までボールを飛ばすなんて下手すぎだ」

     「どの道無くなる」

京子「だめよ!」

   「下手でも遊ぶ権利はあるわ」

パンドラ「んー、まぁな・・・」

     「あの狭い範囲に入るのはすごく確率が低いんだがな・・・」

京子「だめよ!」

パンドラ「ふーん」

     「なかなかはっきりとものを言うな」

パンドラは京子の全身をじっくりとみている

京子「な・・・なによ!」

パンドラ「ん?」

     「私はその気はないぞ」

     『チャクラが3つも開いている…』

     『だが肝心の第6チャクラが開いたり閉じたり不安定だな・・・』

京子「ひぃぃいいい」

パンドラ「いや・・・だから、そういう気はない」と呆れる

     「お前に免じてボールが入らないように書き加えておく」

     「だから消すなよ」

     「今度消したら怒るからな」

     「書くのにどれだけ時間がかかると思ってるんだか…」と言いながら

パンドラは魔法陣のほうに歩いて行った

京子「あ!」

   「真帆のことほったらかしだった」

と言ってその場を去りながら

   「ボールがなくなるようだったら消すからねー!」といってパンドラを指差した

パンドラ「ああ、わかった」

シーン★京子とパンドラ

 あくる日学校の授業中、京子は考え事をしながら外を見ていた

京子『・・・私って馬鹿・・・』

   『魔法陣って・・・・何それ?』

   『昨日あの人に聞けばよかった…』

   『何で思いつかなかったんだろ…』

   『本当に馬鹿・・・・』

   『あれは・・・魔法っていうこと???』

   『そんな馬鹿な話ある???』

   『あー、気になる!!』

   『むきーっ!』

先生「こらっ!華潮!どこ見とるか!」

京子「先生!具合が悪いです!」

先生「はぁ?」

京子「具合が悪いので早退します!」

先生「何元気いっぱいに言ってるんだ!おまえ!」

真帆「・・・京子・・・ってば・・・」と呆れている

京子「では!」と言いながら、教科書をかばんに詰め

   「明日には体調を万全にしておきますので」と言いながら教室の出口に向かった

先生「こらっ!」

京子は教室のドアをあけ

京子「では、みんなもごきげんよう!」と校長先生の物まねをしながら

手を振り出て行った

クラスの皆は大笑いしている

   「なんで校長先生!?」

   「よ!物まね名人!」

   「はははははっは」

   「そっくり~~~!」

先生「あのやろー」と怒りながらも京子がああなったら手に負えないことを知っているので

それ以上は追及はしなかった

真帆「もうっ!京子どうしたのかしら」

京子は公園に行けば昨日のあの女性に会えるのでは?と思い

いてもたってもいられなくなっていた、公園に向かい大急ぎで走る

公園につくと京子はあたりをきょろきょろと探す

だが、人っ子ひとりいない

京子「ねぇー、いないのー?」と大きな声であの女性に呼びかける

   「あー、名前聞いといたらよかったー・・・」

   「私のバカー」

   「ねぇー、いないのー?」

そう言いながら白い花のところに向かって進んでいく

京子「あれ?・・・白い花が…ない・・・」

   「この辺からなら見えたはずなのに…」

   「おかしいわ・・・・」

京子の第六チャクラがみるみる開き始め、おでこがジンジンする

京子『なにか・・・書き加えるっていってたわね・・・』

   『それで・・・全く見えなくなったのかしら?』

白い花は見えないが京子は大方の場所を覚えていたのでそこに向かって行った

京子「あれ?」

そういうと京子はあたりをきょろきょろと見る

おでこがジンジンしている

京子「おかしいわ・・・1歩で5歩分ほど進んだ」

   「普通の人なら気づかないでしょうけど」

   「私の動体視力と周辺視野を侮らないで!」

   「ねぇー、いないのー?」

京子は白い花があった場所を完全に覚えているがその場所にどうしても行けない

何度も何度も挑戦する

それでもどうしても行けない

京子はあたりを見回し1メートルほどある木の枝を拾い

白い花のあったところをつつこうとしたが、枝がするりと横にそれる

京子はかんしゃくをおこして

京子「むきーーーっ!」と猿のようにわめきながら木の枝を振り回し始めた

それでも枝は思ったところにいかない

ますます京子はかんしゃくを起しだした

京子「むききききっーーー!」

すると京子の第六チャクラが輝きを放ち始めた

京子「むきーーーーー!!!」と渾身の一撃で白い花のところに向かって枝を振り下ろすと

とうとう思いの場所に枝が突き刺さった

枝は白い花を貫いていた

京子「あ・・・・」

京子は白い花に向かって「ごめんなさい・・・」といい、そっと手を差し伸べた

もとのように折れた茎を起してみるが手を離すとまたヘタリと倒れてしまう

京子はあたりを見回し小さな小枝を拾い上げると

花の茎をもう一度もとのように戻し小枝を添え木にして修復を試みた

京子は悲しそうな顔をしながら自分の髪の毛を抜いて添え木と白い花の茎を結び始めた

その時、京子は後ろに人の気配を感じ振り向いた

そこには日傘をさし濃紺のドレスを着たパンドラが立っていた

京子はパンドラの顔を見るや否や「ごめんなさい!」

京子「そういうつもじゃなかったの・・・・」

   「ちゃんと・・・ボールが入らないようにしてあったのに・・・」

   「また・・・・魔法陣を消してしまったわ・・・・」

パンドラは黙って京子のほうをにらみつけている

何も言わないパンドラに京子は

京子「ねぇ・・・・」

   「どうすればいい?」

   「魔法陣を書き直すのを手伝えばいい・・?」

パンドラは何も言わない

京子「・・・・・」

京子はどうしていいのか分からず珍しくもじもじしている

いつもは開いている京子の第5チャクラが閉じていく

パンドラはその閉じていく第五チャクラを見ると、やれやれといった感じで

パンドラ「どけっ!」と言って白い花に近づき花の前でひざまずいた

そしてパンドラは花の周りの土を手で掘り出した

パンドラ「いてっ!」

京子「・・・?」

パンドラは立ち上がり京子のほうを向く

その手には周りの土と一緒に掘り起こした白い花がのっている

パンドラ「この花は私が面倒を見る、気にするな」

そういうとその場から立ち去ろうとした

京子「まって!」

パンドラは歩くのをやめない

その呼びかけに応じるつもりはないようだ

京子「私は・・・あなたに会いたくて!」

   「あなたに聞きたいことがあって!」

そう強く言ったあとうつむきながら

京子「こんなことをしてしまったの…」

パンドラは背中を向けたまま立ち止まり

パンドラ「大方、魔法のことを聞きたいのだろう」

京子「・・・・」

パンドラ「では一つだけ質問をする」

     「お前は光の玉が見えるか?」

京子「へ?」

パンドラ「・・・・・」

京子「・・・・・」

パンドラ「そうか・・・見えないんだな」

京子「?・・・何の事?」

パンドラ「ならば、お前に話すことは何もない」

そういうと再び歩き始めた

京子「まって!あなた魔法がつかえるの??魔法って・・本当にあるの?」

パンドラ「お前は、お前の眼で見て尚その質問をしている」

     「だから、話しても無駄だ」

京子「ちがうわ!そう!魔法はある!」

   「私はこの目で見たもの!」

パンドラ「なら、私に聞くことなど何もないはずだ」

京子「聞くことはあるわ!あの魔法陣は何のためにあそこに書いたの?」

パンドラ「・・・・あまり興味を持つな・・・」

     「お前にはどうすることもできない」

     「ただ、この町を守るためのおまじないだとでも思っていてくれ」

京子「この町を守るために書いているのね?」

パンドラ「ああ、それだけは信じろ」

京子「うん・・・」

   「信じるわ・・・あなたは優しそう・・・」

   「手を痛めながら花を掘り起こしてくれた・・」

パンドラ「・・・・」

何も言わずその場を離れようとする

京子「あなたの名前を教えてほしいの」

パンドラ「駄目だ」

京子「なぜ」

パンドラ「そもそも教えても意味がない」

京子「なぜ?」

パンドラ「もう2度と会うことがないからだ」

京子「なぜそんなこと言うの?」

   「いやよ!」

パンドラは初めて振り返り不思議そうな顔をしながら京子を見ている

京子「私は決めたわ!あなたと友達になる!」

パンドラは呆れた顔をしながら

パンドラ「勝手に決めるな」

     「私はお前に見つからないように次はどこに魔法陣を

      かこうかということで頭がいっぱいだ」

     「頼むから邪魔するな」

京子「私はあなたともっと話がしたい」

パンドラ「わたしはしたくない」

     「じゃあな」と言って日傘をくるくる回しながら再び歩き始めた

そこにジョルジュがあたりをキョロキョロと見回しながらやってくる

パンドラ『ばか!くるな!』と念話でジョルジュに言う

ジョルジュ「あ、いたいた」

      「パーン!どうだった?」

パンドラは知らん顔をしてやり過ごそうとした

ジョルジュ「おいっ!パン!帰りが遅いから手伝いに来たんだぞ」

パンドラは鬼のような形相でジョルジュをにらみつける

ジョルジュ「あ・・・なんか・・・まずかったか?」

パンドラは念話で『空気読め!馬鹿!』とジョルジュに言った

京子「ねぇ、あなたパンって名前なの?」

そう聞かれるがパンドラは振り向きもせずどんどん歩いて行く

京子「パが苗字でンが名前?」

パンドラはジョルジュにも話しかけず、すれ違いやり過ごして進んでいく

京子「あー、そんなわけないかー」

   「パが名前でンが苗字かー」

ジョルジュ「違うよ」と呆れながら京子に言う

パンドラ『私の名前を教えるなよ!』とジョルジュに念話でいう

     『あとは、お前に任せた』

     『私はそいつが苦手だ』

ジョルジュ『なんで僕が!』

パンドラ『適当にあしらえ』

パンドラについていこうとする京子にジョルジュが

ジョルジュ「待ちなさい」と声をかける

京子「?」

ジョルジュ「君か、魔法陣を消した子っていうのわ」

京子「ええ・・・ごめんなさい」

ジョルジュ「もう消さないと約束してくれるなら別にかまわない」

京子「・・・・・・」

   「ねぇ、あなたも魔法を使えるの?」

ジョルジュ「そんなことは君には関係ない」

京子「関係ないかもしれないけど私は見てしまったの!」

   「知ってしまったの」

ジョルジュ「そうか・・・」

      「だが、よそではその話をしないほうがいい」

      「バカだと思われるだけだ」

京子「なぜ?」

ジョルジュ「君には見えるが他の人には見えないからだ」

      「きっと、嘘つきだと思われる」

京子「じゃあ、なぜ私には見えるの?」

ジョルジュ「・・・・・」

京子「あのパンって人が私のことをジロジロ見ていた」

   「あれは観察していたんだわ」

   「それには何か意味があるように感じたの!」

   「それはなに?」

ジョルジュ「さぁ・・・僕にはわからないな」

      「好奇心旺盛なのは結構だが、迷惑をかけるのは良くない」

京子「迷惑?」

   「私は迷惑なんかかけてないわ」

ジョルジュ「ああ・・迷惑は言い過ぎた」

      「だが、君に構っているほど僕たちは暇ではないんだ」

京子「あーーーーーーー!」

ジョルジュ「なんだ!?」

京子「パンがいなくなってる!」

  「どうしてくれるのよー!」

  「せっかく見つけたのに!」

ジョルジュ「なんで僕が怒られる!?」

      「それより君は学校はどうしたんだ?」

      「まだ、学校の時間のはずだぞ!」

京子「え・・・と・・・それは・・」

   「大丈夫・・・先生にはちゃんと言ってあるから・・・」

ジョルジュ「ちゃんと?」

      「その制服は玉女の制服だね」

と言いながら携帯をとりだした

      「君、名前は?」

京子「え?なに?」

ジョルジュ「学校に電話をする」

京子「ばばばばば・・・・なんでー?」

ジョルジュ「あなたのところの生徒がうろうろしていますと」

      「そして私たちの活動の邪魔をしてますと」

京子「ちがうのよー!わたしは、具合が悪くて」

   「今から急いで帰るとこなの!」

   「バカー!」と言いながら逃げるようにその場を立ち去った

シーン@白い花

ジョルジュに追い払われた京子は町をフラフラと歩いていた

  京子『うちに帰ったら、ママにおこられるだろうなー・・・』

     『どうしよう・・・・』

     『あの男の人が着ていた服・・・どこかで見たような』

     『あれは・・・僧衣みたいだったけど・・・』

     『なんかの宗教?』

     『あ』

     『あの雑居ビルの下にある、怪しい教会かしら・・・』

     『確かセルバンテスとかいう宗教・・・』

     『・・・そそ・・・・確かそうだわ』

と考えながらそこに向かうためにクルリと方向転換した

   京子『あ・・・でも駄目だわ・・・』

      『今行ったら学校に電話されちゃう・・・』

そう考え、近くに見えたドーナツ屋さんに入り時間をつぶすことにした

コーヒーとドーナツ一つを注文し席につくと携帯を取り出し真帆にメールを打ち始めた

京子メール『今何時間目ー?放課後いつものドーナツショップに集合よ~!』

授業中の真帆のポケットで携帯が揺れる

真帆はポケットから携帯を取り出しこっそりと見る

真帆『京子からだ、何してるんだろ』と思いながらメールを見る

真帆は呆れた顔をしている

真帆メール『今なにやってんの?まだ3時間目だよー!』と高速で打って送信した

しばらくすると京子から返信が来た

京子メール『今作戦を練っているところ、雑居ビルの下のあの怪しい教会に乗り込むの!』

真帆メール『ええええええ????なんで???なんか事件???』

京子メール『そうなのよーーーー!パニックなのよーーー!』

真帆メール『京子!早まっちゃ駄目よ!みんなが行くまで絶対一人でいっちゃ駄目よ!』

京子メール『ワカター^0^ノ』

真帆はその返事を見ると

真帆『・・・・・・なんか・・・・・遊ばれてるような気がするけど・・・』と、呆れた顔をしている

放課後になり、それでも心配だった真帆はみんなを集めドーナツショップに行った

京子「真帆ー!こっちー」

真帆「京子」

京子「まちくたびれたよー。」

真帆「あのね・・・終わってすぐに駆け付けたんだから・・・」

京子「えへへ・・・」とちょっと申し訳なさそうに笑う

真帆「みんなも来てるよ、今注文してるの」

京子「そうなんだ、ありがとー」

真帆「じゃあ、私も注文してくるね」

と言ってその場を離れると、入れ替わりにみんながトレーを抱えながらやってきた

みんな「京子、どうしたのー?」

    「急に帰っちゃうからびっくりしちゃった」

京子は窓の外を指さし

京子「あそこ」

みんな「え?」

京子「あそこに怪しい教会があるでしょ」

みんな「ああ・・・怪しいわよねー、あそこ」

京子「じゃあ、みんなゆっくり食べてて」

みんな「へ?」

京子「あそこ行ってくるから」

と言うや否や席を立ち早歩きで店から出て行こうとする

みんな「京子ー!まってー!」

と、止めようとするがトレーを持っているので追いかけられない

トレーをテーブルに置こうとしているうちに京子は店から出て行ってしまった

みんな「あらら」

    「どうするー!?」

    「どうしよう」

と困惑しながらも席につき

みんな「京子がああなったら、だれにも止められないわよね・・・」

    「うん・・・・」

   「あまりにも出てくるのが遅かったら・・・」

   「通報でもする?」

   「そ・・・そうね・・・」

   「大丈夫かしら」

   「・・・」

そんな会話をしていると真帆が注文を終えてトレーを持って席に戻ってきた

真帆「あれ?・・・京子は?」

みんな「・・・・・」と申し訳なさそうな顔をしながら

    「いっちゃった・・・・」

真帆「へ?」

みんな「教会の中に行っちゃった」

真帆はちょっと怒った顔をしながら

真帆「もうっ!知らない!」といって席に座りドーナツを食べ始めた

一方京子は『へへへ~、この時間なら私がうろうろしていても問題ないわ』と思いながら

教会の扉を開き

京子「こんにちわー」と元気よく入っていく

教会の中には優しそうな二十歳くらいの男性がいて

男性「はいはい、こんにちわ」

   「何か御用ですか?」と尋ねる

京子は表の看板に『お気軽にお立ち寄りください』と書いてあるのを確認済みなので

京子「えーと、用というか」

   「パンいますか?」と尋ねる

男性は驚きながら

男性「パ!パン!?」

京子は男性が驚いている様子を見て不思議そうに

京子「そう、パンって女性ここにいますよね?」

男性「だ・・大丈夫なんですか?あなた」

京子「へ?」

男性「そんな呼び方、恐ろしくて私でも出来ないのに」

京子「はぁ?」

男性「パンドラさんとは古いお知り合いですか?」

京子「パンドラ?あの人パンドラっていう名前なの?」

男性「うはっ!」

   「知り合いじゃないんですね?」

   「パンだなんて呼んだら本気で怒られますよ」

京子「パンドラだからパンなのか~、へんなの~」

男性「あうっ!」

   「パンドラさんは、めっちゃ怖い人なんですよ」

   「こだわりが沢山あって」

   「仲のいい人以外にパンと呼ばれることを絶対に許さないんです」

   「パンドラさんって呼びなさい」

京子「ふ~ん」

  「ところで、パンはいるの?」

男性「今はいません!パンって呼ぶのはやめなさい」と慌てている

京子「今は・・ってことは、やっぱりここの人なのね」

男性「へ?」

京子「帰ってくるの待ってていい?」

男性「君は知り合いじゃないんだね」

   「駄目だよ、なんだか私がパンドラさんに怒られそうだ」

京子「なんで怒られるの?」

   「パンはとても優しい人よ」

   「私にはわかるわ」

男性「いや・・・名前を知らなかったような君が・・・なにを・・」

京子「見た目は確かに怖そうだけど、やさしい人」

   「あなたの方がよくわかってないんじゃない?」

男性「はいはい、そうですか・・・」

   「とにかく、それ以外に用がないなら帰って下さい」

京子は目を細め横目で

京子「看板に偽りあり」

男性「んー?」

京子「お気軽にお入り下さいって書いてあったわよ」

男性は困った顔をしながら

男性「じゃあ、コーヒーか紅茶か入れますから」

   「それを飲んだら帰って下さいね」

京子「なにそれ、物でつるの?」

男性「人聞きの悪い」と苦笑いしながらポットのほうに歩いて行き

   「どっちがいいですか?」と尋ねた

京子「紅茶~」

   「ミルクティーねー」

男性「はいはい」

京子「砂糖は私が入れる~」

男性「はいはい」

紅茶をすすりながら京子は

京子「ふぉ~、絶妙の砂糖加減」

   「ここにクッキーでもあれば最高なんだけど」

男性「はいはい、ありますよ」とクッキーを取りに席を立つ

京子「ああ、そういうつもりで言ったんじゃないんです」

男性は「そうですか」といい取りに行くのをやめようとした

京子は慌てて

京子「でも、いただけるのなら・・・是非」と満面の笑みを見せた

男性は呆れながらクッキーを取りに行く

そこにジョルジュが帰ってきた

扉が開いた音を聞きつけ京子は振り向きすかさず

京子「お邪魔してまーす」とあいさつをする

ジョルジュ「き・・・・きみ・・・・」

      「ここで何をしている」

京子「紅茶をよばれています」

ジョルジュ「いや・・・それは、見ればわかるが」

      「何をしにきた」

京子「お気軽にお入り下さいと書いてあったので」

ジョルジュは、しまったという顔をしながら

      「あの看板は明日外すことにしよう」と言った

男性「おかえりなさいジョルジュ」

   「何か飲みますか?」

ジョルジュ「ああ、ありがとう。だが今はいい」と言い京子のほうを見て

      「それを飲んだら帰りなさい」と言った

京子「私はパンを待っているのよ」

   「パンと話をしたら帰るわ」

ジョルジュ「彼女は気まぐれだ、いつ帰ってくるかわからない」

      「今日は帰ってこないかもしれない」

      「だから帰りなさい」

京子「電話してよ」

ジョルジュ「パンは携帯なんか持っていない」

男性「ジョルジュとパンドラさんは念話で話せるんですよ」と何げなく言う

京子「念話?」

ジョルジュは男性をにらみ「余計な事を言わないように!」と叱った

男性「はぁ・・・まずかったですか・・・」

   「・・・まずいですよね・・・・すいません」

京子「念話ってなに?新しい電話?」

男性は慌てながら「そそ、なんか・・そんなかんじのものです・・・へへ・・多分」

ジョルジュは奥の部屋に入って行こうとしたドアの隙間から

京子はちらりとその部屋の中を見ると奥は思っていたより広く

数人の人影が見えた

京子「へぇー、広いんだー」そう言いながら立ち上がり別のドアのほうに近づき

   「ここは何?」と言いながらドアを開けた

男性は呆れた顔をしながら京子を見ている

京子「トイレかー、以外と綺麗ねー」

男性「はいはい」

京子はトイレとは正反対のところにあるドアのほうに向かった

男性「そこは書庫です」

   「勝手に触らないように」

京子「はーい」と返事しながらその扉を開けた

男性「はいはい」

   「もう気が済みましたか?」

   「奥の部屋のドアは、開けないほうがいいですよ」

   「ジョルジュに怒られますから」

京子「うん~、そこはさっき見えたからいい~」

男性はやれやれという顔をしている

京子は書庫の中をきょろきょろと見回しながら

京子「なんか、カビ臭い・・・古い本ばっかり」

男性「大事な本ばかりですから、触らないように」

   「もう閉めなさい」

京子「あ」

男性「ん?」

京子は書庫の片隅に置いてあるテーブルの上にあの白い花を見つけた

京子はその白い花のほうに向かって歩いて行く

男性「これ!入ってはいけません」

京子「違うの~」

   「白い花が」

男性「ん~?」

どんどん奥に入っていく京子に男性は

男性「これこれ!早く出てきなさい」

京子「本には触らないわ」

と言いながら植木鉢に移された白い花を抱えながら書庫から出てきた

京子「パンは一度帰ってきてるのね」

男性「ん?」

   「それはパンドラさんの花だ勝手に触ったら怒られる」

   「元の場所に戻してきなさい」

京子「違うの」

   「この花は私が折ってしまった花」

   「それをパンが面倒見てくれてるの」

   「そう・・・とても優しい人」

男性「?」

京子「でも、私が折ったんだから、私が面倒をみるわ」

男性「それにしてもパンドラさんの許可が必要だ」

   「私が怒られる」

京子「ん?あなたひょっとして」

男性「ん?」

京子「ヘタレなの?」

男性「な!なにー!」と図星のことを言われて慌てている

京子「さっきから、怒られる、怒られるって」

   「ビビりすぎ」と笑う

男性「うるさい!」

京子「じょうろとかなにかないの?」

   「お水をあげるわ」

男性「そんなものはない!」

   「大体その花くらい魔法で治せる」

京子「え?」

男性「そんなのは初歩の初歩だよ」

京子「・・・・」と何も言わず男性のほうを見ている

   「あなたも魔法をつかえるの?」

男性「あ・・・・」まずいことを言ってしまったと後悔しているが

言ってしまったことは仕方がないと思い証明して見せることにした

男性「貸しなさい、今治してあげるから」と京子に手を差し伸べた

京子「本当に治せるの?」

男性「ああ」

京子「パンはその魔法を使えないの?」

男性「そんなわけないだろ」

   「簡単な魔法だ」

京子「じゃあ、駄目よ」

男性「へ?」

京子「それをしたらきっとパンは怒るわ」

男性「・・・・」

京子「そんな気がするの」

男性「あ・・・」

   「私もなんだかそんな気がしてきた・・」

そんなやり取りをしていると、何やら玄関のほうが騒がしい

男性「ん~?」

京子「あら?なんか、人影がだくさん見えるんだけど・・」

そういうや否な玄関の扉が勢いよく開かれ

警察「警察だー!」

男性「んん?」

警察「女子高生が監禁されているという通報を受けて調べに来たー」

男性「ええええええ????」

京子「えええええ!そんなことしてるのこの教会!?」

男性「バカな!?」

警察「抵抗するなー調べさせてもらうー!」

警察が数人入ってきてドア開けて調べようとする

京子「あー、そのドアはトイレですー」

警察「ああ、そうか」と言いながら中を確認する

京子「そっちは書庫で誰もいません」

   「怪しいのはそっちのドアです」とジョルジュたちのいる部屋のドアを指差した

警察「よし」と言いそのドアの前に数人でかたまり

   「あけるぞ」という

京子が何気なく玄関のほうを見ると、真帆達が心配そうに中を見ている

京子「あれ???」

   「あら・・・????」

   「ひょっとして・・・・・」

   「通報したのって・・・・真帆たち?」

京子「あのー、すいません~」

   「ひょっとして、監禁されてる女子高生って私かも~」と警察に言う

誤解が解け京子と真帆達は警察からこっぴどく説教を受けた

警察から解放されると次はジョルジュからこっぴどく説教をされ今日は帰ることになった

そんなこんながあり夜になるとパンドラが教会に帰ってきた

パンドラは白い花が書庫から出されていることに気づき

パンドラ「誰がこの花に触った」と尋ねた

男性「ああ、私じゃないですよ」

ジョルジュ「夕方、あの子がここに来たんだ」

パンドラ「あの子?」

ジョルジュ「君の魔法陣を消した、あの子だ」

パンドラはがっくりしている

パンドラ「そうか~、バレたかー」

     「ジョルジュお前がそんな服を着ているからだぞ」

ジョルジュ「仕方ないだろう」

パンドラ「しかし、その花をなんでこんなところに出したんだ?」

男性「自分で面倒をみたいって、言うもんですから」

パンドラ「ふ~ん」

男性「なかなか、やさしい心を持った子のようですよ」

ジョルジュ「どうだか!」

      「あの子の友達がここに入って出てこないあの子のことを心配して

      警察に通報して・・・・警察が乗り込んできて大騒ぎだ」

      「事情を知らない野次馬達にはこの教会がどのようにうつったものか!」

パンドラ「はははははははは!」と高らかに笑う

ジョルジュ「笑い事じゃない」

パンドラ「それは災難だったな」

     「はははははは」

ジョルジュ「あの子はまた来るぞ」

そう言われるとパンドラはげっそりした顔をしながら

パンドラ「そうなのか?」と尋ねた

ジョルジュ「君に用があると言ってきたのだから」

      「あとは君に任せた」

パンドラ「バカな!私はあいつが苦手だ」

     「直!(男性の名前)お前に任せた!」

     「うまくあしらえ」

直「あああ、あの私も苦手です」

パンドラ「ジョルジュ!」

ジョルジュ「僕も苦手だ!」

パンドラ「・・・・・・」とちょっと困った顔をした後

     「はははははは!」と高らかに笑う

ジョルジュ「・・・何がおかしい」と呆れている

パンドラ「なかなかの逸材じゃないか」

     「マリアに相手させろ」

     「私はまっぴらごめんだ」と言い放ち手に持った日傘をくるくる回しながら

書庫のほうに入って行った

ジョルジュ「マリアか・・・・そうするか・・・・」

直「マリアちゃん、かわいそう」と心配そうに言う

次の朝、直が教会の前を掃除していると元気よく京子が駆けてくる

直「げ!」

京子「おはよー!」

直「何だ君!また来たのか」

京子「昨日のことを謝りたくて」

   「ジョルジュはいる?」と言いながら玄関の扉を開ける

直「こらこら、勝手に入るな」

そう言われると京子は例の看板を指差した

直「あ・・・これ片付けとけって言われてたんだ・・・」

 「また、怒られるな・・・・」

京子は中に入ると元気よく

京子「おはよー」と言うが玄関から入ってすぐの部屋には誰もいなかった

京子はあたりを見回すと白い花がないことに気づいた

京子「あれ?」

また書庫に戻されたのだと思い書庫のドアを開け中に入っていく

そこに部屋の隅にある椅子に毛布をかぶり座り姿で眠っているパンドラを見つける

京子「あ・・・」

起こさないでおこうと思いながらそっと昨日花が置いてあったテーブルのほうに

パンドラを見ながら進むとパンドラの頬に涙がこぼれていることに気づく

京子「?」

   『泣いているの?』そう思いながらパンドラのほう近づくとパンドラが目を覚ました

京子「あ・・・ごめんなさい・・・起こすつもりはなかったの・・」と小さな声で言う

パンドラはまだ寝ぼけているのか京子のおでこのほうを見ている

パンドラから見た京子のおでこは輝いていて、まばゆくて顔がはっきりと見えない

パンドラは急に立ち上がり

パンドラ「しのぶ!」というや否や京子を抱きしめた

京子「え???」

   「なになに????」

京子はパンドラと同じくらいの身長で女性にしては大きいほうだった

パンドラは体の大きさの違いに気づき

パンドラ「ん?」

     「何だ、お前!」といい京子を突き放した

京子は驚いている

パンドラは京子に背を向け涙を拭いているようだった

京子は恐る恐る

京子「ごめんなさい・・・起こすつもりじゃなかったの」といい白い花のほうに向かい

   「花を見にきたの」と付け加えた

白い花の横には水が入れられたガラスのコップが置いてあった

京子はそのコップを取り、白い花に水をあげている

パンドラ「こら、花びらにかけるな」

     「花びらが落ちてしまう」

京子は慌てて水をあげるのをやめ「ごめんなさい」と花に言った

パンドラ「よく土を見ろぐちゃぐちゃになってるだろ」

     「水をやればいいというものじゃない」

京子「そうなの?」

パンドラ「当たり前だ、根腐りしてしまうぞ」

京子「根腐り?」

パンドラ「ん~?何も知らないんだな・・・」

京子「う・・・うん・・・」

   「いろいろ、教えて」

パンドラ「ごめんだね」

京子「あ」

   「もう行かなきゃ!」と言い、慌ててコップを置き

   「また夕方来るね!」と言い駆けだした

パンドラ「来なくていい!私はいないぞ!」

京子「花を見に来るわー」

   「教えてくれないと、枯らしちゃうわよ~」

パンドラ「どんな脅迫だ!」

京子「私は京子!華潮京子よ!」

パンドラ「聞いてないから」

京子「しのぶじゃないわ!」と言いながら出て行った

パンドラはまじめな顔になり、うつむいてしまった。

パンドラ「ジョルジュー、書庫のドアに鍵をつけてくれー」

奥の部屋にいるジョルジュに向かって言う

ジョルジュ「そんな予算はない!」

パンドラ「・・・・なんて、貧乏な教会だ・・・」とがっかりしている

京子は学校に向かって全速力で走っている

周りの通行人はそのあまりのスピードに驚いているようだ

京子『・・・・しのぶ・・・・』

   『しのぶって誰のことかしら・・・・』

   『きっと、パンはしのぶって人のことを思い・・・涙を流していたんだわ・・・』

   『・・・どんな人なのかしら・・・・』

京子はおでこをジンジンさせながら学校に向かってひたすら走った

シーンφ マリア登場

学校では、昨日のことで京子はみんなに突っ込まれていた

真帆「ねぇ、京子どういうことなのかちゃんと話してくれないと

   許さないからねー」

京子「えへへ、ごめんごめん」

   「でもまさか警察に通報するなんて思ってなかったから」

みんな「私たちがどんなに心配していたか・・・」

京子「あー、ほんとごめん!」と拝むようにしてみんなに謝っている

みんな「まぁ、無事で何よりだったけど」

真帆「駄目!みんな甘やかしちゃ駄目よ!」

   「本当にいつも危なっかしいんだから」

   「一緒にいるこっちの身にもなってほしいわ!」

京子「真帆~~~!そんなに怒らないで~~」

真帆「だから、ちゃんと説明しなさい」

京子「あの教会にね、ちょっと会いたい人がいたから行っただけなの」

真帆「会いたい人?」

   「誰?」

京子「誰って言われても・・・・」

   「みんなは知らない人だから・・・」

真帆「ん~~?なんでその人に会いたかったの?」

京子「ん~~、なんていうか謎めいているというか・・・」

   「興味深い人なの」

みんな「男?」

    「あの私たちに長々と説教した?」

京子「違う違う!」

   「昨日は結局会えなかったのよ」

   「だから、今日もまた行ってみるんだ」

みんな「え~~~~~!!!!」

    「なんで!?」

京子「なんでって・・・」

   「まだ会えてないから・・・」

   「あー、今朝あったけど、ゆっくり話せてないし」

みんな「え~~~今朝あったの?」

    「そういえば京子いつもと違う方から走ってきたわねー」

    「おお、これはますます怪しい!」

    「とうとう京子も男に興味を持ち始めたか!」

京子「だから、違うって」と苦笑いしながら否定する

放課後になると京子はみんなに「ごめんね」と一言謝り一人で教会に行くことを告げて

帰路についた

真帆達は京子が帰ってしまった後みんなで集まり相談している

みんな「絶対怪しい・・・」

   「うん、怪しい」

   「男だわ」

   「うんうん」

真帆「もう!ほっときなよ」

   「本当にあきれてものが言えないわ!」

みんな「いや・・・祝福してあげるべきよ」

    「あんなに恋に無頓着だった京子が興味を持ったの」

真帆「いや~、多分違うと思う」

みんな「いいえ、あの熱心さ」

    「男に違いない」

    「初めての恋だからこそあれほどに暴走するのよ、きっと」

真帆「いや、京子はいつでも暴走するのよ」と呆れている

みんな「京子は違うって言ってたけど、やっぱあの説教してた男の人かな」

    「え?あれはないわ!」

    「ぶちぶちぶちぶち・・・いらいらしたし」

    「あ~、私もあれはないわ」

    「なんか神経質そうで・・・・」

    「そんな京子と正反対な彼」

    「人は自分にはないものを持つ者に惹かれるからねー」

    「おおおおおおお」

    「じゃあ、やっぱあの人!?」

真帆「あー、ないない」とますます呆れている。

   「そもそも、向こうが京子みたいな目茶苦茶な子お断りでしょ」

みんな「あー、でも京子かわいいからねー」

    「ナイスバデーだし」

    「むはっ!体目当てか!!!」

    「おおおお、京子が危険だわ!」

真帆「こらこら、そこ!妄想しすぎ!」

みんな「とにかく私たちも教会に向かいましょう!」

真帆「はぁ???」

みんな「心配だわ!」といいながらもワクワクした顔をしている

    「さあ、いきましょう!早くしないと京子を見失うわ!」

真帆「なに?付け回して覗く気なの?」

みんな「心配だからね!」とワクワクした顔をしながら言う

    「いやなら来なくていいわよ~」

    「とにかく私たちは行くわー」と言ってみんなで

京子が行ったであろう方向に向かって進みだす

真帆「もうっ!わかったわよ!」

   「行く!」

   「待って!私も行くから~」といってみんなを追いかけ始めた

みんなが京子を発見すると、丁度京子が教会の中に入って行くところだった

みんな「あ!はいった!」

真帆「そりゃ~ね~、最初から行くって言ってたじゃない」と冷めた顔で言う

みんな「どうする?」

    「いや・・・さすがに中に入るのはまずいでしょ」

真帆「もう当分出てこないんじゃない?昨日みたいに」

   「ドーナツのとこから玄関が見えるからとりあえずドーナツ行こうよ」

みんな「そうね」と言いながらドーナツショップに向かった

一方、京子の方は玄関の扉をあけ元気に「こんにちはー」とあいさつをした

テーブルの上に今朝は書庫に置かれていた白い花があり

マリアが椅子に座っていた

マリア「ジョルジュー!きたわよー」

そう呼ばれると奥の部屋からジョルジュが出てきて

ジョルジュ「白い花の前に紙が置かれているだろ」という

京子「え?」

ジョルジュ「花の面倒の見方をパンが書いたものだ」

      「花の面倒を見るつもりがあるならそれを読みなさい」

そう言われると京子はテーブルに近づき紙を手に取った

紙は20枚ほどあり小さな文字でびっしりと書かれていた

京子「うわ!なにこれ・・・」

   「こんなの読めないわ」

ジョルジュ「その程度のものを読む気がないのなら、もう帰りなさい」

      「君にはその花の面倒は見られない」

京子は挑発されて少しむっとしている

ジョルジュ「これは僕の言葉じゃない」

      「パンがそう言ったんだ」

      「僕もそう思うがね」

      「それに書くのと読むのならどちらが大変だと思う?」

京子は少し考え

京子「それは・・・・書く方だわ・・・」と答えた

ジョルジュ「そうだ」

      「君が今朝いろいろ教えてほしいと言ったから」

      「パンが一生懸命書いたんだ」

      「僕はあの子はそんなものを読むような子じゃないよと忠告したんだが」

      「それならそれでいい、二度と来るなと伝えろと言われている」

京子「よ・・・読むわよ・・・読むに決まってるじゃないこれくらい」

ジョルジュ「そうかい」

      「じゃあ、それは家に帰ってじっくり読むといい」

京子「何よ!結局追い返すの?!」

ジョルジュ「いや、違う違う」

      「今日はもう水をやったりしなくていいそうなんだ」

      「それよりマリアに街を案内してやってほしいんだ」

京子「え?」

ジョルジュ「マリアはこの街にきて間がないんだ」

マリア「よろしく」とちょっと渋々挨拶をする

京子「でも、わたし・・・パンに会いたいの」

ジョルジュ「パンは今あまり人とかかわりたがっていないんだ」

      「だからそっとしておいてやってくれ」

京子「なぜ?」

ジョルジュ「人それぞれいろいろあるだろう?」

      「そう根掘り葉掘り聞いちゃいけないよ」

京子「・・・・・」下を向きながら少し考え

   「しのぶって子のこと?」

ジョルジュとマリアは驚いた顔をしている

ジョルジュ「なぜその名前を!」

京子「今朝・・・・パンが泣いていたの・・・」

   「たぶんその人のことを想っていたんだわ・・・」とうつむきながらいった

ジョルジュ「その名前は二度とここでは出してはいけないよ!」と、いつも以上に強く言った

しのぶという名前を聞いて驚いただけではなく

ジョルジュの表情が曇ったのを京子は感じ取っていた

京子「なぜなの!?」

マリアは空気を読んで「さぁ!案内して!」と京子の手を取って玄関を出ようとした

 

その頃、真帆達はそれぞれ注文を終え席につく

すると一人が

   「ねぇねぇ、じゃんけんで負けた人が玄関まで見に行くって言うのはどう?」

   「ガラス張りの玄関だったから中が見えると思うの」

みんな「そうね、昨日説教された部屋は見えるよね」

真帆「えー、やだー」

みんな「駄目よ!」

    「じゃんけーん、ポーン」

真帆は何とかじゃんけんに勝つことができホッとしている

言い出しっぺの子がジャンケンに負けて覗きに行くことになった

玄関に向かって、こそこそ見に行く姿をみんなは

ドーナツショップからかたずをのんで見ている

その時、マリアに連れられ京子が玄関から出てきた

覗きにいった子『うひゃ~~~!』と思いながら何とか看板に隠れる

ドーナツショップの皆「わわわわ!」

             「ニアミス!あぶねー」

             「京子、女の子と出てきた!」

             「なんか腕組んでるんですけど!」

             「かわいい子~~」

            「えええええ~~~どういうこと~~」

            「お相手はひょっとして女の子~~???」

         真帆「いや、だから・・・妄想が激し過ぎる」

とりあえず追いかけるために飲み物を一気に飲み干しドーナツを片手に店を出るみんな

真帆「もう、いいじゃん~、ゆっくり食べたいよ~~~」

みんな「ドーナツなんかいつでも食べられるでしょー!」

みんなは、京子とマリア達をこそこそとつけて歩く

みんな「なんか京子俯いてない?」

     「そうね、なんか元気ないね」

マリア「感謝しなさい!」

    「あのまま質問攻めしてたら間違いなく出入り禁止になってるから」

京子は不思議そうな顔をしながら

京子「どうして?」と尋ねる

マリアは呆れた顔をしながら

マリア「それよ!それ!」

    「何でもかんでも、どうして?なぜ?って」

     「それがいけないのよ!」

京子「どうして?」とまた尋ねる

マリアはあきれながら

マリア「ほら!また!」

京子は、しょんぼりしらがら

京子「だって・・・」という

マリア「特にあなたの場合は聞いちゃいけない事ばかり聞くから」

京子はまたどうして?と聞きたかったが注意されたばかりだったので何も言えなかった

マリア「まずは魔法」

    「魔法の事はマナが見えない人に説明しても無駄なの!」

     「無断だと分かっているのにどうして?

      だとか聞かれたら、たまったもんじゃないわ」

    「ましてやあの程度のメモを読むのに難色を示してる貴方になんて」

    「私あなたが来るまで暇だったから読んだわよあのメモ」

    「3分とかからなかったわ」

京子「私、字とか読むのあんまり好きじゃないから・・・」

マリア「でしょうね」

    「すぐにわかったわ」

    「なんでもすぐ、どうして?とか聞くんだもん」

     「いつでもそうなんだろうなーって思った」

     「これは、自分で調べたり考えたりしない証拠」

京子「そ…そんな事ないわ」

マリア「そうかしら?」

    「まあ、そうだとしてもパンドラやジョルジュはそう思っていない」

    「だから、まともにあなたの相手をしないのよ」

そう言われると京子はますますしょんぼりした

マリア「あ…そんなにへこまないでよ」

    「べつに説教するつもりじゃないんだから」

    「簡単なことよ」

    「調べたり考えたりしろって言ってるんじゃなくて」

    「それが嫌なら魔法とかそういうことに興味持たなきゃ良いだけじゃん」

    「元のように友達達と楽しく遊んでればいいのよ」

    「そうすべきだし、それは素晴らしいことよ」

    「あなたに対して文句をいってるんじゃないの」

    「ジョルジュもパンドラも私も」

京子「嫌よ!」と強く言う

マリア「まぁいいわ」

    「わたしあなたのおもりをしろって言われてるから」

    「丁度暇だったから付き合ってあげるわよ」

京子「おもりって・・・」

マリア「そう。おもり」と言って笑う

京子は口をとがらせながら歩いている

京子「みんな忙しそうだけど・・・えーっとマリアさんは暇なの?」

マリアは笑いながら「マリアでいいわよ」

   「あなたいくつ?」

京子「17よ。私は京子、華潮京子」

マリア「ふーん、じゃあ、私の方が先輩ね。私は18」

京子「受験生?」

マリアは笑いながら「もう、大学出てるわよ~」

    「教会の系列の学校では年齢は関係ないの」

    「ジョルジュは19だけど、彼ももう大学を出てるわ」

京子「すごいのね」

マリア「魔法使いには賢くないとなれないのよ」

    「あなたたちのやっている勉強よりずっと難しいんだから」

京子「ふ~ん、そうなんだ・・・・」

マリア「だから、魔法のことはあきらめなさい」

    「マナも見えないみたいだし」

    「聞いても時間の無駄よ」

京子「・・・・・」

マリア「まぁ、おもり役だから」

    「聞きたいことがあれば答えるけど」

    「あなたが理解できるまでっていうのはごめんよ」

    「てか・・・無理」

京子「私には、魔法が見えるの・・それはどうして?」

マリア「ああ、あなたは魔法が見えるんじゃないわ」

    「パンドラとジョルジュが話していたのを聞いたんだけど」

    「あなたは第六チャクラが興味があるものに対してだけ開くの」

    「白い花が見えたり見えなかったりしたことに興味を持ったから」

    「パンドラの張った魔法陣を守る結界の中が見えただけ」

    「結果的には魔法が見えたってことになるのかもしれないけど」

    「魔法が見えるんじゃなくて興味を持った物の本質が見えたってことらしいよ」

京子「第六チャクラ?」

マリア「そう、チャクラについては私もよく知らない」

    「魔法とは別の力」

    「パンドラは他人のチャクラが見えるのよ」

    「私たちは見えないから」

    「本当かどうかもよくわからないけど」

    「まぁ、パンドラが言っていることは本当だと思うわ」

    「第六チャクラは真実を見抜く力らしいよ」

    「第3の目っていわれてて、おでこのところ」

    「あなたはおでこがとても敏感でしょ?」

京子「え?」

マリア「おでこに髪の毛がかかるのも嫌」

京子「え・・・ええ」

マリア「だから、前髪をてっぺんでくくって、おでこを出している」

京子「そ・・・そうよ」

マリア「って・・・パンドラが言ってた」と言って笑う

京子「あの人は・・パンはいったい何者なの?」

マリア「パ・・・パン!!」

    「あんた恐ろしいこと言うわね!」

京子「え?」

マリア「パンドラに怒られるわよ」

    「パンと呼べるのは仲間として認められた人だけよ」

    「それ以外の人にそう呼ばれることを、とても嫌がる」

    「たぶん返事しないわ」

    「んで、腹の中怒っている、きっと」

京子「・・・そうなんだ・・・」

   「マリアは仲間じゃないってこと?」

マリア「ええ。全然仲間じゃない」と言って笑う

    「なりたくもないわ、パンドラは教会の人じゃないのよ」

みんなは心配しながら京子をつけている

みんな「なんか・・・・あの子は笑ってるけど」

    「京子はずっと下向いてるね・・・」

    「うん・・・京子は楽しそうじゃないね・・・」

    「どういう関係かしら」

京子「じゃあ、あの人は・・・何者なの?」

マリアは、空を見ながら少し考え

マリア「千年魔女よ」と答えた

京子は不思議そうな顔をしながら

京子「千年魔女?」と尋ね返す

マリア「パンドラはいくつだと思う?」

京子「25歳くらい?」

マリア「わーーーーー!怒られるわよ~」

京子「え?・・いくつなの」

マリア「18よ」

京子「うそ!」

マリア「本当よ」

京子「外国の人だから・・・見た目は18歳って言われても

   そうかもしれないって思うけど」

   「18にしては貫禄がありすぎるわ」

   「絶対嘘よ」

マリア「へー」

    「さすが第六チャクラでパンドラを見ただけのことはあるわね」

    「ほぼ正解よ」

京子「え?」

マリア「見た目だけ18歳なの」

    「自分が一番美しかった時の姿なんだって」

京子「どういうこと??魔法で姿を変えているの?」

マリア「まぁ、そんなとこかなー、ちょっと違うけど」

京子「じゃあ、本当は何歳なの?」

マリア「ん?あなたにぶいのね?」

京子「え?」

マリア「最初に千年魔女だって言ったでしょ」

京子「・・・・・・」

   「え?」

マリア「何歳かは、私も知らないし本人もよくわからないんじゃない?」

京子「え?」

マリア「千年以上生きてるの」

京子「ま・・・まさか・・・・嘘でしょ?」

マリア「訓練すれば霊体と肉体を分離できるからね」

    「アストラルイニシエーションってやつ」

京子「アスト・・もにょもにょ・へ?・・・」

マリアは笑いながら

    「幽体離脱みたいなもの」

    「それができれば寿命はなくなるの」

    「もちろん肉体は滅びるけど」

京子「マリアも?」

マリア「残念ながら私はできない」

    「意図的にできる人は滅多にいないの」

    「ジョルジュはできるのよねー」

    「あいつは、何でもそつなくこなすやつ」

京子「私の知らないことが沢山あるのね・・・」

マリア「まーねー、知ってもしょうがないけどね」と笑う

京子はうつむいたまま黙って歩き続けた

マリアは横からその姿を観察している

しばらく沈黙が続いたあと

マリア「今の話。信じてるの?」と意地悪な顔をしながら尋ねた

京子「え?」

   「嘘なの?」

マリアは黙ってニヤニヤしながら京子の顔を見ている

京子も眉間にしわを寄せながらマリアをじっと見ている

マリアは京子が自分の話を完全に信用していることを確信し

マリア「本当よ」と言い満足げな顔をした

京子はほっとした顔をしている

マリア「上出来だわ、あなた・・・えっと、京子」

京子「え?」

マリア「あなたは私の話を信用して一生懸命聞いている」

京子「ええ、あたりまえじゃない」

マリアは笑いながら

マリア「こんな突拍子もない話、普通信じないわよ」

    「だから、話すことをみんな嫌がるの」

    「でも、あなたはちゃんと信用した」

    「気に入ったわ!」

    「京子!」といい、手を京子に差し伸べた

手を差し伸べてもらって京子は嬉しそうな顔をしてマリアの手を

ガッシリと握りしめた

後ろを付け回しているみんなは「おおお・・・急展開」

みんな「友情が芽生えたの図」

    「何それ?」と笑う

真帆はあきれ果てていた

真帆「もう帰ろうよ~」

マリアは京子のことを気に入ったらしく鼻息を荒くさせながら

マリア「何でも聞いて!」と京子の肩を抱いた

京子はちょっと戸惑いながら

京子「え・・ええ」と言い、少し考えて

   「しのぶっていう人のことを聞いていい?」と小さな声で言った

マリア「はぁ?」と呆れた顔をしながら言い

    「なんで?」と逆に質問してきた

京子「パンが・・・パンドラさんが泣いていたから・・・」

マリアはまた空を見上げ「う~ん」と言い

マリア「そりゃ~、人それぞれいろいろあるでしょ?」

    「そういうことに興味持つのは感心しないわね」

京子「そ・・・そうね」とうつむきながら答え

   「恋人かしら・・・」とつぶやいた

マリアは、笑いながら「違う違う」

マリア「しのぶは女だから」

京子は戸惑いながら

京子「しのぶって名前の男の人もいるのよ」と答えた

マリア「あー違う違う、女だから」

    「沖斗しのぶ16歳、高校2年生よ」

京子「知ってるの?」

マリア「ええ」

京子「どんな人?」

マリア「あの・・・パンドラとジョルジュの前では

    絶対その名前を出しちゃ駄目よ」

京子は顔をしかめている

マリア「そんな知らない子の事聞いてどうするの?」

京子「・・・・」

   「わからない・・・・」

   「でも・・・・どうして泣いていたのか・・・」

   「あんなに強そうな人が・・・」

マリア「まぁ・・いいわ」

    「知ってることだけ教えてあげる」

    「でも、正直私もよく知らないの」

    「なにかあったみたいなんだけど」

    「パンドラもジョルジュも話してくれないのよ」

    「話してくれないどころか二度とその名前は出すなって感じ」

京子「・・・・・」

   「どんな子だったの?」

マリア「ひょろひょろで、チビでデコピンで」

    「ダサくて芋くて」

    「口をパクパク鯉みたいにして、ちゃんと喋れない」

    「気持ち悪い子」

京子「え?」と困惑した顔をしている

マリア「いつも下を向いていてモジモジしてて」

    「ちょっと突いたらコケちゃうし」

    「ちょー弱い野良の魔女」

京子「・・・・・」

   「マリアはその子のこと嫌いなの?」

マリア「ええ、嫌いよ」

    「姑息なヤツ」

    「あいつのせいで私は今魔法が使えなくなってるのよ」

京子「え?」

マリア「あいつが、不意打ちで私にコールドジェイルっていう魔法をかけたの」

    「その魔法は私からマナを遮断する魔法」

    「こっちは教会っていう立場上、攻撃できなかったから」

    「そうじゃなかったら滅茶苦茶にしてやったのに!」と怖い顔をしながらいう

京子「その魔法は解けないの?」

マリア「そこがまた腹立つところ」

    「解き方を教えてもらったんだけど」

    「訳が分からない」

    「簡単だけど難しいっていう問答」

    「全くわけがわからない」

京子「簡単だけど難しい??」

マリア「そう!あいつ頭がおかしいのよ!」

京子「えっと・・・闘っていたの?」

マリア「そう。3か月ほど前」

    「パンドラとしのぶは私たちの敵だったのよ」

京子「パンも?」

マリア「まぁ、敵って言ってもねパンドラが何か悪い事をしたって訳じゃなくて」

    「大きな魔力を持った者たちに魔力の制限を教会でかけていたの」

    「何しだすかわからないでしょ?個人で大きな力持っていたら」

京子「え・・・ええ」

マリア「それに応じなかったから、ちょっとひと悶着あったのよ」

    「まぁ、その件はもう済んだんだけどね…」

    「パンドラは悪い人じゃないみたいだから」

京子「うん、それはそう思う」

マリア「その時のこっちが手を出せないことをいいことに、

    しのぶにやられたのよ」

    「言っとくけど私チョーエリートで教会No1の魔力を持っていて」

    「教皇様直属だったのよ」

    「普段は魔力を制限を掛けられていたんだけど」

    「パンドラと直接対決になったときには制限を外し

     私がパンドラと戦う予定だったんだから!」

    「その一軒が元で今なんか魔力に制限をかける制度が

     廃止になったから、このコールドジェイルさえなければ

     私最強なんだけど・・・・」

 

京子「そうなんだ・・・・」

   「・・・」

   「あの・・・しのぶって子の居場所わかるの?」

マリア「ん?ええ」

京子「会いに行って見ない?」

マリア「はぁ?なんで?顔も見たくない」

京子「コールドジェイル・・解いてもらえるかもしれないでしょ?」

マリア「う~ん」

    「あいつに頼みごとするのは嫌」

    「それにきっとそんなことしてくれないわ」

京子「?」

マリア「私のことを怖がってるから」

京子「私が頼んであげるから」

マリア「へ?」

    「無理無理」

    「変な子だから」

    「解き方は教えてあるって言うわ」

    「あー、言いそう」

    「腹立つー」

京子「場所を教えて」

   「私行ってくるから」

   「私がマリアに魔力を戻してあげたい」

   「それじゃあ駄目?」

マリア「えー?遠いわよ」

    「電車で2時間くらいかかる」

京子「問題ないわ」

マリア「どうしてそんなに会いたいのかな~」

京子「どうしてだか、私にもよくわからない・・」

   「パンの・・・あの涙は普通じゃなかったわ…」

   「眠りながら泣いちゃうなんて…」

   「どれほど悲しければ・・そうなるの?」

   「千年も生きている人なら尚更よ」

   「ねぇ?そう思わない?」

マリアそう言われて少し困った顔をしながら考え

マリア「わかった!わかったわよ!」と答えた

    「私も行くわ!」

    「腹立つけど、いろいろあったから

    まぁ、可哀そうなことしたな、とも思ってるの」

    「何があったのかも知りたいし・・・・」

    「会ってみるのも悪くないかー」

京子は嬉しそうに「ほんと!」

マリア「ええ」

    「ただ、今からは無理よ」

京子は時計を見ながら「そうね」

マリア「学校が休みの日じゃないと無理ね」

    「う~ん、だから土曜日ね!」

京子「うん」

マリア「さぁ、携帯出しなさい!赤外線よ~~~!」

京子「うん」

二人は携帯の電話番号とメールアドレスを交換した

マリア「この事は絶対にぜーったいにジョルジュとパンドラには内緒よ!」

    「マジギレされて!私もあなたも教会出入り禁止になるわよ」

京子「うん、わかったわ!」

   「絶対に内緒にする!私は約束を破らない!」

マリア「おっけーーー!」

真帆達は歩きながら話しているだけのマリアと京子を付け回していて

なんだかとってもバカバカしくなってきていた

真帆「いや・・・ほんとに・・・私たち何してるんだろ・・・」

みんな「・・・・・・それ禁句」

    「うむ・・・・禁句だわ」

真帆「誰もが言い出せなかったことを私が言いましょう」

   「勇気をもって」

みんな「・・・な・・・なに・・・?」

真帆「帰ろう!」

みんな「お・・・・おう!」

    「真帆がそんなに言うなら・・・」

    「そうね・・・仕方ないわ」

夜になり帰宅した京子は自分の部屋でパンドラが書いたメモを読んでいた

京子『下手な字・・・』

   『きっと初めて日本語で書いたんだわ』

   『一つ一つの文字はとても下手くそ』

   『でも、全体を見ると整然としていて奇麗に見える』

   『一生懸命書いてある』

   『何も知らない私のために、一つ一つ丁寧に説明が書かれている』

   『だからこんな量になったのね・・・』

読みやすく書かれたその文章は読むのが苦手な京子でも

10分ほどで読み終えることができた

京子はそのメモを手に取り胸に抱き

京子『ありがとう、パン』

   『私にいろいろ教えてくれるのね』

   『私は恥ずかしい』

   『これを読むのを面倒臭がったなんて』

   『きっとこれを書くのに1時間以上かかっているわ』

   『・・・・』

   『いいえ・・・もっとかかっているかもしれない・・・』

壁にハンガーとともに掛けられた制服の内ポケットから生徒手帳を取り出し

パンドラからもらったメモを丁寧に折りたたみ愛おしそうに見つめながら

生徒手帳のカバーの中に挟み込んだ

生徒手帳を制服に戻し電気を消して京子は床についた

ふとんを鼻のあたりまでかぶり目を閉じ

京子『パン、あなたの涙を私は拭いたい』

そう強く思いながら眠りについた

   

シーン☆ しのぶに会いに行く   

数日後、金曜日の放課後

真帆「今日はほんとにいい天気!」

京子「うん気持ちいいねー」

みんな「公園でバレーでもする?」

    「おお、いいねー」

    「ほとばしる青春!みたいな」

京子「えーーーー」と珍しく難色を示す

真帆「?」

京子「今日もドーナツ行こうよ」

みんな「は???」

     「京子どうしたの!!!」

    「いつもは街で遊ぶの嫌がるくせに!」

真帆「ほんと!いつもなら一番やりたがるのに!」

京子「いや・・・・バレーはやりたいけど」

   「私街にいかないと・・・」

みんな「花?」

京子「そそ」

みんな「一回くらい水やらなくても大丈夫じゃない?」

    「大丈夫でしょ!」

    「朝も行ったんでしょ?」

京子「え?・・うん」

みんな「じゃあ、大丈夫よ」

京子「駄目」

   「心配だから」

みんな「おおおお、いつの間にそんなに花を愛でる乙女になったの?」

    「毎日、朝と放課後行ってるよね」

京子「乙女って・・・・」と苦笑いしている

みんな「花なんて踏みつけて、こんにゃろ!こんにゃろ!

     って言うタイプだと思ってたのに」

京子「こら!どんだけ強暴なのよ!」とさらに苦笑いする

真帆「こんなにいい天気なんだから運動に限るっしょ!京子!」

京子「わかったわ、みんなゆっくり歩いて公園に向かってて」

   「おおおおおお!燃えてきた!」と体育の古谷先生のものまねをする

みんな「でたな!熱血古谷」と笑う

真帆「それは似てない!」

みんな「似てる~~!」

     「暑苦しいところがそっくり」

真帆「古谷先生は暑苦しくなんかありません!」と否定する

京子「100M12秒台のこの俊足」

   「街まで行って花の手入れして公園に戻る」

   「私が先につくか、みんなが先につくか競争よ!」

みんな「はぁ?」

    「絶対私たちでしょ」

京子「だから、ゆっくり歩くのよ!」

   「じゃあ、早速いってきまーす!」とカバンを持って走りだし

   「ゆっくり歩いてね!」

   「そうじゃなくちゃ卑怯よ!」と言ってものすごいスピードでその場から姿を消した

真帆「卑怯って・・・・どんな理屈」

みんな「競争なのにゆっくりいけとか・・・」

真帆「最近ちょっと変わったな~と、思ってたんだけど」

   「やっぱ、京子は京子だわ」

みんな「そ・・そうね」

    「ま・・・・まぁ、いいか・・・」

    「とにかく行きましょ」

    「京子あとで来るでしょ」

    「そうだねー」と言いながらぼちぼち公園に向かって歩き始めた

教会につくと元気よく「こんにちはー」と言い玄関から部屋に入る

そこにはマリアがいて「あら、今日は早いのね」と言う

京子「そりゃあ、もう100M12秒台だからね」

マリア「はぁ?」

京子は急いでいたのでマリアの疑問には構わず

鞄から袋を取り出し開封した

マリア「うわ!臭っ!」

京子「ん~?」

   「肥料だからね」

   「馬糞よ馬糞!」

マリア「うえええええ、そんなもん学校で持ち歩いてたの!?」

京子は急いで植木鉢に肥料を足し

京子「ねぇ、残りここに置いておくね」と言いながら部屋の隅におこうとした

マリア「だめぇぇぇ!臭いもん!」

    「持って帰りなさいよ~!」

京子「無理ー!開けちゃったからカバンの中でこぼれちゃう」

   「天下の女子高生のカバンの中が馬糞まみれになったらどうするのー」

マリア「知らないわよ!」

京子「じゃあ、トイレに置いておこうか」

マリア「だめ!狭い所に置いたらにおいが余計に充満するでしょ!」

    「そっちの書庫に置いたら?」

京子「書庫はパンが住んでるんじゃないの?」

マリア「勝手に住み着いてるのよ!」

    「書庫において!」

京子「あ!競争してるんだった」

京子は急いで花に水をやり

京子「あとで電話するねー!」と言いながら玄関を出た

マリア「こ・・・!こらー!」

京子「私競争してるのー!負けちゃうー!」

マリアは、呆れながらもあきらめ肥料を書庫に置くため書庫に向かいドアを開けた

マリア「あ」

書庫の中には本を片手に持って座っているパンドラがおり

マリアをにらみつけている

マリア「あ・・あの・・・いたのね・・・」

パンドラ「ああ」

マリア「聞こえてた?」

パンドラ「ああ、やかましかった」

マリア「そ・・・そう・・・」と冷や汗を流しながら書庫のドアを閉めようとした

パンドラ「裏のゴミ捨て場の横に置けばいい」

マリア「そ・・そうね・・・そうするわ」といいドアを閉めほっとした顔をしている

パンドラは満足そうな顔をして本を読むのを再開した

京子は毎日甲斐甲斐しく花の世話をしにき、パンドラやジョルジュに付きまとうこともなく

マリアと仲良くしている姿にとても満足しているようだった

マリアは裏のゴミ捨て場に向かうためジョルジュたちがいる

奥の部屋のドアをあけ中に入った

直「臭っ!」

ジョルジュ「なんだそれは!」

マリア「うるさいわねー」

    「持っている私の身にもなってよ!」

    「今裏に出すから」

ジョルジュ「それにしても君たちは本当に騒がしい」

      「なんとかならないのか?」

マリア「しょうがないでしょ、ああいう子なんだから」

ジョルジュ「君の声がやかましかったがな!」

マリア「フン」といいそっぽを向きながら裏に出るドアに向かった

ジョルジュ「まあ、いい」

      「できるだけ外に連れ出してくれ」

      「教会の品位が失われる」

マリア「今日はもう帰ったわよ」と言いながら肥料を裏のゴミ捨て場の横に置いた

直「なんだー、京子ちゃんもう帰っちゃったのかー」

  「今日は話してないなー」と残念そうに言う

ジョルジュ「せいせいするよ」

直「ひどいですね、ジョルジュ」

 「かわいいじゃないですか」

ジョルジュ「そうかい?」

      「じゃあ、君が面倒をみればどうだい?」

直「いや・・・それは・・・・手に負えないです」

ジョルジュ「それよりマリア問答はやってるのかい?」

マリア「やってるわよ」

ジョルジュ「もう解けてもおかしくないんだがな・・・」

マリア「訳わかんない」

ジョルジュ「ヒントはもう提示できない」

マリア「いらないわ」

ジョルジュ「早く解かないと仕事に復帰できないぞ」

マリアはむっとした顔をしながら部屋を出て行った

マリア『答えは大体わかっている』

    『でも頭でわかっても無駄』

    『それが、簡単だけど難しいという名前の由来』

    『無意識の領域を動かさなければならない』

    『単純に考えてしのぶが何をきっかけに

     私にかけた魔法が外れるようにしたか』

    『その答えは簡単』

    『私がしのぶに対して攻撃的な考えが消えたとき』

    『もしくは攻撃的な気持ち全般』

    『わかっていても、消せない気持ち』

    『ますます腹が立つわ!』

シーン★枯れた花

土曜日の朝 学校がある時と同じ時間に京子は教会にやってきた

京子「おはよー!」

マリア「おはよ。」

直は、呆れながら「げ…元気だね。おはよう。」と答えた

京子が白い花を見ると表情が一変した

マリア「あ…あの京子…」

京子はマリアの言葉を制止する様に

   「わかってるわ」と悲しそうに言った

白い花の花びらはすべて落ちてしまっていたのだ

京子「もうそろそろだって言うのは分かっていたの」

   「パンが書いてくれたメモに書いてあったから…」

   「この後この花をどうしてあげればいいかも」

そう言い終わると、京子は白い花の植木鉢を愛おしそうに胸に抱き

京子「ちょっと行ってくるわ」といい玄関の方に向かった

マリア「京子!約束は?」

京子「もちろん行くよ!」

    「先に駅まで行ってて」

    「花を元の場所に戻しに行くだけだからー」

マリア「元の場所ってどこよ」

京子「学校の近くの大きな公園〜」

マリア「ゲッ!めっちゃ遠いじゃん」

京子「んー?大丈夫〜。100メートル12秒台だからー」

マリア「いあ、それはもういいって」とため息をついている

京子「じゃあ、先に行っててねーすぐ行くからー」といい

走って玄関から出ていってしまった

マリア「あっ!こらっ!本気で行くのかいっ!」

そう言った時にはもう手遅れで京子の姿はもうなかった

マリア「…」

    「ホント呆れた」

そう思いながらも仕方が無いので駅に向かうことにした

直「どこか二人でお出かけですか?」

マリア「ええ、いろんな所案内してもらうのよ」と

しのぶのところに行くことは伏せて答えた

 京子は物凄いスピードで公園まで走り

一目散に白い花があった場所に向かった

そこには京子の白い花と一緒に咲いていた

数本の白い花があったのだがもう既にすべて枯れてしまっていた。

それを見て京子は少しほっとした顔をし植木鉢の白い花を元の場所に戻した

京子「あ…」

   「植木鉢どうしよう…」

少し考えて

京子「教会に戻るしかないか…」

そう言いながらまたさっきと同じ道を物凄いスピードで走り出した

京子「あー、こんな事だったらマリアに待ってて貰ったら良かったー」

   「失敗、失敗〜」

そう言ってはいるが特に反省している様子はなかった

 京子が教会に戻り「お邪魔しまーす」というと直は驚いた顔をしながら

直「マリアちゃん、もう行ったよ」と言う

京子「うん。植木鉢のこと忘れてたのー」

   「失敗、失敗〜」

といいながらまた駅に向かって走っていった

直「…本当に騒々しい子だ」と呆れ果てている

直は書斎に向かって

直「パンドラさーん」

  「あの子ちゃんと全部やり切りましたよー」と報告した

書斎から「当たり前だ!」とパンドラの声がする

直「ちょっと褒めてあげたらどうです?」

パンドラ「小学生か!」

直「いや…まあ、そうですけど」

  「あのタイプの子にしてはよく頑張ったと思いますよ」

パンドラ「そうか、ならお前が褒めてやれ」

直「いや、私に褒められても…

  パンドラさんに褒めなれたらきっと喜ぶと思いますよ」

パンドラ「京子が花の世話をしていたのは、

     そんなことのためではない」

直「まぁ、そうですけど…」と答え『厳しい人だなぁ~』と思いながらも

これ以上言うと怒られそうなので言うのを諦めた

 一方、京子は全速力で走り駅に到着していた。

京子はマリアの後ろ姿を確認し

京子「マリア〜、そのまま動かないでー」

マリアが「へ?」というかいわないかで京子はマリアの肩をトンと突き

マリアを飛び箱のように飛び越えマリアの向こう側にあった

郵便ポストの上に綺麗に着地した

マリア「ななななな…なにー?」

と驚いている

京子はポストの上で振り返ると

京子「何点?」と尋ねた

マリア「はぁ?」

京子「今のは、満点でしよー」と自慢げに言う

マリア「あのね…」と呆れていると

京子はもうキップ売り場の方に早足で歩いて行っていた。

京子「マリアー早くー」

マリア「をいっ!散々待たしておいて」と文句を言いながら京子を追いかけた

 電車に乗り暫くするとマリアの携帯のバイブが動いた

京子「マリア電話」

マリア「ん・・うん…」と返事し確認するとジョルジュからの着信だった

京子「いいの?」

マリア「電車の中で通話しちゃ駄目でしょ」

京子「う…うん」

その後も何度もジョルジュから着信があったがマリアは、電話に出なかった

マリア『何かしら?なんかあったのかな?』と気にはなるものの、

今さら身動き出来ないので諦めていた

 京子は相変わらず落ち着きがなく窓の外を見ては騒いでいた。

京子「ねぇねぇ見て!大きな川、これなんて川?」

マリア「知らない。」と呆れている

京子「海見えないかなー?」

   「ねぇ、海の近く通る?」

マリア「さぁ?知らない。」とこんな調子で道中は進み

2時間程で目的地の駅に到着した。

マリア「さぁ、次の駅で降りるよ」

京子「え?もう着いちゃったの?」

マリア「もう、十分です!」

 駅に降りるとマリアはジョルジュに電話して見ることにした

マリア「京子、何度もジョルジュから電話があったから、

    かけ直してみるわ、ちょっと、待ってね」

京子は「はーい」と返事するが、そこらをちょろちょろ動き回っている

マリア「もしもし」

ジョルジュ「こらっ電話に出ないで何やってるんだ!」

マリア「京子のおもりよ、大変なんだから」

ジョルジュ「すぐに教会に戻ってくるんだ」

マリア「え!?無理よ今電車で違う町に着いたとこなんだから」

ジョルジュ「遊んでる場合じゃない」

      「契約のアークが盗まれた!」

      「今大騒ぎになっている」

マリア「ええええ!」

    「アークって、あの?」

ジョルジュ「そうだ!」

マリア「無くなってたんじゃないの?」

ジョルジュ「いや、公にはされていなかったが

       30年前にエルサレムのどくろの丘、

       かのイエスキリストが磔刑に処せられた

       場所で発見されている。」

マリア「で…でもうちの教会の物じゃないでしょ?」

ジョルジュ「ああ、それどころか、うちが盗んだんじゃないかと

       疑われているんだ」

マリア「はぁ?なんで?」

ジョルジュ「何重もの強力な結界をすり抜けているからだ!」

       「そんな事ができるのは、うちの教会の者くらいだと」

マリア「ああ…まぁ、うちが一番魔法に精通しているから…」

ジョルジュ「私達はこれからエルサレムへ行く」

       「教会の留守番をして欲しいんだ!」

マリア「わかったわ!出来るだけ早く帰るけど時間がかかるの」

    「鍵を閉めていつもの所に置いておいて」

ジョルジュ「そうか、わかった。できるだけ早く戻ってくれよ」

マリア「わかったわ!」

 ジョルジュは急いて荷物をまとめ部屋の隅に

瞬間移動のペンタクルを広げた

パンドラ「ほっとけ!」

ジョルジュ「ん?」

パンドラ「アークは盗まれてなどいない」

ジョルジュ「何を言っているんだ?君も行くんだぞ!」

パンドラ「アークは元の場所にそのままあるはずだ」

     「盗まれてなどいない」

     「それでいい」

ジョルジュ「何が言いたい?結界の中に誰かが入ったのは確かだ」

パンドラ「あの結界を誰にも気付かれずすり抜けた奴がいたとしたら」

      「アークはそのままそこにある」

ジョルジュ「?」

パンドラ「そんなヘマはしないという意味だ、わかれ!」

ジョルジュ「そっくりそのまますり替えられているという意味か?」

パンドラ「そうだ。」

     「そもそも今ではあれは信仰の対象なだけだ」

     「本物だと信じていれば、なんの問題もない」

ジョルジュ「…」

パンドラ「じっくり調べさせればいい本物かどうかなどわかりやしない」

     「そんなヘマはしない」

ジョルジュ「しのぶさんか」

パンドラ「…」

     「あの結界を破ることは私やお前たちでも可能だ」

     「ただ破っている途中に大騒ぎになるがな」

     「ただ、しのぶの高速で動く頭なら逆呪文で

      誰にも気づかれず解く事ができるだろう」

     「私達のようにパワープレーじゃない」

ジョルジュ「しのぶさんは物を盗んだりするような子じゃない」

パンドラ「本物かどうかなど使う者にしかわからない」

     「しのぶは使うために借りたのだろう」

     「なんの問題もない」

     「一般人には本物かどうか区別がつかないものを

     置いていったのだからな」

     「肝心なのはそれを本物と信じることだ」

ジョルジュ「騙すのか」

パンドラ「騙されるかどうかは勝手にしろ」

     「好きなだけ調べればいい」

     「本物だという答えが帰ってくるだろう」

     「しのぶはそんなヘマはしないしない」

ジョルジュ「とにかく騒ぎを納めなければならない」

      「うちの教会が疑われている」

      「君も行くんだ!」

パンドラ「はぁ?本物が元のままあるから

     好きなだけ調べろと言えば済むことだ」

ジョルジュ「結界の中誰かが入ったことも問題だ」

パンドラ「知るか!って言っとけよ」

ジョルジュ「そういうわけにはいかない」

      「とりあえず君も行くんだ!」

パンドラ「私が瞬間移動の魔法が嫌いなの知ってるだろ!」

     「それの仕組みを知っていたら、とてもじゃないが使う気がしない」

ジョルジュ「大丈夫だ!僕はいつも使っている」

パンドラ「体がいったんバラバラになるんだぞ!」

     「昔右腕を持っていかれた!ごめんだね」

ジョルジュ「再生すればいいだけだ」

パンドラ「バーカ、どんだけ痛いと思ってるんだ!」

ジョルジュ「飛行機でも車でも事故はある」

      「駄々をこねてないで、さぁ行くぞ!」

パンドラ「誰が駄々をこねてるだって!」と驚いた顔をしながらいい

珍しく顔を赤くし

     「わかったよ!」と行くことを決意した

     「わたしは関係ないと思うんだがな・・・・」

ジョルジュ「君の名前を聞いたらみんな言うことを聞くだろう」

パンドラ「はぁ?利用するなよ!」

ジョルジュ「君にそれ以外の価値はない」と笑う

パンドラ「怒るぞ!おまえ!」

マリア襲撃事件

 

 一方マリアは、地図とにらめっこしながら道を探っていた

京子「ねぇ、マリアーこっち!楽しそうなお店がいっぱいあるよー!」

マリア「こらー、そんな方、行っちゃだめー」

    「反対なんだからー」

京子「こっち見てから行こうよー」

マリア「だめー」

    「目的忘れないでよー」

    「それにジョルジュから早く帰るよういわれたのー」

京子「えー!なんでーせっかくこんな遠くまで来たのにー」

マリア「ここに来てるのは内緒だから早く帰らないとマズイわ」

京子「ウ~ン」と残念そうだがマリアに従うことにした。

しのぶの家は駅より山の手の方にある

二人はせっせと坂を登って行く

その道中も京子は「あそこ見てー」

            「あれ公園じゃない?」

と遠くに見える高台にある大きな公園を指さしてはしゃいでいる

マリア「そうね、ちなみに行かないわよ」とくぎをさした

     「確かこっちだったはずなんだけどなー」

     「私、行ったことはないから」

と携帯で地図を見ながら四苦八苦している

 すると後ろから「マリア・・・」「マリアか?」と男の声がする

マリアが驚きながら振り返るとそこには拓也が立っていた

マリア「た…拓也くん…」

拓也「おおっ!やっぱマリアか」と笑顔で駆け寄ってくる

マリア「わ…私の事覚えているの?」と戸惑った顔をしながら尋ねた

拓也「ああ!当たり前じゃねーか」

マリアは少し戸惑っている

拓也「つってもゆきと俺くらいしかお前のこと覚えてないんだけどな」

   「敬子も覚えてないんだぜ!ひどくね?」

マリア「ま…魔法だからね」

拓也「ウ~ン」となんだか納得のいかないような顔をしている

マリア「拓也君、怒ってないの?」

拓也「へ?」と驚き少し考えた後

   「ああ…まぁ仕事だったんだろ?」

   「俺はお前たちの言い分が

    そんなに間違ってたとは思ってないんだ」

マリアは少しうつむきながら「そうなの?ありがとう」と

感謝の気持ちを伝えた

拓也「それにしても、マリア急にいなくなっちゃったからさー、

    挨拶も何もなしなんてひでーよ」

    「ジョルジュはちゃんと挨拶したんだぞ!」

マリア「あ…うん、ゴメン」

拓也「いや、まぁ会えて嬉しいよ」とほほ笑みながら言う

マリアは嬉そうに「私も」と答えた

拓也「えっと、その子は?」と京子のほうを見ながら尋ねた

京子「私は華潮京子、東京から来ました」

拓也「俺は榊拓也だ、よろしくな」

   「ところでマリアこんな所で何してんだ?」

マリア「ああ、ちょっとね、しのぶちゃんに会いたくて」

しのぶの名前を聞くと拓也の表情がが曇った

京子はそのことにすぐに気が付いていた

マリア「でもね、私しのぶのうちに行ったことないから、

    ちょっと迷子」と照れながら言う

    「確か拓也君隣だよね?」

拓也「あ…ああ」と元気なく答えた

マリア「良かったー、拓也君家へ帰るところ?」

拓也「あ…ああ」

マリア「ん?どうかしたの?」

拓也「しのぶは、いないんだ」

マリア「へ?」

拓也「しのぶにはあの日以来会ってない」

マリア「へ?」

拓也「俺もよく知らないんだがパンドラが連れて行ったらしい。」

マリア「え?」

    「どういうこと?」

拓也「しのぶのお母さんによると、しのぶはあの一件があった日、

    学校から帰ったあとなんか難しい本を読んで…

    酷くショックを受けて精神状態がおかしくなったらしい」

    「パンドラがそのことを告げに来て少しの間しのぶを預かる

     と言って連れて行ったんだそうだ」

京子「それはおかしいわ!」

マリア「う…うん」と二人は顔を見合せ困惑している

拓也「え?」

京子「私とマリアはパンと同じ所にいるけど

    しのぶさんには会ったことがない」

拓也「え?」

京子「パンはしのぶさんのことを想い泣いていたの」

拓也「なんだって!!」

    「そんな馬鹿な!」

    「じゃあ、しのぶはどこに行ってしまったんだ!」

    「しのぶのお母さんが、そんな嘘をつくはずがない!」

    「今!パンドラと連絡はつかないのか?」

マリア「パンドラは電話を持ってないの」

    「それに私達の間では、パンドラの前で

     しのぶの名前を出すことはタブーなの」

拓也「そんなの納得がいかない!」

   「パンドラが連れて行ったのは間違いない!」

京子は急に黙り込んで険しい顔をしだした

拓也「俺をパンドラのところに連れて行ってくれ!」

マリア「あ・・・それはちょっとまずい・・・」

    「私たち内緒で来てるから・・・」

拓也「じゃあ、場所を教えてくれ!」

マリア「東京よ・・・」とちょっと困った顔をしている

拓也「かまわない!」

京子「囲まれてるわ」

マリア「へ?」

拓也「?」

京子「殺気を感じる」

マリア「え?」

京子は動きはせず眼だけを動かしている

京子「3人・・・」

マリア「え?」と少し焦った顔をしている

京子は大きな声で「隠れてないで出てきなさい!」と言う

すると物陰から京子たちを囲むように3人の男が現れた

男「ははははは、マリア!落ちたな!」

マリア「な・・・なに?」

男「つけられていたことにも気付かないとは・・・」

  「聞くところによると魔力を失ってるそうじゃないか」

マリア「あなたたちは!」

京子「誰?こいつら」

マリア「昔、私が痛めつけたやつらよ・・・」と額に汗を流しながら言う

男「ああ、あの時は世話になったな」と笑う

マリア「何の用?」と眉をしかめながら尋ねる

男「お前たちの教会は本当に杜撰だな!」

 「教皇が死んだら、もう俺たちは野放しかい」

  「魔力の制限も外れた」

  「考えてみろ」

  「そしたら俺たちが最初に何をする?」

マリア「さあね」と顔を引きつらせながらも無理やり笑い顔を作り答える

男「もうちょっと人けのないところでと思っていたんだが」

  「見つかってしまっちゃーしょうがない」

と不敵な笑いを浮かべ、続けて

  「お前をぶっ殺す!」と息巻いた

マリア「京子!拓也君逃げて!」

拓也「はぁ?なんだこいつら!」と男のほうに立ち向かおうとする

男「にーちゃん、恨むならマリアを恨みな!」といい拓也に向かって

魔法弾を放った

マリア「拓也君!よけて!」

京子が拓也を突き飛ばしなんとか魔法弾をかわすことができた

拓也「いてててて!」

   「ひでーな、お前!」と転びながら頭を押さえている

京子は素早く動き男に蹴りを入れる

マリア「京子!駄目よ!」

    「結界を張っているはず!」

京子の蹴りは男を結界ごと弾き飛ばした

京子「あ痛たたたた!」と、足を足をぶんぶん振っている

   「何こいつ?」

男は結界ごと弾き飛ばされたがダメージは全く受けていない

男「元気なおねーちゃんだ」と笑う

京子「結界・・・・」

京子のおでこがジンジンする

男「お前らも後で痛い目にあわせてやるが」

 「マリア!おまえからだ!」と言い

マリアに向けて大きな魔法弾が放たれた

マリアは覚悟をきめて歯を食いしばる

京子がマリアをかばおうとしたが間に合わない

京子「マリアー!」

マリアに直撃する直前に魔法弾は凍りつきマリアの手前で

威力を失った

男「ん?」と驚いている

マリア「!」

    「こ・・・・これは・・・・」

    『コールドジェイル!』

男達は立て続けにマリアに魔法弾を撃ち込むが

すべて凍ってしまう

マリアは唖然とした顔をしている

マリア『なんて強力な結界・・・』

    『しのぶ・・・・』

男達「な・・・なんだ・・・」

   「恐ろしく堅い結界だぞ」

   「こいつ魔力を失ってるんじゃないのか?」

男たちは焦りを感じながらどんどん魔法弾を撃ち込む

しかし、すべて凍りつきマリアにダメージを与えられない

マリア『しのぶ・・・・あなた・・・・』

    『私を守ってくれるの・・・・』

京子のおでこがジンジンする

京子はリーダーっぽい男をずっと睨みつけている

京子『見える・・・』

   『結界が・・・見えるわ』  

   『いける!あの時と同じ』

   『白い花を貫いた・・・あの時と』

京子は男に向かってこぶしを振り上げながら全速力で向かっていく

京子「うりゃぁぁああああああああ」

男「んん!!!!!!?」

京子の拳がリーダー格の男の結界に干渉する

その瞬間何かが砕けるような大きな音がする

男「バカか!おまえ!」

京子の拳は結界によって動きを止められているが

京子はもっと力をこめて結界の中に拳をねじ込もうとしている

京子「むきききーーーーーーー!!!!」

マリア「京子!やめなさい!物理で結界はやぶれないわ!」

    「腕がくだけてしまう!!!!」

京子『見える!』

   『いけるわ!』

拓也「おい!すごい音がしたぞ!やめとけ!」

京子「むきーーーーーーー!」

京子のおでこが光を放つ

京子の拳は結界を貫きリーダー格の男の顔面に到達した

男「ぐおおおおおおお!」

男は顔面を殴られ、鼻血を流しながらその場から後ろに

転がり倒れた

京子は腕を押えその場にうずくまり

京子「あいたたたたたたた」

   「マリアー」

   「折れちゃったー」

マリア「京子!」

マリアと拓也は京子のほうに駆け寄る

京子「救急車呼んで」

マリアと拓也は呆れながら「え?」

   「ちょっと今は無理だろ」と言う

京子「いたいー!」

マリア「だからやめなさいって言ったでしょ」と苦笑いする

男たち「おまえらー!」と激高しマリア達に向かって攻撃を

しようとした時

「やめなさい!」と女性の大きな声がする

男たち「あーん?」と声のする方を振り返ると

白い服を着た優しそうな女性が立っていた

男たち「なんだ!おめーは!」

女性は指を2・3度軽く振り「さぁ、行きなさい」と男たちに言う

男たち「はぁ?」

    「何言ってんだおめー!」

女性「・・・・・」

男たち「!」

    「マナが見えない!」

女性「さぁ、行きなさい」

男たち「てめー、何をした!?」

女性「そんなこと聞かなくてもわかるでしょ?」

男たち「・・・・・・」

女性「さぁ、行きなさい」

男たち「ちくしょー!」と言いながら、その女性に一斉に殴りかかったが

1M程の距離に近づくと3人とも大きく弾き飛ばされた

女性「あら・・・大丈夫ですか?」

   「さぁ、行きなさい」

   「私はその子の手当てをしてあげないといけないから」

男たちは悪態をつきながらだが逃げるように去っていった

マリアは唖然としながら「あ・・・ありがとう」と女性に言う

女性はマリアのほうを向き「困った人たちですね」と言った

マリア「まぁ、ああいう輩は、絶えないわね」と苦笑いする

女性「いいえ、あなた達のことです」

   「マリア・京子・・・そして拓也」

マリア「!?」

    「なぜ名前を知っている?」

女性「・・・・・・」マリアの質問には答えず京子のほうに向かう

   「さぁ、手を見せなさい」

京子「ううう・・いたたたた」

女性「複雑骨折してますね」

そう言いながら京子の手をいろいろな方向からさわり

腕に添え木を当てた

京子「あれ???」

   『どこから添え木を出したのかしら?』

女性「いい薬になります」と言いながら添え木を固定するように

包帯をくるくる巻き始めた

京子「薬?」

女性「ええ、あなたのその性格を直すのに、この痛みは

   いい薬になります」

京子『包帯・・・・どこから出したのかしら!?』

マリア「痛みも取ってあげて!わたし今魔法を使えないの」

女性「駄目です」

   「この痛みは特効薬ですから」と笑う

マリア「ひどい!」

女性「そうですか?」

   「病院にいかなくても腕はちゃんと治りますから安心して下さい」

京子のおでこがジンジンする

京子は女性を興味深くじっと見ている

女性「そんなに見ないでください」

京子「ねぇ、どうしてそんな格好をしているの?」

女性「・・・・あまり見ないでください」

マリア・拓也「?」

京子「コスプレなの?」

女性「・・・・」

京子「よくできている・・・」

   「まるで本物みたい」

マリア・拓也「?」

京子には女性の背中に4枚の翼が見える

興味津々な京子はその羽を1本抜いてみた

女性「きゃあ!」

   「なななな・・・何するんですか!」

マリア・拓也「どうした?」

京子「!」

   「こ・・・・これは本物だわ」

そういう京子の手には1枚の白い羽が抓まれている

マリア「?どこからそんな羽出てきたの?」

マリアと拓也には女性の背中の羽が見えない

京子「あなたは誰?」

   「なぜ羽が生えているの?」

マリア・拓也「え!?」

        「羽?」

拓也「羽なんかねーぞ」

マリア「まって・・・拓也君」

    「京子は第6チャクラが開いているの」

拓也「・・・あ・・・そうなのか・・・」

女性「私の名前はジブリール」

   「今しのぶと共にいる者」そう言いながら京子から離れ

   「しのぶのことを嗅ぎまわるのはやめなさい」と言った

拓也「しのぶと一緒にいる?」

   「しのぶはいるのか!」

ジブリール「ここにはいません」

       「拓也、パンドラにしのぶのことを問うのはやめて下さいね」

       「パンドラの胸が痛むだけです」

拓也「どういうことだ!」

   「とにかく一度しのぶに合わせてくれ!」

ジブリール「だめです」

拓也「なぜだ!」

   「なぜお前たちはしのぶのことを隠す!」

ジブリール「しのぶの意志です」

拓也「!?」

ジブリール「私もあなた達の前に姿を現す

       予定ではなかったのですが」

      「その子が無茶をするから・・・・」と京子の方を見て言う

      「現在の医学ではその腕は元に戻りませんからね・・」

      「本当に無茶をする」

京子「てへっ」と舌をだしてかわいい顔をして見せた

ジブリールは目を細め呆れた顔をしている

ジブリール「拓也、約束して下さい」

拓也「なんだ?」

ジブリール「今から京子をしのぶに会わせます」

       「これは特別です。」

       「あなたがパンドラにしのぶのことを問わないという

        約束をしてくれれば」

       「京子だけしのぶに会わせましょう」

拓也「はぁ?意味わかんねー」

ジブリール「そうですか?」

       「パンドラにしのぶのことを問うても」

       「何の情報も入ってきませんよ」

       「パンドラが胸を痛めるだけです」

       「京子がしのぶに会えば少しは状態がわかるでしょう?」

拓也「なぜ、俺じゃだめなんだ」

ジブリール「第6チャクラが開いてないからです」

       「それでは、真実が見えない」

マリア「・・・・拓也君・・・・そうしましょ・・・」

拓也「しかし・・・その子は・・京子はしのぶのこと知らないだろ?」

   「顔も・・・だから・・・・しのぶなのか分からないだろ?」

マリア「その人・・・・大天使よ」

拓也「へ?」

マリア「羽が生えていて・・ジブリールと言えば

    大天使ジブリールしか思いつかない」

    「こっちではガブリエルと呼ぶ方が一般的かしら・・・?」

拓也「いや・・・どっちも知らんが・・・」

ジブリール「ガブリエルはいやよ!可愛くないから」とすねたような顔をして言う

マリア「あ・・・はいはい」とちょっと呆れている

    「拓也君、しのぶの写真とかないの?」

拓也「え?」と顔を赤らめながら

   「ある・・・」

    「ちょっとだけ・・・」

   「いや、結構いっぱい」

マリア「携帯に入ってる?」

拓也「いあ・・・あ・・・」

   「ある・・」

   「いあ、ちょっとだけな・・・」

    「ま・・まぁ・・・いっぱいある」

マリア「へぇー」

    「眺めてニヤニヤしてるんでしょ?」と意地悪そうに言う

拓也「はぁ?」と顔を赤くする

マリア「それを京子に見せて」

ジブリール「私はこう見えても忙しいんですよ」

       「サッサとして下さいね」

京子は拓也からしのぶの写真を見せてもらっていた

拓也「次のやつ・・・これ」

   「めちゃかわいいだろ?」

京子「・・・・」と呆れている

   「好きなの?」

拓也「ば・・・ばかぁああ」

京子「ふーん」

   「好きなんだ」と意地悪そうに言う

ジブリール「拓也!約束を違えてはいけませんよ」

       「大丈夫ですか?」

拓也「ああ、わかったよ」

ジブリール「拓也・マリアあなた達はあそこに見える

       高台の公園に行きなさい」

      「そこに到着したころ」

      「京子もそこにいるでしょう」

      「京子。行きますよ!」といい京子を胸に抱き天高く羽ばたいていった

拓也「うおっ!飛んだ!」

マリア「京子!パンツ丸見えよ!」

京子「うわああああ」

   「いたたたたた」

   「パンツ丸見え上等よ~~~~!」

拓也は京子のパンツを見てニヤけている

マリア「おほん!」と咳払いし

    「行くわよ!」と拓也を促した

シーン◎契約の聖櫃

 パンドラとジョルジュが瞬間移動の魔法陣で教会のエルサレム支部に到着すると

すでに、いろいろな方面のお偉いさんたちが支部に詰めかけていた

エルサレム支部長「ああ、やっと来た」

            「待ってましたよ」

ジョルジュ「遅くなってすいません」

      「駄々をこねるもので・・・・」

パンドラ「ん?」

     「私のことか?」

ジョルジュ「そうだよ」

パンドラ「・・・・・」

     「ひょっとして・・・・」

     「ひょっとするのか?」

ジョルジュは笑いながら「ひょっとするよ」と言い

     「みなさん君をお待ちかねだ」

パンドラ「はぁ?・・・本気かお前ら」

ジョルジュ「僕の差し金じゃない」

      「もう手遅れだ」といい大勢の難しい顔をした

お偉いさんの前にジョルジュは向かった

ジョルジュは大勢の前で胸を張り大きな声で

ジョルジュ「パンドラ・デロルレさんこちらへ」と呼びかけた

パンドラ「さ・・・・・さん!?」

群衆「パンドラ・デロルレ!?」

   「え?」

   「パンドラって・・・・」

   「千年魔女の?」

   「最近召喚されたっていうのは聞いていたが・・」

   「本当か!!?」

と、ざわめいている

パンドラは今更引き下がれないと思いながらジョルジュをにらみつけつつ

群衆の前に立った

群衆「お前がパンドラ?」

   「証拠はあるのか?」

とざわめく

パンドラ「私が本物かどうかなど、どうでもいい」と言うと

その迫力に場内は静まり返る

パンドラ「私はこの教会の人間ではない」

     「擁護するつもりはない」

群衆たち・教会の者みんながざわめく

パンドラ「じゃあ、何をしに私がここに来たのか」

といい、群衆全員を見回しながら睨みつけ

     「アークは元の場所にあるはずだ、と言うことを伝えにきた」

そう言われると群衆たちは各々に

群衆「確かにあるが、すり替えられたに違いない」

   「アークを目の前にして盗まないはずがないだろう!」

と、ざわめく

パンドラ「本物かどうか科学的に好きなだけ調べればいい」

     「本物だという答えが返ってくるだろう」

さらに群衆はざわめく

パンドラ「教会の者たちは逃げも隠れもしない」

     「もしも、偽物だと言う答えが出たら」

     「再び訪れるがいい」

群衆「そんなことをさせて時間を稼いで」

   「その隙にお前たちは何かを企んでいるんだろう!」

そう言われるとパンドラは一層険しい顔をして

パンドラ「アークのことで騒ぎ立てるのはやめろ!」

     「1990年10月8日の神殿の丘の大虐殺」

     「忘れたとは言わせない」

群衆は黙りこくった

群衆の中から一人の男が「いいぞパンドラー」

「みなもパンドラに従うがいい!」と大きな声で言いながら

パンドラに歩み寄ってくる

パンドラはその男の顔を見てうんざりしたような顔をした

ちょっとにやけた顔をした優男でカッターシャツのボタンを胸まで開けて

いかにもチャラチャラしたような男だ

優男「久しぶりだな、パンドラ」

パンドラ「なぜお前がこんなところにいる?」

優男「はぁ?アークだぞ」

   「来るに決まってるだろ」

   「お前馬鹿なの?」

パンドラ「わざわざ来なくても、お前ならわかるだろう」

優男「はははは、そうかそうか」

パンドラ「相変わらずだな」

     「私をイライラさせるのが得意のようだ」

ジョルジュ「誰だ?」とパンドラに問う

パンドラは群衆のほうに向きなおし

パンドラ「しっかりと調べて偽物と言う結果が出たら

      ここに来い!」

     「それまでは、ここには来るな!いいな!」

と群衆に向かい言い放ち

     「では、私は帰る」

     「こいつが来たから、ここにはいたくない」と言いながら

ジョルジュにすれ違いざまに耳打ちをした

ジョルジュ「な!!!!なに!!?」

パンドラ「ジョルジュ帰るぞ!」

優男「おい待てよ~」

   「お前がいないとつまらない」

   「おれも付いていくぞー」

パンドラ「バカか!おまえのおもりなんかできるか!」

と言いながらジョルジュ・パンドラ・優男は奥の魔法陣のある部屋に引っ込んでいった

エルサレム支部長「と言うわけですから皆さん、

            一旦お引き取り下さい」

            「さぁさぁ!」

            「とにかく私たちは盗んだりしていませんから」

            「パンドラ様の指示に従ってください!」

そう言われると、仕方なく群衆たちは教会から出て行き

騒ぎはとりあえず収まった

ジョルジュ「み・・・・み・・・ミカエル様」

      「お・・・お・・お会いできて光栄です」

パンドラ「ぷっ!・・様って・・・」

     「こんなやつミカエルでいいんだよ!」

優男=ミカエル「ははは・・・そうそうミカエルでいい」

シーン@ しのぶと京子

 京子は見たことのない草原に立っていた

そこは、爽やかな風が吹いていて、とても心地がいい

あたりを見回しながら、ずっとここに居たいと感じていた

ジブリール「こっちです」

      「ついてらっしゃい」

そう促されキョロキョロ周りを見ながらもジブリールの後を歩いて行く

すると丘の上に小柄な女の子の後ろ姿が見えてきた

その子は紺色のワンピースを着ていて腰のあたりに

大きな白いリボンが付いている

そしてバレーボールくらいの石の上に座っていて

うつむいているようだった

京子はその子が座っている石がとても気になっていた

その石は表面が何か熱いもので焼かれたように爛れている

ジブリール「しのぶ、そのまま」

       「こちらを向いては、いけません」

京子は驚きながら「あの子がしのぶ?」

ジブリール「そうです」

そう言うと一歩後ろに下がり何も言わなくなった

京子「・・・・・」

ジブリール「・・・・・」

京子「本当にしのぶさんなの?」

ジブリール「・・・・・・」

京子「ジブリール、なぜ何も言わないの?」

ジブリール「私は会わすと言っただけです」

      「あとは好きになさい」

京子「・・・・・・」少し戸惑いながら考え決心し声を上げた

   「しのぶさん」

と呼びかけると、少し間を開けて

しのぶ「あなたは誰?」と尋ねてきた

京子「京子・・・華潮京子よ」

しのぶ「そう」と興味なさそうな返事が返ってくる

京子「みんなあなたに会いたがってる」

しのぶ「そう」と同じような口調で返事が返ってくる

京子「私、拓也君にあなたの写真を見せてもらったの」

   「あなたの写真を見ながら、とても幸せそうな顔をしていた」

しのぶ「・・・・・」

京子「こっちを向いてくれる?」

しのぶ「ジブが後ろからあなたを連れてきたのには意味がある」

京子「へ?」

しのぶ「そちらを向かないように言われた」

    「だから、そちらを向かない」

京子はジブリールのほうを向き「どういうこと?」と顔をしかめながら尋ねる

ジブリール「京子眼を瞑りなさい」

       「そうすればしのぶをこちらに向かせましょう」

京子「え?それじゃあ意味がないわ」

ジブリール「あなたは今しのぶに興味を持ちすぎている」

       「あなたの第6チャクラは一点集中型」

       「しのぶを見たければ興味を持つのをおやめなさい」

京子「意味が分からないわ!偽物じゃないの!」

ジブリール「まさか」

       「では、いいでしょう」

       「とにかく一旦目を閉じなさい」

       「そしてゆっくり5数え」

       「その時なお目を開きたいと思ったのなら」

       「目を開いても構いません」

       「ただ一つ注意しておくと目は開けないほうがいい」

       「選択は自分でしなさい」

京子「わ・・・わかったは」と意味が分からないという顔をしながらも

指示に従い目を閉じた

ジブリール「しのぶ、こちらを向いてもいいですよ」

そう言われ、しのぶはゆっくり立ち上がり京子の方に体を回した

すると眩いばかりの光が京子を襲う

京子「はぅ!」と顔を覆う

   「なに!!!???」

   「目を瞑っているのに・・・こんなにも眩しい!」

   「何も見えないわ!」

ジブリール「でしょ」

       「だから後ろを向かせていたのですよ」

しのぶ「ジブ、意地悪はそれくらいにしてあげて」

ジブリール「え?」と冷や汗を流して返事する

       「いや、意地悪だなんて・・・」

しのぶ「京子さん、目に強く両手をあてて」

そう言われ京子はしのぶの指示に従い目を両手で覆った

すると、程よい明るさになり、しのぶの顔が確認できた

京子「あ・・・・見える」

しのぶ「そう」とうつむきながら答えた

少し沈黙が続き

しのぶは「あんまり見ないで」と恥ずかしそうに言う

京子「どうしてそんなに光っているの?」

しのぶ「わたしは光ってなんかない…」

ジブリール「しのぶの第六チャクラの光です」

       「しのぶの第六チャクラは巨大です」

       「あなたが一点集中型の第六チャクラで見ているから」

       「そういう風に見えるんです」

       「他の人には光っているようには見えません」

       「しのぶに対する好奇心が少し治まれば」

       「やがて肉眼でも見れるようになるでしょう」

しのぶ「一点集中型?」と不思議そうな顔をしながらジブリールに尋ねる

ジブリール「この子は興味を持った物に対してだけ

       チャクラが開く」

       「しかも一点に集中している分、強力なのです」

しのぶ「ふ~ん」と興味を失ったような顔をし再びうつむいた

またしばらく沈黙が続く

ジブリール「京子、あなたはしのぶに会いたかったのでしょう?」

       「ただ見てみたいだけだったのですか?」

京子「ち…違うわ」

少し考えた後

京子「しのぶさん・・あなたはみんなを心配させている」

   「みんなあなたの名前を聞くと顔が曇るの!」

   「なぜなの!?」

しのぶはうつむいたまま返事をしない

京子「パンは・・・・パンドラさんは」

   「あなたのことを想い泣いていたの」

しのぶ「・・・・・」

しのぶはうつむいたまま返事をしない

京子「なぜ返事をしないの!?」と強めに言う

しのぶ「ごめんなさい」とうつむきながら答え、続けて

    「わたし・・・話すのが下手なの」

    「きっと、あなたを怒らせてしまうわ」

    「私は第5チャクラがいびつに変形した奇形の子」

    「だから・・・うまく人と話せない」

京子「なにいってるの!?」とさらに強く言う

しのぶ「ね…念話に切り替えるわ・・・」

    「あなたは考えるだけでいい・・・・」

    「それで読み取れるから」

京子「はぁ?」

しのぶ『最初に言っておこう』

    『念話の時淡々としてしまうのは』

    『感情の部分を削除しているから』

    『冷たい心だからではない』

    『正確に情報を伝えるのに感情は邪魔にしかならない』

京子は頭の中にしのぶの声が響き驚いている

京子『な・・・なにこれは?』

しのぶ『念話よ』

    『念話は話すのとは違う』

    『第五チャクラの影響はあまり受けないようだ』

    『さっきの質問に答える』

    『とても複雑な事情がある』

    『注意深く聞いてほしい』

    『パンが私のことを想い泣いていたと言ったが』

    『そのことについては、もうどうする事も出来ない』

    『それは私たちが真実の答えを交換し合った仲だからだ』

    『あなたがそのことで私に会い、何をしようとしたのか知らないが』

    『パンは他人の操作を好まない』

    『それは私も同じ』

    『私とパンが今一緒にいないのは』

    『双方の望み』

    『私はパンを巻き込みたくない』

   『パンはパン自身の意志を曲げ私についてくることを

    好まない私についてこない』

   『さらにパンは私を操作することを好まない』

   『わたしもパンを操作することを好まない』

   『これは真実の答えを交換しあったものにだけ分かる心境』

   『あなたには到底理解できない』

   『もちろん、馬鹿にしているわけではない』

   『真実の答えは、ただの我儘にすぎないからだ』

京子『な・・・・なに・・・・何を言っているのか分からないわ!』

しのぶ『ならば、私と話をしても無駄だ』

    『これ以外に説明のしようがない』

    『パンと私が別々のところにいる理由は今話したことだ』

    『パンは私を想い涙し』

    『私はパンを想い涙する』

    『それでいい』

    『お互い操作は好まない』

京子『そ・・・そんな!』

   『では、拓也君は?』

   『拓也君はあなたにとても会いたがっていたわ』

   『たぶん・・・いえ・・・絶対、あなたのことが好きなんだわ』

しのぶ『あなたは、私の話をまだ良くわかっていない』

    『私は操作を好まない』

    『今あなたが私にしていることが操作なのよ』

    『もう一度言うわ』

    『私は操作を好まない』

    『もちろん、その程度のことで動くほど』

    『私の導きだした私自身の真実の答えは軽くない』

京子『拓也君のことは、どうでもいいっていうの??』

しのぶ『そんなことは一言も言っていない』

    『わたしは拓ちゃんのことが好き』

    『お嫁さんにしてもらいたいと、ずっと思っていた』

    『それは今でも変わらない』

    『ただ、私は知ってしまった』

    『隠された事実を』

    『この件についてあなたは興味を持つな』

    『そもそも知る権利がない』

    『この事を知って良いのはマギファスコミオのグリモワールを

     読んだ者だけだ』

    『この件については質問するな』

    『権利がない』

    『もちろん聞いても意味はわからない』

    『そういうふう仕組まれている』

    『だから時間の無駄だ』

京子『本当に意味が分からない!』

しのぶ『しかし、一つだけ分かっているはずだ』

    『第六チャクラを持って私を見ているのだから』

    『私の言っていることに偽りがないということ』

    『それだけはあなたは確信を持っている』

    『意味が分かるかどうかなど、どうでもいいことだ』

京子『あなたは・・・・あなたは頭がおかしいわ』

しのぶ『いいえ』

    『わかっているはず』

    『誤魔化して常識にあてはめようとしてはいけない』

    『わかっているはず』

    『どうにもならないということも』

    『私はその知ってしまった事実からある答えを導き出した』

    『答えと言っても、それは私自身の真実の答え』

    『正しい答えと言う意味ではない』

    『ただ、私にとってはそれ以外の選択肢はない』

    『その答えを元に行動し、すべてが済めばみんなの元に戻りたい』

    『それまでは戻ることはない』

    『みんなを巻き込むことになる』

    『はっきり言おう』

    『命がかかっている』

    『この件にかかわった者の命の保証はない』

 京子『・・・・・・!!!!』

しのぶ『この深刻さは、理由は分からなくとも、あなたには伝わったはず』

    『それがジブがあなたを連れてきた理由』

    『他の者では、感じ取ることはできない』

    『第6チャクラが開いていないからだ』

京子は口を開け呆然としている

    『この子は何?』

    『こんなに弱弱しい姿をし

     自信のなさそうな顔をしているのに』

    『こんなにも激しく厳しい』

    『圧倒的な何かを持っている』

    『この子もパンも私の手の届かないところにいるんだわ』

そう思いながら、少しさびしそうな顔をした

しのぶ『それは違う』

    『誰もが得手不得手を持っているだけだ』

    『私は幸福ではない』

    『パンの千年も幸福だったとはとても思えない』

    『だから、真実の答えのみを激しく求める』

    『それ以外は、そこらじゅうに転がっている石ころと同じだからだ』

    『京子さんあなたは』

京子『京子と呼んでほしいわ』

しのぶ『そう』

    『では、私のことも呼び捨てにしてほしい』

    『ジブリールのことはジブでいい』

京子『ありがとう』

しのぶ『京子あなたはパンのことを思っていてくれる』

    『とても心のやさしい子』

    『しかし、パンはあなたを寄せ付けない』

京子『そ・・・そうね・・・』

しのぶ『それは、京子のことがかわいいからだ』

    『だから心配しなくていい』

京子『違うわ・・・・私は・・・やかましいの・・・』

   『いろいろ聞くから、面倒なんだわ・・・』

しのぶ『違う』

    『パンは出会うことを恐れている』

    『なぜなら、いずれ別れが訪れるからだ』

    『だから極力、人と知り合いたくないのだろう』

    『千年繰り返したその別れの悲しみの深さは

     私たちの想像できるようなものではない』

    『私はパンの記憶をつづった本を読んだ』

    『読み始めてすぐにこれ以上読んではいけないと思った』

    『とてつもない悲しみが見え、恐怖したからだ』

    『とてもじゃないが、耐えられない』

    『だから、パンのことを許してあげてほしい』

京子『許すも何も・・・怒ってなんかない』

しのぶ『そう』

ジブリール『そろそろ時間です』

       『マリア達が高台の公園につく』

       『京子、何かまだあれば言っておきなさい』

京子『・・・・・・・』

しのぶ『京子丁度いい』

    『パンに渡してほしいものがある』

そう言うとしのぶの手にはピラミッドと同じ形をした30cmくらいのものが持たれていた

京子は驚きながら『どこから出したの!?』と思う

しのぶ『そんなことはどうでもいい』

    『3では3にならない』

    『2つにしなければ3にならないから』

    『これをパンに持っていてほしいの』

京子『な?なに???なんて言ったの?』

しのぶ『3では3にならない』

    『2じゃないと3にならない』

    『だからこれを預ける』

    『とても大事なもの』

    『あなたならちゃんとパンに届けてくれる』

    『ジブはあてにならない』

ジブリール「なんですって!?」

しのぶ『あなたはあてにならない』とジブリールのほうを向き言い小さくほほ笑んだ

    『ジブはパンドラの友達』

    『私の仲間ではない』

    『ジブはパンドラの心を癒すために私についている』

    『私のために私のところにいるのではない』

    『だから、あてにはならない』

ジブリールは少しすねたような顔をしている

しのぶ『さあ、京子手を怪我しているのに申し訳ないけれど』

と言いながら京子のほうに歩み寄る

京子は眩しさが和らいでいることに気づき目を閉じたまま手を下し

京子『それを渡してあげたいんだけど』

   『持てないわ』と答えた

しのぶはジブリールのほうを見ながら

しのぶ『腕が折れてるときは3角巾で肩からつって固定するものよ』

ジブリール『大丈夫です、ちゃんと治ります』

しのぶ『駄目よ』

そういい、京子のほうに近づき京子の折れた方の手で

ピラミッドを抱えるように腕を曲げ

白い三角巾で肩からつりさげた

京子は驚きながら「どこからだしたの!?」と尋ねる

しのぶは少し呆れた顔をしながら

    「どこから出したかなんて、どうでもいいことよ」と優しく言う

京子「だ・・だって・・・」とすねたように言う

京子「それにしても・・・見た目と違って軽いのね」

   「中に何が入っているの?」

しのぶは少し驚きながら「なぜ?」

京子「あ・・・ごめんなさい」

   「私には…関係ないよね・・・」

しのぶ「そうじゃないの」

    「なぜ中に何かが入っていると思ったの?」

京子「え?」

   「だって・・・」と言うが特に理由は見つからない

ジブリール「さぁ、行きますよ京子」

       「私は約束を違えない」

しのぶは今までとは違う真剣な顔をして京子のことを見ている

京子はそのことに気づいて戸惑いながらも

京子「しのぶ、また会える?」と尋ねた

しのぶ「一回会ったのなら2回会ったほうがいい」

    「もちろん本当は0が一番いい」

    「0なら何も起こらない」

    「特別な数」

    「1は陽」

    「だから二回会ってあなたとの関係を陰にしなければならない」

京子「へ?」

しのぶ「あなたとの関係は陰にしておきたい」

京子は意味が分からなかったがもう一度会えることを喜び

京子「じゃあ、またね」と笑顔であいさつをした

しのぶは「ええ」とだけ返事をし最初に座っていた石、

すなわちマギファスコミオのグリモワールの上に腰かけた

ジブリールと京子が公園につくとマリア達もすぐにやってきた

マリア「京子ー」と呼びながら駆け寄ってくる

京子「いたたたた・・・」

   「あれ??」

   「さっきまで、痛くなかったのに・・・」と顔をしかめる

ジブリール「あそこは特別な場所ですからね」と京子に言う

拓也「京子大丈夫か?」

京子「う・・・うん」

拓也「しのぶには会えたのか?」と京子に尋ねる

ジブリール「当たり前です」

       「私は約束を違えません」

       「あなたも約束を守りなさいよ」と優しく言う

拓也「お前に聞いていない!」と突き放すように言う

ジブリールは、すねたような顔をして「あら、そうですか」と答えた

京子「しのぶには会えたよ」とうつむきながら答える

拓也「どうだった?」

   「なんて言ってた?」と興味津々で質問する

京子は何と答えていいのか分からなかった

京子「・・・・・・」

マリア「どうしたの?」

京子「え?」

   「まぁ・・・あの・・・」

   「なんて言えばいいのか分からない・・・・」

拓也「ん?」と顔をしかめながら

   「元気だったか?」と尋ねる

京子「う・・・うん」と歯切れの悪い返事をする

しばらく沈黙が続く

京子「あ・・いたたたた」と顔をしかめている

マリア「大丈夫?京子」と京子を心配し

    「拓也君悪いけど帰るわね」

    「京子も、こんなだし」

    「それに早く帰って来いって

     ジョルジュに言われているの」

拓也「あ・・・ああ」とがっかりした顔をしながらだが京子を心配し

承諾することにした

拓也「駅まで・・・送るよ・・・」

マリア「あれ?」

    「ジブリール」

拓也「あ・・・いなくなった・・」

いつの間にかジブリールは姿を消していた

マリア「まぁいいか!」

    「さあ、京子行こう」と京子の肩を抱き歩き始める

駅に向かう道中、京子はひどく腕を痛がっていた

しかし、京子はしのぶのことを何も聞けずに

拓也がガッカリしていることに気が付いていた。

それでも自分を気遣い質問をしない拓也に申し訳ないと思い

駅に到着すると京子は重い口を開いた

京子「拓也君、ありがとう」

拓也「え?ああ」

京子「マリア、電話番号を交換してあげて」

   「私・・今手が痛くて・・・」

マリア「ええ」

    「拓也君、また何かあったらちゃんと連絡するね」

拓也「ああ、頼む」と言い携帯を取り出し

マリアとアドレスの交換をした

京子「私も落ち着いたらマリアに電話番号聞いてかけてもいい?」

拓也「ああ、頼むよ」

京子「ありがとう」

拓也「気をつけて帰れよ」とさびしそうな顔をして言う

京子はその表情にたまらず

京子「ごめんね!」と強く言う

拓也「え?」

   「いや、別に・・謝らなくても・・」

京子「一つだけ言うわ」

拓也「ん?」

京子「しのぶに怒られるかもしれないけど」

拓也「あ?なんだ?」

京子「こんなことは本当は本人以外は言っては駄目なことなの」

拓也「?」

京子「でも・・・・伝えたい」

拓也「?」

京子「これは本当にしのぶが言った言葉」

   「あなたのお嫁さんになりたいって」

拓也「へ?」と驚いている

京子「しのぶは拓也君のお嫁さんになりたいって!」と強く言う

拓也は真っ赤な顔をして恥ずかしそうに、でもうれしそうに

   「ば・・ばか・・」と動揺している

京子「本当に言ったのよ」

   「こんなウソつくわけないでしょ」

   「しかもこれは、私が拓也君に言ってはいけなかったの」

   「だって・・そうでしょ」

   「こんなこと本人が言うべきことだわ…」とうつむいた

   「でも・・・他に伝えられることが思いつかなくて・・・」

   「しのぶの言うことはとても難しくて私には意味がわからなかったの」

拓也「そうか」

   「ありがとう」

   「うれしいよ」と優しく微笑み二人と別れた

シーン★ マナの壺

 教会の奥の一番広い部屋の中は、大きなテーブルに

いくつもの椅子が並べられていて大勢で会議ができるような作りになっている

パンドラはその椅子の一つに腰かけテーブルに肘をつき手を顎に押し当て

ふてくされたような顔をしていた

ジョルジュ「どうぞミカエル様、安物ですが」と言い

パンドラの正面に座っているミカエルにコーヒーを出した

ミカエル「ああ、お構いなくジョルジュ君」

     「急に押しかけて悪いね」と椅子に大きくもたれかかり

足を組んで如何にもリラックスした感じで言う

ジョルジュ「ジョルジュ君だなんて!」

       「名前を覚えてもらって光栄です!」

ミカエル「ははははは」

     「そう硬くならないで」

     「君は真面目なんだね」

パンドラ「それを飲んで、さっさと出て行け」とミカエルに言う

ミカエル「ははははは」

     「パンドラ、暇そうなのに何言ってる」と笑う

パンドラ「うるさい」とそっぽを向き、続けてジョルジュに

     「私は紅茶だ、ミルクは限界ぎりぎりで頼む」

ジョルジュは冷たい顔で「自分で入れなさい」

               「限界ぎりぎりが私にはわからない」

パンドラ「はぁ?」

     「何度も言ってるだろ」

     「紅茶香りがぎりぎり残る限界のところだ!」

ジョルジュ「好きなように作ればいい」

      「お湯が沸いているだけ、ありがたく思え」

パンドラは、ますますふてくされ「くっそ~」と言う

ミカエル「どんなに美しく振舞っていても」

     「育ちの悪さが隠せないなパンドラ」

     「ははははは」

パンドラ「育ちが悪いだと!」と怒っている

そこにマリアと京子が帰ってきた

マリア「遅くなってごめん!」とジョルジュに向かって謝る

ジョルジュは怖い顔をしながら「どこに行っていた」

マリア「・・・・・・」

ジョルジュ「京子・・・その腕はどうした?」

京子は顔を真っ赤にして汗だくになっていた

返事する気力もないほど衰弱していた

マリア「京子、とにかくここに掛けなさい」と椅子を引き促す

京子は息絶え絶えだが「ありがとう・・・でも・・待って」と言う

マリア「ジョルジュ、京子の痛みを魔法で取ってあげて」と言う

ジョルジュ「いったい何があった?」

      「先にそれを言え!」

      「どこで何をしていた!」と強く言う

マリア「私が・・・いけないの」

    「昔に懲らしめたやつらに襲撃されたのよ」

ジョルジュ「なんだって?」と驚いている

マリア「京子は私を助けようとして腕を怪我したの」

ジョルジュとパンドラは険しい顔をしてマリアを見ている

京子はどんどん容態が悪くなっているようで息が荒くなってきている

ジョルジュ「なぜすぐに逃げなかった」

      「京子は足がとても速い」

      「君はコールドジェイルで守られている」

      「すぐに逃げれば何とかなったはずだ!」と叱るように言う

マリア「コールドジェイルに守られてるなんて」

    「わたし知らなかったもの!」と反論する

ジョルジュ「コールドジェイルはマナを通さない」

      「すなわち魔法は通らない!」

      「結界魔法の亜種だ」

      「そんなことにも気が付いていなかったのか?」と強く言う

マリア「!!!」

    「でも、しのぶは!」

    「あの子は」

    「私のことが嫌いなはず」

    「私なんか・・・やられてしまえばいいと・・」

    「思っている・・・はず」

ジョルジュ「・・・・」

ジョルジュは諭すように「しのぶさんは、そんな子じゃない」

      「君がしのぶさんを踏みつけていた時」

      「しのぶさんはユニバースを展開すればすべて防げたはずだ」

      「それでも甘んじで、君の怒りを受け止めたのだ」

      「それで君の怒りが治まればいいと」

マリア「・・・・」

    「そんな・・・・」

ジョルジュ「しかしそのままではパンドラが君を許さない」

      「だから考え抜き、コールドジェイルを作ったのだ」

      「コールドジェイルにより魔力が失われた

       君に危険が及ばないようにも考えられている」

      「あの子の性格を考えれば当たり前だ」

京子「ジョルジュ、マリアを叱らないで」

   「私が悪いの」

   「私が連れ出したから」

   「マリアは行きたがってなかったの…」

ジョルジュ「?」

      「どこに行っていた?」

京子は息絶え絶えに声を振り絞り話し続ける

京子「ごめんねマリア」

   「約束を守れない」

マリア「駄目よ!」

京子「私は預かりものをしてしまった」

マリア「?」

京子「それをパンに渡さなければならない」

パンドラは京子の方を向き不思議そうな顔をしている

京子はパンドラのほうにフラフラしながら歩み寄る

パンドラ「京子、そんなに息をするな」

     「吸いすぎだ。もっとゆっくり呼吸をしろ」

京子「だって・・・息苦しいから・・・」

パンドラは京子のことをじっと見つめ考えている

京子「これを・・・三角巾の中からとって・・・」

パンドラ「ん?」と三角巾の中をのぞき込み

中のピラミッドの形をしたものを取り出した

パンドラは、それを見てすぐに誰から預かったものかわかった

パンドラは険しい顔に変わり

パンドラ「なぜしのぶのところに行った!?」ときつい口調で言う

京子はうつむき「ごめんなさい」と答える

マリア「京子はしのぶがどこにいるかなんて知っているはずがないでしょ」

    「私が連れて行ったの!」

    「私が、コールドジェイルを解いてもらいたくて」

   「京子を突き合わせたのよ!」と京子を弁護した

パンドラは立ち上がり

パンドラ「お前らは、薄汚いヤジ馬と同じだ!」

そういい歯を食いしばり、そのピラミッドを強く抱きしめ部屋から出て行った

京子にはパンドラの眼に涙が浮かんでいるのがわかった

マリア「ひどい!」マリアは目に涙を浮かべながら

    「京子がこんな状態なのに!」

    「あんなひどいこと言うなんて!」

    「薄汚いヤジ馬ですって!!!」

    「なによそれ!」

    「あんなピラミッドそこらに捨てて隠し通すこともできたのよ!」

    「怪我した腕で大事に持って帰ってきたのに!」

 

    「パンドラーーーーー!」

    「京子に謝れーーーー!」と激怒している

京子「マリア・・・いいの・・・」

   「怒らないで・・・・・」

   「その通りだわ」

   「私はしのぶに会った時」

   「言葉が出なかったの…」

   「ただ、どんな子か見てみたかっただけなんだと・・」

   「その時私にも分かったの」

   「私はヤジ馬と同じだわ・・・・」とうつろな顔をして言う

マリア「いいえ!違うわ!」

    「そうなら、写真を見た時に満足しているはず!」

ジョルジュ「しのぶさんに会ったのか?」

マリア「ええ、京子だけね」

ジョルジュ「どうやって会った」

      「しのぶさんの肉体はパンが持っているはず」

マリア「え?」

ジョルジュ「しのぶさんの肉体は今パンの墓と

       同じところに大切に保管されている」

      「しのぶさんは・・・・」

      「肉体に興味を失い」

    「自分で2階の窓から放り投げたんだ」

マリア「え??」

    「自殺したの?」

ジョルジュ「そうだ」

      「しかし、地面にたたきつけられる前に

       パンドラが拾い上げ隠したのだ」

      「しのぶさんはバースの秘密を知り

       肉体に嫌悪感を覚え」

      「破壊することを望んでいる」

      「隠さなければ何度でも破壊しようとするだろう」

      「そうパンが言っていた」

マリアは驚きながら京子のほうを見た

京子はそんなに驚いている様子はなかった

マリア「京子・・・しのぶから聞いていたの?」

京子「いいえ・・・・」

マリアは「そう」と答え、驚いていないのは体調が悪くて

それどころではないのだろうと思った

ミカエル「7月13日の金曜日」

     「そうルクツアーノが死んだあの日」

     「世界中に響く大きなマナの地震が起きた」

     「それは産声だ」

     「京子、お前は意味は分からないだろうが感じ取ったはずだ」

マリア「誰?この人?」

    「なぜ京子のことを知っているの?」

ジョルジュ「大天使ミカエル様だ」

マリア「へ?」

ミカエル「この教会をはじめ、すべての魔導師の間で大騒ぎになった」

     「さあ、京子言え」

     「お前のように無知な子からその名が出ることが真実味を生む」

     「ジョルジュ君やパンドラからの声では抽象的な印象しか受けない」

     「さあ、しのぶの本当の名前を言え」

マリア「え?」

ジョルジュ「ミカエル様・・それは・・・」

ミカエル「京子、心配するな」

     「私もジョルジュもその名を知っている」

     「知らないのはマリアだけだ」

     「マリアだけ除者にするのはかわいそうだろ?」

     「それに君の口からその名を聞きたい」

     「真実味を生むために」

     「一点集中型の特殊で強力なアージュニャーの持主」

     「お前はダイレクトに真実を見抜く」

     「理解など必要ない」

     「わかってしまうのだろ?」

京子「・・・・・」と何も言わずうつむいている

マリア「?なに?教えて」

    「京子」

京子「しのぶは・・・・・」

   「しのぶの名前は・・・」

   「サタン」と小さな声で言った

マリア「!」

    「はぁ?」

ミカエル「そう!」

     「その通りだ」

     「だから俺がここにいる」

     「俺はサタンを滅ぼす者」

     「それが俺の使命」

マリア「な・・・何言ってるの?京子」

ミカエル「無理もないマリア」

     「お前は天使やサタンを宗教的な文献で見ている」

     「あれは奇麗にかかれている」

     「さあ、俺を見ろ、天使とはこの程度のものだ」

     「お前たちの思っているような美しい存在ではない」

     「ははははは!」と笑う

     「サタンもそうだ」

    「おどろおどろしい化け物のような者ではない」

    「神と敵対した時点で俺たちはそいつをサタンと呼ぶ」

    「どんなにやさしい心を持っていても、そんなことは関係ない」

    「さらに教えよう、ここで言う神とはマギのことだ」

    「マギファスコミオがこの世を作った」

    「本当に存在する」

    「宗教的な存在ではない」

    「しのぶはマギファスコミオのグリモワールを読み」

    「自分たちはそこらの水たまりに住む微生物と同じだ!と嘆き」

    「マギファスコミオを罵り」

    「わめき散らし」

    「自分の肉体を放棄した」

    「その罵り声は、産声だ!」

    「サタン誕生の産声だったのだ!」

マリア「な・・なんですって???」

    「ジョルジュ!本当なの!?」

ジョルジュ「ああ・・・そうらしい・・・・」

      「私も信じられない・・・」

ミカエル「だからだ」

     「だから京子から、その名を聞きたかったのだ」

     「わかるか?」

ジョルジュ「・・・・」

      「しのぶさんは・・・やさしい子なんです」

      「何とか救ってやってもらえませんか?」と下を向きながら

ミカエルに頼んだ

ミカエル「先ほども言った」

     「どんなにやさしい心を持っていても」

     「それは関係がない」

 

     「ただ、俺とジブリールはパンドラとは古いんでね」

     「少し時間を与えてやっている」

     「これはサタンを救うための時間ではなく」

     「パンドラの気持ちを整理させる時間だと俺は考えている」

   

     「まぁ、時間をどう使おうが俺は構わんがね」

     「そう長くは待ってやれない」

     「アークのこともあるからな」

     「ジョルジュ君、そうパンドラに伝えておいてくれ」

     「もっとからかってやりたかったんだが

      引っ込んでしまったからな」

     「今、からかったら本気で怒られそうだ」

そう言い終わると姿を消してしまった

ジョルジュ「ミカエル様!」と呼びかけるが返事はなかった

マリアは京子の容体を心配して「早く痛みを取ってあげてと言う

ジョルジュは承諾し痛みを消す魔法を京子に掛けてあげた

しかし、京子の容体は良くならない

ジョルジュ「おかしい・・・京子痛みが取れないのかい?」

京子「違うの・・・腕はいたくない・・・」

   「ただ・・・息が苦しい・・・」

   「でも・・・・大丈夫・・・・」

マリア「腕が折れたことで熱が出てるんじゃない?」

ジョルジュ「いや、それもあの魔法で収まるはずだ」

      「何か様子がおかしい・・・・」

京子「パンに・・・パンに伝えられなかったから・・」

   「ジョルジュ・・・伝えてくれる?」

ジョルジュ「ああ・・なんだ?」

      「まぁ、とりあえずそこに横になりなさい」

京子「さっきの預かり物を預かる前」

   「しのぶが言っていたこと」

   「3つでは3にならないから」

   「2つでないと3にならないから」

ジョルジュ「何を言っている、しっかりするんだ!」と京子を励ますように言う

      「今パンを呼ぶからしっかりするんだぞ!」

そう言いジョルジュは立ち上がり「パーン」とパンドラを呼び

ジョルジュ「京子の様子がおかしい!」と続けた

パンドラからは返事がない

ジョルジュ「パン!怒る気持ちわ分かるが」

      「本当に容体がおかしい」

      「私の魔法では効き目がない・・・」

      「なんというか・・・とにかくおかしい」

      「熱もひどい」

      「この状態が長時間続けば頭に障害が残ってしまう!」

      「この魔法で治せないなら病院でも無理だ」

      「頼むパン!」

マリア「さっきは、ごめんなさい!」

    「パンドラ、京子を助けてあげて!」

そう言われようやくパンドラがこちらの部屋に戻ってきた

パンドラは京子が横になった椅子の横に座り京子の頭をなでてあげた

京子「ぱん・・・大丈夫・・」

   「ジブが言っていた・・・病院にいかなくてもちゃんと治るって」

   「そしてこの痛みとかは、いい薬になるって」

   「私の性格を治すのに・・・ね・・・」

マリア「そうなの!?あいつが京子に

    こんな熱が出るように仕掛けたの??」

パンドラ「いや・・・どうやら違う」

京子「パン・・・しのぶがあの壺を渡すときに言っていたことを

    伝えるね・・・」

パンドラ「壺?」

京子「?」

   「壺よ」

パンドラ「あの中には壺が入っているのか?」

京子「ええ」

パンドラ「しのぶがそう言ったのか?」

京子「え?」

パンドラ「?」

京子「パン・・中を見てないの?」

パンドラ「とても貴重なものが入っているから

      開けずにそのまま大事に持っていてくれと

      しのぶ独特の記述法で書かれ」

     「強い封印がなされていた」

     「京子、中を見たんだな」

京子「ごめんなさい」と申し訳なさそうな顔をして謝る

   「私が中に何が入っているの?と尋ねたら」

   「しのぶがとても驚いていたの」

   「なぜ中に何かが入っていると思ったのか?と問われたわ」

パンドラ「そうだ」

     「中に何かが入っていると思わせないように

     ピラミッドの形にし表面に強力な封印をしてある」

    「私にだけに読めるしのぶ独特の記述法でわざわざ中に

     貴重なものが入っていると気付かせる記述をしたほどに

     中に興味を持たせないように作られている」

京子「しのぶがとても驚いていたから」  

   「すごく気になって・・・・」

   「電車の中で何が入っているんだろうって考えていたら」

   「金色の壺が見えたの」

パンドラ「金色の壺・・・・」

京子「それでね・・・金色の壺には蓋がしてあって

   厳重に封がしてあったの」

   「だから・・・中に大切なものが入っているんだって

    思ったの」

パンドラ「・・・・・」

京子「そしたらね、中には何も入ってなかったの」

パンドラ「そうか」

京子の息がどんどん荒くなっていく

パンドラ「京子、そんなに早く呼吸をしてはいけない」

     「ゆっくりと大きく」

京子「おかしいでしょ?」

パンドラ「ゆっくりと呼吸をしろ」

京子「こんなきれいな壺の中に何も入っていないのに」

   「あんな厳重な封をするなんて」

パンドラ「蓋付きの壺だっただけだろう」

     「特におかしくない」

京子「ちがうわ」

   「絶対におかしい」

   「空っぽなのにあんな封はしない」

パンドラ「そうか・・・では、中には液体か何かが入っていて」

     「蒸発してしまったのだろう」

京子「違うの」

   「わたし、空っぽなのはおかしいと思って」

   「もっともっとよく見てみたの」

パンドラ「!?」

     「待て!金色の壺と言ったか?」

京子「ええ、とてもきれいな壺」

パンドラ「そうか・・・なら、お前には中身は見えなくて当然だ」

京子「ううん」

   「もっともっとよく見たら、やっと見えたの」

パンドラ「なに!」

     「ジョルジュ何か出来合いのものでいい」

     「結界魔法のペンタクルを持ってきてくれ」

     「できるだけ大きい方がいい」

ジョルジュ「はぁ?」

パンドラ「完全なイレギュラーだ」

     「私もしのぶも京子の第6チャクラを見誤った」

ジョルジュ「どうした???」

パンドラ「早く持ってこい死んでしまうぞ!」

     「京子!お前、体が焼けるほどに熱いはずだ!」

     「なぜ言わなかった!」

京子「だって・・・ジブがいい薬になるって」

パンドラ「これは違う!」

     「完全にイレギュラーだ」

     「ブラックエーテルに焼き殺されてしまう!」

     「ジョルジュ急げ!」

ジョルジュが結界魔法の魔法陣が書かれた大きな布を持ってくると

パンドラはその布で京子の全身をくるんであげた

パンドラ「・・・ふぅ・・・」

     「これでひとまず安心だ…」

ジョルジュ「どういうことだ」

パンドラ「完全なイレギュラーだ」

     「京子には物理的障害物も魔法的障害物も何を効果をなさない」

     「どんなに強力でも、どんなに複雑でも意味がない」

     「貫通する」

マリア「そう、京子は敵の結界魔法をその拳で貫いたのよ」

ジョルジュ「なに!?」

      「物理で魔法を破れるものか!?」

     「バカなことを言うな!」

     「全く作りが違うんだぞ!」

マリア「本当だもん!」

    「この目で見たんだから」

パンドラ「ああ・・・・こいつには物理も魔法も関係ない」

     「貫通する」

     「だから京子は壺の中を見ることができた」

ジョルジュ「その壺は何だ?」

パンドラ「おそらくマナの壺だ」

     「アークの中身はアロンの杖・十戒・マナの壺」

ジョルジュ「・・・・・」

       「3つだから3にならない」

       「2つにしないと3にならないから」

       「そういったか?京子」

京子「ええ・・・しのぶはそう言っていたわ」

   「だからそれを預けると」

ジョルジュ「どういう意味だ?」

パンドラ「そのままの意味だろ」

ジョルジュ「ん?」

パンドラ「何か他の物を足すから邪魔なんだろう」

ジョルジュ「他のもの?」

パンドラ「ああ、それが何か私にも分からない」

マリア「ところで京子はどうなっちゃったの?」

    「ブラックエーテルって」

パンドラ「ああ、京子はマナが見えるようになったんだ」

マリア・ジョルジュ「え???!!」

           「そ・・・そんなことありえるの?」

パンドラ「だから完全なイレギュラーだといった」

     「壺の中身に物凄く興味を持った」

     「京子の一点集中型のチャクラがマナを見つけたんだ」

     「通常ではありえない」

     「それが引き金になり、すべてのマナが見えるようになったんだろう」

マリア「京子は光の玉が見えるって一言も言ってないけど?」

京子「・・・あのね・・・」

   「私、しのぶの光にやられて今目があまり見えないの」

マリア「はぁ?」

京子「しのぶの第六チャクラは巨大で眩しく輝いていた」

   「だから私はずっと目を閉じさせられていたの」

   「それでも、目が今もおかしい…」

   「しのぶのことは実は肉眼で見てないの・・・」

マリア「そうなの?」

京子「うん」

ジョルジュ「ふむ、だいぶ落ち着いたみたいだね」

京子「ええ、全然平気」

パンドラ「その布からは出るなよ」

     「生まれつきの者でもブラックエーテルはきつい」

     「しのぶは自力で結界魔法を書き上げるまでの16年間

      ブラックエーテルに悩まされ続けていたようだ」

京子「そうなの?」

パンドラ「ここは都会だ、特にひどい」

マリア「あー、そうねー」

ジョルジュ「うむ」

      「結界なしでよくここまでたどり着けたな」

パンドラ「ああ、マリアのコールドジェイルが

      ブラックエーテルを凍らせていたんだろう」

京子「そんなに気にしなくていいよ」

   「発音を聞けばいいの?」

マリア「ん?」

京子「え?そうなの・・・?」

   「英語でしょ?」

   「英語だけど英語じゃないとか・・・そういう言い方が

    わかりにくくしてるんだと思う」

   「私がバカだからじゃない」

   「話し方が下手すぎるのよ」

ジョルジュ「はぁ?」

   

京子「ユニバース」

   「ユニヴァース?」

   「うっ!」

    「違いがわかんないんだけど・・」

ジョルジュ「ん?」

       「何を言っている?」

パンドラ「しのぶか!?」

ジョルジュが京子のほうをよく見るとジョルジュが持ってきた

布と少し色が違うことに気づく

ジョルジュ「ん!?」

      「布が変わっているぞ」

京子「ユニバース」

   「ユニヴァースゥ」

   「ユニヴァアス」

   「むきーーーーーーー!」

   「いてててて」

と布の中で何やらもがいている

パンドラ「京子、しのぶにユニバースをもらったのか?」

京子「うんー、お詫びにお古だけどくれるって」

   「んでね、私の手に負えないから発音はパンに教わってって」

   

パンドラ「はぁ?」

京子「英語だけど英語じゃない」

   「音だけあてこんであるって」

パンドラは布の記述を眺めている

パンドラ「うわ・・・」とうんざりした顔をする

     「本気か…めちゃくちゃ複雑じゃないか・・・」

     「これを私に全部読めと・・?」

京子「ん?そんなこと言ってないよ」

パンドラ「読まないとどういう風に音があてこまれているか

      わからないんだよ!」とちょっと怒った風に言った

京子「英語の正確な発音を教えてくれたらいいんじゃないの?」

パンドラ「違う」

     「複雑な呪文のショートカット見たいものだ」

     「英語ではない」

     「マギファスコミオの言葉だ」

     「マギファスコミオの言葉の音を英語にあてこんであるんだ」

     「だから発音が微妙に違う」

     「教会の者たちや一般の魔道師が使う魔法は

      人の言葉で書かれている」

     「だから発動が遅く威力も落ちる」

 

     「しのぶや私が使っているのはそれとは違う」

     「マギファスコミオの言葉で記述してるからとても高速で強力だ」

そう喋りながらパンドラは布の記述をずっと読んでいる

パンドラ「く・・・・・そっちに戻るのか・・・」

     「ややこしいな・・・」

     「京子ちょっとうつ伏せになれ」

京子「えー、手が痛いのー」

パンドラ「そうじゃないと読めない」

     「あ!」

     「とぎれた・・・」

     「え?」

     「なんだこれは!」そう言いながらイライラしているようだ

      「だめだ!」

     「これは広げてちゃんと見ないと読めない」

京子「そうなの?」

パンドラ「普通のユニバースじゃない」

     「かなり書き換えられている」

     「ジョルジュが一回破ったからだろう」とジョルジュをにらみつける

ジョルジュ「僕を睨むな」と苦笑いする

パンドラ「京子服を脱げ」

京子「えええ???」

パンドラ「布の中で脱げば問題ない」

     「体に焼き付けるんだ」

     「一晩その布の中で寝ればいい」

     「ちょっと痛むが大したことはない」

     「発音はまた今度教えてやる」

     「強く発動するときだけ使うものだ」

     「普段は関係ない」

     「家に電話をして友達の家にでも泊まると

      伝えろ」

京子「えええ???」

   「突然そんなこと言ったら怒られちゃう」

パンドラ「なら、裸でその布だけまとって歩いて帰るがいい」

京子「むりー」

マリア「私が電話変わってあげるから

     家に電話しなさい」

京子「う~ん」と渋々了承して電話することにした

電話がつながり三言ほどかわしマリアに電話を代わった

マリアはいつもの明るいちょっと強引な感じで

京子の母親を納得させたようだった

マリアが電話をしている間

パンドラは布の上から京子の頭をずっとなでてあげていた

パンドラ「さあ、脱げ」

     「裸でないと焼き付けられない」

京子「う・・うん」と言いながら布の中でもぞもぞ服を脱ぎだした

   「下着も?」

パンドラ「当たり前だ」

     「腕の包帯も取れ」

京子「ええええ」

   「大丈夫なの?」

パンドラ「そうでなければ焼き付けられない」

     「自分で固定して暴れなければ大丈夫だ」

     「ジブが治療したんだろ?」

京子「ええ・・・」

パンドラ「なら大丈夫だ」

京子は下着を脱ぎながら

   「ジョルジュ想像してるでしょ!エッチ!」と言う

ジョルジュ「はぁ???」

      「何言ってるんだバカか!」と呆れて言う

パンドラは元気を取り戻している京子を見て安心し

京子の頭をなでながら

パンドラ「しのぶは、元気だったか?」と尋ねた

京子「・・・・」

   「どうかな・・・・よく分からない」

パンドラ「そうか・・・」

京子「さっき声だけだったから会ったことにならないよね?」

パンドラ「ん?」

京子「もう一度会う約束をしているの」

   「1回会うよりも2回会う方がいいって」

   「今のは入らないよね?」

ジョルジュ「それは君とは仲良くならないという意味だ」

京子「え?」

ジョルジュ「2回会ったらもう二度と会わない方がいい」

      「危険だ」

京子「どういうこと?」

パンドラ「お前と仲良くなりたくないという意味ではない」

     「ならないほうがいいという意味だ」

     「京子のことを嫌いだと言っているのではない」

     「そこは間違えるな」

京子「どういう意味か分からないわ」

ジョルジュ「しのぶさんは君を巻き込まないために

       君との関係を陰で終わらせようとしている」

      「君のことを思って2と言う陰数で終わらせようとしている」

      「しのぶさんの指示に従った方がいい」

      「彼女は頭がいい」

京子「・・・・・」

   「パンも・・・そう思うの?」

パンドラ「好きにしろ」

     「どの道お前の貫通力は私たちでは止められない」

     「ただ、しのぶの近くにいると危険なのは確かだ」

     「それはしのぶがお前に襲い掛かるという意味ではない」

     「しのぶは敵が多い」

     「だから近くにいると巻き込まれる」

京子は「そう」と小さな声で答え、余ほど疲れたのか眠ってしまったようだった

パンドラに頭をなでてもらいとても幸せな気持ちで眠りについていた。

     

シーン☆ 絶対結界ユニバース       

 京子は全身を絶対結界ユニバースの魔法陣が

描かれた布で覆い教会の中で眠っている

その隣に椅子を並べてマリアが寄り添うように眠っていた

マリアはコールド・ジェイルのことを考えていた

ジョルジュに言われたしのぶのことを思い出しうなされているようだった

一方、京子は夢を見ていた

自分の体がバラバラになりその破片一つ一つが星になっていく

そして暗闇の中で輝きを放ち

自分自身が宇宙であることを感じていた

バラバラになってしまった自分の一番大きな欠片が太陽で

2番目に大きな欠片が月だった

バラバラになった自分が太陽を中心にしてまた元に戻っていく

マクロコスモスの中にミクロコスモスが形成されていくのが分かる

時折体にピリピリと痛みが走る

ジブリール「京子!」と言いながらジブリールが近寄ってくる

ジブリールが京子に向かって手を伸ばすと

ユニバースと干渉しジブリールの手に火花が飛び散る

ジブリール「くっ!」

京子「ジブ大丈夫?」

ジブリール「あなたの心配には及びません!」と少し怖い顔をしている

       「京子!あなたには呆れています!」

       「マリアとの約束を破った!」

京子「仕方がなかったの…」

   「しのぶに頼まれごとをされたから」

ジブリール「しのぶのせいだというのですか!?」

       「あなたは本当に薄汚い!」

       「パンドラの言うとおり」

       「あなたは薄汚いヤジ馬と同じです!」

京子「そ・・・そんな・・・しのぶのせいだなんて思ってないわ」

ジブリール「本当はどうすべきだったか」

      「今すぐ考え答えなさい!」

京子「え?」

ジブリール「あなたは約束を破った」

       「あなたは嘘つきです」

       「私があれほど約束を違えないことを

        あなたの目の前で体現して見せていたのに」

       「せっかく拓也が約束を守っているのに」

       「すべてが台無しです」

京子「そ・・・そんな・・・」

ジブリール「私が拓也とどんな約束をし」

       「それが何のためだったのか」

       「思い出し今すぐ答えなさい!」

京子「パンに・・しのぶのことを問うてはいけないと・・・」

ジブリール「それは何のために!」

京子「パンの胸を痛めないために」

ジブリール「そうです!」

       「なのにあなたがしのぶのことを思い出させてしまい」

       「パンドラは胸を痛めています!」

京子「そ・・・そんなこと・・ないわ・・」

   「パンはしのぶが元気だったか?って聞いていたもの」

ジブリール「大バカ者!」

       「あなたはどうしようもないバカ」

      「それはあなたを叱ったことを

       水に流してやろうというパンドラの優しさ」

      「そんなことも分からないんですか!」

京子「だって!」

ジブリール「私は本当に怒っているんです」

       「あなたの第六チャクラはゴミのような力しか持っていない」

       「自分の知りたいことしか、わからない」

       「さぁ、考えなさいどうすべきだったか」

京子「そんなに怒らないで」

ジブリール「答え次第では許しましょう」

京子は一生懸命考えた

京子「・・・・しのぶの頼みを・・・」

   「断るべきだった・・・」

ジブリール「そうです」

京子「でも私はしのぶの頼みをきいてあげたかったの!」

ジブリール「答えは正解でしたが、残念です」

       「あなたはすぐにいいわけをする」

       「なんてみっともない」

       「あなたの存在は私にとってゴミです」

       「消えなさい」

       「アージュニャーが開いた者に何人もあってきましたが

        あなたは最低です。」

       「こんなゴミのようなアージュニャーは初めてだ」

       「しのぶはあなたにその布を与え」

       「2度会った」

       「これで終わりです」

       「陰でなければならない」

       「2度と会わせません」

京子「あれは、話はしたけど会ってないわ!」

ジブリール「いいえ、数に入ります」

       「消えなさい」

       「あなたは嘘つきで」

       「自分で何も考えず」

       「言い訳して」

      「騒いで」

      「みんなに迷惑をかける」

      「私が今言ったことが嘘かどうか」

      「自分で考えなさい!」

      「それでも、なお自分で考えず」

      「考えて答えが出ても言い訳をする」

      「手のつけられないゴミのまま生きていくのでしょう」

      「あなたはパンドラやしのぶのような

       愛される人にはなれません」

     

      「バカですから」

そう言い姿を消した

京子はしょんぼりしながら、膝を抱え涙を流しながら眠った

ジブリールが言ったことは、すべて本当だった

自分がどれだけみっともない人間だったかを

思い知らされていた。

 朝になり、マリアが起きると京子はもういなかった

しばらくするとパンドラがマリア達が眠っていた部屋に入ってき

パンドラ「京子、布を・・・・」と言い掛け京子がいないことに気づいた

     「あれ?マリア。京子は?」

マリア「う~ん、わたし今起きたとこなの」

    「帰っちゃったんじゃない?」

パンドラ「そうか、落ち着きのない奴だな」

     「それにユニバースの布を持って行ってしまったのか?」

     「読めないじゃないか・・・・」と困った顔をしている

マリア「電話しようか?」

パンドラ「いや、まぁ急ぎやしない」

マリア「そう」

 京子は朝明るくなると共に起き

自分で腕の添え木や包帯を元に戻し

三角巾はできなかったものの

みんなに迷惑をかけないよう考え家に帰っていた

京子は片手で不自由に携帯を取り出してメールをチェックすると

昨日の日付で真帆達からたくさんのメールが入っていた

その一件一件に返信のメールを打つ

その書き始めはすべてこうだった

京子メール『おはよう、昨日は返事できなくてごめんね』

そう自分で打ち込みながら

京子は自分の勝手さを痛感していた

京子『いつも心配してくれている友達をほったらかしにて』

   『野次馬のように興味を持ったことに顔を突っ込む』

   『わたしは・・・・』

   『わたしは・・』

   『自分が大嫌い!』

とベットに倒れ込み涙を流していた

シーン● ゴミと呼ばれたアージュニャー

 月曜日になり京子が学校に行くと

京子の腕のけがを見てみんなとても心配してくれた

いつも京子に厳しい先生まで本当に心配してくれていた

京子はみんなに、こんなに心配をかけてしまっている

自分にがっかりしていた

いつものような元気がない京子を見てみんなますます

心配して京子を楽しませようと京子の周りは大騒ぎだった

京子はみんなの前では笑って見せていたが

授業中はずっと外をぼんやり見ていた

真帆はそのことに気づき様子がおかしいことに気が付いていた

放課後になると、またみんなは京子のところに集まり

騒ぎ始めた

みんな「ねぇ、京子。今日はバレーとかサッカーは無理だから」

     「ドーナツ行く?」

    「映画でもいいよねー」

京子「う・・うん」

   「私ね、土曜日にお小遣い全部つかっちゃったの」

みんな「大丈夫ー、ドーナツくらいおごるわよ~」

京子は困りながら「ありがと」

   「でも迷惑かけたくないから」

みんな「へ?迷惑なんかじゃないわよ」

    「来月倍返しじゃー」

    「んだんだ」

京子「へへへ」とぎこちなく笑う

すると真帆がやってきて

真帆「はいはいー」

   「京子は安静にしてないといけないから」

   「今日は私が連れて帰ります」

みんな「えーーー?」

    「安静なんて・・・京子には無理!」

真帆は京子と腕を組み連れて帰ろうとする

京子「大丈夫だよ、真帆」

そう言われると真帆は組んでいる腕に力を込めた

京子はそれを感じ取り真帆に従うことにした

真帆「じゃあねー、みんな~」

みんな「おーい!本当に帰るんかい!」

真帆「うむ!絶対安静だからね」

みんな「ぶー」

    「ぶー」

そういい二人は帰路についた

しばらくの間、京子は「真帆、大丈夫だよ」と言い続けたが

真帆から返事はなく、どんどん学校から離れていく

学校から離れ生徒たちの姿が無くなると

真帆はやっと口を開いた

真帆「なにかあったでしょ?」

京子「え?」

真帆「怪我の原因をなぜ内緒にするの?」

京子「内緒だから」と笑う

真帆「なぜ内緒なの?」

京子「・・・」

少し考え

京子「嘘をつきたくないから」と答え続けて

   「心配もかけたくない」

   「迷惑もかけたくない」と小さな声で答える

真帆「私にも話せないの?」と強く聞いてくる

京子は考え込んでしまう

京子『こんな話・・・とてもじゃないけど信じてもらえない』

   『もう聞かないで・・・真帆』

   『・・・・!』

   『そうか・・・・』

   『パンやジョルジュ・マリアも』

   『私にいろいろ聞かれて』

   『こういう気持ちだったに違いない』

真帆「京子!」

京子「真帆、私のことを心配しないで」そう言い立ち止まる

そのはずみで真帆との腕組みが外れてしまった

真帆は京子より一歩進んだところで立ち止まり

そして振り返り、悲しそうな顔をして京子の顔を見ている

真帆「どうして・・・・?」と小さな声で聞く

京子『正直に言おう』

   『それが一番いい』

   『考えるのよ京子!』

京子「とても信じてもらえるような話じゃないの」

   「だから、嘘をついているように聞こえちゃう」

   「だから、話したくない」

真帆は困惑した顔をしている

京子「嘘をついてごまかすこともできる」

   「たとえば、ガードレールの上で

    バク転してて落ちたとか」

   「でも私は嘘をつきたくない」

真帆「私が京子を信じないと思っているの?」

京子は眉間にしわを寄せながら考えている

京子『考えろ京子!』

   『真帆を傷つけるな!』

   『そんな京子は大嫌い』

   『考えろ!』

真帆「私は親友だと思っていた・・・」

   「何でも話し合えると」

   「ちがうの・・・ね・・・」とさびしそうに言い歩きはじめた

京子は考えがまとまらず真帆を追いかけることができない

二人はそのまま別々で家路につくことになってしまった

 京子は直接家には帰らず図書館によっていた

いくつか本を選び図書館の中の椅子に腰かけ

片手で不自由そうに本をめくる

京子『う・・・何これ・・・難しい・・・』

そう思いながらもがんばって読み進めていく

京子はペラペラページをめくり目的のページを探す

京子『あった。第六チャクラ』

   『アージュニャー』

   『・・・・・』

   『う・・・大したこと書いてない』

また違う本をめくりいろいろと調べている

小一時間ほど調べ物をして京子にしては相当頑張ったほうだったが

京子『駄目だわ…私の知りたいことはどこにも書いてない・・・』

   『てか・・・全部ちゃんと読んだら書いてるかもしれないけど・・』

   『・・・どうしよう・・・』

京子はめぼしい本をいくつか選びそれ以外を棚に戻し

京子『魔法のことが書いてる本はないのかしら?』

   『・・・って・・・あるわけないか・・・』

そう思い、先ほど選んだ本だけ借りて帰えることにした

京子は家に帰ると借りて帰ってきた本を最初のページから

読み始める、頭をかきむしりながら何度もくじけそうになりながら

それでも読むのをやめない

京子『なんてつまらない本なのかしら・・』

   『おでこがジンジンしない』

また、くじけそうになる

京子『駄目!読むって決めたんだから・・・』

   『ゴミのままの私では終われない』

1冊目の本を半分ほど読んだ頃に

京子の母親が京子を呼ぶ声がする

京子のママ「京子ー」

       「お風呂入っちゃいなさーい」

京子「はーい」

そう答えお風呂の支度をして

お風呂に入った

京子は折れているほうの手にビニール袋を

かぶせて不自由そうに体を洗い湯船につかる

体を鼻の手前までお湯の中につけ

京子は考え込んでいた

京子『真帆・・・』

   『真帆に心配かけた上に

    悲しませてしまった・・・』

   『信じさすしかない』

   『何か方法はないのか?』

   『何かで示せればいい』

   『この常識では考えられない出来事』

   『私の力で何か示せないのか?』

   『一点集中型のアージュニャー』

   『ゴミのような力』

   『そんなのは嫌だ』

   『意味のあるものにしなければ』

 お風呂から上がり部屋に入ると携帯が

メール着信を知らせる点滅をしていた

携帯を開け確認するとそれはマリアからのメールだった

京子『あ・・・』

   『マリアのことをすっかり忘れてしまっていた…』

   『私はひどい子』

   『毎日教会に行っていたのに』

   『行かなければ心配するに決まってる・・』

   『なのに私はまた自分のやりたいことだけやっている』

   『どうしてこう私は周りの人のことを

    ちゃんと考えられないのかしら』

そう思い自分のことが嫌になっていた

マリアに腕は大丈夫。痛くないよと返事を送っり

明日一緒に街で遊ぶ約束をした

京子『そうだ!』

   『みんなの名前を手のひらに書いておこう』

そう考えマジックを取り出し手のひらに名前を書き始めた

京子『真帆』

   『しーちゃん』

   『ゆみっぺ』

   『ちあき』

   『マリア』

   『パン』

   『しのぶ』

   『う~ん・・・ジョルジュはいいか…』

   『拓也君』

   『う~ん、直もいいか・・』

そして書き終わると手のひらを眺め

真帆とマリアに花丸をつけた

京子『さぁ、明日もいっぱい考えなくちゃ』と思い

床についた

シーン○ 京子からの贈り物

 次の日学校につくと京子は元気に真帆達にあいさつをした

京子「みんな、おはよー!」

みんな「おはよー」

    「おっはよー」

真帆「おはよう」

京子は真帆の方を見て優しく微笑みかけた

真帆もその微笑みに対し微笑み返してくれた

いつもと変わらない一日が過ぎた

しかし、二人は気づいていた

昨日までとは全く違う関係になってしまっていることに

真帆は京子に何か言いたそうだが言えずにいるようだった

京子もいい案が思いついていないので

うわべだけのような会話になってしまっていた

放課後になると京子は

京子「みんなごめんねー」

   「今日はちょっと約束があるの」

みんな「そうなのー?」

    「教会?」

京子「そそ」

   「今日は先に帰るねー!」

みんな「ほーい」

    「熱心な信者だのう」

京子「いや、違うから」と笑いながら教室から出て行った

真帆は悲しそうな顔をしているが何も言い出せずにいた

 京子は走りながら手のひらに書いたみんなの名前を見ていた

そして再びその手をぎゅっと握りしめ大急ぎで一度家に帰り

用意してあった紙袋を手に取り、また家を出て街に向かった

 マリアとの約束の場所につくと、すでにマリアは来ていた

京子「マリアー」

マリア「京子!そんなに走って大丈夫なの?」

京子「全然平気ー」と言いながらマリアのほうに向かって駆けてくる

マリア「こけたらどうするの?」とヒヤヒヤした顔で言う

京子「えー!そんなにどんくさくないよ!」

そう言い「よ!」と掛け声をかけ前宙をした後ねじりを入れて

バク宙をして見せた

マリア「わわわわわ!」

   

京子はマリアの前に到着し

京子「大丈夫よ!」

   「実は手をつく方が難しいのよ」

   「知ってた?」

   「バク宙なんてカンチコチンよ~」

マリア「いや、そういう問題じゃなくてさ・・・」

京子「今日はね私が街を案内する」

   「結局案内してなかったでしょ私」

マリア「ああ、そうだったわね」

京子「でもね、この間の電車代で

    今チョービンボーだから」

   「食べ物屋さんには行けないの」

マリア「んーオッケーよー。」

    「缶ジュースくらいならおごるねー」

京子「ありがとー、缶ジュースなら何とか買える~」

   「ギリギリセーフよ!」

マリア「あ、っそう」と二人で馬鹿な事を言いながら

街を散策した

京子はここの店がかわいいとか安いとか紹介しながら

マリアを楽しませている

夕日が沈みそうな時間になると

二人は缶ジュースを買い見晴らしの良さそうな

高いデパートの屋上で街を眺めていた

マリア「いろんな店知ってるのねー」

京子「うーん」

マリア「楽しかったわ」

京子「そう。」

   「よかった」

   「来月お小遣いもらったら」

   「おいしいお店に行こうね」

マリア「おおおお、いいねー」

    「たとえばー?」

京子「ラーメン」

マリア「え?」とがっかりした顔をする

京子「餃子」

マリア「いあいあ・・・」

京子「ん~?」

   「なにが食べたいのー?」

マリア「イタリアンとか」

    「あとは、おいしいデザートの店とか」

    「かぐわしい香りのコーヒーショップとか」

京子「それなら教会の前のドーナツで」

マリア「いあいあ・・なんか違うくない?」

京子「おいしいよ」

マリア「ま・・・まぁね」

    「ドーナツでまずいとか聞いたことないわ」

    「そうじゃなくて、なんか・・特別な感じのとこ」

京子「う~ん」

   「高い店は、敵よ!」と笑う

   「まぁ、誰かに聞いておくね」

マリア「んー」

    「じゃあ、そろそろ帰ろっか」

京子「うん」

京子はマリアと別れ際にマリアに紙袋を渡した

京子「荷物になって悪いんだけど」

   「パンに渡して」

マリア「ほいほい」と引き受け

二人は別れた

マリアは教会につくと「パンドラー、いるー?」と

声をかける

すると書庫のほうから「なんだ?」と言いながらパンドラが出てきた

マリア「はい、京子から」と紙袋を渡す

パンドラ「ん?」

    「何だこれは?」

マリア「知らない」

    「魔法陣の布じゃない?」

パンドラ「ああ、そうか」といい紙袋を開けると

紙袋の中にはTシャツとジャージのズボンが入っていた

パンドラ「あ?なんだこれは?」

マリア「あら、服ね」

    「靴も入っている」

パンドラ「これを私にどうしろと?」

マリア「知らない」

パンドラ「まさか洗濯しろと?」

マリア「まさか」と笑う

マリアは少し考えた後

マリア「あ、わかった」と声を上げた

パンドラ「ん?」

マリア「あなたがいつも同じ服を着てるから」

    「ばっちいと思ったんじゃない」

パンドラ「はぁ?」

     「なんだと!」

マリア「臭かったんじゃない?」と意地悪そうに言い笑う

パンドラ「バカか!」

     「私のどこが臭い!」

     「この服はいつも奇麗にしている!」

     「当たり前だろ!」

マリア「さぁーどうだかー」と言いながら奥の部屋に引っ込んでいった

パンドラ「あの野郎・・」と言いながら紙袋をよく見ると

底の方に手紙が入っているのを見つけた

パンドラは書庫に戻りいつもの椅子に腰かけ

その手紙を手に取り読み始めた

京子『パンドラさん沢山迷惑をかけてごめんなさい』

   『パンドラさんは私と背丈が似ているので

    この服を送ります』

   『お古なので遠慮しないでください』

   『町ではいつもの格好では目立ちすぎますよ』

   『気に入らなければ寝巻にでもして下さい』

                   『by 京子』

パンドラはその手紙を読み終わっても

ずっとその手紙を見ていた

京子は、もうここには来ないのだとパンドラには分かった

シーン● 分かり合えない二人

  1週間ほど何の変哲もない日が続いた

京子は本を読むのを頑張っていたがそれでも3冊ほどしか読めておらず

しかも何の収穫も得ていなかった

真帆はいつもはみんなで何をして遊ぶか

一番に意見を出していた京子がここ一週間

何の提案もせず、ただみんなについて

歩いているだけになっていることが

とても気になっていた

放課後になるといつものメンバーが集まり

何をして遊ぶか相談が始まる

みんな「あー、もうそろそろ金欠だわー」

京子「えへへ、大分前から文無し」と笑う

みんな「早く来月になれー」

真帆は思い切って京子に声をかけることにした

真帆「京子。きょうは帰ろ」

   「みんなも今日は大人しく帰ろうよ」

京子「そうする?」

みんな「えー?」

    「それは詰まんない」

    「公園でガールズトークでよくね?」

    「みんなでお金出し合ってポテチでも抓んで」

    「おおーいいねー」

    「んで、アカペラ。カラオケ大会とか」

    「京子ものまねオンステージ!」

    「おおおお!」

    「どんだけ無料で!」と笑う

真帆は真剣な顔をし京子を見つめ

真帆「京子。帰ろ!」と言う

京子「う・・・うん」迫力に圧倒されそう答え

   「じゃあ、私真帆と帰るね」とみんなに告げた

みんな「えー!?」

     「なんでー」

真帆「みんなごめんね」

京子「声がかれるまで歌うがいいさ!」と笑い

引き留められないように早足で教室を出て行った

真帆はみんなに手を振り京子を追うように出ていく

二人はあまり言葉もないまま少し離れて歩いている

京子は何とかしなければならないと考えていた

京子『真帆を傷つけたくない』

   『どうすればいい!』

   『考えろ京子!』

そう考えているうちずっと沈黙が続いている

京子『この沈黙が真帆を傷つける』

   『何か話さなければ』

   『もう強引にでも信じさせるしかない』

   『話すしかない!』

真帆は今にも泣き出しそうな顔をしながら

すがるように「京子・・・」と名を呼ぶ

京子は立ち止まり真帆の方をずっと見た後

京子「ごめんね真帆」とだけ言った

そう言われると、とうとう真帆は泣き出してしまった

京子「ああ、違うの真帆」

   「今謝ったのは真帆のカバンの中をのぞいているから」

   「それを誤ったのよ」

真帆はまだ泣いている

京子「私がこれから話す信じられないような話」

   「それを信じてもらえるようにする

    いい方法を思いついたから」

真帆は涙を流しながらだが京子の方を向き

不思議そうな顔をしている

京子「真帆あなただけには全部話すから」

   「ちょっと泣きやんで」

   「集中できない」

真帆「?」

京子「筆箱の中」

   「赤と黒と青の3色ボールペン」

   「赤はもうインクが出ない」

   「青は使ったことがなさそう」

   「消しゴムは2つ」

真帆「な・・・なに?」

京子「一つは白い購買のやつ」

   「もう一つは黄色でちびている」

真帆「消しゴムは3つ持ってるわ」

京子「いいえ、2つしか入っていない」

真帆「?」

京子「シャーペンが一本」

   「シャーペンの中には今使ってる

    芯と予備が3本入っている」

   「シャーペンのノックするところの

    消しゴムは1度も使われていない」

   「歴史の教科書」

   「歴史の教科書の168ページに

    古谷先生の似顔絵が描いてある」

   「数学の教科書」

   「ん~~~~???」

   「78ページに古谷先生の似顔絵が描いてある」

真帆「いや!」と顔を真っ赤にしている

京子「国語の教科書」

真帆「駄目よ!」

   「見ちゃ駄目!」

真帆は顔を真っ赤にしている

京子「あ・・・ごめんもう見ちゃった・・・」

   「真帆も私に言ってないことあるじゃない」と笑う

真帆「い・・いつ私のカバンの中を見たの!?」

京子「へ?」

   「今よ」

真帆「ひどい京子!」

   「いつ私のカバンを開けて中を見たのよ!」とちょっと怒っている

京子は困った顔をして

京子「もう一度だけ言うね」

   「今よ」

真帆「何言ってるの!」と怒っている

京子の表情は一変し

京子「信じないのね・・・・」

   「でも・・・分かるわ」

   「だからみんな話したがらないのね・・・」とうつむき

真帆の横を通り過ぎ家に向かって一人歩きはじめた

真帆は呆然としている

また今回も二人は別々に帰路につくことになってしまった

シーン☆ 閉ざされたチャクラ

 教会の書庫の中からパンドラの声がする

パンドラ「マリアー」

マリアは玄関から入ってすぐの部屋で

いつも受付のような形で待機している

マリア「なに?」

    「紅茶なら自分で入れてね」

    「私お茶くみじゃないから」と面倒臭そうに答える

パンドラ「ああ、もう諦めた」

     「ここの教会の連中は」

     「みんな私に紅茶をいれてくれない」

マリア「喫茶店じゃないからね」

パンドラ「京子は元気か?」

マリア「ん~?」

    「気になるの?」

    「ここには最近来ないね」

パンドラ「ああ」

マリア「会いたいの?」

    「今日会う約束してるから連れてこようか?」

パンドラ「いや」

     「この間の服の礼をしたいだけだ」

     「何時に約束している?」

マリア「はぁ?一緒になんか行かないわよ」

    「あなたのおもりはまっぴらごめんよ」

パンドラ「おもりって・・・」

     「あのなー・・・」

     「学校が何時くらいに終わるのか分かれば」

     「私が学校まで出向く」

マリア「約束は4時半にしてるんだけど」

    「終わるのは何時かな~?」

    「知らない」

パンドラ「そうか、ありがとう」

     「3時半くらいならまだ絶対学校だろう」

マリア「そーねー」

パンドラ「マリア」

マリア「なに?」と面倒臭そうに答える

パンドラ「ちょっと見てくれないか?」

マリア「なにを」

パンドラ「あの服を着てみた」

     「これであっているのかよく分からない」

マリア「へー、着て見たんだ」

    「こっちに来なさいよ、見てあげるから」

パンドラ「嫌だ!」

マリア「はぁ?なんで?」

パンドラ「恥ずかしい」

マリア「なにそれ!もう!」と言いながら仕方がないので

書庫に向かった

マリア「開けるよ」

パンドラ「あ・・・ああ・・」

     「笑ったら怒るぞ」

マリア「はいはい」と言いながら書庫のドアを開けた

マリアはパンドラをみて

マリア「へぇ~」

    「意外だわ」

パンドラは顔を赤くしながら「な・・・なんだ?」

マリア「ぴったりじゃない」

    「似合ってるわよ」

パンドラ「ほ・・・本当か?」

マリアはケロっとした顔で「うん」と答える

パンドラ「これで着方はあってるのか?」

マリア「間違える方が難しいでしょ」

    「Tシャツとズボンだけなんだから」と笑う

パンドラ「そ・・・そうか」

     「本当だな」と念を押す

マリア「本当よ!」

    「他にどんな着方があるのか

     逆に聞きたいくらいよ」と面倒臭そうに答える

パンドラ「お前、私をからかってるんじゃないだろうな?」

マリアは目を細めながら「あ、そう」

   「じゃあ、そう思ってればいいじゃない」といい

書庫から出て行った

マリアは、元の席に戻り顎に手をつき

マリア「あんな服着るくらいで大騒ぎされたら

     たまったもんじゃないわ」と呆れている

 学校では真帆と京子はみんなの前ではいつものようにふるまっていた

しかしお互いに溝が深まったことを感じて心を痛めていた

放課後になるとみんなはいつものように集まり

みんな「京子、今日も図書館?」

京子「うん、ごめんね、みんな」

   「手がこんなんだし」

   「何よりびんぼーだから」と笑う

みんな「教会通いの次は図書館か~」

京子「教会は花がもう寿命で枯れちゃったからね~」

みんな「ああ、そうなんだ」

京子「う~ん」

みんな「それにしても図書館って京子らしくないんだけど」と笑う

京子「へへへ~、確かにねー」

   「本を読んでいたら頭がかゆくなってしまうの」

   「でも、腕がこんなで遊べないうちに」

   「ちょっとでも本を読む習慣をつけようかなーって」

みんな「おおお、立派じゃないか!」

    「まぁ、そういうことなら邪魔はするまい」

    「早く腕治ってほしいねー」

京子「うーん、ありがとー」

そう言いながら、校門の方までみんなで歩いて行くと

パンドラが校門の前で京子を待っていた

Tシャツにジャージのズボン姿に運動靴をはいているのに

いつものように日傘をさしていた

通り継ぎる生徒たちはみんなパンドラを見ている

パンドラは顔を真っ赤にしてできるだけみんなに顔を見せないように

そっぽを向いている

京子は見覚えのある日傘を見てパンドラだと言うことに気がついた

京子「パン?」

そう呼ばれるとパンドラは京子の方を向き顔を真っ赤にしながら

近づいてくる

パンドラ「京子!マリアにはめられた!」

京子「へ?」

みんな「京子、この人は?」

京子「ああ、パンドラさん」

パンドラ「ばか!紹介するな!」と顔を真っ赤にしている

     「言っとくがマリアがこれでいいと言ったんだぞ!」

京子「へ?なんのこと?」

みんな「き・・・奇麗な方ね」

    「ちょ・・・ちょっと変わっているみたいだけど」

そう言われるとパンドラはみんなに向かって

パンドラ「そうか!やっぱりおかしいか」

     「マリアっていう奴がな」

     「これでいいと言ったんだ」

     「私はなんかおかしいんじゃないかと

      思ってたんだぞ!」

     「本当だぞ!」と弁明する

京子はパンドラのズボンを少しずり下した

パンドラ「いやぁあん」と意外なかわいい声を出した

京子「え?」と驚いている

パンドラは顔を真っ赤にして「何するんだ!」と怒っている

京子「これくらい下げた方が格好いいのよ」

   「ね、みんな」

みんな「うん、そうねー」

    「スタイルがいいからすごく似合ってますよ」

パンドラ「そ・・・そうなのか?」

みんな「はいー」

パンドラ「こ・・・ここがおかしかったのか?」

京子「ああ、違うの」

パンドラ「へ?」

京子「傘」

パンドラ「?」

京子「いつもの服ならまだしも」

   「そんな格好で日傘をさしてたら

    馬鹿だと思われるよ」

みんな「う・・うん」

    「正直・・・バカかと・・・」

パンドラ「な・・・・なに!」

     「ひょっとして、みんな」

     「私のことを馬鹿だと思っていたのか?」

京子「う~ん」

みんな「はい、正直」

パンドラ「いや、お前たちじゃなくて」

     「今までここですれ違ったすべての生徒たち」

みんな「ええ・・・100%」

そう言われるとパンドラはがっかりとした顔をして続けて

パンドラ「マリアめー」とつぶやいた

京子「いや、マリアはまさか日傘をさすと思ってなかったんじゃ・・・」

と呆れている

みんな「じゃあ、私たち行くね京子」

京子「うん」

   「じゃあ、みんな、真帆バイバイ」

みんな「うん、バイバイ」

    「また明日ー」

真帆「バイバイ」

京子「バイバイ」と真帆の眼を見て言う

真帆はすぐに目をそらしうつむきみんなと一緒に進んでいった

京子はパンドラの方に向き直り

京子「どうしたの?」と尋ねた

パンドラは傘をたたみながら「ああ、服の礼を言おうと思って」と返事をした

京子「お古だから・・・別にいいのに」

パンドラ「そういう訳にはいかない」そう言いながら京子を見ると

京子のチャクラがすべて閉じられていることに気がついた

パンドラ「サイズがぴったりだ」

    「胸がちょっと苦しいが」

    「問題ない」

京子「そう、よかった」

パンドラ「ユニバースの発音を教えるから」

     「また今度あの布を持って教会に来い」

京子「う・・うん、大丈夫」

パンドラ「ん?」

京子「あれは普段は唱えなくても問題ないんでしょ?」

パンドラ「ああ」

京子「ならいいわ」

   「特に困ってないから」

パンドラ「いざと言うとき役に立つ」

京子「そう・・・でも、迷惑かけたくないから」

パンドラ「迷惑じゃない」

     「服の礼も兼ねている」

京子「そう・・・ありがと」

   「でも・・いいわ」

   「ありがとう、パン」

パンドラ「そうか・・・・」

     『そう・・それもいい』

     『すべてのチャクラが閉じ』

     『マナからもユニバースで守られている』

     『これでいい・・・・』

     『京子は普通の女の子になった』

     『友達もあんなにたくさんいる』

     『きっと普通の子として幸せに暮らせる』

そう思い続けて

     「遠慮は無用だ、気が向いたら

      教会にくるがいい」

京子「ええ、そうするわ」

       「パン」

パンドラ「ん?」

京子「パンと呼んでも返事してくれるのね」

パンドラは笑顔を見せながら

パンドラ「何だ、だれかに何か吹き込まれたのか?」

京子「え?・・うん」

パンドラ「なら許可をしよう」

     「パンと呼んでも構わない」

京子は嬉しそうな顔をし

京子「見て」と言って手のひらをパンドラに見せた

パンドラ「ん?・・なんだ?」

京子「私、よく暴走しちゃうでしょ」

   「みんなのことをほったらかしにして」

   「だから・・・」

パンドラ「ん?」

京子「友達の名前を書いたの」

   「見て」

パンドラ「ああ、これを見てみんなのことを

     思い出すようにしているのか」

京子「パンの名前もあるよ」

パンドラは「そうか」と答え優しく微笑んだ

パンドラ「京子・・・実は今私は」

京子「ん?」

パンドラ「この傘を持っていることがとても恥ずかしい」

京子「ああ」と笑う

パンドラ「もう少し話がしたかったが帰らせてもらう」

京子「ええ」

   「わざわざありがとうパン」

京子はパンドラの目をしっかりと見て「さようなら」と言った

パンドラもまじめな顔をして「ああ・・・さようなら」と答えた

二人は同じことを考えていた

『いつでも会える』

『そのことを胸に抱いていればいい』

『もう会うことはないだろうけど…』と

京子はパンドラの後ろ姿を見送りながら

いつも大事そうに持っている傘を見ていた

京子のおでこがジンジンする

京子『だめ!ヤジ馬みたいに興味を持ってわ!』と

自分を戒める

しかし、一瞬だが京子の第六チャクラが光を放ちすぐに閉じる

京子は真青な顔をしている

傘の中に何かを見たからだ

京子『・・・・!』

   『なにかしら!?』

   『とにかく気付かれなくてよかった』

と真っ青になりながら冷や汗を流していた

シーン◎ 3度目の出会い

パンドラと別れ京子はマリアとの約束の場所でもある

図書館に向かった

図書館の前はみんなが集えるスペースになっており

そこでマリアは京子が来るのを待っていてくれたようだ

京子「マリアー、おまたせー」

マリア「ほーい」

    「パンドラに会えたー?」

京子「うん」

   「なんかマリアのこと怒ってたわよ~」

マリア「はぁ?」

    「なんで?」

京子「へへへ、なんかハメられたとか言ってた」

マリア「はぁ?意味わかんない」

そんな会話をしながら図書館の入り口に向かうと

玄関の前にしのぶが立っていた

マリア・京子「しのぶ!」

しのぶ「あまり時間がないの」

    「最初に一方的に話させてもらう・・」

    「ごめんね」とうつむきながらいう

マリア「な・・・なに、あなた!」

    「何しに来たの!」

しのぶ「時間がないから・・・」

    「質問には答えない」

    「ジブが結界を破るまでに10分くらいしかないの」

    「一方的に話させてもらう」

マリア「何言ってるの、あんた!」

京子「待って!」

   「聞こう」とマリアをなだめた

しのぶ「ありがとう」とうつむきながら京子に言う

    「京子、ジブがひどいことを言った」

    「だけど、それはジブの本心じゃないの」

    「だから気にしなくても大丈夫」

    「京子の無鉄砲な性格を心配して」

    「わざときつく言っただけ」

    「本当は怒ったりはしていない」

    「ジブはやさしい人」

    「むしろ、あの後の京子の態度に

     とても満足しているようよ」

京子「そ・・・そう・・・」

   「でも・・ジブが言ったことは本当だわ・・」

しのぶ「私は操作を好まない」

    「ひとつ目に伝えたいことはこれ」

    「もう一度言う、私は操作を好まない」

マリア「それが操作じゃないの!」

    「バカじゃないの」

しのぶ「違うとだけ答えさせてもらう」

    「ヒントは提示しない」

    「入り口だけ用意した」

マリア「こんなやつほっときなさい京子!」

しのぶ「2つ目」

    「マリアが私がしていることが操作だと

     勘違いするようなので」

    「説明させてもらう」

    「私は操作していると思われることを

     一番好まない」

マリア「そんなことどうでもいいのよ!」

しのぶ「一番肝心なことよ」

    「よくわかっていないようなので

     もう一度はっきり言う」

    「ひとつ目も操作ではない」

    「入り口を見せただけ」

    「この違いはマリアは知っているはず」

マリア「・・・・・」

京子「どういうこと?」

マリア「簡単だけど難しいの思考パターンよ」

しのぶ「二つ目」

    「真帆と京子」

    「二人には今溝ができている」

    「二人ともその溝を埋めたいと考えている」

    「これは憶測じゃない」

    「100%の確信を持っている」

    「溝を埋めたいと言う真実の答え」

    「それの二人が出した答えが真実の答えでないはずがない」

    「真実の答えに対しては他からの操作は及ばない」

    「これは、わたしが操作するのではないと言う証」

マリア「わけがわからないわ!」

しのぶは不思議そうな顔をしらがら

しのぶ「マリア・・・・本当に分からないの?」と尋ねる

    「マリア、ジョルジュは何かあなたに伝えきれていないようだわ」

    「私が最初の方に言ったこと、それが重要」

    「もう一つは重要だから何度も伝えたこと」

マリア「え?」

マリアは顔をそむけうつむき黙り込んだ

しのぶ「そう・・・分かっているようね」と満足そうな顔をし

    「だから助け船を出す」と続けた

   

京子「助け船?」

   「なぜ?」

しのぶ「原因の一端が私にあるから・・・」

京子「しのぶのせいじゃないよ」

   「気にしないで」

   「私が自分で何とかするわ」

しのぶ「そう・・・」

    「ヒントはできるだけ提示したくないんだけど」

    「それは1つ目の問題の方」

    「時間がかかり過ぎる」

京子「?」

しのぶ「では、こうさせて」

    「ヒントは提示できないの」

    「もっと時間がかかってしまうから」

    「もちろん京子が傷付くのも嫌だけど

     真帆が傷付いたままでいることが

     私は我慢ならない」

    「だから、と言うことにして」

京子「と言うことにして???」

しのぶ「時間がない5分ほどしかない」

    「ジブの目を盗むのはそう簡単ではない」

    「私に許可を一つくれればいい」

    「私が真帆に会うこと」

    「そして少し驚かせてしまうかもしれないけれど」

    「とても信じられないような話に

     真実味を持たせることを」

京子「それは・・・しのぶが真帆に何か不思議な力を

   見せると言うこと?」

しのぶ「そう」

    「絶対傷つけたりはしない」

    「きっとうまくいくわ」

京子「でも・・・そういうのは・・・どうなのかしら・・・」

マリア「なに?友達と喧嘩してるの?京子」

京子「え?」と少し目をそらし

   「喧嘩・・・じゃない・・よ」と歯切れの悪い返事をした

マリア「しのぶ!許可するわ!」

    「やってあげて」

    「いいわね!京子!」

京子「え?・・でも」

マリア「仲直りしたくないの?」

京子「ううん」と首を横に振る

しのぶ「時間がない」

    「ジブが私の結界を破ろうと攻撃を加えている」

    「私はサタン」

    「だから自由にはさせてもらえない」

京子は上を向きしのぶの目を見て

   「あなたはサタン」

   「なぜだかわからないけど」

   「あなたはサタン」

   「だけどあなたは優しい人」

   「だから」

しのぶ「だから?」

京子「お願いするわ」

しのぶは微笑みを見せ、最後に

しのぶ「マリア」

しのぶ「コールド・ジェイルは一生貴女を守る」

    「そういう風に作ってある」

そう言い姿を消した

マリア「なんですって!」

    「ちょっと待ちなさい!」

    「ずるいわ、あなた!」

    「言いたいことだけ言って」

    「私たちが会いたいと望んでも!」

    「こちらからは会えないなんて!」

京子は天を仰ぎながら「しのぶは・・・サタン」とつぶやいた

マリア「しのぶは・・・・」

    「しのぶはサタンなんかじゃないわ!」

京子「いいえ・・・サタンよ」

マリアは下を向きながら強く「違うわ!」と言う

京子「・・・マリアも、しのぶのことが好きになったのね」

マリア「まさか!」

    「違うわ!」

京子は「ううん」と首を横に振った

マリアは自分でもよく分からなかった

嫌いだと思う気持ちもある

でも、サタンと呼ばれることはどうしても許せない

そんな複雑な感情が生まれていた

みんなが今日は解散して真帆が一人で下校していることを

しのぶはすでに把握していた

真帆が一人で歩いているとしのぶが道を

ふさぐように立っている

しのぶ「真帆さん」

真帆は知らない子から名前を呼ばれ驚きながら

真帆「だれ?」と眉をしかめている

しのぶ「京子の友達」

    「沖斗しのぶ」

真帆「教会の人?」

しのぶ「・・・・・」

真帆「?」

しのぶ「なぜ京子のことを信じなかった?」

真帆「な・・・何の話?」

しのぶ「京子が勝手にあなたのカバン開けて

    中を見たと本当に思うのか?」

真帆「な・・・何言ってるの?」

しのぶ「質問に答えてほしい」

    「そうでなければ話にならない」

真帆「・・・・・・」

しのぶ「もう一度問う」

    「京子が勝手にあなたのカバンを開けて

     中を見たと本当に思っているのか?」

真帆「あなたには関係ないわ!」

しのぶ「ある」

    「あるからここにこうして来た」

    「当たり前の話」

    「時間の無駄だ」

    「質問に答えなさい」

真帆「なによあなた!」

   「あなたに指図なんかされたくないわ!」

しのぶ「そう・・・・」とうつむき

    「あなたはいつも京子のことを心配している」

    「京子が危ないことをしていたらハラハラしている」

    「だがそれは、世話を焼いている自分に

     満足感を覚えるためだったと言うことで構わないのね」

真帆「なにいってるの!?」

しのぶ「質問に答えられないと言うことは

    そういうことになる」

    「もう一度だけ問う」

    「これで最後よ」

    「じっくり考えてからでいい」

    「答え以外はしゃべるな」

    「誤魔化そうとしているようにしか聞こえない」

    「いや、誤魔化そうとしているだけだ、と言いきろう」

真帆『なんなの???』

   『この子・・・ひょろひょろで』

   『弱そうな子なのに、この迫力は・・・』

しのぶ「京子が勝手にあなたのカバンを開けて

     中を見たと本当に思っているのか?」

真帆ははじめてこの事についてじっくり考えた

真帆『・・・・』

   『京子はそんなことするような子じゃない』

   『そもそもそんなことに興味がない子だし』

   『興味を持ったら無理やり私からはぎ取って

   カバンを開けるわ・・・』

   『そう・・・・』

   『間違いなくそういう子』

   『でもじゃあ、どうして私のカバンの中を

    知っているの???』

   『私が知らない間に見たしか説明がつかないじゃない』

真帆は深呼吸して、それから答えを語り始めた

真帆「そんなことする子じゃない」

   「でも、それ以外に説明がつかない」

   「私も見てないって信じたい」

   「でも!」

しのぶは手のひらを真帆に向け言葉を制止した

しのぶ「そう」

    「正しい答えだわ」

    「私が求めていた答えにほぼ等しい」

    「京子があの時言っていたことを正確に

    思いだす必要がある」

    「さあ、思い出しなさい」

真帆『京子は私にだけ全部話すと言ってくれた』

   『信じてもらえないような話を

    信じてもらえるようにするいい方法

    を思いついた????』

しのぶ「・・・・・」

真帆「・・・・」

しのぶ「思い出したら正確に声に出しで見てほしい」

真帆「・・・・・・」と何も答えずにいたが

しのぶがずっと答えを待っているのを見て

躊躇しながらだが答え始めた

真帆「信じてもらえないような話を

    信じてもらえるようにするいい方法

    を思いついた」

    「・・・そういったわ・・・」と小さな声で答えた

しのぶ「その言葉の意味を説明する」

    「信じてもらえないような話を

     信じてもらえるようにするために

     信じられないようなことを目の前で

     やってみせると言う意味だ」

真帆「!?」

しのぶ「それは具体的に言うと京子がカバンの中身を

     透視してみせたと言うこと」

真帆「透視??」

   「何言ってるのあなた」

しのぶ「透視して見せたと言った」

    「かばんの中を見たのは、あなたに信じてもらうためだ」

    「中身をのぞきたかったからじゃない」

真帆「な・・・なにいってるの・・・」

   「訳分からない」

しのぶ「無理もない・・」と下を向いて言う

    「京子にはその方法しか思いつかなかった・・・」

    「許してあげてほしい」

    「信じられないようなことを信じてもらうために

     力を見せる必要があった」

    「だが、それは京子の場合、中途半端なものになってしまった」

    「だから、私がここに来た」

真帆「?」

しのぶ「中途半端ではないものを見せるために」

真帆「?」

しのぶ「何か出して見せよう」

    「それもあなたが指定したものがいい」

    「準備していたものではないと証明するために」

真帆「何言ってるの?」

しのぶ「何度もその質問をするな」

    「疲れる」

    「だから京子は話したがらなかった」

    「なのにあなたは、京子から聞き出そうとした」

    「だから、あなたは私のやることに付き合う義務がある」

真帆「ぎ・・・義務?」

しのぶ「もう一度言う」

    「小学生でもわかる簡単な日本語だ」

    「質問するな」

    「何か出す」

    「何を出してもらいたいか言いなさい」

真帆「そんな急に言われても・・・」

しのぶは何も言わず答えが返ってくるのを待っているようだった

真帆「物を出すって言うことよね?」

しのぶは返事をしない

真帆「じゃあ、ボール」

しのぶ「簡単すぎる」

というと、野球のボールくらいの大きさの白いボールが

3つしのぶの前で跳ね始めた

真帆はそれで十分驚いていたが

しのぶは満足していないようだった

しのぶ「何のボールがいい?」

真帆「じゃあ・・・サッカーボール」

そういうと、さっきから跳ね続けているボールがサッカーボールに変わった

真帆「えっ!!」今度はかなり驚いている

しのぶ「このサッカーボールは5角形と6角形の面でできている」

    「色を変えよう」

    「5角形は何色がいい?」

ボールはリズムよくしのぶの前で跳ね続けている

真帆「赤」

そう言うと白一色だったサッカーボールが赤と白になった

しのぶ「売ってないような、変わった組み合わせがいい」

    「6角形は何色にする?」

真帆「紫」

しのぶ「・・・・」ちょっと呆れた顔をしている

サッカーボールは赤と紫の変なカラーリングになり

跳ね続けている

真帆「うわ・・・気持ち悪い」

しのぶ「ひとつ目の玉をあなたの肩に乗せる」

    「何もしなくてもいい」

そう言うとひとつ目の玉が真帆の肩の方に跳ねながら飛んでいく

そして肩の上に載り留った

真帆「ええええ?」

真帆が驚いて動いても肩から落ちない

しのぶ「手に取って見て」

そう言われてボールを手に持ってみると

肩から外れた

どう見ても普通のサッカーボールだ

しのぶ「二つ目のサッカーボール」

    「あなたの体をすり抜ける」

    「当たっても痛くなさそうなスピードで

     そちらにやる」

    「よけずにボールをしっかり見ていてほしい」

    「すり抜けるところを、しっかりと」

真帆「え?」

ボールがポーンとやわらかく真帆のおなかあたりに来る

すると真帆の体をすり抜けて後ろに落ちた

真帆「ええええええ!」と驚いている

しのぶ「拾ってみて」

真帆がもう一つのボールでふさがった手で不自由そうに転がっているボールを

拾い上げると何の変哲もないサッカーボールだった

真帆「これは・・・・」と驚きを隠せない

しのぶ「もう一個をここに置くわ」

    「このボールはあげる」

    「その二つのボールは邪魔でしょ?」というと

真帆の手から消えて無くなった

真帆「わっ!」と驚いている

しのぶ「最後に決定的なものを見せる」

    「ここはあなたが毎日通っている道」

    「そこに、ずっと放置されてる空地があるでしょ?」

真帆「ええ」

しのぶ「バース!」そう言い空き地に向かって手を振り下ろした

すると空地一面に青いかわいらしい花が咲き誇った

真帆「えええええええ!」

しのぶ「とても奇麗な花」

    「だからじっくり見ていくと良い」

    「いい香りもするだろう」

   

真帆は空き地に駆け寄り花の美しさに感動しているようだった

真帆「ほ…本物だわ!」

   「この花!本物だわ!」と騒いでいる

しのぶ「京子は図書館にいる」

真帆「どういうこと!?この花全部本物だわ!」

   「しかも地面から生えている!」

真帆は一人で騒いでいたが返事がないことに気づき

後ろを見ると、しのぶはもうそこにはいなかった

真帆はその場で呆然としていた

真帆『これはどういうこと?』

   『なに?』

   『なにがおきたの?』

   『京子が透視したことが本当だって言うことを』

   『証明するために不思議なものを見せたと言うこと?』

   『そ・・・そういうことのようだわ・・・』

   『あの子が中途半端といった意味が分かる』

   『この一面に咲き誇った花』

   『それを目の当たりにした私にとっては』

   『透視なんて・・・』

   『できても不思議じゃないと思える』

   『そう言えば私はあの日不思議に思っていた』

   『私が歴史の教科書に

    古谷先生の似顔絵を描いたのは

    あの日の6時間目』

   『京子が私のカバンに触ったはずがない』

   『いいえ、触る時間がない』

   『京子!』

   『信じるわ!京子!』

   『うれしい!』

   『もともと信じていた』

   『でも説明がつかなかった!』

   『でももう!わかる』

   『もっと不思議なものを私は見た!』

   『だから信じれる!』

   『うれしい!』

   『うれしいよ!』

そう思いながら青い花をいくつか摘みあげボールを拾い、

道を変えて図書館に向かって走り始めた

シーン◎パンドラとマリア

 何があったのかはよく分からないが

真帆が突然図書館にやってきて京子に抱きつき

何度もごめんと謝っていた

京子はしのぶがちゃんと何かをしてくれたんだと感謝していた

そのあと、マリアを含めて3人で仲良く本を読んで過ごした

 夕方になり、みんなそれぞれ帰路につき

マリアは考え込みながら教会へ帰ってきた

すると珍しく玄関から入ってすぐの部屋にパンドラが立っていて

パンドラが「どうした?」と心配したように尋ねた

マリア「あなたには関係ないでしょ!」とキレる

パンドラは「そうか」とだけ言い書庫に引っ込んで行った

しばらくするとマリアは「ごめんなさいパンドラ」

              「八当たりだったわ」と謝った

 パンドラ「ああ、かまわない」

      「お前はまだ若い」

      「私は今でもそうだが」

      「若いころから我儘だった」

      「特に問題はない」

と言いながら書庫から出てきた

パンドラ「どうした、京子もお前もやけに大人しくなったじゃないか」

とほほ笑む

マリア「・・・・そうね・・・」

    「京子は無鉄砲さが大分消えたわね」

    「相変わらず、落ち着きはないけど」

パンドラ「そうか」と優しく微笑む

マリア「それはいいことよね?」

パンドラ「ああ」と同意する

マリア「そうよね!」と強めに言う

    「なのに、なぜしのぶ・・・」:と言いかけやめる

パンドラ「ん?」

     「しのぶがどうかしたのか?」

マリア「ごめんなさい」

パンドラ「ん?」

マリア「あなたの前ではその名前を・・・」

パンドラ「ああ、それは問題ない」

     「あまり話さなかったのはお前たちを巻き込み

      たくなかったからなだけだ」

     「しのぶの名前を聞いただけで私が泣くとでも思ったか?」と笑う

マリア「・・・」何も言わず微笑みを見せ続けて

    「ババアだもんね・・・心臓に毛が生えてる」

パンドラ「おまえなー」と苦笑いする

マリア「しのぶは、気に入らないって言ったの」

パンドラ「ん?あったのか?」

マリア「ええ、京子がジブリールに操作されたことが気に入らないって」

パンドラは目を細め「ほぅ」と言った

すると何気なくだがジョルジュが部屋に入ってきた

マリア「あ、ジョルジュ」

    「あなた私に言ってないことがあるんじゃない?」

ジョルジュ「は?」

マリア「コールドジェイルの解き方」

ジョルジュは少し考えた後

      「いいや、ちゃんと伝えた」

マリア「一字一句間違えず?」と眉をひそめて言う

ジョルジュ「ん?さすがにそれは無理だが」

      「必要なことは全部言ったはずだ」

      「なんだ?」と質問し返す

マリアは少し考えた後

   「何度も伝えたと」

ジョルジュ「ん?」

マリア「何度も伝えたことと、さらに最初の方が特に重要だと言っていた」

ジョルジュ「はぁ?」

      「しのぶさんが言ったのか?」

マリア「そうよ」

ジョルジュは、じっと考え始めた

マリア「必ず何かあるはず」

    「私に伝えていないことが!」

ジョルジュ「・・・・・・」

      「何度もいったこと・・・・」

      「すべての言葉に意味がある・・・・・」

      「そう思い注意深く聞いてほしい・・・」

      「そんなようなことを何度も言われた・・」

パンドラ「はははははは」と高らかに笑う

マリア・ジョルジュ「なんだ?びっくりするだろ!」

パンドラ「読まれているぞ!」

マリア・ジョルジュ「はぁ?」

パンドラ「ははははっはは」

マリア「うるさいんだけど」としかめっ面をする

パンドラ「いったい何手先まで読んでいる」

     「面白いぞ!しのぶ!」

     「はははははは」と高らかに笑う

ジョルジュ「いったいなんだ?」とパンドラに尋ねる

パンドラ「ジョルジュ、お前にその言葉を言わさせたんだ」

ジョルジュ「ん?」

パンドラ「そのままの意味だ」

     「そして、それを私が説明する」

     「しのぶの差し金でな」

     「ははははははは!」

     「しのぶでなければ私はそれに応じない」

     「だが、それもしのぶの中では想定済みだ」

     「はははははは」と高らかに笑う

マリア「なに?説明して」

パンドラ「ひとつ目、大切なカギだ」

     「ジョルジュお前はマリアに伝えそこなっていることがある」

ジョルジュはまっすぐ前を向きながら眉間にしわをよせ

考え始めた

パンドラ「二つ目、しのぶの今日行った行動には

      すべて意味がある」

     「マリアお前に会い伝えたことに

      重要な意味があると言うことだ」

マリア「・・・ちがうわ・・私偶然京子と一緒にいただけだから」

パンドラ「違う」

     「お前が一緒にいる時をみはらかって

      しのぶはあらわれたんだ」

マリア「そうかしら?」

パンドラ「すべての言葉に意味があると

      ジョルジュに言わせたのはそれを知らせるためだ」

マリア「はぁ?」

    「違うでしょ?」

パンドラ「いいや」

     「しのぶはサタン」

     「だからお前を直接導けない」

     「お前に危険が及ぶ」

     「天使たちに目をつけられてしまうからだ」

マリア「はぁ?」

    「なんでそうなんの?」

パンドラ「天使たちの解釈は、常識には当てはまらない」

     「お前がサタンに導かれたのなら」

     「お前はサタンの子として認定される」

     「サタンと接触しただけで、もうすでに

      監視の対象になっているかもしれない」

マリア「はぁ?それじゃあ、おかしいじゃん」

    「しのぶが私の前に現れたのよ!」

    「あいつのせいで、私が危険になってるじゃない」

    「なのに私に危険が及ばないように直接導かないって

     話がおかしいわ」

パンドラ「大事なカギを貰っていないことに気がついたのだろう」

     「さぁ、渡してやれジョルジュ」

     「コールドジェイルを解く大切なカギを」

マリアはため息をつきながら「パンドラ・・・ちがうの」

マリア「コールドジェイルは解けない」

    「一生解けない、そういう風に作ってあると

     しのぶは言ったのよ」

ジョルジュはずっと考えている

パンドラ「一字一句間違えるな、マリア」

     「本当にそう言ったか?」

マリア「一生コールドジェイルに守られるって言ったわ!」

パンドラ「ほら見ろ!」

マリア「え?」

パンドラ「解けないなどと一言も言っていない」

マリア「一生守られるってことは解けないって言うことだわ!」

パンドラ「すべての言葉に意味がある」

     「直接導けないから」

     「自分で問題を作り解けと言うことだ」

     「その言葉から問題を作れ」

マリア「?」

マリアはずっと考えている

パンドラ「しのぶを信用しろ」

     「私は問題も答えもすぐに分かったぞ」

     「しのぶを信用しているからだ」

マリア「コールドジェイルは解けるのに一生守られるとは

    どういうことか?」

    「これが問題・・・・」

パンドラは何も言わず、やさしく微笑みながらマリアを見ている

マリア『コールド・ジェイルは解けるのに一生守られる・・・』

    『コールド・ジェイルは解けた後も私を守る?』

    『へ?』

    『解けたのに・・・どっやって?』

    『・・・・・』

   

マリアの表情が変わったのを読み取りパンドラは言う

パンドラ「答えが分かったようだな」

マリアとパンドラは見つめ合っている

パンドラ「では、答えを私が言おう!」

マリア「はぁ?なんで?」

    「私が言うわ!」

パンドラ「こらっ!そういう格好いいとこは

      私にやらせろ!」

マリア「なんでよ!」

    「私が言うの!」

パンドラ「駄目だ!」

     「私の方が先に気づいたってことを

     知らしめたい」

マリア「バカじゃないの!」

    「私のことだから私が言うに決まってるでしょ!」

    「でしゃばり!」

パンドラ「なに!?」

     「誰がでしゃばりだ!おまえー」と二人で馬鹿な喧嘩をしている

ジョルジュは呆れながら「二人で一緒に言え」

               「やかましくて、こちらの問題が解けない」

マリア「しょうがないわねー」と口をとがらせながら言い

    「せーので言うよ」とパンドラに言う

パンドラ「ああ」

マリア「せーの!」

パンドラ・マリア「コールド・ジェイルは解けた後も詠唱すれば発動できる!」

パンドラ「はははははは」と高らかに笑う

マリア「うるさい!って」

ジョルジュ「伝えていなかったことはあるが・・・」

      「こんなことが関係あるだろうか?」

パンドラ「すべての言葉に意味がある」

     「しのぶがそう言ったのなら

      そうなのだろう」

マリア「やっぱり言ってなかったことがあったのね!」

    「馬鹿!」と意地悪そうに言う

ジョルジュ「彼女のあの2面性の原因になっている無意識の領域にあるものが

       何なのか私には到底理解できない」

      「そういった」

そう言われるとマリアは黙りこんで下を向き険しい顔をしながら

考え込み始めた

パンドラ「マリア、考え中にすまないがひとつ言わせてくれ」

マリア「なに?」と尋ねる

パンドラ「京子もその場にいたんだな?」

マリア「ええ」

パンドラ「そうか・・・・」

     「よく聞けマリア、何度も言わないぞ」

マリア「ん?」

パンドラ「すべての言葉・・いや・・・」

     「しのぶのとった、すべての行動に意味がある」

マリア「へ?」

パンドラ「最後だ」

マリア「なに?」

パンドラ「すべてに意味がある」

     「そう思い注意深く考えてほしい」

そう言うと書庫に引っ込んでいった

マリア「京子?・・・?」

    「京子・・・・・・・」

   

シーン● コールドジェイル解放 その1

京子「しのぶは魔法の記述を理解している」

   「マリアあなたはしのぶの才能に嫉妬していたのね?」

マリア「京子、なぜそのことを知っている?」

京子「え?」

   「なに?私何か言った?」

マリア「!」

    「そうか・・・これは私の夢の中」

    「私が京子にそう言わせた?」

パンドラ「そうだ、お前はしのぶに嫉妬していた」

     「しのぶを下に見ていたからだ」

     「だが今は違う」

     「しのぶは突き抜けた」

     「だからもうお前はしのぶに嫉妬していない」

マリア「そ・・・・そうね」

パンドラ「あいつは別格だ、気にするな」

マリア「ええ・・・分かるわ・・」

京子「素直になって!」

パンドラ「そうだな、その方がいい」

マリア「え??」

    「なに???」

京子「素直に言えばいい」

パンドラ「ああ、そうした方がいい」

マリア「なにを?」

京子「誤魔化さなくていいのよ」

パンドラ「大丈夫だ、誰も笑いやしない」

     「素直になることは勇気がいることだ」

京子「そう!誰も笑わない」

   「あなたの勇気をたたえるわ!」

マリア「・・・・しのぶ・・・」

京子「そう!素直に言えばいい」

パンドラ「しのぶが与えた入口」

しのぶ「あなたなら出られる」

     「そうでなければ私は入り口を与えない」

マリア「しのぶ・・・」

京子「素直に大きな声で!」

マリア「しのぶ!私を導いて!」

京子「もっと大きな声で、もっと強く!」

   「もっとまっすぐに!」

マリア「しのぶ!私を導いてー!!!」

しのぶの姿が遠くに見える

だが、陽炎のように今にも消えそうだ

マリアは急いでしのぶの元に向かう

すると下に降りる鉄の階段が現れる

カンカン音を立てながら、その階段を懸命に降りる

階段の下には硬く重そうな鉄のドアがある

しのぶの姿は見えない

マリアはその重いドアを一生懸命開けた

ドアの向こうは真っ白な光に包まれていて

地面があるのかすら分からない

マリア「しのぶー」

    「しのぶー」と呼ぶが返事がない

マリア「怖い・・・」

    「地面がみえない・・・」

    「落ちてしまう…」

    「しのぶー」と呼ぶが返事がない

マリアは思い切って一歩踏み出し白い光の中に飛び込んだ

しのぶ「外に出た!」

京子「外に出た」

マリア「え?」と言い、声のする方を振り返ると

もう一人の自分が三角座りをしてうつむいて座っているのが見える

マリア「あ・・!あれは???」

    「わたし?」

パンドラ「外から中を見ている」

しのぶ「外から中を見ている」

京子「外から中を見ているよ!マリア!」

マリア「???どうすればいいの???」

パンドラ「質問するな」

しのぶ「答えが消えてしまう」

京子「簡単だけど難しいよ!」

マリア「簡単だけど難しいの問答!」

パンドラ「あまり考えるな!」

京子「そう考えてはいけない」

   「だから素直にといったのよ!」

しのぶ「気づいたら中に引き込まれてしまう!」

    「考えてはいけない」

    「気づいてしまう」

マリア「????分からない!」

    「何を言っているのか分からないわ!」

京子「簡単よ」

   「簡単だから、簡単だけど難しいなのよ!」

マリア「違うわ、難しいから、簡単だけど難しいよ!」

しのぶ「急げ!閉じてしまう」

   「気づいてしまう」

マリア「あ!」

    「しまった!」

    「気づいてしまった!」

    「失敗した!」

そうマリアが言うと外から中に引きづり込まれてしまった

マリアは汗だくになり、飛び上るように起き上った

マリア「・・・・・」残念そうに考え込んでいる

    「解ける…」

    「わかった…」

    「次のチャンスは逃さない」

そう言いまた布団の中に入った

シーン★ すべてのことに意味があるの意味   

京子と真帆が図書館で完全に仲直りをした後

その時一緒にいたマリアを含め3人で図書館で会う毎日が続いた

京子は相変わらずいろんな本を読んでいるが

なかなか頭に入らない様子だった

真帆「そんなに頭をかきむしったら禿げるわよ」

マリア「ははは、ほんと!ほんと!」と笑う

京子「う~~~~」とうなり声をあげながら本を読む

真帆は恋愛小説をチョイスして毎日心を躍らせている

真帆「マリア~、この小説いいわよ~」

   「はぁ~」とうっとりした顔をしている

マリア「やだぁ~、読んだことあるけど青臭い」

真帆「そう?」と、まだうっとりとした顔をしている

マリア「京子、私が読んで解説してあげようか?」

京子「だめだめ!」

   「ほら、そこ勉強の邪魔しない!」と言う

マリア「勉強って…それヨガの本でしょ?」

京子「ん?そうなの?」

マリア「をい!そんなことも分からず読んでいるのかい」

京子「へへへ、チャクラのことが書いてあったから」

マリア「絵を見て選んでるのね」と呆れる

京子「へへへ」と照れ笑いする

マリア「魔術書でも探してみるかな~」と席を立ちあがる

京子「え?」

   「そんなのここにあるの?」

マリア「さぁ?」

京子「黒魔術の本とかあったけど・・・」

   「なんか・・・違うっぽかったよ・・・」

マリア「ああ、普通の本にインプラントしてあるから」

京子「へ?」

マリア「私は今マナが見えないから見つけられないけど」

    「いくつかは、もともとインプラントされてる書物の名前を知ってるから」

    「あるか見てくる」

京子「インプラント?」

マリアは呆れながら「普通の本に埋め込んであるの」と答える

マリア「京子ならマナが見えるから見つけられるんじゃない?」

    「うっすら光ってるはずだから」

京子「え?・・・そうなの?あの光ってるやつ」

マリアはますます呆れて「光ってたのに手に取ってみなかったの?」

京子「う・・・うん・・・」

マリア「不思議とか思ったらどんどんぶつかっていかなきゃ」と笑いながらいう

京子は下を向きながら「う・・うん」と歯切れの悪い返事をした

マリアと真帆は顔を見合せて同じことを考えていた

    『京子は変ってしまった』と

    『好奇心を押し殺し』

    『人に心配かけないよう配慮し』

    『迷惑をかけないように、以前のように何でも話さない』

マリア「興味ある?魔導書」と京子に尋ねる

京子はすぐに「うん」と答えた

マリア「そう、でも日本語で書いてあるやつはないよ」

京子「英語ならある?」

マリア「英語ならあるわね」

真帆「英語って・・・京子めっちゃ苦手じゃん」

京子「えへへへ」

   「でも丁度いい、英語のお勉強がてら」

マリア「そうね、どうせ迷惑かけたくないとか言って

    教えてあげるって言っても断るでしょうから」

    「今度教会の書庫から小学生用の魔導書を借りてきてあげるわ」

    「辞書片手に頑張れば読めると思う」

京子「本当!」

マリア「ええ、ここらにあるやつはあっても難しいでしょうから」

    「それを読んでからの方がいいわ」

真帆「ガンバ!京子!」

   「英語でわからないところあったら

    一緒に調べよ!」

   「一緒にお勉強」

   「迷惑とかじゃないよ!ねっ!」

京子「うん、ありがと」

図書館で京子と真帆と別れマリアは教会へ帰る途中

ずっと考え事をしていた

マリア『京子は変ってしまった』

    『真帆も感じ取っているようだった』

    『・・・・・・・』

    『別におかしくなったわけじゃない』

    『むしろ良くなった・・・・』

    『でも何かしら、このモヤモヤする感じは』

    『パンドラは、それでいいと言っていた』

    『しのぶは気に入らないと言っていた』

    『しのぶの行動にはすべてに意味がある』

    『そう思い注意深く考えてほしい』

    『あの日・・・私がいる時を見計らって

     しのぶがやってきた?』

    『本当にそうなの?』

    『それには意味がある?』

    『真帆と京子が仲直りした』

    『それだけじゃないの?』

    『真帆と京子の問題は2つ目の理由だって言っていた』

    『1つ目はジブリールの操作が気に入らないってこと』

    『・・・・・』

そう考えているうちにマリアは教会についた

教会の玄関から入ってすぐの部屋に入ると

マリアは書庫に向かってパンドラを呼んだ

マリア「パンドラー、いる~?」

書庫の中からパンドラの声がする「なんだ?」

マリア「ちょっと質問してもいい?」

    「嫌なら答えなくていいから」

パンドラ「ん~?」

マリア「京子のことだけど」

    「どう思う?」

パンドラ「はぁ?」

     「もう半月ほどあっていない」

     「お前、毎日会ってるんだろ?」

マリア「う・・うん」

パンドラ「腕はだいぶよくなってるのか?」

マリア「ええ、そっちは問題ないんだけど」

パンドラ「そうか」

     「半月前に会った印象を言おう」

     「かわいらしい普通の子だった」

     「みんなの名前を手のひらに書いて

      みんなのことを考えるんだと言っていた」

     「とても優しい子だ」

マリア「ええ・・・・」

パンドラ「・・・・・」

     「何かあったのか?」

マリア「いえ」

    「逆に何もない」

パンドラ「そうか」

マリア「ジブリールに操作され

    大人しくなった」

    「しのぶはそれが気に入らないと言った」

パンドラ「いや、好まないと言ったんじゃないか?」

     「気に入らないと、好まないは違う」

マリア「・・・・細かいことは置いといて・・・」

    「パンドラは、京子が大人しくなったことを

     いいことだって言ったよね?」

パンドラ「ああ」

マリア「しのぶは、好まないって言ったわ」

パンドラ「操作を好まないと言っただけだろ?」

     「大人しくなったことじゃない」

マリア「・・・・・・」

    「同じじゃないの?」

パンドラ「ほぅ」

     「マリアお前、丸くなったな」

     「すぐキレてたのにな」と笑う

マリア「そんなことはいいのよ!」

パンドラ「あ、キレた」と笑う

そして書庫のドアを開けパンドラがこちらの部屋に入ってくる

パンドラ「マリア、しのぶはお前が今感じているのと

      同じような感じを受けているのだと思う」

マリア「どういうこと?」

パンドラ「私も京子に対して同じようなことを感じた」

     「ただ・・・・」

マリア「ただ?」

パンドラ「自分で言うのはしゃくだが、私はババアだ」

     「だから、その方がいいと・・・そう思っている」

マリア「大人しくなったこと?」

パンドラ「大人しくなったと言うよりは普通の子になったと言うことだ」

マリア「普通の子?」

パンドラ「京子のチャクラはすべて閉じられた」

マリア「え?」

    「そ・・そうなの?」

パンドラ「ああ」

     「第6.第5.第3の3つが開いていたんだが」

     「全部閉じていた」

マリア「3つも開いていたの?」

パンドラ「そうだ」

     「ただ、閉じたり開いたり不安定だった」

     「3つとも閉じていたと言うことは逆に言うと

      安定して閉じたと言うことだ」

マリア「・・・・!」

    「いやよ!」

パンドラ「ん?」

マリア「せっかく力を持っていたのに!」

    「ジブリールが力を奪ったのね!」

パンドラ「私が自分で自分のことをババァだと言った理由を言おう」

     「私は過去に何人か不安定にチャクラが開いたり閉じたりする者と

      一緒に過ごしたことがある」

     「不安定な反面、強力に力が働く傾向がある」

     「ただ、そのタイプは危険だ」

     「全員早死にしている」

マリア「!?」

パンドラ「強い力を持っていれば敵が多くなる」

     「強い力を封じたいと思われるからだ」

    「不安定なため肝心な時に力が出ず」

    「殺される」

    「もちろん普通に生活している分には問題がない」

    「こちらの世界に顔を突っ込まなければな」

マリア「・・・・・・」

    「そ・・・そうね・・・」

パンドラ「しのぶが言っているのは、その選択を

      京子自身にさせろと言うことだろう」

マリア「!」

    「そうか・・・真帆か・・・」

パンドラ「ん?」

マリア「しのぶがおかしなことを言った」

    「そういうことにしておいてって」

    「それはどういう意味かってずっと思っていた」

    「すべてに意味があるなら」

    「それはどういう意味かって」

パンドラ「ふ~ん」

マリア「操作される前の京子をよく知っている子」

    「その子を私に引き合わせた」

    「そうか・・・わかった・・・」

    「パンドラ・・・かまわない?」

パンドラ「ん?何がだ」

マリア「京子にもう一度チャンスを与える」

パンドラ「ああ」

     「京子自身が選ぶなら誰も止めやしない」

マリア「私は間違ってない?」

    「安全な所にいる京子を」

    「危険なところに連れ出そうとしていない!?」

パンドラ「自分で選択させるんだ」

     「操作しないよう注意深くやらなくてはならない」

     「京子自身が選んだのならどちらを選択しても

      問題ない」

マリア「お願い!」

    「私も全力で京子を守るけど」

    「パンドラも守ってあげて」

パンドラ「ははははは」

     「普通にするさ」

     「特別なことはしない」

マリア「そう、あなたは全力で京子を守るわ」

    「普通にね」

パンドラ「操作しないように気をつけろよ」

マリア「伊達に問答やってないわよ」

パンドラ「はははは」

     「解けてないくせに」

     「ははははは」と高らかに笑う

マリア「うっさいわねー」

    「もうすぐ解くわよ!」

    「外には一度出たんだから」

    「バーカ!」

パンドラ「キレた、キレたー」

     「マリアがキレたー」とからかい小躍りした後

まっすぐ奇麗な姿勢で立ちなおし

     

パンドラ「マリア、京子に私のフルネームを教えてやってくれ」

     「京子は私にフルネームを教えてくれた」

     「だが私は名前を教えなかった」

     「それが気がかりになっていたんだ」

マリア「べー!」と舌を出して奥の部屋に引っ込んでいった

シーンφ マリアと真帆の真実の答え

 今日も京子・真帆・マリアの3人は図書館に集合していた

京子「マリア~、魔導書持ってきてくれたー?」

マリア「あ!100%忘れてた」

京子はがっかりして「ぶー」と言う

マリア「とりあえず読みかけの本があるでしょ?」

京子「う・・うん」

マリア「途中でほらないんでしょ?」

京子「う・・うん」

真帆「さて、私は今日は何読もうかなー?」

マリア「京子は読み始めてて」

    「二人で本探しに行くから」

そう言いマリアは真帆を連れて京子から離れた

京子「う・・うん」

京子から見えない所まで来るとマリアは真帆に

話し始めた

マリア「真帆」

真帆「ん?なに?」

マリア「怪我をする前の京子と今の京子」

    「そのことについて感じていることがあるの」

    「真帆も感じているはず」

    「たぶん私と同じことを・・・」

真帆「え?」

   「うん、そりゃ~・・」と言いかけたところをマリアに制止される

マリア「まって」と言いマリアは胸のポケットから紙を取り出した

    「ここに私が感じていることが書いてあるの」

    「真帆も感じていることを紙に書いて」と頼む

真帆「へ?」

   「なんで?」

マリア「う~ん」

    「ややこしい話になるんだけど」

    「大切なこと」

    「お互いが、お互いの言ったことで影響を受けていないって

     証明するため」

真帆「へ?」

マリア「面倒でしょうけど、お願い」

    「書いて」

    「そして同時に交換してみよ」

真帆「ん?まぁ・・・いいけど」と何やらわからないが従うことにした

マリア『分かる・・・・』

    『分かるわ・・・・』

   『操作することを好まない気持ちが』

   『私も、私が言った後に真帆が同じことを言っても

    満足できない』

   『私が言う前から同じことを思っていなければ

    満足できない』

   『これが操作しないと言うこと』

   『分かるわ、しのぶ!』

   『あなたの操作は好まないという気持ちが』

   『解ける!』

   『もうすぐコールド・ジェイルが解ける!』

   『しのぶは私に早くコールド・ジェイルを解いてほしいと願っている』

   『そしてそのあとも私を守ってくれる』

   『今、真帆に対し真実の答えを激しく求める私には』

   『あなたの気持ちが手に取るように分かる!』

   『しのぶ!分かったわ!』

そう考えているうちに真帆は紙に書き終わり

真帆「書いたよ」とマリアに言う

マリア「じゃあ、交換しましょう」そう言い紙を交換し

お互いに紙を読みあった

文面は違うものの内容はほぼ同じで

『京子は好奇心を押し殺すようになり

 みんなに心配や迷惑をかけないように

 あまり本心は話さなくなった。

 大人しくなり、やさしく気配りできるようになった一方

 以前のような輝きを失っている

 一番の魅力である輝きを

 その輝きを取り戻してほしい』

マリアは真帆の文章を読み終わりこういった

マリア「そうよ!」

    「迷惑とか心配とかどうでもいい!」

    「私たちに輝きを見せてほしい!」

    「輝きを放てる人はクラスに何人いる?」

    「いいえ、学年に何人いる?」

    「学校に何人いる?」

真帆「京子は・・・」

   「京子は・・・学年で一番輝いていたわ!」

マリア「でしょうね!」

    「わかるわ!」

    「あんな子は珍しい」

    「輝きを取り戻させたい!」

真帆「ええ!」

マリア「ただ注意して真帆」

    「直接的な事を言ってはダメ」

    「京子は特殊なチャクラの持主」

真帆「え?そうなの?」

   「だからチャクラのこと調べてるの?」

マリア「そうよ」

    「とても強力な力」

    「しのぶに会ったよね?」

真帆「ええ」

マリア「しのぶでも1つしかチャクラは開いていないのに」

    「京子は3つも開いていたのよ」

真帆「ええええ?しのぶさんよりすごいの?」

マリア「一概には言えないんでしょうけど」

    「あと、開いていた」

    「過去形よ」

真帆「え?」

マリア「怪我の後、ジブリールってやつに説教されたみたいで」

    「ひどいこと言われて」

    「それで全部閉じちゃったみたい」

真帆「どうすればいいの?マリア」

マリア「あまり直接的なことはできない」

    「いいえ、しちゃいけない」

真帆「・・・・・」

マリア「京子のことを思い続けるのよ」

    「私とあなたで」

真帆「え・・ええ」

   「それは全然平気だけど」

   「それで・・・元に戻るの?」

マリア「その選択は京子がする」

    「チャンスは多くない」

    「魔導書を読みたがっていたでしょ?」

    「これがチャンス」

    「京子自身が興味を示しているようだったから」

    「京子自身の選択」

    「私は本を京子に渡す」

   「でも私は本の内容を説明しない」

   「京子がそれを望まない」

真帆「ええ」

マリア「京子が英語で書かれた魔導書を

    理解できるように支えられるのは

    真帆しかいない」

    「ただ、真帆が読めてもすらすらと教えてはいけない」

真帆「・・・・」

マリア「自分で読ませないと」

    「第6チャクラの力で読まさせないと」

真帆「第六チャクラの力?」

マリア「そう、実はね京子は本気だしたら

     英語でもフランス語でも何でも読めるの」

真帆「へ?」

マリア「第6チャクラの力の一つ」

    「本を触れるだけで全部内容が流れ込んでくるのよ」

    「言語は関係ない」

真帆「ま・・マジですか?」

   「なのになぜあんなに成績が悪いのかしら」と苦笑いする

マリア「困ったことに興味がある時しか開かないから」

    「勉強全般に興味がなかったんでしょ」

真帆「え・・ええ、確かに」

マリア「とにかく」

    「わたしは、結果がどうなっても

     京子のことが好きよ」

真帆「うん、私も」

マリアは嬉しそうに微笑み

    「今日はわざと持ってこなかったの」

    「明日も持ってこない」

真帆「うふふ」

   「意地悪」

マリア「明後日持ってくる」

真帆「じらして好奇心をあおるのね」

マリア「そう」

    「チャンスは何度もないから」

    「そして最後にもう一つ切り札があるの」

真帆「へ?」

   「なに?」

マリア「これは内緒」と笑う

真帆「えー、わたしもじらされるの~?」

マリア「そそ」と二人で笑った

 次の日も学校が終わる時間になると三人は図書館に集まっていた

京子はマリアを発見すると

京子「マリアー」と手を振りながら呼ぶ

真帆「うわ、マリアめっちゃニヤニヤしてる・・・」とつぶやく

京子「ん?マリアがどうかした?」

真帆は焦りながら「ううん・・・別に何でもないの」と答える

京子「そう?」と不思議そうな顔をしながら答えた

京子の呼びかけに応えニヤニヤしながらマリアがこっちにやってくる

マリア「さぁ、読書開始しましょうか~」と言い、いつも座っている

6人掛けの大きな机に腰をかける

京子「ねぇ、マリア持ってきた?」

マリア「なんだっけ?」

京子「魔導書」

マリア「おおおおお、忘れてしまった」

真帆は呆れながら「まぁまぁ、しらこい」と小さな声で言う

マリア「ごめん京子、明日は必ず持ってくるからー」

京子「おっけー、大丈夫ーまだこの本読み終わってないから」

マリア「ほんとごめんねー」

そういうマリアの耳元で真帆は「演技が結構しらこいよ」

マリアは苦笑しながら「なんか、にやけちゃうのよ」と小さな声で答える

真帆「根っからの意地悪なんじゃない?」

マリア「かもね」と二人で笑い合う

京子「?」

   「どうかしたの?」

真帆はまた慌てながら「ううん、なんでもない」と答え誤魔化すために

真帆「それにしても水曜日ってだるいわよねー」

   「週の真ん中って・・・ほんとだるい」とどうでもいい話をする

京子「そう?」そう答え少し考えている

   「・・・・」

   「え?」

真帆「ん?」

京子「明日って木曜ってことだよね」

真帆「うん」

京子はがっかりした顔をしている

真帆「でしょー、明日木曜だと思ったら

   ぞっとするでしょ?」

京子「いや、そうじゃなくて明日から試験一週間前」

と言い机に顔を押し付けぐったりしている

真帆「え?」と言いながら鞄から手帳を取り出し確認している

   「あぅ!」

   「本当だ!」

   「すっかり忘れてたー」

京子「う~ん」

   「マリアー、明日から一週間これない~」

マリア「へ?」

    「なんで?」

京子「テスト勉強しなきゃ・・・」

真帆「ここで一緒にすれば?」

マリア「そそ」

京子「駄目ー、この間悪かったから」

   「ママの監視つきー」

   「図書館で勉強してるなんて

    とても信じてもらえない状態」

真帆「あ・・・この間のテスト期間

   みんなと勉強ってドーナツ屋さんで

   駄弁ってたもんね・・・」

京子「そそ・・・みんなはドーナツで

   ちゃんと勉強してたんだけどねー」

   「わたしも・・してた・・けどねー」

真帆「鼻と口の間にずっと鉛筆挟んでたよね」と苦笑いする

京子がテンションを下げぐったりしている間

マリアと真帆はひそひそ話をしている

マリア「まずい」

真帆「う・・・うん」

   「しょうがないわ一週間じらしまくりで」

マリア「いや・・・興味を失うかもしれない・・」

真帆「うっ」

   「今日渡す?」

マリア「・・・・、それも駄目ね」

    「勉強の邪魔するのも、さすがにまずいでしょ」

    「それに多分、読まないわ」

真帆「そっか・・・・」

   「どうする?」

マリア「賭けるしかないか…」

    「選択は自分でさせるべきだし…」

    「一週間後も魔導書のことを言うかどうか」

    「賭けるしかない」

真帆「うううう、京子飽きっぽいの」と困った顔をしている

マリア「その程度ならもともと最後まで読めない」

    「賭けよう」

真帆「う・・・うん」

シーン● 空白の一週間

 

 教会ではいつものことだが、ジョルジュとパンドラが口論していた

パンドラ「そんなこと私が知ったことか!」

ジョルジュ「君にも責任の一端があるだろ?」

パンドラ「ないな」

     「確かに提案はしたが」

     「選択をしたのはお前ら教会だ」

マリアはいつものように玄関から入ってすぐの部屋で

暇そうに受付をしていたが、あまりにも口論がうるさいので

口をはさんだ

マリア「あの・・うるさいんですけど」

ジョルジュは机に顔をひっ付けだらけているマリアを見て

ジョルジュ「なんだ、マリアその格好は!」

      「暇なら掃除でもしろ!」

マリア「うるさいわねー」とそのまま机にへたり込んだ姿勢で言い

    「とばっちりとか最悪」

    「誰か来たらシャンとするわよ」

    「受付なんだから、これが仕事」

ジョルジュ「掃除しながらでもできると思うがな」

パンドラ「どうしたマリア」

     「最近ずっと教会にいるな」

マリア「京子たち試験期間だから」

    「当分はお勉強」

パンドラ「ふーん」

     「あんなつまらない勉強を

      学校帰ってからもするのか?」

マリア「・・・・・あのね・・・」

    「学生は勉強が本分なの」

パンドラ「しのぶは勉強なんかしてなかったぞ」

マリア「・・・・」と目を細めてパンドラを見る

    「ところで何もめてるの?」

パンドラ「魔力に制限かけるのやめただろ」

     「そしたら、アエリオソメリのやつらが

      そっちでやらないなら、こちらでやると言いだしたそうなんだ」

ジョルジュ「私たちに魔力の制限をかけると言って来た」

マリア「はぁ?」

    「何それ」

    「断ればいいじゃん」

ジョルジュ「以前従わせて魔力の制限をかけさせていたのに

       逆になったとたん従わないとはどういうことだと

       文句を言われている」

マリア「・・・まぁ・・・気持ちは分からなくもないけど・・・」

パンドラ「ジョルジュはその責任が私にもあると言うんだぞ」

     「ないよな、マリア」

マリア「知らない」といい机にへたり込んだままそっぽを向いた

パンドラ「おまえなー」

     「お前も魔力が戻っても制限されるんだぞ」

     「いいのか?」

マリア「まっぴらごめんよ」

    「特にアエリオソメリなんて格下じゃん」

ジョルジュ「いや、最近では大分力をつけてきている」

      「魔法についてもなかなかの知識を持っているようだ」

               「噂では強力な魔女が一人いるらしい」

パンドラ「魔女?」

マリア「とりあえず、断れば?」

ジョルジュ「もちろん断ったんだがな!」

      「はいそうですか、と言うわけにはいかない」

      「話し合いの場にパンドラを連れていきたいんだが」

      「駄々をこねるんだ!」

マリアは笑いだし

マリア「うふふふふ」

    「パンドラは駄々っ子だもんねー」と意地悪な顔をして言う

パンドラ「誰が駄々っ子だ!」

     「何か問題があるたびに引っ張り出されたら

      駄々もこねたくなる」

     「ジョルジュ本部に任せとけよ」

ジョルジュ「本部からの命で君を連れて来いと」

パンドラ「・・・・おまえ・・早くもうちょっと偉くなれ」

     「本気で面倒臭い教会だな・・・」

     「びんぼーだし」

そう言い横を向きながら『魔女・・・ふ~ん』

パンドラ『魔女ねぇ~』と少し気になる様子だった

 テスト期間が終わり久しぶりに自由の身になったみんなは

何をして遊ぶかの話題でもちきりだった

みんな「今日は、どっかいってあそぼー」

     「あー、全然できなかったからテンション低いんですけどー」

   「今更どうにもならんでしょ?」

   「それとも今から次のテストに向けて

    勉強開始ですか?」

   「いあ・・・それはない」

   「じゃあ、遊ぶっきゃないでしょ」

   「おお・・・おおー!」

真帆「あ・・あの私と京子は図書館に」

みんな「え?」

    「本気で言ってるの?」

京子「ん~?今日はみんなでパァーと行こう!」

   「ね?真帆」

真帆「ちょっと、マリアは?」

京子「まだ約束はしてないから

    明日でいくない?」

真帆「うわ、ひどい」

京子「そ・・そうかな?」

   「マリアも誘う?」

真帆「え?知らない子ばっかの中に

    かわいそうじゃない?」

京子「ははは、マリアはそんなの平気な子」

   「そうする~」

   「電話しよ」

真帆「え~!いいのかなー?」

みんな「いいよ~、あのかわいい子でしょ?」

京子「え?見たことあったっけ」

みんな「あ・・・・いや・・・

     何か街で京子と一緒に歩いてるの

     見たような見てないような」

     「後ろをつけたりはしてないわよ」

     「うんうん」

真帆は呆れた顔をしている

京子は携帯電話を取り出し電話をかけ始めた

しばらくするとマリアが出たらしく会話が始まる

京子「マリアー」

マリア「ああ、京子」

    「テストどうだった?」

京子「ん~、今までと比べたら勉強ははかどったよ

    本読むのだいぶ慣れたから」

マリア「そ、よかった」

    「んで、今日も図書館行く?」

京子「ううん、今日は久々に羽を伸ばそうと思って」

   「クラスのみんなも一緒だけど

    よかったらマリアも来ない?」

マリア「え?ああ・・やめとくわ」

    「誘ってくれてありがと京子」

京子「ん~?」

マリア「今日はみんなと楽しんで」

    「また図書館再開するなら

     声かけてね」

京子「やっぱりみんな一緒だといや?」

マリア「違う違う!私はそう言うの全然平気」

    「知ってるでしょ?」

京子「う・・うん」

マリア「でもやっぱ、クラスのみんなも大事でしょ」

    「それくらいわかるよ」と優しく言う

京子「そ・・そう」

マリア「それに街で遊ぶんでしょ?」

京子「う・・うん、多分そうなると思う」

マリア「じゃあ、教会によれたらよりなさい」

    「別によれって意味じゃないわよ」

    「それくらい、いつでも会えるってこと」

京子「そうね」

   「じゃあ、また電話かメールするね」

マリア「ええ」

   「私もするね」

京子「うん、じゃあ、バイバイ」

マリア「バイバーイ」

そう挨拶をかわし電話を終了した

真帆「くるって?」

京子「ん?・・いや・・・やめとくって」

真帆「そう・・」とがっかりした顔をしている

京子が電話をしているうちにみんなの間で

カラオケに行くことに決定したみたいだった

みんな「今日はカラオケに決定よ!京子」

     「久々に京子お得意のものまねやってもらうわよ~」

    「おお~、職人芸だよね~」

真帆「・・・・確かに似てるけど

    本人が見たら激怒するわね」

京子「へへへ~」

   「一丁やりますか~」

みんな「いこ~!」

    「おー!」

真帆はマリアとの作戦が進行しないことに

がっかりしていたが、今日はみんなに合わせて

楽しむのも悪くないかと、気持ちを切り替え

真帆「私練習したい曲あるのー!」

   「つきあってねー」

みんな「えー!同じ曲何度も歌うのは

     勘弁してよ~」

真帆「え~!練習だもんしょうがないじゃない」

そう騒ぎながらみんなは街の方に向かって消えていった

 そして次の日からまた京子・真帆・マリアとの図書館通いが

始まったが京子は魔導書のことは忘れているようだった

マリアも、京子の口から魔導書のことを言われない限り

出すつもりはなかった

真帆とマリアは作戦が失敗したと感じていた

シーン☆ 熾天使

 いつものように図書館で3人が集まっている

いつもなら頭をかきむしりながら本を読んでいる京子が

今日は目を輝かせながら本にかじりついていた

京子「ほうぅ、なるほど、なるほど」

真帆「なに?今日はえらく順調に読んでるじゃない」

マリア「どれどれ」

    「なにこれ、挿絵ばっかりじゃない」

京子「へへへ」

   「心頭滅却すれば火もまた涼し」

マリア「はぁ?」

京子「武士道とは死ぬことと見つけたり」

真帆「あ・・・あの・・・」

マリア「これなに?武道の本?」

京子「そそ」

真帆「あら・・・路線変更したのね」

京子「たまには息抜きもいいかなぁ~と思って」

   「そしたらこれがまた面白いのよ!」

   「使えるわ!いける!」

マリア「はぁ?」

京子「ちょっと外に出て、やってくるわ」

マリア「へ?」

真帆「なにを?」

京子「稽古に決まってるじゃない」と言いながら

ぶんぶん手足を動かし空手のような動きをした

マリア「わわわ、手大丈夫なの?」と冷や汗を流す

真帆「やめときなよ」

   「動いたら治らないよ」

京子「平気ー」

   「ちょっとやったら戻ってくるから~」といい、本を片手に

外に出て行ってしまった

真帆「うう・・・大丈夫かしら」

マリアは呆れながら「さぁ?」といい自分の本を読み始めた

京子は図書館の中庭に出て本を見ながら

何やら武道の型を練習し始めた

京子は、しばらく運動をしていなかったせいか

体を動かすことの楽しさに夢中になっていた

京子「なるほど、なるほど」

   「膝ね・・・膝下の動き」

   「つかえるわ~」

   「無敵っぽい」

と言いながらぶんぶん体を動かしている

小一時間ほど夢中で稽古をしていると

京子は何やら背後に気配を感じた

京子が振り向くとそこにはしのぶが立っていた

京子「しのぶ!」

しのぶ「・・・・・」しのぶは京子の方をうつむきながら見て

姿を消そうとした

京子はしのぶの姿が薄くなっていくのを感じ取り

京子「まって!」と大きな声で引きとめた

   「ずるいわ!」

   「まって!」

そう言われるとしのぶの姿がまたはっきりとした形に変わり

その呼びかけに応じてくれたようだった

京子「・・・・・・」

しのぶ「・・・・・・・」しのぶは何も言わない

京子「わかってるわ…」

   「私との関係を陰にするために来たんでしょ」

とさびしそうに言う

しのぶは何も答えず再び姿を消そうとした

京子「まって!」

しのぶ「・・・・・」しのぶは何も言わない

京子「私最近本を読むようになったから

    陰とかちょっと調べたの…」

しのぶは何も言わない

京子は少しでもしのぶと話がしたかったので

何か話題はないのかと、一生懸命考えていた

京子「あの」

しのぶ「・・・・・・」

京子「しのぶはパンと仲いいんでしょ?」

しのぶ「・・・・・」

京子「パンが持ってる熾天使あれは何?」

   「すごく怖かったの」

しのぶ「?」

京子はしのぶが不思議そうな顔をしているのを見て

京子「あれ・・熾天使だよね?」

   「本で見たの」

   「6枚の羽を持っていて」

   「上の2枚で顔をかくしていて」

   「真ん中の2枚で羽ばたいて」

   「下の2枚は体をかくしているの」

しのぶ「・・・・?」

京子はまだ不思議そうな顔をしているしのぶに

京子「パンは日傘の中に熾天使

   を持ってるよね?」

しのぶは眉をしかめながら考えている

京子「すごく怖かった・・」

   「見たのを気付かれていたら」

   「殺されていたんじゃないかって…」

   「そんな気がしたの…」

しのぶ「!」

    「そうか・・・・」

    「陰の子は熾天使なのか・・・」と初めて声を出した

京子「陰の子?」

しのぶは返事せず、ずっと考えこんでいる

京子「熾天使って一番階級が上の天使だよね?」

   「すごいね、パンは」

   「だからミカエルさんにも

    あんな口を利けるんでしょうね」と無理やり話をつなぐ

しのぶ「それは違う」

京子「そ・・・そう」

しのぶ「・・・・・・」

京子「・・・・・・」

しばらく沈黙が続く

しのぶ「ありがとう」

京子「へ?」

しのぶ「問題は多い方がいい」

京子「へ?」

しのぶ「問題をもらった」

京子は唖然としている

しのぶ「問題をもらったから、ありがとうと言った」

京子「あ・・・ああ」

しのぶが右手を突きだすと、三日月の欠けた部分に

太陽がある飾りのついた杖が手の中に現れた

京子「わっ!」京子は突然のことに驚いている

しのぶはその杖をぶんぶん振る

すると何もないのにコツンコツン音がしている

最後にちょっと強めにしのぶが杖を振ると

ジブリール「いたたたたたっ!」と言いながら

ジブリールが現れた

ジブリール「しのぶ!ひどいですね」

       「アロンの杖を物理で使うなんて

        罰当たりな」

しのぶ「こそこそと付け回すのはやめてくれない?」

ジブリールは頭を押さえながら「いたたたた」と言っている

京子はジブリールを見ると萎縮してうつむいてしまった

ジブリール「この間の一件がありますからね」

       「私を結界の中に閉じ込めて」

       「何をしでかすかわかりません」

       「あなたは京子に何度もあって」

       「何するつもりなんです?」

しのぶ「・・・・・・」呆れた顔をして

    「今回会った理由くらいわかるはず」

ジブリール「今日はわかります」

       「3回目がわかりません」

       「あいたたた、ほんと痛い、しのぶひどい」

しのぶ「その痛みは何分続く?」

ジブリール「え?」

しのぶ「1時間か?2時間か?」

    「まだ痛いのか」

    「本当に痛いのか?」

ジブリール「はぁ?」

しのぶ「答えなさい」

ジブリール「いや、まぁ・・・もう大丈夫だけど」

しのぶ「京子の心の痛みは当分消えない」

ジブリール「へ?」

しのぶ「それが3回目の理由よ」

京子「・・・・・・」

しのぶ「京子」

京子「なに?」とうつむきながら答える

しのぶ「ジブのことは気にしないで

     この通り鈍いから」

ジブリール「はぁ?」

しのぶ「京子」

京子「ん?」

しのぶ「ありがとう」

そう言いしのぶは姿を消した

京子「しのぶ!」

   「待って」

ジブリール「しのぶにかかわってはいけません」と強く言う

京子はジブリールの方をしっかり見て

京子「あなたには関係ないわ」とはっきりと答えた

ジブリール「関係あります」

京子「私としのぶの関係」

   「その二人の関係に他人が関係あるはずがない」

   「二人の関係なんだから」と強く答える

ジブリールは京子をしっかりと見ながら姿を消した

京子はしばらく呆然としていたが

我に返り考え込んでいる

ふと自分の手のひらを見ると友達たちの名前が目に入る

京子「あ」

   「マリアと真帆」

   「花丸花丸」

   「戻らなきゃ!」そう言い慌てて図書館の中に戻って行った

図書館の中ではマリアと真帆が大人しく本を読んでいた

マリア「あ、帰ってきた」

京子「ごめんごめん」

真帆「腕、大丈夫なの?」

京子「うん、平気」そう言った後、京子は少し横を向き

考え込んでいるようだった

マリア「どうかした?」

京子「う~ん」と言いながら手のひらを見る

手のひらには拓也の名前も書かれている

マリア「ん?」

京子「拓也君」

マリア「拓也君がどうかしたの?」

京子「ううん」

   「今しのぶに会ったの」

マリア「え?」

    「なんていってた?」とマリアは顔を乗り出し

少し興奮したように聞く

京子「ああ・・今日はね」

   「私との関係を陰にするために来たの」

マリア「はぁ?」

京子「今日で会ったのは4回目」

マリア「ああ・・・あの子たち陰とか陽とか

     こだわるからね・・・」

京子「だから特に話はしてないんだけど」

   「拓也君にその後のこと連絡してないな

    って思って・・・・」

マリア「う・・・うん」

    「でも・・・・なんていえばいいか・・・」

    「ちょっとね・・・・」

京子「マリアはパンが持ってる熾天使のこと知ってる?」

マリア「へ?熾天使?」

京子「・・・・陰の子って、しのぶは言っていた」

マリア「ああ、陰の子はパンドラ最大の武器ね」

京子「武器?」

マリア「そう」

京子「ふ~ん」と気のない返事をし続けて

   「拓也君にありのまま話そうと思ってるの」

マリア「え!?」

    「それはやめた方がいいと思うけど」

京子「・・・・・・」

   「マリアなら、そうしてほしい?」

   「例えあまりいい知らせじゃなくても

    本当のことが少しでも知りたいと思わない?」

マリア「・・・・・・」

京子「きっと、私たちからの連絡を

    首を長くして待ってるわ」

   「何かあったら連絡するって約束したし」

   「約束を守りたい、嘘もつきたくないの」

マリア「う・・・うん」

    「わかった、連絡してみようね」

京子「うん」

   「私がかけるわ」

   「マリア教えてくれる?」

マリア「え・・・ええ」

京子「真帆、ちょっとごめんね」そう言い二人は図書館の外に出て行った

京子の携帯から拓也へ電話がかけられる

拓也『はい、もしもし』

京子『京子です、ひさしぶり』

拓也『おおお、だれかと思ったぜ!』

   『手の方は大丈夫か?』

京子『うん、大丈夫』

拓也『そっか、まだ完治はしてないよな?』

京子『う・・うん』

拓也『おまえ無茶しそうだから』

   『大人しくしてないと、変な風に治っちゃうぞ』

京子『う・・・うん』

拓也『ん?なんか元気ないな』

   『大丈夫か』

京子は自分のことを心配してくれている拓也の言葉に感極まり

京子『ごめんね!』と涙声で言う

拓也『ん?・・・・どうかしたか?』と心配そうに聞く

京子『なかなか連絡できなくて・・・』

拓也『ああ、そんなこと気にすんな』

京子『しのぶにね、あれから3回会ったの』

拓也『おおお、そうなのか』と嬉しそうに言う

京子『私を助けてくれた』そう言いながら泣き出してしまった

拓也『・・・・・・』と何も言わず続きをかたずをのんで待っている

京子『絶対結界ユニバースを私にくれた』

   『友達との喧嘩の仲裁をしてくれた』

そう言いながらまだ泣いている

拓也『そうか・・・』と優しく言う

京子『しのぶは優しい子』と強く言う

拓也『ああ』

京子は声をあげて泣いてしまった

マリアは京子から電話を取り

マリア『拓也君ごめんね』

    『京子、泣いちゃった・・・』

拓也『おお、マリア元気か?』

マリア『ええ、私はいたって元気』

    『京子泣いちゃったけど、しのぶに何か

    あったとかじゃないから心配しないで』

    『多分、拓也君のところにしのぶに帰ってほしいんだと思う』

    『でも、それは今は無理な感じ・・・』

    『それで・・・京子泣いちゃった』

拓也『そっか』

   『ありがとな』

マリア『私も一度だけ会ったの』

    『だから、しのぶはちゃんといるから』

拓也『おう、あたりめ~だ』

マリア『うん』

    『もっといい知らせがあったらと思って・・』

    『なかなか連絡できなくてごめんね』

拓也『ああ、気にすんな』

   『てかさ、しのぶのことに限らず

    お前らの近況とか、なんでもいいや』

   『おれら友達だろ?』

マリア『うん』

拓也『でもさ、なんか男の方からはちょっとかけにくいんだわ』

   『下心あるんじゃ?とか思われそうで』と笑う

マリア『ははは』

    『京子のパンツ見て喜んでたもんねー』と笑う

拓也『ちげーわ!』

マリア『拓也君の方からもそんなこと

    気にせずかけてきたらいいよ』

    『いやなら出ないだけだから』と笑う

拓也『おう、わかった』

   『またかけるし、そっちもまたかけてこいよ』

マリア『ええ』

拓也『じゃあ、京子にも礼を言っといてくれ』

マリア『分かった』

拓也『ありがとう』

マリア『うん、バイバイ』

拓也『ああ、またな』

そう言い電話を切ったマリアは歯を食いしばっていた

マリア『しのぶ・・・・』

    『どうしてなの???』

    『どうしてこんなことになってしまったの??』

    『いったい何をしようとしているの?』

そう考えながら京子の肩を抱き図書館の中に消えていった

 しのぶはマギの草原でマギのグリモワールの上に腰を下ろし

ジブリールに語りかける

しのぶ「ジブかミカエル」

    「どちらが持っている?」

ジブリール「はい?」

しのぶ「パンドラの本のことよ」

    「私はあれを読まなければならない」

    「大学に保管されているやつは

     もうすり替えられているはず」

ジブリール「さぁ?何の事でしょう?」

しのぶ「見にいかなくても分かる」

    「あれを私に読まれたくないはず」

ジブリール「さぁ?」

しのぶ「あれは、パンが私を導くために書いた本」

ジブリール「ちがうでしょ」

しのぶ「・・・・・」

    「あなたが持ってるのね?」

ジブリール「さぁ?」

しのぶ「確かに私個人のために書かれた本じゃないけど」

    「あれを導きだと思ってくれと言われている」

    「パンから許可を得ている」

    「渡しなさい」

ジブリール「・・・・・」

しのぶ「時間をかけても仕方がない」

    「今、あなたが持っていることを確信した」

    「答えは二つ」

    「渡すことを承諾するか」

    「拒否するか」

    「無言は拒否とみなす」

ジブリール「・・・・・・」

しのぶ「申し訳ないけれど、非常に重要な

     3つの問題の答えを解く鍵がその中に書かれている」

    「だから力ずくでも奪う」

    「回答件は1度しか与えない」

    「わたしはサタン甘く見ない方がいい」

ジブリール「・・・・・」

しのぶ「パンの本の所有権はもともと私にある」

    「渡しなさい」

ジブリール「・・・・・・」

しのぶ「そう、残念だわ」

そう言いながら立ち上がり

しのぶ「ビアスコンシー・ミオビウサ」と小さな声で唱えた

ジブリールの体を蛇のような鎖が巻きついていく

ジブリール「はぅっ!」

       「いたいじゃないですか!」

しのぶ「ジブ、あなたはそれを破る自信があるんでしょうが」

    「試してみると良い」

ジブリールはもがいているがいっこうに破れる気配がなく

慌てているようだ

しのぶ「本を奪った後、ほどいてあげたいけれど

    残念ながら今は無理だわ」

ジブリール「そんな脅しに私がのるとでも?」

しのぶは不思議そうな顔をしながら

しのぶ「これは脅しになるの?」

    「事実を言っただけだと思うけど」とうつむきながらいう

ジブリールは自由に動けなくて苦しんでいる

しのぶ「私はあなたのことは嫌いじゃないわ」

    「ちょっと鈍いけど、とても優しい人」

    「できのいい天使さん」

    「言いかえれば忠実なマギファスコミオの下僕」

    「私はマギファスコミオが嫌いなの」

    「そこは忘れてはいけない」

    「だからサタンなのよ」

ジブリール「ミカエルがあなたに時間を与えているのは

       旧友パンドラのため」

       「身の程をわきまえなさい!」

しのぶはうつむきながら「あなた達はよくわかっていない」

しのぶ「マギファスコミオから与えられた命に嫌悪している」

    「命など惜しくないと言う意味よ」

    「ミカエルが私を殺すなら、私がやろうとしていることが

     失敗したと言うこと」

    「失敗するか成功するか」

    「そのどちらになるかを試している」

    「失敗したなら、それはそれで満足よ」

    「やらずにいることだけができない」

    「わたしははったりは言わない」

    「ミカエルは私に勝てない」

    「8割がた私が勝つだろう」

    「まだ100%ではないが・・・」

ジブリール「うふふふふふ」

       「何も知らないくせに」

       「ミカエルに勝てるだなんて…」

       「勘違いも甚だしい」

しのぶ「そう・・・」

    「じゃあ、私を殺せばいいわ」

    「特に問題はない」

    「ただ、よく分かってないのは

     あなた達よ」

    「その拘束魔法が解けないのと同じように」

    「あなた達はただの下僕なの」

    「私はそこから抜けるために

     行動している、そこが違い」

ジブリール「うふふふふふふふ」

       「ミカエルを甘く見てはいけない」

しのぶ「いいえ、一番厄介だから一番考えてある」

    「8割がた私が勝つ」

   

ジブリール「うふふふふふふ」

       「たまにいるんですよ」

       「そういう人が」

       「うふふふふふふ」

しのぶ「そう・・・」と言い姿を消した

ジブリール「しのぶ!」

       「待ちなさい!」

そう言いながら、もがいているが拘束魔法はビクともしないようだった

ジブリール「ミカエルー!」

       「ミカエルー!」

       「サタンが私の手から離れた!」

       「ミカエルー!」

ジブリールがしばらくの間ミカエルを呼び続けると

ようやくミカエルが現れた

ミカエル「うるさいな!」

ジブリール「ミカエル!もうあの子はダメ」

       「パンドラには悪いけど消えてもらうしかないわ」

ミカエルは呆れた顔をしながら「なんてざまだ・・・」

ジブリール「油断しただけです」

ミカエル「いや、油断するなよ」

     「どんくさい奴だ」

ジブリール「そんなことはいいんですよ!」

       「早くほどいてください!」

ミカエル「ん~」

そう言いながらミカエルは蛇のような鎖の一本をつかんでみる

ぐいぐい引っ張ってみたりして

ミカエル「ああ、壊すことはできそうだな」

ジブリール「よかった・・・じゃあ、やって下さい」

ミカエル「あ?お前も壊れるぞ」

ジブリール「え?」と冷や汗を流す

ミカエル「落ち着いてよく見ろ

     記述が見えるだろ?」

ジブリール「え・・・ええ」

ミカエル「反転しながら回転している・・・・」

     「めんどくせえ・・・・」

     「ねじれながら回転してさらに反転している」

ジブリール「た・・・確かに」

ミカエル「しかもお前の体が邪魔して全体が見えない」

     「これは読むのに何年かかかるぞ」

     「自分で読め」

     「俺はこんな面倒なことはまっぴらごめんだ」

ジブリール「しのぶを捕まえてほどかせて下さい!」

ミカエル「ははははは、逆だ」

     「お前が人質になったわけだ」

     「おれがサタンを殺せない理由の一つになったと言うわけだ」

ジブリール「そ・・・そんな・・・」

       「す・・・すいません」

ミカエル「気にするな、俺はお前なんかすぐに見捨てる」

     「何年かかってでも自分で解けばいい」

ジブリール「ひどいですよ!ミカエル」

ミカエル「はははははは」

     「俺は本気だぞ」

     「そんなことくらいで私に弱みなどできない」

ジブリール「うう・・・・」

       「しかし・・・気をつけて下さい」

       「あの子は何か企んでいます」

ミカエル「はははは、そりゃあそうだろ」

     「当たり前だ」

ジブリール「あなたに8割がた勝てると言ってました」

ミカエル「はははははは」

     「ああ、そうかい。そりゃあ楽しみだな」

     「はははははは」

     「大方そういうややこしい魔法で

      時間を稼ごうとするんだろう」

     「俺は詠唱する時間を与えない」

     「こんなの基本だろ」

     「お前は鈍いんだよ」

シーン●アエリオソメリの魔女

 教会ではジョルジュが難しい顔をしてパンドラの帰りを待っている

マリアは居心地悪そうにしながらジョルジュに話しかけた

マリア「ねぇ、奥の部屋行かないの?」

ジョルジュ「ん?なぜだ?」

マリア「いや、まぁ・・・なんか息苦しいから」

    「パンドラとは念話で話せるんじゃないの?」

ジョルジュ「応答がない・・まぁ、遠いとちょっと無理だ」

マリア「ふ~ん」

    「何かあったの?」

ジョルジュ「今アエリオソメリともめてるって言うのは

       知ってるな?」

マリア「ええ」

ジョルジュ「アークのこともあってかなり、やかましく言われている」

マリア「え?あれは本物だったって分かったんじゃないの?」

ジョルジュ「科学的にはそうなったがな・・・」

      「アエリオソメリには、ちょっと厄介な

       魔女がいるって話もしたな?」

マリア「ええ」

ジョルジュ「その魔女は本物じゃないと踏んでいるようだ」

マリア「それにしても本当にうちが盗んだんじゃないし」

ジョルジュ「サタンが盗んだと思っているようだ」

マリア「・・・・」

ジョルジュ「我々がサタンと関係があるんじゃないかと

       思っている」

マリア「・・・なんで、サタンのことを知ってるの?」とうつむきながら尋ねる

ジョルジュ「7月13日の金曜日」

      「マナの地震を察知して」

      「サタン誕生を感じたんだろう」

マリア「・・・・・・」

ジョルジュ「全部・・・当たっている」

      「侮れない、魔女だ・・・」

そう話をしているとパンドラが玄関から入ってき

日傘を閉じくるくる回しながら二人の方を見る

パンドラ「そうか」

ジョルジュ「ああ、帰ってきたか」

マリア「お帰りパンドラ」

パンドラ「ああ」と返事し続けて

     「たぶんその魔女はマーブロス・ペタローザだ」

ジョルジュ「ん?知っているのか?」

パンドラ「ああ」

    「アエリオソメリを作った教祖の娘だ」

    「アエリオソメリがこんなに大きくなったのは

    その娘の力だと聞いている」

マリア「む…娘って・・・・」

    「パンドラみたいに何百年も生きてるってこと?」

パンドラ「そうだな」

ジョルジュ「マーブロス・ペタローザ・・・・」

      「架空の人物だと聞いているが・・・」

パンドラ「いいや、会ったことがある」

マリア「強いの?」

パンドラ「ああ」

     「禁断のブラックエーテル系の魔法を使うからな」

     「イカレてるとしか言いようがない」

マリア「ブラックエーテルは魔法に使うと体が

    燃えちゃうんじゃないの?」

パンドラ「そうだ」

     「霊体でも、消滅する」

マリア「ど・・・・どうやって・・・」

パンドラ「さぁ?知らない」

     「会ったことはあるが戦ったことはない」

     「戦う前に私たちの軍は負けてしまったんだ」

マリア「ま・・負けたの?」

パンドラ「言っとくが私は負けてないぞ」

マリア「負けたんだ」と意地悪そうに言う

パンドラ「あのなー」と呆れる

マリア「パンドラは駄々をこねてまだアエリオソメリのところには

    行ってないんだよね?」

パンドラ「ああ、行ってどうなる?」

     「そう思っている」

マリア「ふ~ん」

    「その~なんだっけ?」

    「魔女・・・そいつが怖いんだぁ~」と意地悪そうに言う

パンドラ「はぁ?」と呆れた顔をしながら

     「会ったとして戦うことになるわけでもあるまいし」

     「怖いとか、そういう問題じゃないだろう」

     「単純だな、お前は」

マリア「へいへい」

パンドラ「ペタローザはブラックエーテルを使うっていう点で

      イカレてると言ったが」

     「悪い噂は聞いたことがない」

     「堅苦しいまじめな奴だ」

シーン@ コールド・ジェイル解放 その2

マリアは床につくと毎晩のように、しのぶのことを考えていた

マリア『しのぶは何をしようとしているのか?』

    『しのぶの言ったことにはすべてに意味がある』

    『入り口を見せた』

    『入り口・・・』

    『京子はその意味が分かっていない』

    『・・・・京子には分からないことは

     最初から分かっていた』

    『だから私がいる時に、それを伝えた』

    『私が京子を入口に入れるため?』

    『・・・・京子は出られる?』

    『京子は・・・問答は多分できない・・・』

    『直感型の人』

    『まっすぐ』

    『珍しいほどまっすぐで・・・単純』

    『そこが魅力』

    『入り口に入って問答をして外に出られるタイプじゃない』

    『きょ・・・う・・・こ・・・』

そんな事を考えているうちに眠りについていた

マリアは夢を見ていた

マリア『しのぶはサタン』

    『サタンは教会の敵』

    『京子嘘でしょ?』

    『しのぶがサタンだなんて』

京子『ううん、本当よ』

   『だから拓也君にはしのぶのことをあまり話せなかったの』

マリア『しのぶはそんな子じゃないわ』

    『あなたはしのぶのことを知らないのよ』

京子『どうしたの?マリア』

   『マリアらしくない』

マリア『え?』

京子『しのぶのことが嫌いなんでしょ?』

   『丁度いいんじゃない?』

   『前のようにお仕事としてやっつけちゃえばいい』

マリア『!!!』

    『京子!なんてひどいことを言うの?!』

    『駄目よ!』

京子『?マリア?』

   『しのぶのことが嫌いなんでしょ?』

マリア『嫌い・・とか・・そういうことじゃなくて・・・』

    『とにかくやっつけちゃえばいいとか・・』

    『そんなことを言ってはダメ』

京子『なぜ?』

   『しのぶはサタン、教会の敵』

   『マリアはしのぶが大嫌い』

   『だからやっつければいいの』

マリア『駄目よ!』

京子『なぜ?』

   『なぜ駄目だと思うの?』

   『嫌いだって言うのは嘘なの?』

マリア『とにかく・・・』

    『とにかくダメなのよ・・・』

京子『なぜ?』

   『マリアは嘘をついていたの?』

   『嘘つきなの?』

   『ねぇ?』

   『ねぇ?』

マリア『やめて!』

    『私をそんなに見ないで!』

京子『なぜ?』

   『なぜ見られるといやなの?』

   『ねぇ』

   『ねぇ』

マリア『やめてーーー!』

    『私にも分からないの!』

    『だからそんなに見ないで!』

京子『分からないのなら私が見てあげる』

マリア『いや!』

    『見ないで!』

京子『私の第六チャクラでマリアの心を見抜く』

マリア『いやよ!』

    『見ないで!』

    『お願いだから見ないで!』

京子『なぜ?』

   『なぜ真実を見られたくないの?』

   『ねぇ?』

   『知りたいでしょ?』

   『ねぇ?』

   『ねぇ?』

マリア『いやぁああああああああああああああ』

マリアは京子から逃れるために一心不乱に走っている

それでも京子の声が追いかけてくる

京子『ねぇ』

   『ねぇ』

   『走って逃げても駄目だよ』

   『走って逃げていることがすでに答えなの』

   『ほら答えが見えた』

マリア『!!!』

マリアは、まっ白い光の中に抜け出したのを感じ取った

マリア『なに?ここは?』

マリアが驚きながら振り返ると

三角座りをしてうつむいている自分自身を見つけた

マリア『これは!!?』

京子『マリア!外に出たわ!』

   『外から中を見ている』

マリア『!』

しのぶ『あれが無意識の中のあなた』

    『怯えているようにも見える』

マリア『いいえ怯えてなんかいないわ!』

京子『いいえ!怯えている』

   『しっかり見てマリア』

しのぶ『あなたは、なぜ一人ぼっちで座っているの?』

マリア『誰だって一人ぼっちでしょうが!』

京子『いいえ、違うわ!』

   『私は違う』

しのぶ『私も違う』

マリア『うそよ!』

    『誰だって一人ぼっちに決まっている!』

しのぶ『よく見てマリア、外から中を見ている』

    『このチャンスを逃してはいけない』

京子『そうよ!外から中を見ている』

   『中にいるあなたを正せる絶好のチャンス』

   『よく見て!』

マリア『見ているわ』

    『何をしろと?』

しのぶ『ちゃんと見て!』

京子『ちゃんと見て』

マリア『だから・・・見てるって!』

    『なにをしろというの???』

しのぶ『ヒントは提示できない』

    『中に戻ってしまう』

    『ちゃんと見て!』

京子『ちゃんと見ればわかる!』

マリア『見てるよ!』

    『見てるって言ってるでしょ!』

しのぶ『間に合わない!』

    『中に引き込まれる』

    『急げ!』

マリア『しのぶ!』

    『なぜあなたは私を助けてくれるの?』

しのぶ『そんなことは今はどうでもいい』

    『急げ!』

    『もっと見るのよ!』

京子『何も感じないの!?』

    『マリア!閉じてしまう』

    『もう二度と外に出られないかもしれない!』

マリア『感じる???』

    『中を見て感じたこと???』

    『!』

   

    『中の私は・・・』

    『一人ぼっち』

    『みじめで・・・弱弱しい』

京子『そう!』

しのぶ『そうよ!』

    『どっちを選ぶ?』

京子『外からならば変えられる』

しのぶ『早く!』

マリア『どっちって?なに?』

しのぶ『どっちか一つじゃないと駄目よ!』

京子『それが不安定さを呼ぶ』

マリア『不安定?』

京子『どっちか一つじゃないと安定しない』

しのぶ『選ぶためにはその二つの正体を知らなければならない』

マリア『二つって何?』

しのぶ・京子『私たちにはわからない!』

パンドラ『自尊心ゆえに、一人ぼっちでみじめなお前を知っている』

京子『かわいくてみんなに愛されているマリアを知ってるよ!』

しのぶ『どっちにする?』

    『外からでないと中の自分を正せない』

    『選んで!はやく!』

マリア『立って!』

中のマリアが外のマリアの声に気づきこちらを

うつろな顔をしながら見ている

マリア『早く立ちなさい!』

そう言われるとゆっくりだが中のマリアはゆっくりだが立ち上がり始めた

マリア『しゃきっと立ちなさい!』

    『胸を張って!』

    『なんて顔をしてるの!』

    『かわいいマリアはそんな顔はしないの!』

    『さぁ!笑って!』

京子『さぁ、笑って!』

しのぶ『さぁ!』

パンドラ『さぁ、笑え!』

ジョルジュ『さぁ!』

そう言われると中のマリアは笑顔を作った

すると中のマリアの周りに京子・しのぶ・ジョルジュ・パンドラが現れる

しのぶ『ほら、一人ぼっちじゃない』

京子『あたりまえじゃない』

マリア『しのぶ!』と涙を浮かべながら、しのぶに抱きつき続いて

    『京子!』と言いながら京子に抱きついた

それはマリアのコールド・ジェイルがとけた瞬間だった

 朝になりマリアはいつものように教会の受け付けのため

玄関から入ってすぐの部屋で座っている

 そこにジョルジュとパンドラが帰ってくる

マリアから圧倒的な量の魔力が放出されていて

パンドラとジョルジュにはすぐにコールド・ジェイルが

解けたのだとわかった

ジョルジュ「ちょっとは抑えないと・・・目立つぞ」

パンドラ「そうか・・・・」

     「さすがナンバー1だな」

     「口だけかと思っていたが」と優しく言う

マリア「う・・うん、おはよう」

ジョルジュ「とりあえずもう少し魔力を抑えろ」

      「逆に敵が寄ってくる」

マリア「う・・うん」

    「今やってるところ・・・」

    「うまくいかない」

パンドラ「なんだ?えらく大人しいな」

     「コールド・ジェイルが解けて

      うれしくないのか?」

マリア「ううん、うれしい」

    「けど・・・」

ジョルジュ・パンドラ「?」

マリア「パンドラ・・」

パンドラ「ん?」

マリア「京子は普通の子になった」

パンドラ「・・・・」

マリア「みんなのことを考えている

     とても優しい子」

   「だいぶ元気になって武道を始めたの」

パンドラ「そうか」と優しく言う

マリア「輝きも徐々に取り戻している」

    「そう・・・」

    「普通の子になったの」そう言いうつむいてしまった

パンドラ「・・・・・・」

パンドラは何も言わずマリアの頭をなでた後

書庫に入って行った

ジョルジュも何も言わず奥の部屋に引っ込んでいった

マリア『真帆・・・真帆が今の京子に満足しているなら・・』

    『それでいい・・・・』

    『そのためにしのぶは真帆を私に引き合わせた』

    『真帆・・・これでいいの?』

    『真帆・・・京子・・・・』

シーン●物の急所

 教会の奥の部屋の壁には大きな魔法陣がかけてあり

その魔法陣は東京の地図とリンクしている

ジョルジュはその魔法陣を眺め

ジョルジュ「う~ん、また何かをやり始めたようだな」

      「マリアちょっと見てきてくれないか?」

マリア「え?」

ジョルジュ「最近アエリオソメリの連中が何やら魔法陣を

       描いて回っているようなんだ」

マリア「そうなの?」

    「・・・・ごめん・・・ちょっと、真帆と約束があるの」

ジョルジュ「んー!」とちょっと怖い顔をする

マリア「ごめんなさい」

パンドラ「ああ、かまわない、私が行こう」

ジョルジュ「マリア、魔力が戻ったんだから

       仕事のことも忘れてはいけないよ」

マリア「はい・・・ごめんなさい」

パンドラ「まぁ、いいじゃないか。若いんだから」

マリア「ありがとう、パンドラ」

    「今度はちゃんと私が行くから」

パンドラ「ああ、気にするな」

パンドラは地図を確認し姿を消しながら

パンドラ「マリア、お前も送ってやろうか?

      どこだ?」

マリア「え?まだいたの!?」

パンドラ「姿を消しただけだ」

     「習ってないのか?」

マリア「あー、習ったけど・・・苦手」

パンドラ「ははは、集中力がいるからな」

     「お前は苦手そうだ」

マリア「え・・ええ」

    「送るって・・・図書館だけど

     あの辺に瞬間移動の魔法陣あるの?」

パンドラ「あのなー、何度も言うようだが私は瞬間移動の魔法は

      嫌いなんだ。覚えろ!」

マリア「興味ゼロ」

パンドラ「・・・・」

     「図書館だな」そう言いマリアを抱きかかえる

マリア「きゃっ!」

パンドラ「おお、かわいい声を出すんだな」と笑い

     「お前も私の反射の結界魔法の中だ」

     「もう外からは見えない」そう言いながら

マリアを抱きかかえ玄関を出て日傘を

デス・アズワエルワンドの姿に戻した

マリア「あら?それデス・アズラエルワンドだったの?」

パンドラは呆れながら「あ?気づいてなかったのか?」

     「鈍いなおまえ」

マリア「興味ゼロ」

パンドラ「しっかりつかまっとけ落とすぞ」

マリア「え?」

パンドラが杖を前に突き出すとデス・アズラエルワンドの黒い羽が

大きく広がりものすごい勢いで垂直離陸しだした

マリア「ぎゃぁあああああぁぁぁ!!!」と悲鳴をあげる

パンドラ「うるさい!」

マリア「た・・・・高いーーーー!」

パンドラ「貴重な経験だ!」

     「肉体を持って空を飛べるのは私くらいのものだぞ!」

     「はははははは!」

ある程度の高さまで行くとパンドラは体の向きをかえ

図書館に向かって飛び始める

パンドラ「マリア!目を瞑るな!」

     「いい景色だぞ!」

マリア「いやぁぁああああ」とパンドラにしがみつく

パンドラ「痛いからそんなにつかむな!」

     「ほら、目を開けてみろ」

     「落ちやしない」

     「アークエンジェルの翼だぞ」

     「落ちるわけないだろ」

そう言われるとマリアは恐る恐る目を開け始めた

マリア「わぁ!」

パンドラ「どうだ、いい眺めだろ」

マリア「ええ!すごい!」

   「すごいわ!」

そんなことを話しているうちに図書館が見えてきて

図書館の近くの林の中に降り立ちマリアを離した

マリア「ありがとう、パンドラ」

パンドラ「ああ、ついでだ気にするな」

そう言い、また空に向かって物凄いスピードで飛んで行った

パンドラが目的の場所に到着し、あたりを見回すと、すぐに

アエリオソメリの者と思われる男たちを発見できた

男たちは地面に何やら魔法陣を描いている

パンドラは描き終わった後に内容を確認するために

男たちには声をかけずにその場で描き終わるのを待つことにした

パンドラは姿を消したまま近くにあったベンチに腰をかけて

退屈そうにしていると、後ろの方から「はひふへほ!」と

大きな声が聞こえてくる

パンドラ『あ?』

パンドラはなんだか聞き覚えのある声だなと思っていると

京子「はひふへほ!」とまた大きな声がする

パンドラは、京子の声だと気づき声のする方に少し歩み寄って見た

すると京子が何やら武道の稽古をしている

京子は三角巾は取っているが腕にはまだ添え木がされており

包帯でぐるぐる巻きの右手をぶんぶん振っている

パンドラ『お・・・おい・・・大丈夫か?』と呆れながら京子を見ている

よく京子を見ると、京子がくれたTシャツとジャージと同じ服を

着ていることに気がついた

パンドラ『・・・・・・・あの服・・』

パンドラはあの服は確かにお古だったのだろうけど

いらない服だったわけじゃないのだと感じていた

京子「はひふへほ!」と大きな声をあげながら

その声に合わせて拳を突き出したり足を振り上げたりしている

胸を張り重心をへその上に固定し膝の下をうまく動かし

上半身が全くぶれない姿を見て

パンドラ『ほぅ・・・・なかなか美しいな』と感心している

京子「はひふへほ!」

パンドラ『いや・・・・その掛け声は

      何とかならんのか?』と苦笑いしている

するとアエリオソメリの男の一人が京子の方にやってきて

男「おいっ!うるさいぞ!」と京子に声をかける

京子「あ、ごめんなさい」そう返事し

少し小さめの声で

京子「はひふへほ」と稽古を再開した

男「ん?」

  「おまえ・・・マリアの連れだな?」

京子「へ?」

男「お前マリアとよく一緒にいる奴だな」

京子「え・・・ええ」

   「なにか?」と稽古を中断してその男の方に向き直る

男は仲間の方を向いて

男「おいっ!いいやつを見つけた」

仲間たち「ん?」

男「マリアの仲間だ」

仲間たちは京子の方に近づきながら

仲間たち「マリア?」

      「ああ・・・本当だ」

      「こいつマリアといつも一緒にいる奴だ」

京子「マリアがどうかしたの?」

男「マリアをここに呼べ」

京子「はぁ?」

   「たぶん今は無理」

   「なんで?」

男「緊急の用だって言えばいい」

京子は不穏な空気を読み取り

京子「マリアは今、友達と一緒にいるわ」

   「だから来れない」

男「遊んでる場合じゃないと思うがな」

京子「私も後で合流することになってるの」

   「伝言があれば伝えとくけど」

男「お前、よく状況がわかってないようだな?」

京子「いいえ、私は感がいいのよ」

   「だからマリアをあなた達に会わせない」

仲間「威勢のいいねーちゃんだな~」と笑う

   「武道をやってるから腕に自信があるのかい?」

とからかうように言う

男「俺たちアエリオソメリの中ではあのキチガイ女に

  恨みがあるやつが沢山いるからな」

京子は困った顔をしながら上を向いて

京子「マリアって…結構恨まれてるのね・・・」と小さな声で言う

仲間「携帯を貸せ、電話番号が入ってるだろ」と言いながら

京子ににじり寄ってくる

パンドラ『さぁ、どうする京子』

     『これからの長い人生』

     『こういうこともあるだろう』

     『お前は助けなしで生きていかなければならない』

     『さぁ、どうする!』

男の一人が京子のズボンのポケットの方に手を伸ばすと

京子は素早く膝下を動かし後ろに下がり

京子「どこ触ろうとしてんのよ!変態!」

と言いながら、武道の構えをした

男は笑いながら

男「おめーみたいなガキに興味ねーよ!」

  「ポケットに携帯が入ってんだろうが!」と言う

男は仲間たちの方を見て「取り上げるぞ」と指示をし

6人全員で京子に襲い掛かり始めた

京子は膝下の高速な動きでうまくかわしていくが

相手の人数が多い

京子「あまりしつこいと蹴りいれるわよ!」

男「やれよ!そんなもん効くかバーカ!」

京子は束になってかかってくる男たちをまた更に

高速で動きひらりとうまくかわしたが、そのはずみで

ズボンから携帯が落ちてしまう

京子「あっ!」

男の一人がその携帯を拾いにいくが

京子は素早く動きその男に蹴りを入れた

男は結界を張っていたが結界ごと吹き飛ばされる

男「うお!」と驚いている

京子は足をぶんぶん振りながら「あいたたたたた」と痛がっている

京子が足を気にしているうちに携帯が他の男に取られてしまった

京子は携帯を取られたことに気づき

京子「かえしなさい!」とその男の方に飛びかかる

すると別の男が前に立ちはだかりその結界によって

京子は弾き飛ばされてしまう

京子「うっ!」と声をあげながらも、うまくバランスを取り戻し

しっかりと構えをとりなおす

携帯を持った男は携帯を広げマリアの電話番号を探している

京子「やめろ!」

そう言うが前にもう一人男が立ちはだかっていて

まったく効果がない

京子『結界・・・・』

京子のおでこがジンジンする

パンドラ『ん?』

     『とても小さくだが開くのか?』

京子の額がきらりと光る

京子『見える』

   『結界が見える・・・』

   『薄い部分・・・』

   『どんなものにも急所がある』

   『それが物の急所』

   『見える』

   『物の急所が、見える!』

京子は前に立ちはだかってる男に向かってこぶしを振り上げる

京子「はひふへほー!」

パンドラ『バカ!やめろ!』

     『折れてる右手じゃないか!』

     『もう使い物にならなくなるぞ!』

パンドラがそう思うのが早いか遅いかのタイミングで

京子の拳は男の結界を打ち破り男の顔面に到達していた

男「うぎゃぁぁっぁあああああ!」と鼻血を流しながら地面に転がる

携帯を持った男「おいっ!ちゃんと結界はっとけよ」

殴られた男「いや・・結界は・・・」と悶絶しながらいう

京子は携帯を持った男の方に向かい「返せ!」というが

また別の男たちが前に立ちはだかる

京子は「どけっ!」と言いながら他の男たちもなぎ倒していく

パンドラ『な・・・なんてやつだ』

     『魔法の結界を物理でつぶすなんて』

     『前代未聞だぞ!』と呆れた顔をしている

携帯を持った男「お前ら何をやってる!」

男「こ・・・こいつ!おかしい!」

  「早く電話をかけろ!もたない」

そう言いながら京子に魔法弾を撃ち込んでくる

京子は魔法弾を浴びて後ろに吹き飛ばされるが

ユニバースによってダメージは受けていない

男「こ・・・こいつ結界を持ってるぞ」

 「もっと撃て!」

どんどん京子に向かって魔法弾が撃ち込まれるが

後ろに少し下がらせられるだけでダメージはない

京子『しのぶ・・・・』

  『ありがとうしのぶ…』

男「そうか、結界を持っているなら

  遠慮はしない」そう言いながら胸からペンタクルをを取り出し

  「スパシマシャリ!」と唱える

すると男の前に10本程の短剣が現れ、

京子の方を向いて宙に浮いている

男「さぁ、お前の結界は物理にも効くのかな?」

  「お前は魔法が使えないようだ」

  「大方誰かに結界を張ってもらったのだろう」

  「その場合は物理結界は作動していないのが一般的だ」

  「なぜなら、他人と触れ合うことができなくなるからだ」

  「そうだろ?おじょうちゃん」

京子は構えたまま黙っている

   『そ・・・そうなんだ・・・』

男「この短剣は魔法ではあるが

  魔法的物理攻撃だ」

  「さぁ、かわせるかな?」と言いながらニヤニヤしている

パンドラ『ま・・・まずいな・・・』

そんなことをしているうちにマリアの電話番号を見つけた男が

電話をかけ始めている

京子「やめろ!」と言いながら男にとびかかっていく

短剣の男「バカかお前、本当に撃つぞ!」

他の男たちが魔法弾を放ち京子の進行を阻む

京子「なんだ、あなたそれ撃つ度胸ないんじゃない」と笑う

 一方その頃、マリアと真帆は図書館で話をしていた

マリア「真帆」

真帆「ん?」

マリア「真帆は京子の今の状態をどう思う?」

真帆「大分昔みたいに元気になってきたわねー」と嬉しそうに言う

マリア「そうね・・・」真帆のうれしそうな顔を見て

マリアは複雑な顔をしている

マリア『・・・真帆がそれでいいと思うなら・・・』

    『それでいい・・・』

    『わたしより、ずっと古いんだから』

真帆「それにね、最近は輝いてるわよ」

マリア「そうね・・・」

真帆「それでいて、みんなに気配りもできるようになって」

マリア「うん」と元気なく返事する

真帆「どうしたのマリア?」

マリア「え?」と驚きながら慌てて

    「何でもないよ」と取り繕う

真帆「マリア、チャクラは開いたのかな?」

マリア「さぁ・・・私も見えないから」

    「でもいいの」

    「チャクラが開いていようがいまいが」

真帆「そうね」

   「京子は元気になって、もうすぐ包帯も

    取れるって言ってた」

マリア「そうね」

真帆「京子の腕が治ったらみんなでバレーしようね!」

マリア「ええ」

そう話しているとマリアの携帯のバイブ音がする

真帆「マリア、電話じゃない?」

マリア「う・・うん」と返事をしながら携帯を確認する

    「京子だわ」

    「図書館では出れないのわかってるでしょうに」

    「メールで・・・・」と言い掛け

    「何かあったのかしら?」と嫌な予感が働き

携帯を広げ小さな声で「もしもし」と言う

アエリオソメリの男「おー、マリアか」

マリア「!?だれ?」

携帯のスピーカーから爆発音が無数に聞こえている

マリア「!!」

    「なにをしているの!?」

アエリオソメリの男「美高公園だ」

男の声の後ろから「返せー!」と怒鳴っている京子の声が聞こえる

マリア「京子!」

   「京子ーーーー!」と大きな声を上げマリアは実高公園に

向かい走り始めた

図書館の中にいた人たちは全員驚いている

真帆「マリア!」

   「まって!」

   「京子に何かあったの!?」と言いながらマリアを追いかけるように

図書館を後にした

美高公園では京子とアエリオソメリとの戦闘が続いていた

どんどん結界を打ち破り3人はもうグロッキー状態になっていた

携帯を持った男は「さぁ、もう用は済んだ」と言いながら携帯を投げ捨てる

京子「あ!」

京子の携帯は地面にたたきつけられ、いくつかの部品が飛び散っている

京子「お・・・お前!」と怒りをあらわにし、その男にとびかかる

男は応戦するために魔法弾をいくつも撃つが京子のユニバースにはじかれる

京子「物の急所が見える!」と言いながらその男に拳を振り下ろした

男「ばかな!」と言うや否や京子の拳はその男の顔面に到達していた

男「ぐはぁあああああ!」と転がり回っている

短剣の男「このアマ!大人しくしないと本当に撃つぞ!」

京子は声のする方に向き直り

京子「遠慮せずに撃てばいい」

   「その短剣がこの体を貫こうとも」

   「お前の顔面に私の拳が到達する」

   「いくぞ!」と言い京子はその男にとびかかった

パンドラ『ちぃ!』

     『無茶しやがる!』

     『京子は本気だ!』と思いながら

デス・アズワエルワンドを構える

短剣の男」「スパシマシェリ!」と唱え短剣を発射する

パンドラ「クリソス・ブロンティ」と唱え短剣めがけて金色の雷を放つ

京子「ユニヴァーズ」と小さな声で言う

パンドラ「!??しのぶの声?」

京子の詠唱と共にユニバースが展開され短剣もろともその男を弾き飛ばす

それに追い打ちをかけるかのように京子はさらに加速して

男の顔面に拳をねじ込んだ

短剣の男「ぐわぁぁああああああ!」

と言いながら地面にたたきつけられ気絶してしまったようだ

パンドラ「京子!」

京子「ん?・・パ・・・パン」

一人だけ無傷で残った男はパンドラを見て

男「パ・・・・パンドラ!」と怯えた顔をしながら言い

 「ひぇ~~~!」と言って逃げ出してしまった

京子「パン、どうしたの?」とパンドラがいることに驚いているようだ

パンドラ「お前、いつの間にユニバースを詠唱できるようになった?」

京子「ん?今」

パンドラ「はぁ?」

京子「私、物まね名人だから」

パンドラ「え?」

京子「しのぶのものまねをしたの」

パンドラは唖然とした顔をしている

パンドラ「い・・・・今・・はじめてか?」

京子「そう」

   「なんせ職人だから」

パンドラ「ははははははっは」と高らかに笑う

京子「物まね職人。へへへ」

パンドラ「ついてこい京子」

     「マリアがこっちに向かってるはずだ」

     「ここまで走ったら結構遠い」

     「迎えに行こう」

京子「え・・ええ」と言いながら携帯を拾い上げている

パンドラは書きかけの魔法陣を見ながら

パンドラ「ちっ!」

     「なんだ、全然描けてないじゃないか」

     「結界魔法ではないようだが・・・分からん」

京子「ごめんね・・・私何か邪魔しちゃったの?」

パンドラ「はぁ?」

     「あいつらがお前に絡んでいったんだろ」

     「お前に過失はない」

     「気にするな」

京子「う・・うん」と言いながら、うつむき壊れた携帯を見ている

パンドラ「携帯は心配するな」

     「私が直してやる」

京子「え?・・・いいの・・・」

   「大丈夫」とパンドラの申し入れを断った

パンドラ「違う!」

     「直したい」

     「直したくて気が狂いそうだ」

     「直させろ!」

     「命令だ!」

京子は口をとがらせながら「何それ!」とちょっと怒った風な顔をして言う

パンドラと京子は肩を並べてマリア達が来るであろう道を歩いて行く

パンドラは京子の携帯を魔法で直しながら京子に話す

パンドラ「それにしても声までそっくりだったな」

     「びっくりしたぞ」

京子「ん?」

   「しのぶ?」

パンドラ「ああ」

そう返事しながらパンドラは携帯を京子に返した

京子「わぁ!きれい新品みたいになってる」

そう言うと京子はパンドラの前に回り込み

京子「ありがとうパン!」

パンドラ「ああ、気にするな。お安い御用だ」

     「それにしても、マリアまだ見えないな」

     

京子「かわいそうに、きっと走ってると思うよ」

   「こんな感じで」といかにも女の子の走り方の物真似をして見せた

パンドラ「はははははははは」と高らかに笑う

通りすがりの人たちみんなが振り返っている

パンドラ「お前は面白いな!」

京子「そう?」

パンドラ「結界魔法を物理で破壊するのは痛快だったぞ」

     「あれはどういう仕掛けだ?」

京子「物の急所」

パンドラ「物の急所?」

京子「そう」

   「どんなものにでも急所があるの」

パンドラ「ほう」

     「誰に習った?」

京子「ん?」

   「オリジナル」

ますます京子のことを気に入ったパンドラは

パンドラ「はははははは」と高らかに笑う

京子は驚いて

京子「ちょっと、パン・・」

   「声が大きい」

   「みんなも見てるよ・・」と注意をする

パンドラ「そうか」

     「美しいから見られても構わない」

     「はははははは」と美しく高らかに笑う

京子は恥ずかしそうに「うう」とうなっている

パンドラ「お前も笑え」

京子「え?」

パンドラ「私のように美しく」

京子「えへへへ」と照れたように笑う

パンドラ「何だそれは!」

     「0点だ!」

     「もう一度笑ってみろ!」

京子「ふぇふぇふぇふぇふぇ」と照れながらだが思い切って

大きな声で笑ってみる

パンドラ「ははははは」と高らかに笑う

京子「ふぇふぇふぇふぇふぇ」と高らかに笑う

そしてお互い顔を見合せた

京子はなんだか可笑しくなって

京子「ははははは」と本当に笑う

パンドラ「いいぞ!京子」

     「美しくはないが高らかだ!」

京子・パンドラ「はははははははは」と二人は高らかに笑った

パンドラ「マリア来ないな」

     「あいつ本当にこっちに向かっているのか?」

     「薄情なやつだ」

     「こんなに遅かったら役に立たない」

京子「う~ん、図書館からは結構あるからねー・・・」

パンドラ「まぁ、そうだな」

     「よし」

    「飛ぶぞ!」と言い京子を抱き抱え

傘を前に突き立てる

すると傘が杖に変わり黒い大きな羽が広がり天高く二人を

連れて行ってくれた

京子「わぁー!」

   「すごい!」

パンドラ「ははは、京子は怖くないのか?」

京子「ジブの時は怖かったけど

    パンなら安心」

パンドラ「はははははは!」と高らかに笑う

そして方向を変えてマリアが来るであろう方向に

飛び始めた

京子「あ!」

   「マリア!見つけた!」

   「真帆も一緒!」

パンドラ「ん~」と言いながら下を見、マリアが走っているのを確認した

     「ははははは!」

     「京子がやったのと同じ走り方をしてるじゃないか!」

     「ははははははははっ!」

京子「笑っちゃ可哀そうよ!」

   「あ・・・そうか・・・マリアに電話してあげたらよかったんだ・・」

パンドラ「ははははははっ!」

     「いいんだいいんだ!」

     「あいつ最近だれていたからな!」

     「いい運動になっただろう!」

京子「う~ん、確かにマリアは運動不足かも」

パンドラ「ああ」

そう言いマリアの真上くらいで停止しマリアを眺めている

京子「パン?」

   「降りないの?」

パンドラ「もうちょっと走らせよう」

京子「ひどい」と苦笑いする

パンドラ「京子」

京子「ん?」

パンドラ「お前はそのままでいい」

京子「へ?」

パンドラ「お前は自分が思ったように生きろ」

京子「?」

パンドラ「お前は面白い!」

     「気に入ったぞ京子」と満面の笑みを見せる

京子はちょっと恥ずかしそうな顔をしながらパンドラのことを見ている

パンドラ「お前は自分が思ったように行動すればいい!」

     「お前には友達がたくさんいる」

     「もしも道を違えたならば」

     「友がそれを正してくれるだろう!」

     「友を信じろ!」

     「自分が信じてもらいたければ

     まずはお前が相手を信じろ!」

京子「う・・・うん」

パンドラはマリアに向かって降下しながら

パンドラ「マリアーーー!」と叫ぶ

マリア「あ?」マリアは声のする方を見ながら驚いている

パンドラ「私は目覚めたぞ!」

     「私は思い出した!」

     「燃えるような日々を過ごしていた時の気持ちを!」

     「しのぶには満足をもらい」

     「京子に生きる楽しみを思い出させてもらった」

     「マリア!」

     「マリア!おまえもだ!」

マリア「はぁ?」

    「な・・なに?、京子!」

パンドラ「マリアーーーー!」と叫びながらマリアに向かって飛び

とても満足そうに笑っている

パンドラ「その子と腕を組め!」

マリア「あ・・・なによ?」

    「京子大丈夫だったの?」

パンドラ「早くその子と腕を組め!」

マリア「へ?ま・・真帆のこと?」と言いながら

真帆と腕を組む

マリア「「こ・・こう?」

パンドラ「よし!」と言いながらマリアに向かって飛んでいく

パンドラはマリアも真帆ごと抱き抱え天高くまた上昇し

くるくると回る

マリア「うぎゃぁぁぁあああああああ」

真帆「ぎゃぁあああああああああああ」

京子「わわわわわわ」

パンドラ「回るぞ!もっと美しく」と言いながらもっともっとくるくる回る

マリア「うえ!気持ち悪い!」

京子「パン~・・・気持ち悪い」

パンドラ「私は気分がいい!」

     「しのぶは私と真実の答えを交換した仲」

     「性別を超えた恋人だと言える!」

     「なら、お前たちは私の子供だ!」

     「しのぶと私の子供だ!」

     「はははははははは!」

マリア「なんで?・・うう・・・げっぷ」

京子「と・・・とにかく・・・降ろして」

パンドラ「京子!マリア!」

     「お前たちは無敵だ!」

     「私としのぶが付いている」

     「思ったように生きろ!」

     「私としのぶのことを求めろ!」

     「私たち・・・」

     「いや・・少なくとも私は!」

     「求められることを激しく求める!」

   

     「これは私の望みだ!」

     「思い出したぞ!」

     「私はまだまだ眠りから覚めきっていなっかったのだな」

    「そうだ、京子!、マリア!」

    「お前たちが思い出させてくれた!」

   

    「私は求められることを!

     激しく求めていた!」

   

    「そうだ!私は求められることを激しく求めている!!!」

   

    「私を必要としろ!」

    「京子!マリア!」

    「しのぶーーーーーーーーー!」

と叫びながらぐんぐん加速する

真帆「うぎゃぁぁああああああああ」

京子「真帆!大丈夫?」

   「言ってなかったけど、この人魔女なの」

真帆「ぎょえええええええええええ!」と鼻水や涙を流しながら叫んでいる

パンドラ「安心しろ!アークエンジェルの翼が

      この程度の重さの物を落とすわけないだろう!」

     「はははははははははは」

     「京子も笑え、美しく!」

京子「ふぇふぇふぇふぇふぇふぇふぇ」

パンドラ「はははははははははは!」

京子「ふぇふぇふぇふぇふぇふぇふぇ」

パンドラは遠くを見つめるような眼をしながら、こうつぶやいていた

パンドラ「そうだったな・・・フエルト」

     「お前の言う通りだ・・」

     「『愛することを恐れていても・・・

      君はいつか誰かのことを・・・

      好きになる』・・・・か・・・・」

京子「!?」

   「パ・・・パン?」

   「泣いてるの?」

マリア「え?」

パンドラは晴れ晴れとした顔をしながら涙を流していた

京子「パン!笑って!」

   「美しく高らかに!」

   「ふぇふぇふぇふぇふぇふぇふぇふぇふぇふぇ!」

パンドラ「ははははははははっはは!」

      「いいぞ京子!おまえは面白い!」

京子「ふぇふぇふぇふぇふぇふぇ」

パンドラ「はははははははは!」

マリア「う・・・うるさい!」

真帆「このノリは・・・なんなの?」

マリア「さぁ?」

京子「ふぇふぇふぇふぇふぇふぇふぇふぇ!」

パンドラ「ははははははははは!」

シーン@ ピロートーク

 教会ではパンドラが玄関から入ってすぐの部屋で

退屈そうに座っている

マリアはいつもの自分のスペースにパンドラがいることに迷惑している

マリア「あ・・・あの・・・」

    「書庫にいかないの?」

パンドラ「あ?」

     「なぜだ?」

マリア「いや・・・・あの・・・」

パンドラ「ん?」

マリア「うっとおしいです」

パンドラ「はぁ?」

     「おまえなー」

     「こんなに可愛がってやってるのに」

マリア「はぁ?」

    「かわいがってる?」

パンドラ「そうだ!」

     「常に気にかけてやってるだろう?」

マリアは目を細めながら「いらない」と答える

パンドラも目を細めマリアを見ている

マリア「ねぇ、ところで」

パンドラ「ん?」

マリア「ここで何してるの?」

パンドラ「はぁ?」

     「お前こそ何をしている?」

マリア「私は受付だから」

パンドラ「ああ・・・そうだったな・・・」とちょっと困った顔をしている

マリア「誰か来るの待ってる?」

パンドラ「ん?」

マリア「最近ここでよく座ってるよね?」

パンドラはバツの悪そうな顔をしながら「・・・・」黙っている

マリアは目を細めながらパンドラのことをずっと見ている

パンドラ「あの・・・あいつは・・・バカなのか?」

マリア「へ?」

    「誰?」

パンドラ「お前も馬鹿なのか?」

マリアは目をますます細めながら「あの・・・怒るわよ」と答える

パンドラ「あれほど言ったのに」

マリア「なに?」

パンドラ「何度も言わすな」

     「テンションが高い時しか恥ずかしくて言えない」

マリア「ん?」

    「なんだっけ?」

パンドラ「お前本気で言ってるか?」

     「そうか!」

     「お前馬鹿だな!」

     「バカ確定だ」

マリアはむっとした顔をしながら「あのね!」と言う

    「パンドラもしのぶも言うことが抽象的すぎて分からないのよ!」

    「はっきり言ってほしいんだけど!」と強く言う

パンドラ「ん?」

    「はっきり言っただろ」

    「求められることを激しく求めると」

    「これのどこが抽象的なんだ?」

マリア「ああ・・・そのこと・・・・」

    「ってことは・・・」

    「京子ね?」

パンドラは顔を赤らめながら口をとがらせている

マリア「なーんだ、京子に会いたいんだ」

    「ならそう言いなさいよ」

パンドラは顔を赤らめたまま、すねた顔をしている

マリア「まったく・・・・本当子供みたいな人ね」

    「ババァなのに」

パンドラ「こら!禁句だって言っただろ!」

マリア「京子なら今も武道に夢中」

    「稽古をしてから図書館で読書だから」

    「ここには来ないんじゃない?」

パンドラは益々すねた顔をしている

マリア「あの子は普通の子になったのよ」

    「古くからの友達の真帆も今の京子に満足している」

    「だから・・・これでいいの・・・」と少しさみしそうに言う

パンドラ「ははははは」と高らかに笑う

マリア「もうっ!うるさいって!」

パンドラ「あいつが普通なものか!」

     「下っ端とはいえ、魔導師6人相手に

      戦い勝ったんだぞ!」

     「物の急所が分かると言っていた」

     「多分本当だ」

     「第6チャクラが小さく一点に集中して

     キラリと輝くのを私は見た」

     「以前より一点集中の力が増しているようだ」

マリア「そ・・・そうなの?」

パンドラ「そんなことより、とにかくあいつは面白い」

     「しのぶの物真似をしてユニバースを展開した」

     「お前の走る物真似もしていたぞ」

     「あいつは本当に面白い!」

マリア「たしかに、面白い子よ」

    「そんなに会いたいなら連れてくるけど」

パンドラ「違う」

     「会いたいのではない」

     「求められることを激しく求めている」

     「お前に連れられここに来た京子には満足できない」

     「私はそういう女だ、わかれ!」

マリア「・・・・・」呆れた顔をしながら

    「わかんない」と答えた

パンドラ「私は我儘なんだ」

マリア「そうね」

パンドラ「その我儘こそが私たちの言う真実の答えの正体だ」

     「マリア、お前も分かっているはずだ」

マリア「・・・・わかんない」と呆れた顔をしながら答える

パンドラ「んん???」

     「本当に分からないのか?」

     「もしかして、本当に馬鹿なのか?」

マリア「うるさい!」と苦笑いし、立ち上がり

    「さぁ、そろそろ図書館いこ!」

    「暇なパンドラさん、お留守番お願いね」とかわいく言う

パンドラ「誰が暇だ!」

マリアはケラケラ笑いながら手を振って玄関から出て行った

マリアが図書館につくと真帆と京子はもういつもの場所に座って

読書にふけっていた

マリア「あれ?京子、今日は早いのね」

京子「ああ、マリアいらっしゃい」と笑う

真帆「やっほー、マリア」

マリアは入り口近くにある雑誌のコーナーから

適当にファッション雑誌をいくつか手に取り「ほいほい~」と返事をしながら

席についた

マリア「京子、稽古は?」

京子「朝練に変更したの」

   「図書館で本読む時間が減っちゃうからねー」

マリア「え?朝練って・・・」と苦笑いする

京子「5時起きよ5時起き」

マリア「ま・・・マジか・・・」

    「元気だね・・・」

京子「へへへ、それが取り柄だからね」

   「結構朝から太極拳とかしてる人とかいて」

   「お友達ができたわ」

マリア「そ・・・それって・・じじばばじゃないの?」

京子「そう」と笑う

マリア「ふふふ」と苦笑いする

    「じじばばに人気があるのね」

京子「へ?」

マリア「パンドラ」

京子「?」

マリア「パンドラが京子に会いたがってたわ」

京子は少しうつむきながら「そう」と返事した

マリア「ん?どうかした?」

京子「ううん、なんでもない」とぎこちない笑顔でこたえる

マリア「・・・・・」マリアは京子の様子を見て少し考え

    「ここ一週間ずーっと、教会の受付の部屋で、

     京子が来るのを待ってるの」

    「うっとおしいったらありゃしない」と笑ってみせる

京子はきょとんとした顔をしながら「なぜ?」と尋ねる

マリア「さぁ?」と気のない返事をして見せる

京子はうつむいてまた本を読み始める

マリア『京子は、まだ何かが引っ掛かっている・・・』

    『多分、薄汚いヤジ馬と言われたこと・・・・』

    『パンドラ、あなたがわがままを通そうとするのなら』

    『私は、私のわがままを通す』

    『文句は言わさないわ』

    『私は京子とパンドラを会わせる』

    『私がそうしたいという』

    『私の我儘』

    「真帆、京子。今週の土曜日教会でお泊り会しない?」

真帆「おっ!面白そう」

京子「・・・・・・」京子はうつむいている

マリア「3人で近くの銭湯に行って」

    「晩御飯はドーナツでもいいしー」

真帆「おおおおおお」

   「楽しそー」

マリア「それでさ、3人で布団並べてピロートーク」

真帆「いくいくー!」

   「ねぇ、京子!大丈夫でしょ?」

京子「え・・・」

マリア「ジョルジュとか直とか追っ払っとくから」

    「野郎どもは抜きよ!」

真帆「おおおおお!私、ジョルジュって人苦手だから」

   「追っ払っちゃって…」

京子「で・・・でも・・・いいのかな・・・」

マリア「あの、前にも言ったと思うけど

     私、教会No.1魔道師なのよ」

    「ジョルジュごとき、『しっしっ!』って言えばOK」

京子は下を向いたまま返事をしない

マリア「マリアが来てほしいの!」とかわいく言う

    「京子お願いだから来て!」

    「一緒に枕並べて寝たいの!」

真帆「おおおおおお、楽しそー!京子行こうよ!」

マリア「私が無理やり誘ってるんだから

     誰にも文句言わさないわ!」

    「そうでなくても、だれも文句なんか言わないけど」

京子「う・・・うん」

マリア「今、うんっていったね!」

    「じゃあ、決まりー!」

京子「え・・あ・・・」

マリアはいつもの明るく強引な感じで

    「き・ま・り!」と念を押した

京子はうつむきながらだが「うん」と答えた

 土曜日の晩、教会の一番奥の部屋では銭湯から帰ってきた

マリア・真帆・京子が大騒ぎをしている

真帆「広ーい」

マリア「へへへ、机とかイスとか直に全部どけさせたの」

京子「かわいそー」と笑いながらいう

マリア「直は雑用以外、全く役に立たないから」

    「全然OKよ!」と笑う

京子「たしかにー」と笑う

京子は、はじめはしぶしぶの参加だったのだが

楽しくなってきてテンションが高くなってきている

真帆「京子がさ、腕にビニール巻いてお風呂入ってるの

   小学生の子がジロジロ見てたね」と笑う

京子「うーん、めっちゃ恥ずかしかった」と笑う

マリア「そうね、骨折してるのに銭湯とか、どんだけ」と笑う

京子「えへへへ、でも気持ちよかった」

   「腕が折れてなかったら泳いでたのに」

真帆「う・・・・本当にやりそう・・・」

   「折れててよかったわ」

そんな話をしながら3人は布団を敷いている

布団を敷き終わるとマリアはコップとジュースのペットボトル

そしてたくさん買い込んだお菓子を枕元に用意し始める

京子「んー?布団の中で横になりながら

    お菓子食べるの?」

真帆「えー!いっけないんだー」と驚いている

マリア「ふふふふふ」と不敵な顔をしながら笑い

    「こういう時しかこんなことはできないでしょ」

    「なら、やるべきよ!」

    「夢のようじゃない?」

    「寝ながらお菓子食べるなんて」

京子「横になってると食べにくいよ

    うまく喉を通らないの」

真帆「京子、やったことあるんだ!?」

京子は、ばつの悪そうな顔をしながら「えへへへ」と照れ笑いする

布団の上に座り、髪をとかしあいしたり、お菓子を食べながら

3人が楽しく盛り上がっていると、入り口のドアが開き

パンドラがやってくる

パンドラ「楽しそうだな」

マリア「あ、うるさかった?」

真帆「お邪魔してまーす」

京子は少しうつむきながら「こんばんは」と言う

パンドラは京子が自分を見て少しうつむてしまったことに気が付いていた

パンドラが手を前に突き出すと発光した数枚の板のようなものが

手の上に現れる、それを地面に投げ置き、同じ手を天に向かって突き上げると

薄桃色の槍が現れた

パンドラ「バース!」と言いながらその槍を板の中心につきたてた

すると眩いばかりの光が放たれた

マリア・真帆・京子「わ!」3人は驚いている

光が治まり3人がその場所を見ると布団が生成されていた

マリア「な・・・なに?」とまだ驚いていると

パンドラはマリアと京子の布団の間に今作った自分の布団を

足でねじ込んでくる

マリア「ちょっと!何すんのよ!」と怒っている

パンドラ「私も一緒に寝る!」

マリア「なんでよ!馬鹿!」

京子と真帆は唖然としている

パンドラはマリアのことは気にせず布団をねじ込み

そこにちょこんと座りくくっている髪をほどきだした

マリア「もー、やだー!なんで私がこんな端っこになるのよー!」

    「パンドラが端っこ行きなさいよ!」

パンドラ「京子の隣がいいからだ!わかれ!」

マリア「わかるか!」

京子「パン、マリアがかわいそうよ

    全部準備してくれたんだから」

パンドラ「気にするな、準備したのは直だ」

     「こいつは命令していただけだ」

マリア「テキパキ部下を動かすのが指揮官の役目なのよ!」

パンドラはマリアに背中を向け京子の方を向き「といてくれ」と言う

京子「ん?」

パンドラ「マリア、といてくれ」

マリア「はぁ?」

パンドラ「髪をといてくれ!」

マリア「なんでよ!」

パンドラ「といてほしいからに決まってるだろ!

      わかれ!」

マリア「もー」と口をとがらせながらもパンドラの髪をといてあげることにした

パンドラは髪をといてもらい嬉しそうな顔をしている

パンドラ「てきぱき部下を動かすのは指揮官の役目だからな」と

マリアが言ったことをそのままマリアに言って返した

マリア「私はあんたの部下か!」と怒っている

京子・真帆「ははははは」

パンドラは京子の前に拡げられている

ポテトチップスを一つ手に取り口に入れる

パンドラ「ん!」と驚いたような顔をし

     「何だこれは!」

     「辛すぎるだろ!」

     「京子、飲み物を取ってくっれ!」

京子は自分の飲みさしのジュースを「はい」と言いながら

パンドラに手渡した

それを受け取りパンドラはジュースを口にする

パンドラ「ぶっ!」と吹き出す

京子・真帆「あーーーーーーー!」

マリア「こらーーーー!レンタルの布団なんだから

    汚しちゃダメでしょーーー!」

パンドラ「何だこれは甘すぎる!」

     「こんなもん食べて飲んでいたら死ぬぞ!」

京子「い・・・いや・・・死なないから・・」と呆れた顔をして言う

真帆はティッシュを取り出し濡れてしまった部分をふき取ってくれている

京子も真帆からティッシュを受け取り片手で不自由そうに手伝う

パンドラ「ああ、すまん。それくらい消せる」

     「拭かなくていい」

マリアは力強く髪の毛をときながら「サッサとやりなさい!」と言う

パンドラ「痛いなー!抜けちゃうだろ」

京子「駄目よ、何でも魔法で片付けてわ」と言いながら

一生懸命拭いている

マリアとパンドラはその言葉を聞き

さっきまでとは違うまじめな顔をしている

パンドラ「なぜだ?」と京子に問う

京子は下を向き作業を続けながら

京子「みんなは、魔法を使えないからよ」と答える

パンドラ「確かに生れつきマナが見える者と見えない者の違いがある」

     「だが、マナが見えたからと言って魔法が使えるわけではない」

     「私は己で勉強し習得した」

     「魔法はとても難しい」

     「それを使うか使わないかは

      私自身が決める」

     「お前たちが金で買った掃除機を使うのとはわけが違う」

マリア「ちょっと、パンドラ」と困った顔をしている

京子「なら!」と大きな声で言い、その後うつむき

   「花はどうして魔法で治してあげなかったの?」と尋ねた

パンドラ「命だからだ」

京子「・・・・・」

パンドラ「魔法を使うか使わないかは私自身が決める」

京子「命なら・・・尚更治してあげるべきだったんじゃないの…?」

パンドラ「違う」

京子「違いが分からないわ!」

パンドラ「命は他の物に影響を与えるために存在していると考えているからだ」

     「あの花は、お前に折られた時に特別な花に生まれ変わった」

     「私たちに満足を与えてくれた」

京子「?」

パンドラ「お前は満足していないのか?」

京子「・・・・いいえ」

パンドラ「あの花を教会の皆、そしてお前が気にかけていた」

     「そし、てもともと枯れる時が来るまで生きてくれた」

     「だから私は満足している」

     「花としての本当の役割は果たせなかったのかもしれない」

     「あそこで私が魔法で治していれば

      花としての本当の役割を果たせたのかもしれない」

     「だが、その役は他の花に任せればいい」

     「来年もあの花はどこかで花を咲かせることだろう」

     「だがあの花だけは私たちにとっては特別」

     「私が「あの白い花」と言えば、そこらで咲いている

      あの種の花のことではなく、あの折れた白い花

      のことだと思うだろう」

     「私の心の中に刻まれた一厘の個体」

     「他の個体を渡されても、それはただの白い花にすぎない」

マリア「もうっ!パンドラ、婆臭い説教はやめてよ!」

    「真帆が困ってるでしょ!」

そう言われるとパンドラは申し訳なさそうな顔をして

パンドラ「すまない・・・」

     「だが、これはシミになる

      これだけは魔法で消ささせてくれ」と言いながら

手を布団の濡れた所にかざす

京子は「いや!」といいパンドラの手を払いのけ

     「魔法なんてずるいわ!」

     「魔法なんて大嫌い!」

     「そんなもの無くなってしまえばいいんだわ!」

そう言いながら無我夢中で布団を拭き始める

マリア「京子・・・」

パンドラは驚きながら「なぜだ?」と尋ねる

京子「ずるいからよ!」

   「そんなの平等じゃない!」

パンドラ「人はもともと平等じゃない!」

     「お前が足が速いのと同じだ!」

京子「足が速いのなんて、何の意味もないわ!」

マリアは言い合いになりそうなのを察し

   「パンドラ!」と呼びかけパンドラを制止した

パンドラは黙り、少し考え

パンドラ「マリア・真帆・京子・・・すまなかった・・・」

そう謝りさみしそうな顔をして

     「私はマリアの言うとおり・・・」

     「ババァなんだな・・・」

     「いろいろと経験しすぎ、その結果を受けて

      それを押し付けようとしてしまう…」

     「お前たちは、これから経験し

      考えなければならないのに…」

そう言い立ち上がり「今のことは忘れろ」

     「邪魔して悪かった」と言い背を向け部屋を出て行こうとする

京子「いや!」

パンドラはその声に振りかえり不思議そうな顔をしている

京子「いや・・・パン・・行っちゃ・・いや」

パンドラ「・・・・・」

京子「私・・・バカだから・・・」

   「今なんでこんなことを言ってしまったのか

    自分でも分からない」

   「なんで、取り乱してしまったのか・・・分からない」

   「でも・・・魔法は嫌・・・」

   「理由は・・・・バカだからわからない」

パンドラは京子の方に向き直り京子の顔を黙って見ている

京子は下を向いたまま上目遣いでパンドラを見

   「もう一度ここに座って」と頼んだ

パンドラ「ああ」と返事をし元の場所に座り続けてこう話しだした

   

     「お前は馬鹿じゃない」

     「大概自分の心の奥底は分からないものだ」

     「他人から見ればすぐ分かるものもある」

     「癖に似ている」

京子「?」

パンドラ「お前は、魔法を拒絶しているのではなく」

     「私を拒絶しているのだ」

京子は驚いた顔をしながら

   「違うわ!」

   「絶対に違う、私はパンのこと好きよ」と答えた

パンドラ「ああ」

     「私もお前は私のことを好いてくれていると思っている」

京子「!?」

パンドラ「それと拒絶することとは少し違う」

マリア『そうか!』

    『京子は、パンドラのについて興味をかきたてられることを

     恐れている』

    『好奇心が湧いてくる自分に恐怖感を覚えている』

    『野次馬になってしまうかもしれない自分に』

    『どうやって京子に伝えればいい?』

    『私も操作は好まない!』

    「京子」

京子「ん?」

マリア「手のひらを見るといいのよ」とかわいく言う

京子は左手の手のひらを広げ見ている

銭湯に行ったことで少し消えかかっているみんなの名前が書かれている

京子「あ、書き直さなきゃ」

マリア「もういいのよ」

京子「え?」

マリア「もう大丈夫でしょ」

    「字が書かれていなくても」

    「手のひらを見れば、みんなのことを思い出せるはず」

    「それとも字がないと、忘れちゃう?」

京子「そんな・・・忘れるはずないよ」

マリア「でしょ!」

    「でも、京子はよくみんなのこと忘れちゃうから」

    「手のひらを見て」

    「それがみんなを思い出すサイン」

    「文字はもうなくても、もう大丈夫」

京子「う・・うん」

   「急に何?マリア」

マリア「え?」

    「自分が分からなくなったりした時に・・・ってこと」

京子は眉をしかめ考え込んでいる

マリアとパンドラは優しく微笑みながら京子のことを見ている

しばらくの間沈黙が続き

その空気に耐えかねた真帆が口火を切った

真帆「あの・・・」

   「マリアに聞いたんですけど」

   「パンドラさんって千年以上生きているおばあさんなんですってね?」

パンドラは驚いた顔をし「おばあさん!?」と大きな声で言う

真帆は目をきゅっと閉じ「ごめんなさい!」と謝った

パンドラ「ああ、いや・・・お前が悪いんじゃない」と言いマリアを睨みつける

マリアはそっぽを向きニヤニヤしている

真帆「そ・・それでですね・・」

   「なんかそんな人の昔話が聞けたら」

   「素敵だな・・・って思ったもので・・・」

マリア「えーーーーー!興味なし!」

京子は顔を上げ「私も聞きたいわ」とパンドラに言う

パンドラ「そうか」と優しく微笑み

     「私はな、実は田舎娘なんだ」

     「私の生れた家は、山の中腹にあって

      羊たち達をたくさん育てていた」

     「山を降りると小さな町があるんだが・・・」

マリア「あーーーーー!やだやだやだやだ!」

    「ばばくさーーーーい!」

パンドラ「おまえなー!」とマリアの顔を両手でつかみぐいぐい振り回す

マリア「ばば臭い!ばば臭い!ばばくさいーーーーー!」と叫んでいる

京子と真帆は呆れた顔をして二人を見ていた。

シーン@ パンドラの昔話

  生まれつきマナが見え、然るべきところで育てられたわけではない者は

通常、その地域では変わり者として扱われる

だが、幸か不幸か私は山で羊たちとたわむれ育ったため

そう言うことは全くと言っていいほどなかった。

私が親類以外の者と出会うのは教会のミサがある時だけだった

同年代の友達なんて一人もいなかったが、当時の私の住んでいる地域では

当たり前のことで、特にかわいそうな子だったわけではない。

教会の神父さまは、私のことをとてもかわいがってくれていて

本をたくさん読んでもらった

5歳くらいになると、私は自ら教会にある本を読み始めた

みんながとても驚いていたことを今でもよく覚えている

神父さまは教会に保管されているどの本でも好きな時に

好きなだけ読んでもいいと私に言ってくれた

当時は、まだたくさんの魔導書がそこらじゅうに転がっている時代で

私はその頃に魔術の基礎を学んだのだ

8つの頃になると、私もそろそろ働かなければならなくなった

羊を育てる仕事もよかったが、その頃すでに私は

マギファスコミオのグリモワールの存在に心を囚われていた

教会には、いろんなところからたくさんの人が訪れる

マギファスコミオのグリモワールがどこにあるのか

少しでも情報が手に入りやすいであろうと考え

私は教会で雑用の仕事をしながら魔導書を読み漁った

旅の人の土産話は私の好奇心をいつもかきたてた

マギファスコミオのグリモワールのことも頭の片隅にいつもあったが

何より海が見える街に行ってみたい

海が見える街に住んでみたいと思うようになった

12の頃になると、私はとても不思議に感じるようになっていた

周りの大人たちも、海が見える街に一度でいいから住んでみたいと言っていたからだ

なぜ住んでみたいなら、住まないのかと

今の生活の事情でそれは叶わない

だからあきらめる

たった一度の人生なのに

人生は一度しかないと言うことを誰もが知っている

だが、そのことを本気で考えている者は本当にいるのかと

私は13の時に生まれた町、そして教会を離れ

魔導師となり海の見える街を目指し旅を始めた

旅を始めて、それはすぐに分かった

私は気付かないうちにとんでもない魔道師になっていた

私ほどの魔法の知識と魔力を持った魔道師は私の生まれた国には存在しなかったのだ

その噂は王都にまで届いた

14の時にわたしは偶然、マギファスコミオのグリモワールのある場所を知っていると言う男の

噂を聞きつけ、その男を捜しまわった

半年ほど探し続け、とある山の麓で生き倒れになっているその男を発見した

話しかけてみたが、もう息絶えていて返事はなかった

私はその男の墓を造り弔ってやることにした

その墓穴を掘っているときに、周りの様子がおかしいことに気づいた

そこはいつの間にか山の麓ではなく見たこともないような広大な草原で

爽やかな風が吹いていた

私はいつまでもここに居たいと感じていた

そこはマギファスコミオの草原だった

私はとうとうマギファスコミオのグリモワールを見つけバースを手に入れたのだ

京子「草原・・・・さわやかな風・・・」

   「私はそこに行ったことがある・・・」

パンドラ「ああ、しのぶと最初に会った場所はおそらくそこだろう」

真帆「バース・・・しのぶもバースと唱えていたわ」

パンドラ「ああ、当然だ」

15になり半年ほど経った時に私は王都に招かれ

王のお抱えの魔道師になった

私は王に海の見える街に家を建ててもらった

私は王にとてもよくしてもらった

王もまた私の働きにとても満足していた

ある日、王に美しい宝石を見せてもらった

ほしくてほしくてたまらなくなった

バースで私はそれと全く同じものを作った

似たものを作ったのではない

まったく同じ本物の宝石だ

しかし私は満たされなかった

私が千年魔女として彷徨うこととなったきっかけだ

私は15の時に千年魔女となったのだ

マリア「がー!がー!」

パンドラ「何だこいつ!本気で寝てるじゃないか!」

     「京子!鼻をつまんでやれ!」

京子「えー!かわいそう!」

パンドラは京子と真帆の方に向き直り

     「そんなにつまらない話だったか?」と口をとがらせながら

訪ねた

真帆「いいえ。本当に楽しいですよ」

   「特に海の見える街に住みたいって話」

   「私も住んでみたいと思ったことがあるんです」

   「でも今は叶いません」

   「将来も…叶うのかな・・・?」

パンドラ「それはお前次第だ」

     「今の時代、昔と違い海の見える街に行くことは簡単だ」

     「逆に何故その夢が叶えられないのか、不思議なくらいだ」

京子「いや・・・そういうけど・・・そんなに簡単には・・・・」

パンドラ「親のところを離れる時が来た時」

     「海の見える街に引っ越せばいいだけだ」

     「どの道どこかに自分で居を構える」

     「資金的にもそう変わらない」

京子「でもそれがねぇ~、なかなか・・・・」

パンドラ「違う!」と強めに言う

     「引越せばいいだけだ!」

     「夢を叶えたければ、行動しなければ叶えられない」

     「事情なんて言い訳に過ぎない」

     「人生は1度しかないと言うことを

      甘く見ている」

     「今住む街に友達がたくさんいるだろう」

     「好きな人もいるだろう」

     「だから、迷うのは当たり前だ」

     「だから、お前次第だと言った」

     「叶えろと言ったのではない」

     「そこは間違えるな」

     「ただ、本当に叶えたいことがあるのなら

      行動しなければならない」

     「大きく道を踏み外せば

      お前たちの大切な人たちが

      正してくれるだろう」

 

     「友を信じろ」

     「信じてもらいたければ

      まずは自分が信じろ」

京子と真帆は黙ってしまった

パンドラ「あ・・・」

     「すまん・・・」

     「またマリアに怒られるな・・・」

    「ばば臭い説教とはよく言ったものだ」

京子「ううん、違うの」

   「その通りだと思ったの」

真帆「ええ、私も」

パンドラ「そ・・そうか?」

     「おだてても何も出ないぞ」

真帆「パンドラさんみたいに年をとった人が言うと

    やっぱり説得力が違いますね」

パンドラ「!」

     「・・・・・・」

     「お・・・おまえな~」

     「年をとったとか・・・禁句だぞ」

京子「へへへへへ、パン今更、歳気にしてるの?」

パンドラ「笑うな!私は18だぞ」

真帆「え~~~~~!

    絶対違う!」

京子「はははははははははは」

パンドラ「笑うな~~~!」

シーン☆ しのぶの戦い 

 パンドラが久しぶりにマギファスコミオの草原に立ち寄ってみると

拘束魔法によって身動きができなくなりぐったりしている

ジブリールを発見する

パンドラ「あ?」

     「ジブ、何やってる?」

眠ったかのようにぐったりしていたジブリールは目を覚まし

ジブリール「あ、パン!」

       「これ!ほどいてください!」

パンドラ「は?」

     「ほどけないのか?」

ジブリール「いえ・・・まぁ・・・ほどけなくはないですが」

       「ええ・・・なんというか・・・」と歯切れの悪い返事をする

パンドラは呆れながら「しのぶにやられたのか?」

ジブリール「え・・ええ」

パンドラは蛇のような鎖を手に取りながら

パンドラ「おまえ記述読めるだろ?」

     「・・うわ・・・」

     「・・・・・・」

     「や・・・ややこしいな・・・」

     「目がチカチカする」

パンドラは鎖から手を離し

パンドラ「面倒くさい」

     「自分で読め」と言い放った

ジブリール「ええええ!」

       「ひどいですよ!」

       「ミカエルもパンも!」

パンドラ「しのぶの記述は複雑だ」

     「ぞっとするわ」

     「ねじれた時に裏から貫通して

      表に入るように書かれている」

     「場所がころころ変わるから・・・

      読むのは大仕事だぞ」

     「しかも、そいつは回転しながら

      反転している最上級メビウスの亜種だろ」

     「記述を読んだ後に、陰と陽の回転を逆算しないと

      解けない」

ジブリール「ううう・・・」

パンドラ「10年くらいあれば解けるんじゃないか?」

     「私はそんなのに付き合ってられない」

ジブリール「なんとかしてください!」

パンドラ「しのぶに頼めよ」

     「本人なら解き方を知ってるだろ」

ジブリール「しのぶはもうどこかに行ってしまいました」

パンドラ「おーい!ちゃんと見とけよ!」

     「私がしのぶの母親に怒られるだろ!」

ジブリール「そんなレベルの話はどうでもいいです!」

パンドラ「あのなー・・」

     「私が一応保護者になってるんだぞ」

     「お前だから安心して預けたのに」

     「頼りないな!」

ジブリール「あの子は私になつかなかったんですよ!」

パンドラは呆れた顔をしながら

パンドラ「お前無神経だからな・・・」

     「しのぶみたいな繊細な子の相手は無理だったか」とがっかりする

ジブリール「あの子は繊細どころか頑固なんですよ!」

パンドラ「ああ、まぁ、そうだな」

     「あと、お前が京子を操作したことが

      とにかく気に入らなかったようだ」

ジブリール「京子は、あれくらい言っておかないと

       早死にしますよ。間違いなく」

      「人の気も知らないで!」

パンドラ「・・・・まぁな・・・」

ジブリール「ミカエルは、もうしのぶに時間を与えません」

パンドラ「・・・・そうか」

ジブリール「あなたなら説得できるんじゃないですか?」

パンドラ「私は操作を好まない」

     「しのぶも操作を好まない」

ジブリール「しのぶが殺されてもいいんですか?」

パンドラ「誇り高きサタンの選択を汚すような

      野暮な真似はしない」

     「私もまた誇り高き千年魔女パンドラ・デロルレ」

     「みまごうな!」と真剣な顔をして言う

ジブリール「あなたは今7つのチャクラを開いていない」

       「さて・・・自由にコントロールできるんでしょうかね?」

パンドラ「はははははははは」と高らかに笑う

     「私の本を読んだんだな?」

ジブリール「7つのチャクラを開けば、さすがのミカエルも

       あなたを倒すことはできない」

       「ただ、あなたもミカエルを倒すことはできない」

       「永遠に戦い続けることになる」

       「逆にもしも自在にコントロールできないのなら

        ミカエルに瞬殺される」

パンドラ「コントロールはできるが、一瞬で開いたり閉じたり

     できるわけないだろ」

     「無意識の領域をそんなにころころ変えられたら

      そいつは気がふれてるぞ」

     「はははははは」

            「心配するな、私はミカエルと戦う気はない」

ジブリール「そうでしょうか?」

       「しのぶがミカエルに殺されそうになっていてもですか?」

パンドラ「ああ」

     「それはしのぶの戦いだ」

     「私は手を出さない」

     「出したら逆に足かせになる」

ジブリール「足かせ?」

       「まさか」

パンドラ「しのぶにはしのぶの作戦があるのだろう」

     「そのプランに私は含まれていない」

     「しのぶはいつもマギファスコミオのグリモワールの上に

      腰かけていると言ったな?」

ジブリール「ええ」

パンドラ「しのぶの行動にはすべてに意味がある」

ジブリール「?」

ジブリールはしばらく考え

      「マギファスコミをおしりに敷き

       冒涜するためでしょう」

パンドラ「違う」

     「私は体現者」

     「しのぶは創造者」

     「しのぶは、クッキーを作る」

     「お茶の葉も作る」

     「花を育てている」

     「魔法を作る」

     「しのぶは創造者」

ジブリール「?」

パンドラ「創造者はこう考えだすだろう」

     「どうして、そのような記述をすればマナがあのように動くのか?

      ということを」

ジブリール「それは私でも知っている、しのぶも知っていますよ」

パンドラ「違う!」

     「もっと根本だ」

     「記述をすれば動くと言うのは現象だ」

     「なぜそんな現象が起こるのか?と言うことだ」

ジブリール「それは・・・動くから動くんでしょ?」

パンドラ「私もそれで納得するがな」

     「それ以上のことはどうだっていい」

     「しのぶはマギファスコミオのグリモワールから腰を上げた」

     「すなわち」

     「わかったと言うことだ」

ジブリール「?」

       「それが・・・どうかしましたか?」

パンドラ「詠唱もしくはペンタクルが必要なくなった」

     「ダイレクトでマナを動かす」

ジブリール「!!!」

       「まさか?」

パンドラ「おそらく史上最大の第6チャクラを持っている」

     「甘く見るとひどい目にあうぞ」

そんな話をしていると背後からミカエルが現れ

ミカエル「おーい、パンドラ」

     「ひどいなお前は」と言う

パンドラは面倒くさそうな顔をしながら

     「何だお前は?」と答える

ミカエル「アエリオソメリになぜ来ない」

     「ペタローザと一緒にずっと待ってるんだぞ」

パンドラ「行くか!」

ミカエル「はぁ?」

     「また駄々をこねているのか?」

パンドラはさらに面倒臭そうな顔をしながら黙ってミカエルを見ている

ミカエル「まぁいい、どうせ暇人なんだから来るのを待ってるぜ」

そう言い終わると、今までとは違うさらににやけた顔をしながら

     「パンドラ、お前はサタンを買い被り過ぎだ」

     「おれの見解はこうだ!」

     「サタンはマギファスコミオのグリモワールを読み終えたが

      手詰まりになった」

     「だから、さらにパンドラの本から何かヒントを得ようとしている」

     「ややこしい魔法で時間稼ぎをするのが精いっぱい」

     「理由はこうだ」

 

     「サタンが何を探しているのか?」

     「それは生命の実であると容易に推測できる」

     「すでに人が得ている知恵の実と生命の実を合わせれば

      神と同等になると言われているからだ」

     「生命の実はどこにある?」

     「それは生命の木に実るはず」

     「では生命の木はどこにある?」

     「その答えは簡単、失われた楽園」

     「エデンの園」

     「それはここだ!」

     「容易に推測できること」

     「しかし見つからない」

     「ないのだからな」

     「どこを探しまわってもない!」

     「それは確認済みだ」

パンドラは一瞬目を見開きそのあと眉間にしわをよせ、下を向きながら考えている

ミカエルは、その表情の変化に少し違和感を感じていたが続けて

ミカエル「サタンを甘く見ない方がいいと忠告してくれたが

      ミカエルを甘く見ない方がいいと伝えた方がいいぞ」

     「はははははははは」と言い放った

パンドラ「・・・ミカエル・・・・「ない」と言ったか?」

ミカエル「あ?」

パンドラ「生命の実はないと言っか?」

ミカエル「ああそうだ」

パンドラ「ある方がお前たちにとって好都合だった」

     「なぜなら、なければ隠し守り通すことができないからだ」

ミカエル「はぁ?」

パンドラ「もしも、あるのならお前たちが先に手にいれ

      隠し守り通すことができた」

     「しかし、ないものはお前たちにはどうにもできない」

ミカエル「だから、ないんだよ」と笑いながらいう

パンドラ「かつて私もその問答をした」

     「解けなかった」

     「だが、しのぶは解いたに違いない」

     「ないのにあるの問答だ!」

     「はははははははははは」

 

     「しのぶは面白い!」

     「ミカエル!」

     「いずれお前も腹を抱えて笑うことだろう!」

     「しのぶは面白いぞ!」

     「はははははははははは」と美しく高らかに笑いながら姿を消した

ジブリール「あ、パンドラ!ちょっと待って!」

そう呼びかけるが返事はなかった

ジブリール「ないのにあるの問答?」

ミカエル「くだらない」と笑いながらいう

     「簡単な問答だ」

     「俺は答えを知っている」

     「結局は「ない」が答えだ」

     「そこらに転がっていた石ころに

      誰かが神が宿っていると言いだしたとしよう」

     「やがて、その石を祭るために祭壇が作られ」

     「その村に住む者たちはそれを崇め始める」

     「毎年大勢の人々を巻き込み祭りがおこなわれるようになったとしよう」

     「その神が宿っている石ころに祈り心が癒された者がいたとしよう」

     「そうなった時点で神はいるのと同じことになる」

     「わかるか?」

ジブリール「ええ、まぁ・・・何となく」

       「影響を与えていると言う意味ではそうでしょうね」

ミカエル「さぁ、そこに神はいるのか?」

ジブリール「いないですね」

ミカエル「そうだ!」

     「いない!」

     「だがこう考える者もいる」

     「影響を与え出した時点で宿っていると」

     「神はいると」

     「そいつらの「ないのにある」の答えは「ある」になる」

     

     「愚かだ!」

     「ないものはない!」

     「当たり前だ!」

     「問答にもならん!」

ジブリール「パンドラは解けなかったと言いましたね?」

ミカエル「あいつは考え過ぎだ」

     「考えすぎて馬鹿になったんだろ?」

     「それか何か違う答えがあると思ってしまったんだろうな!」

     「バカバカしい」

     「ないものはない」

     「当たり前だ!」

     「はははははははははは!」と笑いながら姿を消した

ジブリール「ミカエルーーーー!」

そう呼びかけるが返事はない

ジブリール「ミカエルもパンドラもひどい!」

       「私をほたらかしにするなんて!」とすねたように言い

がっくりと肩を落とした

シーン@ おもちゃと道具

 ジブリールは拘束魔法を解くために何日も、もがき続けていたが

草原を吹く爽やかな風にうたれ、深い眠りについていた

ところが、ある日ジブリールの頬を冷たい風が刺激し

ジブリールは目を覚ました

ジブリール『!』

ジブリールは、周りを見回すが、そこは何もない暗闇の中だった

ジブリール『ここは・・・・』

      『マギファスコミオの草原じゃない・・・・』

ジブリールは不安感を覚え

      『ミカエルー!』

      『ミカエルー!』と叫ぶ

ジブリールは、周りをきょろきょろと見ながらミカエルのことを呼び続けている

しばらくすると目が慣れてきたのか、真正面に人影を発見し

そこには、しのぶが立っていた

ジブリール「しのぶ!」

しのぶは人差し指を1本だけ立て口に押し当て

静かにしろと言うポーズをとっている

ジブリール「・・・・・・」

しのぶ「次にあなたが発する言葉が重要な意味を持っている」

ジブリール「・・・・・」

しのぶ「・・・・・・」

しのぶは下を向いたまま、何も言わない

しばらく沈黙が続く

ジブリールはしのぶを見ながらずっと考えている

しのぶはジブリールと目を合わさないように下を向いてずっと

黙っている

ジブリール「ミカエルー!」とミカエルをふたたび呼び始めた

しのぶは顔を上げジブリールの方を見て

    「あなたは私の想定を下回った」

ジブリール「ミカエルー!」

しのぶ「この状態でミカエルを呼ぶと言うことは

     どういうことかと言うことを理解しているのか?」としのぶは悲しそうな顔をしている

ジブリール「私にこんなことをしておいて

       いまさら何を言う!」

       「ミカエルを呼ぶと言うことは

      あなたを抹殺すると言う意味」

      「それくらいわかっている!」

しのぶ「そう・・・苦しかったのね・・・」

    「ごめんなさい」

ジブリール「あなたは正真正銘のサタン!」

       「心は病んでいてもかわいい子だと思っていたけれど」

       「大間違いだったわ!」

しのぶ「あなたを苦しめるつもりではなかったの」

    「もう少しあなたは考える癖をつけなければならない」

ジブリール「釈迦に説法とはこのことよ!」

       「あなたの言葉にかす耳などない!」

しのぶ「・・・・・・」しのぶはジブリールの顔をしっかりと見ている

ジブリール「・・・・・・」険しい顔でしのぶを見ている

しのぶ「ひとつ目」

ジブリール「黙れ!」

しのぶ「なぜ、あなたからパンドラの本を奪いとると言いながら

     その場で、それをしなかったのかという問題」

ジブリール「黙れ!黙れ!」

しのぶ「誤魔化すのはやめなさい」

    「その問題の答えを、今すぐ考え答えろ!」

   

    「これは命令だ。勘違いするな」

ジブリール「黙れ黙れ!そんなのはお前が本のありかが

       分からなかったからに決まってる!」

しのぶ「本は、あなたの服の中にインプラントされている」

    「そんなことは、あなたが持っていることを確信した時から

     わかっている」

ジブリール「!」

しのぶ「その拘束魔法を解くか解かないかそれを決定するために、

     今あなたと話をしていると言うことに気付け」

ジブリールは取り乱しながら「ミカエルー!」と再び

ミカエルの名を呼び始めた

しのぶ「私は驚いている」

    「私の想定をさらに下回った」

    「私の出す3つの問いに答えられれば

     拘束魔法を解く予定だった」

    「あなたは、一つも答えることができなかった」

    「これは最低以下の結果だ」

    「想定外だ」

ジブリール「ミカエルー!」

しのぶ「黙ってもらうために答えを先に言う」

    「とても残念だわ」

    「あなたの声がミカエルに届くことはない」

    「ひとつ目の問いの答えは」

    「『私が本を読み終わるまでの時間

     ミカエルに邪魔されないようにするための

     結界を張るためにあの場をいったん去った』だ!」

    「簡単な問題だ」

ジブリール「!」

しのぶ「ミカエルがこの結界に気付きアタックを開始してから

     おそらく3日後にこの結界は破られる」

ジブリール「!」

しのぶ「しかし今ミカエルは違うことをしている

     アエリオソメリのところで暢気に遊んでいるようだ」

    「彼は、食えない漂漂とした人」

    「当分ここには来ないだろう」

ジブリール「・・・・・」

しのぶ「あなたはすぐに気づいたはず

     その拘束魔法はもがかなければ

     なにも苦しくないと言うことを」

    「そしてマギファスコミオの爽やかな風に吹かれ

     心地よく眠りに付けると言うことを」

ジブリール「それは自分は悪いことをしていないと

       私に言いたいのか?」

しのぶ「そう」

    「パンドラの本を奪う目的を果たす中では

     ベストだったと考えている」

ジブリール「・・・・・・・」

しのぶ「私はあなたのことが嫌いじゃないと伝えたはず」

ジブリール「・・・・・・」

しのぶ「私はあまり愛されたことがない」

    「だから私はあなたに愛されたいと考えていた」

ジブリール「・・・・・・」

しのぶの瞳からは涙がこぼれていた

ジブリール「!?」

しのぶ「パンドラの本がインプラントされた

     あなたの服をはぎ取るのではなく」

    「その服を着たあなたの胸に抱かれ

     読みたいと考えていた」

しのぶはぽろぽろ涙をこぼしている

ジブリール「し・・・しのぶ・・・・」

しのぶ「ジブ・・あなたは鈍すぎる」

    「おそらくそういう風に作られている」

    「いつも穏やかにふるまえるように」

    「私はさらにマギファスコミオに対する嫌悪感が増した」

    「3つの質問は、もう止めにする」

    「最後の助け船を出す」

    「できるだけ早く声に出し問題の答えを

     言ってほしい」

    「そのスピードについてこれれば」

     「重要なヒントが浮かびあがる」

     「そのスピードについてこれなければ

      100%永遠に解けない」

     「その理由は陰と陽の回転と反転のスピードが関係あるからだ」

     「このスピードについてこれなければ、解き方を直接教えても

      解くことができない」

ジブリール「・・・・・・・」

しのぶ「では、始める」

    「108度」

ジブリール「正五角形」

しのぶ「72度」

ジブリール「正五角形の外角」

しのぶ「72度」

ジブリール「五芒星」

しのぶ「72度の倍の数」

ジブリール「144度」

しのぶ「72度の倍の数」

ジブリール「光の調和のフラクタル」

しのぶ「連結12面体」

ジブリール「遺伝子物質」

しのぶ「連結12面体」

ジブリール「10回の完全なる回転」

しのぶ「・・・・・・」

ジブリール「?」

しのぶ「光の調和のフラクタルのヒントをなぜ活用しない!」

    「遅すぎる!」

    「間違ってはいなかったけれど…」

    「間に合わない・・・・」

    「同じ質問をした数を入れず

     3個目で『光の暗号コード』に辿り着かなければならなかったの…」

    「私は3をよく使うと言うことにも気付いてなければならなかったのよ」

    「解き方はもうほぼ教えたのと同じ」

    「ただ、あなたの思考スピードはその魔法の3分の1以下のスピード

     だと言うことが今わかった。」

     「解くことは不可能よ」

     「かわいそうなジブ」

     「役割を失ってしまった」

     「存在価値がなくなった」

ジブリール「なんですって!」と少し怒ったように言う

しのぶ「自分で考える癖をつけなさい」

ジブリール「・・・・・・」

しのぶ「・・・・・・」

ジブリールはしばらく考え、その答えに気づき愕然としていた

ジブリール『私の役割と存在価値・・・・』

      『サタンに敗北したと言うことは』

      『存在価値がないに等しい・・・』

しのぶ「・・・・・・」しのぶは何も言わずうつむいている

ジブリール『しのぶは、なぜそこに立っている?』

       『何を導き出そうとしている?』

ジブリールは考え続けている

しのぶは何も言わない

しばらく沈黙が続く

ジブリール『!』

       『そうか!・・・そうだったのね』

       『私がしのぶに拘束魔法をかけられたあと

        すぐに気づいていなければならなかった』

       『存在価値がなくなりかけていることを』

       『それが想定以下だと言われた理由』

       『他の存在価値を見出せと言うことか?』

ジブリール「それは無理よ、しのぶ」

       「私はアークエンジェル」

       「それは無理に決まっている」

しのぶは目を閉じ下を向きながら黙っている

ジブリール『サタンを許しサタンを愛すことなど!』

       『絶対に許されない!』

     『私はアークエンジェル』

しのぶ「ヒントを提示しなくても分かってもらいたい」

    「私を許し、私を愛することはできないと言うことは

     一度目の問いの時に分かった」

    「なんでもいい」

ジブリール「!?」

ジブリールはさらに真剣に考え続けている

しのぶ「ごめんなさい、ジブ。そこまでマギファスコミオの操作が

     及んでいるとは思っていなかったの」

    「人でさえ絶対服従じゃないのに…

     あなた達は絶対服従なの」

    「人はおもちゃ」

    「天使は道具」

    「おもちゃと道具ならどちらが大事なの?」

ジブリール「それは道具よ」

       「おもちゃはおもちゃにすぎない」

しのぶ「おもちゃをなおすための道具」

    「道具は道具」

    「私はおもちゃを愛するわ」

ジブリール「!」

しのぶ「マギファスコミオも同じ」

    「かわいそうなジブ」

    「アークエンジェルは、もしもサタンに敗れた時に

     殺され消滅することしかできないように仕込まれている」

    「寝返ることがないように」

ジブリール「それならば!私を殺し消滅させればいい」

しのぶは、驚いた顔をしている

ジブリールには、しのぶがなぜ驚いたのか分からない

しのぶ「私は操作を好まない」

    「もうヒントは提示しない」

    『気付いてジブ!ヒントを提示しないがヒントなの!』

ジブリール「!」

       『どういうこと!?』

       『わからない!』

       『わからないわ!』

       『何を導き出そうとしている!?』

       『もうヒントは提示しないと言うことは』

       『何かあると言うこと』

       『何かあるから、考えろと言うこと』

       『しのぶが驚いたのは、「私を殺し消滅させればいいと」言い

        考えるのをやめてしまったから』

しのぶ「ジブ、嫌かも知れないけれど

     あなたの胸に抱かれパンドラの本を

     読まさせてもらうわ」

そう言いながら、小声で何やら呪文を唱えながらジブリールの方に歩いてくる

しのぶは逆呪文でビアンスコンシー・ミオビウサを部分的に解きながら

まるで水の中をすり抜けるかのように、ジブリールのところまで到達した

しのぶは目を瞑りながらジブリールに優しく抱きつく

ジブリール「・・・・・・」

       『私はこの子には絶対敵わない』

       『レベルが違う』

       『完全に敗北したと言いきれる』

     

シーン● アズラエルとパンドラ

しのぶ『くっ!』

    『読まずとも悲しみが押し寄せてくる』

    『今は精神状態を保たなければならない』

    『パン!失礼だとは思うが今は読み飛ばさせてもらう』

    『読むと決めた以上、必ずすべて読む』

    『だから許してほしい』

ジブリール『思考が私にも流れ込んできていますよ』

       『大丈夫なんですか?』

しのぶ『できれば、穏やかな気持ちで見守ってほしい』

   『強要はしない』

   『手の中に入った私を抹殺するチャンスだと

    思うことも、特に問題はない』

ジブリール『いえ・・・それは完全にあきらめました』

しのぶ『そう・・・』

    『ひとつ目の問題』

    『冒頭のパンの詩の嘘』

    『2つ目の詩の中に嘘が書かれている』

    『なぜ嘘を書き、その嘘を導きとしろと言ったのか?と言う問い』

    『優しい殿方の話・・・・パンの初恋』

    『その殿方から髪の毛でも貰いバースを使えば

     確かに同じ人を作れる』

    『ただ、バースでは、魂は生成できない!』

    『だから、この詩は嘘だ』

    『!!!!!!!!!!!!!!』

    『いやぁぁぁぁぁああああああああああああああ!』

ジブリール『嘘は書かれていません』

しのぶ『どうして!』

    『どうしてそんなことをしてしまったの!』

ジブリール『パンドラも、まだ若かったのです』

しのぶ『そんなことをしてはいけないのよ!』

    『なぜ!こんなことを本に書き記したの!』

    『いやよ!いや!』

    『絶対嘘に違いない!』

ジブリール『落ち着きなさい』そう言いながらしのぶの髪をなでてあげた

       『あなたは精神が弱い』

       『読むのはやめた方がいい』

パンドラが作った優しい殿方に魂は宿らず

パンドラによってマリオネットのように動かされていただけだった

パンドラはそのマリオネットに話し掛け

マリオネットに返事をさせていました

やがて、満たされないことに気付き

その優しい殿方を殺してしまいました

同時に自分の肉体に嫌悪感を覚えたパンドラは

18の時に自らの体を焼き払い

その殿方の遺体と一緒に墓に埋めました

しのぶ『はぁっはぁっはぁっ』呼吸が乱れている

ジブリール『もっとゆっくり呼吸をしなさい』

しのぶ『嘘ではなかった・・・』

    『魂の生成の方法についてのヒント・・・

     もしくは、なぜ嘘を書いたのか・・・・』

    『その想定から外れた・・・・』

    『ならばここはもう良い・・・ごめんねパン』

    『2つ目の問題、7つのチャクラを開いたらどうなるのか?』

    『パンは今7つのチャクラを開いていない』

    『それはなぜなのか』

    『どこだ・・・・はぁ・・はぁ・・・・・』

    『どこに書いてある・・・・』

しのぶは、歯を食いしばりながら探している

しのぶ『いやなの!』

    『私は!』

    『そんなのは耐えられない!』

    『パン!あなたはどうしてこんな悲しみに耐えられるの!』

ジブリール『落ち着きなさい』そう言いながらしのぶの髪をなでている

しのぶ『ここか!』

    『そうか!3問目と同じ場所』

    『3問目はどうやって陰の子を封印したか?』

    『アズラエル!』

    『なぜ!』

    『陰の子を封印するために7つのチャクラを開いたのか?』

    『なぜそんな結論になる!』

    『そんなことをパンに押し付けるなんて!』

    『私には理解できない!』

    『パンは!』

    『パンは最強の魔女になることなんて望んでいない!』

    『陰の子に存在理由を持たせることなんて望んでいない!』

    『なのに!』

    『!!!!!!!』

    『そうか!わかった!』

    『望んでいないから陰になる』

    『だから陰の子の陰と重なり陽に転じる』

    『だからか!』

    『陰の子は熾天使…』

    『天使は階級が上なほど、人とは違うもの』

    『熾天使はエネルギー生命体に近い』

    『陰の子は、恐怖の象徴』

    『恐怖を生み出すエネルギー生命体』

    『感情はなくただ喰らうのみ』

    『アズラエルは死を司る大天使』

    『故に生命に対する思い入れが大きい』

    『そして7つのチャクラを開ける可能性のあるパンドラに出会った』

    『7つのチャクラを開くと・・・』

    『!!!!!!!!』

    『そ・・・・そんな・・・・』

    『無理だ!』

    『薄れて消えてしまうはず』

   

    『海に自分の血液をすべて流しても』

    『それはすぐにどこに行ったのか分からなくなるのと同じように!』

    『普通は消滅する』

    『7つのチャクラを開くと、宇宙とつながる!?』

    『宇宙そのものの一部となる!???』

    『それは消えてしまうのと同じだ!』

    『意識を保つために、アズラエルはパンドラに

     自分の死と言う強烈な悲しみと記憶を与えたと言うのか!?』

    『そんなものを押し付けられた者の身になったことがあるのか!』

    『考えられないほどの愚行だ!』

    『信じられない・・・・・』

    『陰の子との戦いは・・・・3か月以上続いた・・・』

    『3か月も宇宙の一部となり、体・・・すなわち宇宙を食わし続け』

    『意識を保ち・・・・』

    『強力な拘束魔法を陰の子に掛けたのか!』

    『たとえ熾天使と言え宇宙を食らいつくすことはできない!』

    『それのみが勝算』

    『己が意識を保てるのか保てないのか!』

    『信じられない・・・・・』

    『京子が怖かったと言ったのがよく分かる』

    『こんな恐ろしい奴を、いつも持ち歩いているなんて』

    『正気の沙汰じゃない』

    『多分、ルクツアーノを倒した後』

    『私に来るなと言った時』

    『再生していると言った時』

    『パンドラの顔は半分以上食われていたはず』

    『信じられない・・・・』

    『私がもしも陰の子を封印しろと頼まれたら』

    『永遠に封印する方法しかとらない』

    『危険すぎる』

    『武器として使うために、くるくる回転させているとはいえ』

    『動き回れるようにするなんて・・・・・』

    『恐ろし過ぎる』

しのぶは歯を食いしばりながら本を読み進める

    『くっ!』

    『3つの問いは解けた・・しかし・・』

    『フエルト・・・・・』

    『そう・・・・フエルトが子供の時にパンはフエルトに出会ったのね・・・』

    『パンはフエルトの先生兼用心棒』

    『とても温かい日々・・・』

    『生意気な子』

    『正義感あふれる青年』

    『・・・・・・・・』

    『どうして!』

    『どうしてもっと・・・!』

    『もっと・・・・』

    『いやよそんなの・・・・・・』

    『私はパンを選んでほしかった』

    『もっと優しくしてあげてほしかった』

    『どうしてそんなことに・・・なって・・・しまうの?』

    『!!!!!!!!!』

    『いやぁぁぁあああああああああああ!』

          『私とパンは違う!』

    『信じられない選択・・・』

    『満足を求め続けていたと言うのに』

    『自ら放棄している!』

    『そこまで、美しく強いと言う誇りにこだわるのは何故!』

ジブリール『あなたが真実の答えを見つけられず

       パンドラが何もしないを体現していた時のことを』

      『あなたは、愚かだと思いますか?』

しのぶは再び逆呪文を唱え水の中をすり抜けるように拘束魔法から抜け出し

その場に倒れ込んだ

しのぶ『今は心を乱している時ではない・・・・』

    『パンドラは満たされることを望んでいることに気づいた者から与えられた

     満足には満足できない』

    『故に、真実の答えを交換し輝かすことは困難だ』

    『お互いの第6チャクラなくしてそれは叶わない』

    『パンは孤独な体現者』

    『故に誇り高き千年魔女』

    『美しいピアニスト』

    『孤高のバレリーナ』

しのぶ「ジブ・・・ありがとう」

ジブリールがしのぶに返事をしようとした時

ジブリールはマギファスコミオの草原に拘束魔法と共に戻っていた

そこにしのぶの姿はなかった

しのぶは暗闇の中一人で倒れ込んだまま考えていた

しのぶ『パンは興味を示さなかった・・・』

    『魂の生成・・・・生命の実・・・・』

    『誇り高き千年魔女を体現するためには

     特に必要ではなかったのだろう・・・・』

     『これで確信できた』

     『パンは「ないのにあるの問答」を解いていない』

     『解く必要がなかったからだ』

     『解いていないのであれば納得がいく』

     『解いていれば7つのチャクラを開く必要がないはず』

     『答えはダアト』

     『生命の木の隠されたセフィラ』

     『生命の実はない』

     『ダアトもない』

     『だからダアトに生命の実がある』

     『ダアトを探すこと』

     『神が賢い者に与えた試練と言われている』

     『言いかえればこう』

     『マギファスコミオが第六チャクラの開眼者に与えた

      マギファスコミオのなぞなぞ遊び』

     『第6チャクラが大きく開くと第5チャクラがつぶれる仕組み』

     『人の姿と関係している生命の木』

     『その図式から導き出されるダアトの場所は

      第五チャクラと同じ場所』

     『第五チャクラが奇形の私』

     『手に入らないように仕組まれている』

     『マギファスコミオ』

     『こんな幼稚な出来レース』

     『そんなものに満足しているのか?』

     『否』

     『だから生命の実は手に入る』

     『生命の実のありかを見つけた』

     『あとは手に入れるだけ』

シーン○アエリオソメリと完全敵対

 教会ではジョルジュが困った顔をしながらパンドラと話をしている

ジョルジュ「困ったことになった」

       「もう行くしか収拾がつかない」

パンドラ「なぜローマまで行く必要がある、日本で話をつければいい」

     「ローマのやつらなど関係のない話だ」

ジョルジュ「アエリオソメリの本部がローマだからだ」

       「瞬間移動の魔方陣があるから、遠いとか言い訳にならない」

パンドラ「私は瞬間移動の魔方陣が嫌いなんだ!覚えろ!」

うるささに耐えきれず奥の部屋までマリアがやって来て

マリア「また、だだこねてるのー!?」

    「今度はなに?」と尋ねる

ジョルジュ「この間、京子がアエリオソメリの連中と揉め事を起こしただろ?」

      「そこにパンがいたことが不味かった」

パンドラ「だから!何度も言うが不味くない!」

     「私はなにもしていない」

ジョルジュ「それは向こうで言ってくれ」

マリア「もう、観念して行ったら?」とパンドラに言う

パンドラはがっくりした顔をし

     「やっぱりか~」

     「とんだ濡れ衣だ・・・」

ジョルジュ「観念したか?」

パンドラ「ああ、わかったよ」と言いながら日傘をくるくる回している

マリア「いってらっしゃ~い」

    「お土産よろしく~」

ジョルジュ「そんなのものあるか!」

パンドラ「マリア、私たちが留守の間、気をつけろ」

     「アエリオソメリの連中に不穏な動きがある」

ジョルジュ「幹部クラスのやつらが何人か来ているようだ」

      「おそらく魔力に制限をかけようとしてくる」

      「そうなった場合抵抗しない方がいい」

マリア「はぁ?」

    「そこは抵抗するっしょ!」

ジョルジュ「後でちゃんと話し合いで解いてもらうから

       抵抗するな」

マリア「本気で言ってるの?」

パンドラ「あいつらは街に魔法陣を描くのをやめた」

     「我々に監視されていることに気づいたのだろう」

     「大きな布に書いた魔法陣を各地で一気に開く

      手段に出てくるかもしれない」

     「とても強力な魔法陣を一瞬で張られる可能性がある」

     「向こうにはペタローザがいる」

     「とても頭のいい魔女だ」

     「抵抗しないことをお勧めする」

マリア「ペタ・・なんとか日本にきてるの?」

ジョルジュ「いや、そういうわけじゃないが」

       「入れ知恵はされてる可能性がある」

マリア「わかったわ」

そう返事した後椅子に座りテーブルに肘をつき顎に手を当て

 

マリア「話し合いで本当に解いてもらえるのかな~?」と眉をしかめながら言う

ジョルジュ「私たちも、従わせていたことがある」

      「向こうの言い分も、もっともだ・・」

      「とにかく抵抗することは話をこじらせることになる」

マリア「う~ん」と不服そうにだが従うことにした。

    「パンドラはどうするの?」

パンドラ「ん?」

マリア「制限かけるって言われたら」

パンドラ「まっぴらごめんだ」

マリア「え~~~!ずるくない?」

パンドラ「はぁ?」

     「私は制限を誰かに強要したことなどない」

     「だから、制限をかけられることに同意する必要もない」

マリア「ジョルジュ・・・この人のせいで、話がこじれるかも」

ジョルジュ「・・・・・」何も言わす目を細めながらパンドラを見ている

パンドラは口をとがらせながらそっぽを向き

     「さぁ!行くならさっさと行くぞ!」と言う

ジョルジュは大きなペンタクルを部屋の隅に広げ

      「じゃあ、マリア留守をよろしく」と言いながら

瞬間移動のペンタクルの中に消えていった

それに続いてパンドラも「大人しくしとけよ~」と言いながら

ペンタクルの上に載り消えていった

マリア「へいへい」と返事をし、少しの間ぼーっとしていたが

退屈だったのか携帯を取り出し電話をはじめた

マリアの携帯の呼び出し音が鳴っている

京子『はいー、やっほー、マリア』

マリア『やっほー、京子』

    『教会の留守番で図書館行けなくなったー』

京子『え~、そうなの?』

マリア『う~ん』

    『んでさー、めっちゃ暇なの』

京子『う~ん』

マリア『今すぐ来て!』

京子『え?』

マリア『なによ』

    『来てほしいの!』

京子『う・・・・』

マリア『真帆も一緒にね』

    『ちなみに、ジョルジュとパンドラはローマに行ったから』

    『今は私しかいないから安心して来てー』

京子『そ・・・そうなの?』

マリア『本が読みたいなら借りちゃって持ってきたらいいじゃん』

京子『う・・うん』

マリア『じゃあ、決まり待ってるねー』

京子『あ・・・』

マリアは京子の返事を聞かずに携帯を切った

マリアの強引さにはさすがの京子も勝てず真帆と二人で

教会に向かうことになった

しばらく二人で歩いていると京子はつけられていることに気づいた

京子は小さな声で「真帆・・・私たちつけられてる」と言う

真帆「え?」

京子「たぶんマリアに恨みがある人たち」

   「・・・・私にも恨みがあるかも・・・」

真帆「えええ?」

京子「私とマリアは結界を持っているから何とかなる」

   「真帆が危ない」

真帆「ま・・・マジで」

京子「ここはまだ沢山人がいる」

   「一旦ここで止まって」

   「マリアにどうすべきか聞くわ」

真帆「う・・・うん」

京子はその場に立ち止まりマリアに電話をかけた

するとすぐにマリアは電話でてくれた

京子「あ・・・マリア」

マリア「ん?どうしたのー?」

京子「なんか、つけられてる」

マリア「へ?」

京子「多分この間のやつら」

マリア「え!?」

京子「私は大丈夫だけど真帆が・・・」

マリア「急いで教会にきて」

京子「え?でもマリアの居場所がばれちゃう」

マリア「いいえ、そいつらは元々教会の場所は知っているはず」

    「教会にいる私を襲って来ないのはここにいろいろペンタクルやら、

     仕掛けがあると思っているから」

    「だから、ここの方が安全だと思う」

京子「そ・・・そう」

   「真帆はどうしよう」

マリア「一緒にいる方が危険なのかもしれないけど、一人にするのは心配だわ」

京子「うん」

   「じゃあ急いでそっちに行くね」

マリア「ええ、気をつけて」

電話をきり京子は真帆に前を歩かせ

京子「真帆あいつらが教会に着くまでに何かしてきたら、

    私に構わず教会に向かって全速力で走って」

真帆「え?」

京子「私は大丈夫100M12秒台だから」

真帆「で・・・でも」

京子「絶対に私に構わず走って」

   「絶対だよ」

真帆「う・・うん」

京子は真帆にそう言い聞かせながら、さらに考えていた

   『待って…』

   『これでは解決しない』

   『一時しのぎにしかならない』

   『私とマリアはいいとして』

   『真帆が心配』

そんな事を考えながら歩いていると教会が見えるところまでやってきた

京子「真帆」

真帆「ん?」

京子「そのまま教会に入って行って」

真帆「え?京子は?」

京子「つけてるやつらに話しかけてみる」

真帆「ええええ?」

京子「大丈夫」

   「教会はすぐそこ」

   「私は結界も持っている」

   「足も速いのよ」

真帆「う・・・うん」

   「無茶しないでね」

京子「はーい」

京子はその場に立ち止まり真帆が教会に入って行くのを見守った

真帆が教会に入ったのを確認すると京子は胸を張り振り返り

後をつけていた男二人に向かって歩いて行く

京子は腕を組み男たちの前に立ち

京子「なに?」

   「何か私たちに用?」と尋ねる

男たちは返事もせずに京子をやり過ごし通り過ぎていく

京子は振り返りながら「待ちなさい」と大きな声で言う

 一方教会の中では真帆一人で入ってきたことに驚いているマリアが

マリア「あれ?京子は?」

真帆「う・・うん、すぐそこにいる」

   「話をつけるって」

マリア「えええええ」

    「きょ・・・今日はまずいのよね」

真帆「え?」

マリア「真帆」

    「ここにいてね」

    「絶対外に出ないで」

真帆「え?」

マリアはクローゼットの中をあさり一つの大きな魔法陣の布を取り出し

   「これを、かぶってて」

   「反射の結界だから」

   「私が呼ぶまで、これをかぶってじっとしててね」

真帆「え?」

真帆は困惑しているがマリアは無理やり布を真帆にかぶせて

マリア「絶対じっとしててね」といい、教会の玄関を出た

真帆「はうぅうう」と困ったような声を出したが従うことにした

玄関から出てきたマリアと振り返った京子に

二人の男は挟まれたような形になり少し慌てているようだ

マリア「つけまわしていたって言うのはあなた達?」

二人の男は返事はしないが明らかに様子がおかしい

京子「マリア、こいつらはなんなの?」

マリア「僧衣は着てないのね・・・」

    「でも多分アエリオソメリの人達」

    「でしょ?」

男たちは返事をしない

京子「僧衣?」

   「この人たちも何かの宗教の人たちなの?」

マリア「そう」

    「私たちセルバンテスと同じ」

    「魔法社会の秩序を保つための組織」

    「主要な国、公認のね」

そう京子に言い、続けて男たちに

    「だから、悪いことなんかしないわよね?」と釘を刺した

そう言われると一人の男が吹き出し

男「ぶっ!」

  「お前が言うな!マリア」

  「お前の過剰防衛」

  「いや、防衛でも何でもない」

  「問答無用で暴れ回っておきながら」

  「キチガイ女が!」

マリア「あれは、あなた達が従わなかったからでしょうが!」

男「今、お前らセルバンテスはアエリオソメリからの

  魔力制限に従わない方針らしいじゃないか」

  「まぁ、俺らは見ての通り一般人だ」

  「関係ないがな」

マリア「はぁ?」

    「僧衣を着てないから一般人?」

    「それにしては詳しいのね」

京子「で!」

   「一般人さん、何が目的なの?」

   「キモイから付け回すのはやめてほしいの」

男たちは返事をしない

マリア『こいつら・・・何かを待っている・・・』

    『まずい・・・』

    「京子」

    「こんなやつらほっといて」

    「いこ」

京子「だめ」

   「一時しのぎでは真帆を家に帰せない」

 一方パンドラたちはセルバンテスのローマ支部にある瞬間移動の魔法陣に

到着した後、ローマ支部の幹部たちを引き連れアエリオソメリ本部に到着したところだった

パンドラたちは丁重にもてなされ本部の奥にある大広間に通されていた

そこには、大きなテーブルと椅子が用意されており、アエリオソメリの幹部たちが

6人程どっしりと座っている。そして、パンドラたちもまたそのテーブルにつくように促され

アエリオソメリの幹部たちと向き合うように座っていた。

アエリオソメリ幹部「わざわざご足労いただき、誠にありがとうございます」

セルバンテス幹部「なかなかこちらも都合がつきませんで

            お招きに応じるのが遅くなりましたことをお詫び申し上げます」

アエリオソメリ幹部「セルバンテスさんは大きな組織です

            お察しします」

セルバンテス幹部「ありがとうございます」

アエリオソメリ幹部「そちらが、パンドラ・デロルレ様ですね?」

            「肖像画で拝見したことがありますが」

            「実物の方が、なんとも美しい」

パンドラは不機嫌そうに「そうか、あれを描いたのは私の友人だ

                とてもきれいに描いてもらった」

     「私のお気に入りだ」

アエリオソメリ幹部「そうでしたか、これは失礼いたしました」

パンドラの隣に座っているジョルジュはパンドラに小声で

ジョルジュ「余計なことは言うな!」

      「不機嫌そうな顔もやめろ」

パンドラ「私はもともとこういう顔だ!うるさい」

アエリオソメリ幹部「では、本題に入らせていただきましょうかね」

パンドラ「待て」

ジョルジュは慌ててパンドラを制止しようとする

      「おい!余計なことは言うな」

パンドラ「いないんだな」

アエリオソメリ幹部「はい?」

パンドラ「マーブロス・ペタローザのことだ」

アエリオソメリ幹部「ペタローザ様は教会の運営にはかかわっておられません」

            「われわれが時折アドバイスをいただくだけです」

パンドラ「そうか」と冷めた顔をしながら言い

アエリオソメリ幹部「そのことで気を悪くされたのであれば

            申し訳ございません」

パンドラ「いや、違う」

ジョルジュ「パン!」

パンドラ「いない方がいい」

     「ミカエルには会いたくない」

アエリオソメリ幹部「は?」と不思議そうな顔をする

パンドラ「ん?お前らペタローザに会ってないんだな?」

アエリオソメリ幹部「え?いや・・・その・・・」と幹部たち全員が顔を見合せ動揺している

パンドラは、あたりをゆっくりと見回している

ジョルジュ「パン、どうでもいい話はもうやめなさい」

パンドラは大広間の高い天井付近を優雅に飛ぶ黒いアゲハ蝶を見つけ

     「あ」と声を出した

ジョルジュ「パン!」

すると、黒いアゲハはパンドラの方に向かってゆっくりと優雅に飛んでくる

パンドラはいつも髪につけている赤いバラを外しテーブルの上に置いた

するとその黒いアゲハはその赤いバラの上に降り立ち

美しい羽を開いたり閉じたりしている

周りのみんなは困惑している

パンドラは優しい顔をしながら

     「ふーん、珍しい蝶だ。カラスアゲハのようだが

      カラスアゲハには赤い斑紋はないんだがな」

そういい蝶を眺めながら

     「私のことはほっとけ」

     「続けろ」と言い放った

ジョルジュ「・・・・おまえなぁ・・・・」と呆れている

 東京の教会の前では、にらみ合いが続いていた

京子「とにかく目的が何なのかはっきり言って!」

男「目的かぁ~」

  「そうだな、とりあえずお前らをボコボコにして

   さっきいたねーちゃんも顔にでも傷をつけてやろう」

京子「そう!」

   「なら、正々堂々と勝負と行きましょう」

マリア「きょ・・・京子・・・今日はまずいのよね」

京子「あ、マリア私一人で大丈夫」

   「マリアは立場上無理でしょ?」

   「一般人同士の喧嘩だから」

   「気にしないで」

マリア「いあ・・・そういうわけには・・・」

そう言っていると一人の男の携帯に着信があり

携帯を取り出そうとしている

マリア「!」

    「まずい!」

    「京子、お願いだから教会に入って!」

男は携帯で一言ほど言葉を交わした後、ニヤリと笑い

男「リコフォス・レモネス!」と唱えた

すると、金色の野原のフィールド魔法が展開され

さっきまでいた街とは違う隔離された場所に移動したようだ

京子・マリア「!」

京子「なに!?」

マリアは、押しつぶされるほどの圧迫を感じその場に跪く

マリア「くっ!」

    「何この重さは!?」

京子「大丈夫!?マリア」

マリア「京子は、大丈夫なの?」と苦しそうな声をしながら尋ねる

京子はケロッとした顔をしながら「う・・うん」と答えた

男「ほう、威勢のいいねーちゃんの方は魔力を持ってないんだな」

マリア「制限魔法・・か・・・それにしても・・・きつい・・・」

    「これ・・・違法じゃない・・の?」

男「バカか!違法も糞もあるか!」

  「今日はパンドラもジョルジュもいない」

  「さぁ、ゆっくり遊ぼうぜ!」

マリア「それが・・・あなた達がアエリオソメリの一員である証・・・」

    「今・・・パンドラたちがローマについた連絡を受けたんでしょ…」

男「さぁ~、なんのことだろ?」

京子「マリアに何をしたの!」

   「やめなさい!」

男「うっせー!あまー!」と言い魔法弾を京子に打ち込んできた

京子素早く動きほとんどは交わしているが

いくつかの魔法弾はユニバースで防いでいるものの

京子を後ろに下がらせる

もう一人の男は懐から3段ロッドを取り出し

上から下に振り長さを最長にした

二人がかりで京子に魔法弾を撃ち込み続け

京子は前にうまく進めない

男二人は横に並びながら京子との距離をじわじわ詰めてくる

京子「くっ!」

   『こいつら・・・・』

   『前の私の戦い方を考慮している』

   『じわじわ詰めてあの棒で私を殴るつもりだわ』

   『しかし、見える・・・物の急所が』

   『こいつらの結界の急所が』

京子は素早く横に逃げ集中的に打たれていた魔法弾を避け

一気に敵の懐に飛び込み3段ロッドを持った方の男に殴りかかった

京子「はひふへほー!」

3段ロッドの男の結界を打ち破り男の顔面に京子の拳が到達する

より早く男は3段ロッドを自分の顔の前に立て防衛する

3段ロッドには電流が流れている

京子の拳と干渉して火花のようなものが散る

京子「はぅっ!」

すかさずもう一人の男が横から京子の脇腹に蹴りを入れる

京子「うっ!」と声をあげながら2Mほど吹き飛ばされ

地面にたたきつけられた

さらに追い打ちをかけるように3段ロッドの男が

ロッドを使って京子に殴りかかる

男「お前の拳は、結界を破る時にスピードが落ちるんだよ!」

  「同じ手を何度も食らうか馬鹿が!」そう言いながら

何度も何度も京子のことを殴る

マリア「京子ーーーーーー!」

三段ロッドの男とは違う方の男が「うっせーキチガイ女!」

と言いながらマリアに魔法弾を浴びせかける

マリアは身動きが取れずかわせない

マリア「きゃぁああああああ!」

魔法弾はマリアを直撃し

マリアの体から血しぶきが飛び散る

 ローマでは、パンドラは黒いアゲハ蝶をやさしい目で見つめている

黒いアゲハは美しい羽を誇らしげに開いたり閉じたりしている

アエリオソメリ幹部は「おほん!」と一度咳払いをし本題に入った

           「セルバンテスさんが魔力の制限を解除してから」

           「魔法がらみの事件が倍増しています」

           「そのことについてどうお考えでしょうか?」

セルバンテス幹部「取り締まりを強化していこうと考えています」

            「大学での指導も、より実務に役に立つような内容に

             切り替えていっていますので」

アエリオソメリ幹部「う~ん」と難色を示す声を上げ

            「それでは根本的な解決にはならない」

ジョルジュ「しかし、魔力に制限をかけることには反対です」

アエリオソメリ幹部「よくそんなことを言いますね」

            「長年従わせ続けていたあなた達が」

パンドラ「あれはルクツアーノがやっていたことだ」

     「あいつは私が始末した」

     「文句あるか?」

アエリオソメリ幹部「始末した?」

            「殺したと言うことか?」

            「噂には聞いていたが認めるのか?」

パンドラ「認めるも何も事実だ」

     「あいつとは何百年にも及ぶ因縁があった」

     「それは、お前たちの知るところではない」

アエリオソメリ幹部「人を殺しておいて良くもぬけぬけと」

パンドラ「勘違いするな」

     「あいつは、もはや人ではなかった」

     「命乞いする時間は十分に与えた」

     「『やれるものならやれ』と言ったからやった」

     「何の問題もない」

アエリオソメリ幹部「なんということを!」

            「セルバンテスでは、なぜこのような事を

             容認しているのか説明いただきたい」

パンドラ「くだらない!」と大きな声で言う

すると、その迫力にざわめいていたアエリオソリの幹部たちは

一気に黙り込んでしまった

パンドラ「お前たちは本当の戦を知らない」

     「本当に命をかけて闘っていると言うことを」

     「私はあの時アナールモストスの天秤フィールド魔法の中にいた」

     「通常、私が負け。私が殺されている」

     「もうひとつ言っておこう」

     「私はセルバンテスの人間ではない」

     「住むところがなく、お優しいセルバンテスさんのところに

      御厄介にやっていると言うわけだ」

     「教会だから当たり前だろ」

   

     「カビ臭い鍵もない書庫の片隅で寝ることを許可されている」

     「その礼に、少し手伝いをしている」

     「何か問題があるのか?」

アエリオソメリの幹部たちは黙ってしまっている

パンドラ「さらにもう一つ」

     「魔力の制限についてだが」

     「あれは不完全だ」

     「制限をかけておきたい厄介な奴に限って

      あれを外す方法を見つけるだろう」

     「だから意味がない」

     「健全な者に制限をかけ不自由させるだけだ」

     「ペタローザが運営に関与していないなら尚更だ」

     「お前たちが従わせられる奴など

      もともと大した奴らじゃない」

アエリオソメリ幹部「では・・・アークの件に移ろう」

パンドラ「待て!」

     「魔力の制限についてやめるか答えてもらいたい」

アエリオソメリ幹部「そ…それは、今ここにいる者だけでは

            決定できない」

パンドラ「はぁ?」

     「これだけの幹部がそろっていて

      決定できないだと?」

ジョルジュ「パン!もういい」

      「幹部だけで決められないのは当たり前だ」

そう言った後、まっすぐアエリオソメリの幹部たちの方に向き直り

      「どうぞ、前向きに検討いただけますように

       お願いいたします」

パンドラ「なんて役に立たないやつらだ!」とちょっと呆れながら言う

アエリオソメリ幹部「アークはサタンによって盗まれた」

            「さらにサタンはあなた達の知り合いなのでは?」

            「特にパンドラさん、あなたの」

パンドラ「そうだ」

     「はっきり言おう、ペタローザの推理は当たっている」

     「さらに、これが事実だと言うことをペタローザはミカエルから

      聞いているはずだ」

アエリオソメリ幹部「ミ・・・ミカエル・・?」

パンドラ「逆に問う」

     「で?」

     「どうしろと?」

     

アエリオソメリ幹部「エルサレムで私たちを騙したのだな!」

パンドラ「私は嘘は言っていない」

     「一字一句間違えずに思い出せ」

     「好きなだけ調べろ」

     「本物と言う答えが返ってくる」

     「そう言っただけだ」

アエリオソメリ幹部「アークを返還させてほしい」

パンドラ「無理だ」

     「そもそもなぜ私がそんな事を引き受けなければならない?」

     「納得のいく説明をしろ」

アエリオソメリ幹部「知り合いなのであれば、当然の責務だと思うが」

パンドラ「私は思わない」

アエリオソメリ幹部「サタンを擁護するのか?」

パンドラ「ん?擁護とはどういうことだ」

     「アークを返還するように私が働きかけないと

      私はサタンを擁護していることになるのか」

     「そもそもアークが盗まれた後、私はサタンに会っていない」

     「最後に会ったのはアークが盗まれる3か月ほど前だ」

     「今どこにいるのかも知らない」

     「それでも擁護していることになるのか」

アエリオソメリ幹部「では、日本で我々の部下を襲撃した件について・・・」

パンドラ「待て!」

     「今の質問に答えろ」と怖い顔をして言う

アエリオソメリ幹部「アークを盗んだ犯人を知っていながら

            それを放置していることが、我々の常識では考えられない」

パンドラは一層険しい顔をしながら

     「先に言っておこう、襲撃の件だが完全な濡れ衣だ」

     「そこにいたことは間違いなく事実だ」

     「お前らの部下を叩きのめしたのは華潮京子と言う子だ」

     「ただ、手を出したのはそちらが先だ」

     「私は一部始終見ていたからな」

     「その子は一般人だ」

     「その子に対して危険な魔法を放ち

      命にかかわる怪我を負わせようとしていた」

     「たまたま京子が強かっただけだ」

     「100%お前らが悪い」

アエリオソメリ幹部「証拠はあるのか」

パンドラ「はははははははは」と高らかに笑う

みんなは驚いている

パンドラ「他に何か聞きたいことはあるか?」

アエリオソメリ幹部「証拠はあるのか!」

パンドラ「もう一度だけ聞く」

     「他に何か聞きたいことはあるか?」

アエリオソメリ幹部「証拠はあるのか答えろ!」

パンドラ「他には何もないんだな?」

そう言い天を仰ぎ

     「なんてくだらない奴らだ」

     「本部だと聞いて少し期待していたが」

     「お前たちでは何も変えられない」

     「我々の常識だと」

     「私を正義の味方だとでも思っていたのか?」

     「お前たちの常識など知ったことか!」

     「それは罪か?」

     「罪深きことか?」

     「証拠」

     「証拠があるとしたら顔面の傷跡だろうな」

     「京子の拳と合致するだろう」

     「私が人を殴ったりするか!」

     「逆にお前たちには証拠がない」

     「あるはずがないんだからな」

     「ジョルジュ、帰るぞ」

そう言い席を立ちアエリオソメリの幹部たちに背を向けた

アエリオソメリ幹部「待て!」

パンドラ「他に何か聞きたいことはあるか?と聞いたはずだ」

     「お前たちは何も言わなかった」

     「だから、もう終わりだ」

天の声(ミカエル)「ははははははははは」

           「一方的じゃないか」

アエリオソメリ・セルバンテス両幹部は天の声に驚いている

天の声「相変わらずよく動く口だ」

     「第5チャクラが開いたパンドラに

      敵うはずもないか」

両幹部「だ・・・誰だ?」

     「どこにいる??」

天から響くその声にみんなは大広間の天井を見上げている

そこに黒いアゲハがパンドラの赤いバラを持ち上げ飛んでいる姿が飛び込んでくる

その光景にみんな驚いている

黒いアゲハはパンドラの頭の上に赤いバラを戻し

優雅に天井に向かってひらひら飛んでいく

パンドラ「ああ・・すまない」と言いながら髪飾りを髪に留めなおしている

     「黒い蝶はマーブロス・ペタローザ」

     「この声はミカエルだ」

     「それくらい気づけ!」と両幹部に向かって言い放った

アエリオソメリ幹部「ぺ・・・・ペタローザ様!???」

セルバンテス幹部「ミカエルとは誰のことだ?」

両幹部はざわめいている

天の声「おい、ずいぶんな御挨拶だな~」

    「ミカエルって言えば」

    「大天使ミカエルに決まってるだろ~」

パンドラ「こういう、イライラするやつなんだ構わなくていい」

     「さぁ、行こうジョルジュ」

ジョルジュ「いや・・・しかし・・・」

パンドラ「お前、何を根拠にこんなやつ崇拝してるんだ

      馬鹿か!」

大広間の白い天井付近に大天使ミカエルの姿がうっすらと浮かび上がる

その姿はいつものシャツ姿ではなく

白い美しい翼を4枚広げ、全身に鎧をまとい

右手には神の武器庫より賜った「鞘より抜かれし剣」を握りしめ

左手には「セフィロトの盾」を持っている

両幹部「おおおおおおお」

     「大天使長ミカエル様!」

黒いアゲハ蝶がミカエルの周りをひらひらと優雅に飛んでいる

パンドラは早足で大広間から出て行こうとする

ミカエル「今日、サタンは消滅する」

パンドラはまだ早足で歩いている

ミカエル「京子とマリアの危険を察知しサタンが現れる」

パンドラは立ち止まり振り返り「なに!?」とミカエルに言う

ミカエル「サタンは恐れをなし強力な結界を張り

      ずっと隠れている」

     「破壊するのに2.3日かかりそうな結界だ」

     「サタンは私がローマで暢気に遊んでいると思い」

     「今油断している」

     「だからやつは、のこのこと出てくるだろう」

パンドラ「京子とマリアが危険とはどういうことだ!」

ミカエル「それは俺が関知するところではない」

     「ただ、こうなるであろうと言う予想はしていたがな」

パンドラは、日本に帰るためにデス・アズワエルワンドの翼を広げた

ミカエル「待て」

     「京子たちがいる場所はフィールド魔法で隔離されている」

     「さすがのお前も見つけるのに時間がかかる」

     「俺は空間をつなぐ力ぐらい持っている」

 そう言い剣で円を描いた

 するとその円の中に京子たちの様子が映し出される

京子は仰向けに倒れぴくりとも動かない

マリアは攻撃を受け続け転げまわされている

パンドラ「京子ー!」

     「マリアー!」

ミカエル「まだ繋がっていない」

     「聞こえはしない」

パンドラ「ミカエル!早く私をそこに!」

ミカエル「俺は人どうしの戦いには関与しない」

パンドラ「くっ!」

パンドラは再びアズラエルの翼を広げセルバンテスローマ支部に向かおうとする

ミカエル「慌てるな、お前らしくもない」

     「もうすぐサタンが現れる」

     「サタンが現れれば話は別だ」

     「待っていた方が到着が早いぞ」

パンドラは飛ぶのをやめ歯を食いしばりながらミカエルを睨みつける

ミカエル「翼は広げておけ」

パンドラは翼を最大に広げいつでも飛べるように備えている

マリアは攻撃をまともに受け続け気を失いそうになっている

マリア『あ・・・・・京子・・・・』

    『わたし・・・・駄目・・・かも・・・』

男「もっと踊れ!マリアー!」と言いながら大きめの魔法弾を

力いっぱい打ちつける

その魔法弾はマリアに直撃しマリアは悲鳴をあげながら

3Mほど吹き飛ばされる

マリアは口から血を吐きながら死の覚悟をしはじめていた

するとマリアの耳元にしのぶの声が聞こえてくる

しのぶ『マリア、悲鳴を上げる暇があったら』

    『コールド・ジェイルを詠唱しなさい』

マリアはうつろな顔をしながら『・・・しのぶ・・?』

しのぶ『コールド・ジェイルをを詠唱しなさい』

    『コールド・ジェイルは自ら放つ魔力量とは全く関係ない』

    『早く!』

マリア『・・・・・』マリアは気を失いそうになっている

しのぶ『私は手を出さない』

    『私が出ていき、こいつらを倒しても』

    『また、あなた達は狙われる』

    『用意周到に準備されたこの罠をくぐりぬけ

     勝利すれば二度とあなた達に手を出してこないでしょう』

マリア『・・・・・・』

しのぶ『さぁ、苦しいけれど、立って』

    『京子を守れるのは貴方しかいない』

マリア「・・・京・・・子・・・」

パンドラは映像を観て「マリアーーーーー!」と叫んでいる

ミカエルは眉をひそめている

     「きた・・・・・」

パンドラ「ミカエル!早く私を!」

ミカエル「サタンが現れた!」

     「姿は見えぬが感じる!」

    「俺はサタンを滅ぼす者!」

    「聞け!天の声を!」

    「世界中の両教会の者達よ!」

    「承認となれ!」

その天の声は世界中の教会に響き同時にマリア達の映像が

世界中に映し出される

ミカエル「行くぞ!パンドラ!」と言いパンドラに向かって手を差し伸べた

●転 どんでん返し

シーン● 乱戦

男達「さぁ、次はこの元気なねーちゃんを傷物にしようかね」

  「こいつ腕に包帯を巻いて・・・骨折してるのか?」

  「丁度いい、二度と動かないようにもう一度粉々に折ってやろう」

そう話しながら男たちはのびている京子の方に向かって歩いて行く

今にも意識を失ってしまいそうなマリアに

しのぶはもう一度立ち上がるように話しかけている

しのぶ『京子は電気のショックで気絶しているが深手は負っていない』

    『コールド・ジェイルを展開し京子の元に行き

     京子を起こす』

    『京子にユニヴァースを最大展開させた後』

    『京子に内側からコールド・ジェイルをたたき壊してもらえ』

    『そうすればコールド・ジェイルによって凍らされた制限魔法は破壊される』

    『そしてあなた達が勝つ!』

マリア『・・・京子・・・・しの・・・ぶ・・・・』

しのぶ『マリア早く!』

男たちは京子の腕を何度も何度も踏みつける

京子「きゃぁああああああああ!」

京子は激痛に目を覚まし悲鳴を上げた

マリア「!」

マリアは悲鳴を聞きつけ重たい体を起き上がらせる

マリア「ブッ!」マリアの口から大量の血が吐き出される

しのぶ『マリア!一緒に!』

    『一緒に詠唱しよう』

    『できる?』

マリアは縦に首を振りながら『ぶほっ!』さらに血を吐いている

しのぶ『いくわよ・・・マリア』

しのぶ・マリア『コールド・ジェイル!』

パキパキ物凄い音をたてて周りのマナが凍りついていく

その音に男たちはマリアの方に振りかえった

しのぶ『コールド・ジェイルは武器にもなる』

    『もっと大きな声で!』

    『強く!』

マリア「コールド・ジェェエエイル!!!」と大きな声で詠唱する

すると男たちに向かって一直線にマナが凍り

その氷が一人の男を突き飛ばし粉々に砕ける

男「ぐはぁああああ!」

氷をくらった男は3Mほど吹き飛ばされ氷が接触した胸の辺りが凍ってしまい

苦しんでいる

マリア『体の重みがなくなった・・・・』

    『制限魔法を凍らせたのか・・・』

マリアはフラフラしながらだが立ち上がり京子の方に歩いて行く

3段ロッドの男「く・・・・来るんじゃねー!」そう言いながら魔法弾を

打ち込んでくるがコールド・ジェイルによってすべて凍りつかされてしまう

京子は右腕を抱え込んで苦しんでいる

マリアが近付くにつれ3段ロッドの男は一定の間合いを保ち

ジリジリ後ろに下がっていく

マリアは男には構わず京子のところに到達すると

優しく京子を胸に抱き

マリア「京子」

    「しのぶが助けに来てくれた」

京子は苦しみながらも「し・・・しのぶ?」

マリア「そうよ」

    「だからもう大丈夫」

京子「う・・・うん」

マリア「でも、しのぶは私たちに私たちの力で勝ってほしいの」

京子「・・そ・・・そう」

マリア「京子!」と大きな声で言い

    「ユニヴァースを最大展開よ!」

    「できる!?」と力強く尋ねた

京子は震える左手の親指を立て

  「当たり前よ」と答えた

京子はマリアの肩を借りながらゆっくりと立ち上がる

男たちは二人が立ちあがったことに恐怖を覚え

狂ったように魔法弾を撃ち込んでくる

京子「ユニヴァース!」としのぶの物真似でユニヴァースを詠唱した

魔法弾はコールド・ジェイルに凍らせられながらユニヴァースに弾き飛ばされていく

男たち「何だこいつら!」

    「制限魔法の効果がない!!」

マリア「いいえ・・・」「ごふっ」血を吐きながら笑顔をうかべ

    「まだ、私には制限魔法が覆いかぶさっているの…」

    「凍っていて体には影響が無くなったけど・・・」

    「魔力の放出はできない」

男「くくく・・・・そうか」

  「自分からそんなことを白状するとは

   馬鹿か!」

マリア「ふふふふ」「ブッ」血を吐きながらも笑う

男たち「気味悪い笑い方しやがって」

    「キチガイ女が!」

    「本当に狂ったか!」

マリア「今から・・・ごふっ!・・・京子が

    制限魔法をぶっ壊す・・・・ぶっ!・・・」

京子はマリアの周りの凍っているマナを見ている

   『幾何学模様が見える…これが制限魔法か?』

   『網目のように張り巡らされている』

   「マリア・・・見える」

マリア「そう・・・・ごふっ!」

    「やっちゃって・・・・」

    「あ・・・左手で・・・」

    「右手は・・・駄目よ・・・・ぶっ!」

京子の第六チャクラが小さいが一際眩しい輝きを放つ

京子「見える・・・・物の急所が・・・」

   「は・・・ひ・・・ふ・・・へ・・・」と小さな声で言い

   「ほーーーーーーー!」と大きな声で気合を入れ

大地をけり上げ左手を突きたて

コールド・ジェイルごと周りの凍っているマナを打ち砕いた

周りのマナは大きなガラスが割れたかのような大きな高い音をたて

バラバラになり崩れていく

その直後マリアの体から圧倒的な魔力が放出される

男たち「うぁああああああああ」

その魔力量に驚いている

    「こいつ!こんなに魔力があったのか!?」

マリア「クリムゾン・サラマンドラ!」と男たちに人差し指を向け力強く詠唱すると

男たちの周りは5Mはあろう真紅の炎で囲まれた

男たち「うわぁぁあああああああああああ!」と悲鳴をあげている

マリアは詠唱を終えると、そのままの姿で後ろに倒れ込んでいく

京子は倒れ行くマリアを抱きとめ膝をついた

マリア「お前たちをその炎で焼き殺すことは簡単」

    「ごふっ!」

    「指をくるりと回し照準を少し動かせばいいだけ」

    「負けを認め、二度と私たちに手を出さないと誓いなさい」

    「ぶっ!」

    「次は本当に焼き殺す」

男たちが「わかった」と慌てながら言い

二人は完全に観念したようで続けて

      「誓う」と言った

それとほぼ時を同時にして嵐のような風が吹く

ミカエル「サターーーーーン!」と言いながらミカエルが炎の中から飛び出して

京子の方に突っ込んでくる

京子・マリア「!!!?????」

二人は驚いている

ミカエルは2人の方に向かって『鞘より抜かれし剣』を振り下ろしてきた

京子・マリア「うっ!」二人はその迫力に身動きすらできず眼を瞑った

ミカエルが剣を振り下ろすと恐ろしいほどの轟音が鳴り響く

『鞘より抜かれし剣』は金色の翼を持った物体と接触し

稲光を放っている

ミカエル「ちぃいいいい!」

     「アーク!」

     「アークを守る智天使か!」

京子とマリアが目を開けると二人の前にしのぶが立っており

しのぶの前にいる1体の智天使がミカエルの剣を抑えている

ミカエルは剣を持った手を下し攻撃をいったん中断する

すると智天使も動きを止めたようだった

ミカエルの後に続き入ってきたパンドラは京子とマリアの傍に行き

パンドラ「大丈夫か?」

マリア「・・・まぁ・・・生きてるわ」

京子「わ・・・わたしも・・・へへへ」

パンドラは二人をぐっと抱きしめる

ミカエル「その智天使は、アークを守るだけ」

しのぶ「そうね」

ミカエルはしのぶに背を向け

     「こいつがサタンだ!」と天の声を使い

両教会の者たちに紹介するかのように声をあげた

各国の両教会の人々「・・・・・・」

              「あれが?」

              「サタンだって???」

 

              「華奢な女の子じゃないか・・・」

              「しかし・・・今アークが見えたぞ!」

              「ああ!私も一瞬だがアークが見えた」

              「あいつがアークを盗んだ犯人!」

ミカエルはしのぶに向かって

     「俺も鬼じゃない」

     「みなも見ている」

     「一度だけチャンスをやろう」

そう言い剣をくるりと回し剣先で地面のある一部を指示した

するとそこに拘束魔法にかけられたジブリールが現れる

ミカエルは天の声を使いみなに言う

     「こいつは大天使ガブリエル(ジブリールのこと)だ」

     「サタンにより拘束されている」

そう言い終わると再びしのぶの方を向き

ミカエル「どんなに疾しいことでも

      考えているだけなら許そう」

      「俺は寛大だ」

      「アークを返し」

      「ガブリエルの拘束魔法を解け」

      「その行為もサタン消滅を意味する」

しのぶ「ジブが私の与えた条件をクリアすれば

     拘束魔法を解く」

    「アークはことが済めば返還する」

ミカエル「それでは駄目だ!」

     「無条件で俺の指示に従え」

しのぶ「いやよ」とうつむきながら答える

ミカエル「そうか」

そう返事しパンドラの方を向き

     「お前からも何か言ってやれ」と言う

パンドラ「私はしのぶの選択を汚さない」

ミカエルはいつもより真剣な顔をして「そうか・・・」と答え

しのぶの方に向きなおした

しのぶは目を細めながら遠いところを見ている

ミカエル「?」

しのぶ「黒い羽」

    「黒い髪」

ミカエル「あ?」

しのぶ「赤い斑紋」

    「赤い瞳」

   

    「赤い瞳」

     「それは血の色」

     「だから本当は

      髪は黄色」

     「あなたも自分が嫌い」

     「私と同じ」

ミカエル「何を言っている!?」

パンドラ『ペタローザのことか?』

     『ペタローザはアルビノなのか?』

ミカエルがしのぶが見ているほうを見ると

そこには黒いアゲハ蝶が飛んでいる

ミカエル「ペタローザはお前と同じなどではない!」

     

しのぶ「マギファスコミオは螺旋の流星」

    「DNAと同じ」

    「それは2体が対になって行動していることを意味している」

ミカエル「黙れ!」

しのぶ「マギファスコミオのグリモワールは2つあると言うこと」

    「それは天と地に分けられ」

    「私が読んだグリモワールは『天』」

    「人の言葉で書かれていない」

    「だからあなたには読めない」

    「ある場所にも行けない」

ミカエル「黙れ!」

しのぶ「ミカエル、私はペタローザと話しているの」

    「少し静かにしてくれない?」とうつむきながら言う

ミカエル「きさまー!」と険しい顔をしながら言う

しのぶ「マーブロス・ペタローザ」

    「地のグリモワールを見つけ隠した者よ」

    「なぜ隠した」

    「ブラックエーテルを操れることが何よりの証拠」

    「蝶は復活・再生の象徴」

    「それにも意味があるように感じる」

ミカエル「サタン!」

     「答えを一度だけ聞いてやる!」

     「答えろ!」

しのぶ「さっき答えたわ」

    「聞いてなかったの?」

   

    「いやよ」

ミカエルは鞘より抜かれし剣を再び振り上げしのぶめがけて振り下ろす

再び智天使が現れ剣と接触し稲光を発している

ミカエル「お前は勘違いしている!」

     「智天使は確かに俺より階級が上だ」

しのぶ「貴方の方が強い」

    「貴方は大天使にして、すべての天使の長だ」

    「特別な大天使」

    「それくらい知っている」

    「智天使は2体ある、早く壊せ」

ミカエルが何度も智天使に攻撃をくわえると

智天使はどんどん壊れていく

しのぶ「いいわ、ミカエル」

    「私の想像より強い破壊力」

    「想定を上回っている」

ミカエル「何をいっているー!」

     「時間稼ぎなど無意味だ!」

そういい強く剣を振り下ろすと1体目の智天使が破壊された

立て続けに攻撃を加えるともう一体の智天使が現れ防御する

しのぶ「これは時間稼ぎじゃないの」とうつむきながら言う

    「3では3にならない」

    「2じゃないと3にならない」

    「だから早く壊しなさい」

ミカエル「??」

パンドラ『????』

     『アロンの杖・十戒・・・・そしてその入れ物アークそのもの

     も数に入れているのか』

     『ならば、今3で丁度いいはずだ』

     『何を考えている!?』

しのぶ「ミカエル」

    「私は生命の実のありかを見つけた」

    「すでに得ている知恵の実と

     これから得るであろう生命の実」

    「その二つがそろうと神と同等になる」

ミカエル「はぁ?」

     「何を言っている?」

     「生命の実などない!」

     「エデンの園・・すなわちマギファスコミオの草原」

     「俺は試しに探し回ってみた」

     「ない!」

しのぶは驚いた顔をしている

ミカエル「はははははははは」

     「ないことがバレたなサタン!」

     「大方カマをかけようとしたんだろうが」

     「大失敗だ!」

     「そんな驚いた顔をしてしまうなど」

     「小娘ではポーカーフェイスは無理だったか!」

     「はははははははは」

しのぶ「そうだったのね・・・・」

ミカエル「ああ!そうだ!」

しのぶ「貴方たちはマギファスコミオのグリモワールを読んでいないのね」

ミカエル「!?」

しのぶ「いいえ・・・・」

    「読めないように仕込まれている・・・・」

ミカエル「何を言っている?」

しのぶ「エデンの園はマギファスコミオの草原とは別の場所」

ミカエル「はぁ?」

     「普通に考えればあそこがエデンの園だろうが!」

     「バカか!」

しのぶ「違う」

ミカエル「なんだと!」

しのぶ「違う場所だとグリモワールに明記されている」

    「私はその場所を知っている」

    「エデンの園の場所として有名な場所だ」

    「場所はそこで正解」

    「しかし、もう何も残されていない」

ミカエル『パンドラがあの時おかしな表情をしたのは

      パンドラもそのことを知っていたからか!』

     『ちぃいい!』

   

     「なら!」

     「結局ない!」

     「そういうことだろうが!」

しのぶ「ある」

     「ないのにある」

ミカエル「くだらない・・・」

     「じゃあ、どこにあるのか言ってみろ!」

しのぶは少し微笑み

しのぶ「それは質問?」と尋ねる

ミカエル「はぁ?」と面倒臭そうな顔をする

しのぶ「それは質問なのかと聞いた」

    「何度も言わせるな」

ミカエル「なんだと!」

しのぶは呆れた顔をしながら

しのぶ「何度も言わせるな」

    「それは質問なのかと聞いた」

    「生命の実がどこにあるのか?と私に尋ねているのか?」

    「これで3度聞いた」

    「4度目はない」

    「バカでなければ質問に答えろ」

ミカエル「そうか・・そうやって私を怒らせる作戦か?」

しのぶはますます呆れて

しのぶ「そうか・・・分かった」

    「あなたは馬鹿なのね」

ミカエル「はははははは」と笑う

     「その手には乗らない」

     「よくある戦法だ」

     「バカバカしい」

     「ははははっは」

しのぶ「ミカエル」

    「手がお留守だ」

    「智天使を壊すのに何分かかっている」

    「早くやりなさい」

ミカエル「なんだその戦法は」

     「バカバカしい」

     「普通のものはそうやって

      お前のペースにはめられるんだろうが」

     「全く持ってバカバカしい」

しのぶ「なに?怒らせる戦法って」

    「バカバカしいとは、私が言いたいわ」

    「あなたが答えないので私が言う」

ミカエル「もう黙れ。見苦しい」

しのぶ「あなたは私に質問をした」

    「だから私の勝ちが確定した」

ミカエルは呆れた顔をして

懇親の一撃で智天使を消滅させ、しのぶの霊体の首をはねた

京子「しのぶーーーーーー!」

ミカエル「俺の特殊能力は」

     「霊体・肉体にかかわらず物理攻撃が出来ることだ」

     「残念だったなサタン」

     「まさか剣で斬られるとは思っていなかったのだろう」

そういい次はしのぶの頭を真っ二つにたたききり

ミカエル「さらばだ!サタン」そういい

懇親の一撃でしのぶの霊体を消滅させた

京子「きゃぁあああああああああああああ!」

京子はしのぶの霊体が消滅させられて動揺している.

ミカエル「ああいう戦法はもう飽き飽きだ」

     「まさに問答無用と言うわけだ」

     「すまんなパンドラ」

     「俺も殺したくはなかったんだがな」

パンドラは黙って考えている

パンドラの意識がしのぶの事に移った瞬間

京子はパンドラの手からすり抜け

ミカエルに飛び掛った

パンドラ「!」

京子「おのれーーーーーーー!」

ミカエル「あ?」

パンドラ「やめろーーーー!」パンドラは京子を取り押さえようと

京子を追う

京子の右手がミカエルに向かって振り上げられる

ミカエルは「鞘より抜かれし剣」を軽く京子に向かって振り下ろした

京子「きょあぁぁあああああああああ!」

京子の右手が消し飛ぶ

パンドラ「ぐはぁあああああ!」

京子をかばい京子に抱きついたパンドラの肋骨あたりが砕ける大きな音がする

京子は右手を失い焼けるような痛みに悶絶している

   「ううううあぁあああああああ」

パンドラも口から大量の血を吐いている「ぶほっ!」

マリア「!!!」マリアは出血がひどく立ち上がることが出来ない

    「パ・・・・パンドラ・・・・」

    「京子・・・」

パンドラは京子の右手に治癒の呪文を唱えるが、内臓から湧き出る

大量の血でうまく唱えられない

ミカエル「何のつもりだ、京子」

     「サタンでさえ、俺に拳を振り上げていないと言うのに」

ミカエルはゆっくりと「鞘より抜かれし剣」を振り上げる

パンドラ「やめろ!ミカエル」

     「この子はまだ子供なんだ!」

京子は痛みよりも怒りがまさり

京子「なんてひどいことするの!」とミカエルにとびかかろうとするが

パンドラ「やめとけ」と京子に覆いかぶさり制止している

京子「まだ16歳なんだよ!」

   「あなたたちみたいに立派になれなてなくても

    仕方ないじゃない!」

パンドラ「やめとけ、お前のかなう相手じゃない」

     「落ち着け京子しのぶを信じろ」

     「ぶふっ!」パンドラはまた大量に血を噴出している

京子の右手は肘から下が失われている

その切断面に黒いアゲハが止まり羽を開いたり閉じたりしている

すると京子の手の痛みが引いていく

京子「放して!パン!」

マリア「お・・落ち着いて・・・・京子」

    「パンドラ・・・はやく・・・肉体から離れて・・・」

    「死んでしま・・う」

その言葉を耳にして我に返った京子は

パンドラがひどい怪我をしていることにはじめて気づく

京子「パン!」

   「肉体から離れて!」

   「血がなくなっちゃう!」

パンドラ「駄目だ・・・」

     「お前らを触れなくなる」

     「それはいやだ」

     「ごふっ・・・」

京子「私は大丈夫!」

   「もうミカエルに飛び掛ったりしないから」

   「お願い!」

ミカエル「駄目だ!」

     「京子!お前は殺す」

     「俺に拳を振り上げたことは大罪だ」

黒いアゲハは淡く青白い光を放つ

その光はやがて京子・パンドラ・マリアを包み込む

パンドラ『!』

     『痛みが・・・引いていく』

     『こんな強力な治癒魔法は聞いたことがない』

     『マーブロス・ペタローザ』

     『しのぶの言うとおり・・・・

      私たちの知らない魔法を隠し持っているのか?』

パンドラ「京子」

     「しのぶは何と言った?」

京子「???」

パンドラ「勝ちが確定したと言った」

京子「??」

パンドラ「しのぶがつまらないハッタリなど言うはずがない」

ミカエル「なんだと?」とパンドラに言う

しのぶ「だから、私の勝ちが確定したといった」

ミカエルは驚き声がする方を向くとそこにはしのぶが立っていた

ミカエル「問答無用!」といい、もう一度しのぶの霊体を消滅させた

ミカエル『よし!手ごたえがあった』

     『今度こそ間違いなく消滅した』と確信を持った

しのぶ「なんど、同じことを繰り返しても無駄」

ミカエル「なに!」と驚きながら、また一撃で消滅させる

しのぶ「何度同じことを繰り返しても無駄だから」

    「何が起きているか説明・・」と言いかけた時

ミカエルにより「問答無用」と消滅させられる

しのぶ「そう・・・・じゃあ、好きなだけ続けなさ・・」

そこまで聞くとミカエルはまた、しのぶを消滅させる

しのぶ「全く呆れた、あなたは存在価値がなくなった」

    「私に・・・そうサタンに負けた」

    「だから価値がない」

ミカエルは取り乱したかのようにしのぶの霊体を何度も何度も

消滅させる

しのぶ「私があなたに価値を与えよう」

ミカエルはとうとうあきらめその場にひざまづき

ミカエル「ふふふふふ」

     「面白い・・・」

     「面白いぞ!お前は」

     「パンドラと同じくらい面白い」

パンドラ「はぁ?」

     「気色悪い」

ミカエル「さすがサタン!」

     「史上最強のサタンだ!」

     「おれの手に負えないとは」

     「とんだじゃじゃ馬だ!」

     「はははははははは!」

     「手ごたえが確かにあった」

     「おれはお前を確実に消滅させたはずだ!」

     「何が起きているのか説明しろサタン!」

しのぶ「いやよ」

ミカエル「はぁ?」

     「さっき説明しかけてたろ!」

しのぶ「ええ、邪魔したからもう言わない」

ミカエル「はははははは」

      「本当に手に負えないぜ、こいつ!」

     「じゃあ、価値を与えるのくだりを聞いてやろう!」

     「言え」

しのぶは返事もせずにアロンの杖を

ミカエルの方に軽く放り投げた

ミカエル「・・・・」

     「そうか・・・なるほどな・・・」

     「いいだろう!」

     「気に入った」

     「おれはお前が気に入ったぞ」

     「いい度胸をしている!」

    「パンドラお前が名前をつけろ!」

    「おれらしい格好いい名前にしろ!」

京子「なに?」

パンドラ「京子を許せ!」

     「なら名前を与えよう」

ミカエル「ふふふ、いいだろう」

      「どの道俺はもう大天使としての役割を失った」

パンドラは京子に向かって微笑みながら

     「私の武器はデス・アズラエルワンド・・・しってるな?」と尋ねる

京子「ええ」

そしてパンドラはしのぶの方を向き

パンドラ「しのぶの武器の名はホーリー・ミカエルワンドだ!」と

高らかに宣言した

ミカエル「よし!気に入ったぞ!」と言いアロンの杖を胸につきたてた

京子「きゃああ!」と驚いている

パンドラ「大丈夫だ」

アロンの杖とミカエルが同化していき

乾いた音をたててその場に杖が倒れた

杖は姿を変えており先端には大きな三日月があり

その中で太陽がくるくると回っている

その下にはノアの方舟があり船の下から雷と雨が降っている

杖の本体からは4枚の白い美しい羽が生えている

しのぶはその杖を拾い上げ「これで3になった」といい

しのぶ「ありがとうミカエル」と言う

そう言われると杖は太陽をもっとくるくる回し金でできた

三日月と太陽がミカエルらしい勇ましい金属音を立てる

雷を四方に広げて返事をしているようだった

●結 意外な結末

シーン☆ 京子の右腕

両教会の人々「なんてことだ!」

         「サタンが勝った!」

         「どうするんだ!?????」

ジブリールはミカエルの行動を見て驚いている

      『なぜ!!!!』

      『ミカエル!そんな馬鹿な!』

      『サタンに従うなど、そんな結論は絶対にありえないはず!』

      『私はしのぶと3か月共に過ごし

       かわいい子だと思っていた』

      『その私ですら!そんな結論に至れない』

      『私に「愛してほしかった」と涙した、しのぶを見て

       胸を締め付けられるような思いがした!』

      『それでも私はしのぶの側につく気にはどうしてもなれない』

      『不自然なほどに!』

      『そう!全くもって不自然!』

      『しのぶの言うとおり私たちはマギファスコミオを

       裏切れないように仕組まれているはず!』

      『どういうこと!???』

      『ミカエル!』

黒いアゲハが放つ淡く青白い光に包まれ

マリアも強力な治癒魔法を受け体調を取り戻し

ゆっくりと立ち上がり

    「パンドラ!京子の腕を再生してあげて!」

    「私、治癒系の魔法は使えないの!」とパンドラに頼んだ

パンドラ「・・・・これほど大きな破損を再生する場合は手助けはできるが」

     「自らの内なる力が重要になる」

     「バースを使い新たに肉体を作る方がてっとり早いんだが」

     「京子はアストラルイニシエーションができない・・・・」

京子は自分の腕の切断面を左手で隠しながら

   「いいの・・・・」

   「自分の判断で起こした行動の結果」

   「後悔はしていない」

   「だから・・・」

   「いいの・・・・」

パンドラ「・・・・・・」

マリア「よくないわ」

京子「いいの・・・」

しのぶは京子・パンドラ・マリアの方をうつむきながら少し見て

ジブリールの方に向かって歩いて行く

京子はしのぶがこちらを少し見たのに気がつき

   「しのぶ!」と声をかける

しのぶはうつむきながら京子をちらりと見た後

興味を失ったような顔をし、うつむきながらジブリールの方に歩いて行く

京子「しのぶ!」

   「こっちを向いて!」

   「私の目を見て!」

   「私と話をして!」

しのぶは興味を示さない

京子「あなたは、ずるいわ!」

パンドラ「しのぶ・・・・・」

     「私もお前に伝えたいことがある・・・・」

パンドラは珍しく自信なさそうにしのぶに話しかける

マリア「わたしも!」

    「わたしもあなたに伝えたいことがあるの!」

しのぶはようやく3人の方を向き「まって」とだけ答え

ジブリールの方に歩いて行く

京子・パンドラ・マリア「・・・・・・」

京子の腕の切断面付近に止まっている黒いアゲハから放たれる

淡く青白い光の中心ににマリアが目をやると

マリア「京子!」

    「みて!」

京子はマリアが自分の腕の切断面付近を見ているのを見て

自分もそこを見る

パンドラ「なに!?」

京子の腕が少しずつ生えてきている

パンドラ『外からの力でこんなに再生できるものなのか!?』

京子は「やめて!」といい、蝶を振り払おうとする

パンドラ「ペタローザ!やめるな!」

     「お願いだ!治してやってくれ!」

京子「いやよ!」そう言い腕をぶんぶん振っている

しのぶ「京子!」としのぶにしては大きな声で京子に呼びかける

京子「!?」

しのぶは何も言わない

京子は腕を振るのをやめしのぶをじっと見ている

京子のおでこがジンジンする

第6チャクラが開き輝きを放ちだしている

しのぶは少し微笑み

    「いいわ・・・京子」

    「あなたは元に戻った」

    「輝いている」とうつむきながら言う

    「あなたはとても無鉄砲」

    「だから右手が必要」

    「強力な右手が」

京子「・・・・・・・」

しのぶ「あなたの第6チャクラは今何を見つけたか?」

京子「・・・・・」

しのぶは再びジブリールの方を向き歩き始めた

パンドラ『京子の3つのチャクラが開いていく!』

     『第6.第5.第3』

     『なかなかの大きさだ!』

京子「ペタローザさん・・・」

   「形だけください」

   「動くようには自分で治したいんです」

   「私は魔法を勉強し」

   「自分で動くように治します」

   「そうでないと・・・」

   「満足できません」

パンドラ「・・・・・」

マリア「京子!」

    「全部治してもらって!」

京子「いやよ・・・」と小さな声で答える

黒いアゲハは羽を開いたり閉じたりし

返事しているかのようだ

パンドラ「マリア・・・京子の気の済むようにさせよう」

     「大丈夫だ・・・」

マリア「でも、魔法はとても難しいのよ!」

    「この歳からでは、なおさらよ!」

パンドラ「京子のチャクラは開かれた!」

     「だから大丈夫だ」と優しく言う

マリアは驚き、そのあと嬉しそうに「本当に?」と尋ねる

パンドラ「ああ」と答える

しのぶはジブリールの前に到着し、うつむきながらジブリールを見る

ジブリール「しのぶ・・・・」

京子・マリア・パンドラはジブリールとしのぶを見守る

しのぶ「拘束魔法を解く」

ジブリール「まって!しのぶ」

しのぶ「・・・・・・・」

京子たちは不思議そうな顔をしながら二人を見ている

ジブリール「拘束魔法を解く理由」

しのぶ「・・・・・・・・」

ジブリール「相反する2つの理由」

京子「しのぶは、本当にそれでいいと思っている・・・・」

マリア「へ?」

パンドラ「・・・・・・」

     『京子の直感型の第6チャクラはなにを見た?』

京子「ないのにある・・・・その答えと同じ」

   「生命の実と同じ」

パンドラ「結果のみを重要視すると言う意味か?」

京子「そう」

   「人が神をあがめるのと同じ」

   「心が癒されればそれで良い」

   「例え本当はいないとわかっていても」

ジブリール「正当な理由」

       「私が条件をクリアしたから拘束魔法を解く」

      「相反する理由」

      「しのぶの問いに考えが及ばず」

      「条件をクリアできない私を憐れみ拘束魔法を解く」

      「何の脅威も感じない哀れなアークエンジェル」

      「どちらの理由になっても拘束魔法を解く」

      『ミカエルは簡単にこの答えを見つけた!』

      『ミカエルの行動をヒントとし私は答えを見つけた!』

      『その答えは』

   

      『「今は敵わぬサタンに従うフリをし

       サタンの傍でサタンを監視しサタンをを討つ時を待つ!」だ!』

      『そしてしのぶは、そのことをあらかじめ知っている』

      『それでも尚それでいいと言うのか!?』

      『しのぶ!あなたは悲し過ぎる!』

      「私は正当な理由で拘束魔法を解かれることを望む」そう言いながら

ジブリールは涙を流しはじめた

しのぶ「?」

    「なぜ泣いている?」

ジブリール「くやしいから・・・よ・・・・」

しのぶ「・・・そう・・・」とうつむきながら言う

ジブリール「悔しい理由は・・・あなたに負けたからじゃないのよ・・・」

しのぶ「ええ・・・分かっているわ」

ジブリール「頭では理解できているのにどうしても操作から抜け出せない!」

      「心がそちらを向かない!」

      「逆ならば!どれだけ楽だったことでしょう!」

しのぶ「そう・・・」

    「それが私がサタンになった理由」

    「マギファスコミオの操作から逃れる可能性を探し続ける」

    「あなたも・・・・操作から解放してあげたいと考えている」

ジブリールは泣いている

しのぶ「ジブ、あなたが涙してくれただけで私は十分満たされた」

    「それ自体が正当な理由となる」

ジブリール「駄目、そこまで甘えられない」

       「言わせて」

しのぶ「・・・・・・」

ジブリール「私はサタンの下僕になる」

       「私に存在理由を与えて下さい!」

       「パンドラの本もあなたにお返しします」

しのぶ「・・・・・・・」

しばらく黙ってうつむいたあと

    「ありがとう」と答えた

ジブリール「私に価値を与えて下さい!」と強く懇願する

しのぶはそっと蛇のような鎖に手を押し当て

何やら逆呪文を唱えている

ジブリールの頭の中にしのぶの思考が流れ込む

ジブリール『!』

       『はやい!』

       『ねじれて反転するすきを与えない!』

みるみるビアンスコンシー・ミオビウサが消えていく

しのぶはビアンスコンシー・ミオビウサを半分ほど解き

    「ジブ、もう出られる」

    「この魔法は我ながら厄介なの」

    「早く出て」

ジブリールは解かれた部分から拘束魔法の外に出る

するとしのぶは逆呪文をやめた

みるみるビアンスコンシー・ミオビウサが元の姿に戻っていく

ジブリールはその強力な拘束魔法に驚いている

しのぶ「ミカエル、鞘より抜かれし剣の力を貸して」

そう言い抜け殻となったビアンスコンシー・ミオビウサに向かって

ホーリー・ミカエルワンドを振り下ろした

ミカエルワンドは太陽をくるくる回し勇ましい金属音を立てている

轟音と共にミカエルワンドはビアンスコンシー・ミオビウサは一撃で

跡形もなく破壊した

ジブリールはその圧倒的な力に言葉を失っていた

しのぶ「ジブ」

    「あなたに存在価値を与える」

   

    「特殊で強力な第六チャクラの持主」

    「華潮京子」

    「彼女には強力な右手が必要」

ジブリールは驚いている

京子「!!!????」

京子も驚いている

しのぶ「ジブ、あなたは・・・」

    「京子の右手の添え木になりなさい」

ジブリール「!」

京子「!?」

ジブリール「しかし・・それは・・・・」

       「大天使の仕事とは思えない」

しのぶ「大天使の仕事などどうでもいい」

ジブリール「・・・・・・」

しのぶはジブリールに触れられるほど近づき耳元で

    「京子のそばにいてあげてほしい」と小さな声で言い

くるりと回りジブリールに背を向け

    「これは命令だ!」

    「勘違いするな」と言い放った

ジブリールは優しく微笑みながら「わかりました」と答え

両手を何かをうけるような格好で前に出した

その両手にはパンドラの本が復元されていく

ジブリール「しのぶ・・・これを」

しのぶは振り返り右手を差し出し本を受け取り「ありがとう、ジブ」と返事した

ジブリールは京子の方にゆっくりと歩いていき

京子の右腕をつかみ胸で抱きしめる

京子「な・・・なに?」

ジブリール「しのぶの命です」

       「あなたをずっとお守りしましょう」

京子「へ?」

ジブリールの体はみるみる形を変えて

京子の右腕の保護具のような添え木になった

京子「ちょっ!ちょっと!」

   「し・・しのぶ!」

   「何これ」

   「やめさせて!」と慌てている

しのぶは京子の方を向いていない

ひらひらと舞う黒いアゲハをずっと見ている

しのぶはミカエルワンドを振り上げ黒いアゲハに向かって振りおし

    「コンセチダパテリ・デオズ!」と詠唱し攻撃を開始した

黒いアゲハは青白い炎を放ちしのぶの攻撃を焼き尽くす

あたりは青白い炎で覆い尽くされた

京子「!」

パンドラ「!!!」

マリア「な・・・なに??」

    「ぶ・・・ブラックエーテル!」

しのぶ「リ・ピーストチルデ・ラ・ゲイン」と詠唱し

青い炎を一気に消滅させる

マリア「なぜあなたたちが戦うの!?」

黒いアゲハはしのぶの方に向かって飛んでいき

青白い炎を放ち続ける

しのぶのミカエルワンドの太陽が勇ましい金属音を立てながら

高速に回転しブラックエーテルの炎を振り払う

ペタローザとしのぶの激しい攻防を京子・マリア・パンドラは

かたずをのんで見守っている

するとパンドラの頭の中にしのぶの声が聞こえてくる

しのぶ『パン』

パンドラ『ん?』

しのぶ『今、京子の興味が私からそれた』

    『そのうちに伝えておきたいことがある』

ペタローザとしのぶは一進一退を繰り返している

パンドラ『・・・・・』

しのぶ『この戦闘が終わった後』

    『京子は私に興味を戻す』

    『そして私はこの場から去ろうとする』

パンドラ『・・・・・・』

しのぶ『京子は取り乱し私を追いかけようとする』

パンドラ『!?』

しのぶ『京子の好きなようにさせ』

    『見守ってあげてほしい』

パンドラ『・・・・・・』少し考えその後

     『ああ、わかった』と答える

しのぶ『ところで、パン私に伝えたいこととは?』

パンドラは恥ずかしそうな顔をしながら

     『・・・・・・・・』

     『あ・・・・あの・・・・』

しのぶ『?』

パンドラ『いい・・・』

しのぶ『?』

パンドラ『はずかしい』

しのぶ『どうしたの?』

パンドラ『そうあらたまって聞かれると・・・・』

     『あの・・・・』

     『テンションが高いときじゃないと・・・・』

     『はずかしい・・・・』

しのぶ『ふふふふふ』

    『なんとなくわかったわ』

パンドラ『そうか・・・・』

     『また今度ちゃんと言う』

しのぶ『そう』

しのぶはどんどんブラックエーテルに包まれていく

パンドラ『しのぶ!集中しなさい』

     『ペタローザを甘く見てはいけない』

しのぶ『このアゲハは本体じゃないわ』

    『大丈夫』

    『ペタローザも分かっているはず』

パンドラ『?』

しのぶ「ユニヴァース!」

しのぶがユニヴァースを詠唱すると

みるみるブラックエーテルがはじかれていく

黒いアゲハ蝶はさらに強い光を放つ

マリア「あああああ!ユニヴァースがブラックエーテルに焼かれている!」

京子「しのぶ!あぶない!」

黒いアゲハはユニヴァースに穴をあけユニヴァースの中に入ってき

しのぶの目の前に到達した

しのぶ「コールド・ジェイル!」

しのぶがコールドジェイルを詠唱するとユニヴァースごと周りのブラックエーテルと

黒いアゲハ蝶を凍りつかせた

マリア「え!?」

    「わ・・・わざと・・・ユニヴァースの中に入れた?」

しのぶは凍りついた黒いアゲハを手に取り髪を結っている

リボンにそっと添え髪飾りにした

しのぶ「マーブロス・ペタローザ」

    「これは印」

    「再会の約束」

 

    「私は約束を違えない」

そう言った後、しのぶはマリアの方を向き

しのぶ「マリア、私に何か言いたいことがあるの?」と尋ねた

マリア「え・・・・」

しのぶ「?」

    「さっき、そう言わなかった?」と、うつむきながら言う

マリア「あ・・・あの、改まって聞かれると・・・その・・・」

    「は・・・恥ずかしいと言うか・・・」

    「何と言うか・・・」

しのぶは微笑みながら

    「そう」

    「何となくわかった気がするわ」

マリアは顔を真っ赤にしながら大きな声で

    「ありがとう!」と言う

しのぶは驚きながら「え?」と答え

    「ふふふふふ」と優しく笑った

その後、まじめな顔をしパンドラ・マリア・京子の順に

しっかりと顔を見せ、くるりと背を向けミカエルワンドで円を描き

フィールド魔法に穴を開けた

京子「まって!」

しのぶは呼びかけに応じない

京子のおでこがジンジンする

京子の第六チャクラがしのぶの思考を読み取る

しのぶ『ねぇ、拓ちゃん』

    『私はのろまで、歩くのがとても遅いの』

    『私にあわせていつも横を歩いていてくれたことを

     私は知っているよ』

    『時には待ち切れず、私を抱えて走ってくれた』

    『ねぇ、覚えている?』

    『高台にある大きな大きな公園の一番高い木』

    『私を抱えて登ってくれた』

    『私は、怖くて景色はあまり見られなかったけれど』

    『拓ちゃんの瞳が輝いていたのを忘れない』

    『街ゆく電車がおもちゃのように見えたのを忘れない』

    『もしも叶うのなら、もう一度あの時拓ちゃんが見ていた

     景色を見てみたい』

    『今なら、目を瞑らずにまっすぐ見られる気がするの』

    『ねぇ、拓ちゃん。もしも気持ちを形にできるのなら』

    『あなたに見てほしいの』

    『・・・・・・・・・』

    『・・・・・・・・・』

京子『!?????』

しのぶ『・・・・・・』

    『さようなら・・・・・』

京子「!」京子は驚いている

しのぶは、丸く開けたフィールドの穴から外に出ていく

京子「待て!」

   「許さない!」

   「そんなことは許さない!」と怒りながらしのぶを追いかける

マリアは何が起きたのか分からず驚いている

   「京子!」

   「どうしたの!?」そう言いながら京子を追いかけようとするが

パンドラに腕をつかまれ制止される

京子「ちゃんと、私と話をしろ!」そう言いながらしのぶを追いかけるが

しのぶの開けた穴は空中なので、京子では届かない

それでも京子はあきらめず「待てー!」と叫びながら

持てる力すべてを使いジャンプした

京子は自分が思っていたより高く飛んだ「あ」

そのことに自分でも驚き下を見ると手を伸ばしジャンプしている

自分自身が見えた

パンドラ「はずれた!」

     「しのぶ!そういうことか!」

マリア「なななな、京子が2人になった!!!???」

京子は驚いているがしのぶのいる方に向きなおす

しのぶはどんどん奥に進んでいく

パンドラは空中から落ちていく京子の抜け殻となった肉体を

抱きとめ、その場に跪き自らもアストラルイニシエーションし

パンドラ「マリア!すまんが、大人しく待ってくれ!」といい

京子を追うように霊体となり飛んで行った

マリア「ちょ!ちょっと~!」と慌てている

京子は一心不乱にしのぶを追いかけていたが

とうとうしのぶを見失ってしまった

京子「しのぶ~~~~~~!」

   「しのぶ~~~~~~~!」

   「し~~~の~~~ぶ~~~~~~~!!!」

   「拓也君に会ってあげて!」

   「なぜ!なぜ!」

   「なぜ!!!!!」

京子は全身の力を振り絞ってしのぶを呼ぶ

しかし、しのぶからの反応の気配がない

京子は両ひざを地面につき

  「ちくしょう!ちくしょう!」と叫びながら地面を拳で殴り続けた

京子は、気がついた

地面があることを

地面を殴りつけていた左手には草が握られている

京子は周りを見回している

心地よいさわやかな風が吹いている

いつまでもここに居たいと京子は考え始めていた

京子『・・・・・・・・』

   『ここは・・・・』

   

   『しのぶに初めて会ったところ・・・・・』

京子は背後に人の気配を感じ振り向くと、

そこには京子を追ってきたパンドラが立っていた

京子「・・・・・」

パンドラ「・・・・・」

京子は再び先ほど向いていた しのぶが向かったであろう方向を見る

小さな丘の上にバレーボールくらいの何の変哲もない石ころが見えている

京子はその石が気になって仕方がなくなっていた

京子はその石に向かいゆっくりと歩いて行く

パンドラ「・・・・・・・」

パンドラは何が起きても大丈夫なように

京子の後ろをぴったりと歩いて行く

京子はその石にの前に到達すると膝をつきグリモワールに触った

パンドラ「・・・・・・・・」

京子には何の変化もない

パンドラ「・・・・・・」

京子「・・・・・・・」

しばらく京子は石を触り続けていたがやがて興味を失ったのか

石から手を離し立ち上がる

パンドラ「・・・・・・」

京子「・・・・・・・・」

しばらく沈黙が続く

パンドラ「マリアを待たせている」

     「戻ろう」

京子はしのぶが行ってしまったであろう方向をずっと見ている

パンドラ「また会えるさ・・・・」

マギファスコミオの爽やかな風が二人の体を通り抜けていく

パンドラは京子の横に立ち肩を抱き、京子の横顔を見ると

京子の唇が、何やら小さく動いているのが見える

しかし、何を言っているのか聞きとることはできなかった

風の音しかない、とても静かなとこだと言うのに・・・・・

シーン● ローマへ

京子「なんで教えてくれなかったのー!」

マリア「もう!いいじゃん見送りなんて!」

    「間に合わないって!」

京子とマリアは金網が張られた空港の外周を

一生懸命走っている

京子「あ!」

京子は走るのをやめ金網に手を駆け1つの飛行機を見ている

京子「・・・・・・・」

マリア「ど・・・どうしたの?」

京子「あれに乗ってる・・・・」

その飛行機が滑走路を走りだす

マリア「う~ん・・・」

    「瞬間移動の魔法陣が嫌いだからって…」

    「何も飛行機で行くことないのに…」

京子は何も言わず、その飛行機を目で追っている

マリア「ローマっていっても、うちの教会から一瞬で飛べるから」

    「見送りなんていいのよ」と息を切らせながら言う

飛行機が離陸していく

二人は無言で飛行機が小さくなっていくのを見ている

京子「パンも・・・しのぶも・・・ローマに行ってしまう・・・」

マリア「しのぶ?・・も」

京子「ペタローザがローマにいるんですもの…」

マリア「・・・・そっか・・・」

京子は左手で金網を握りしめている

しばらく沈黙が続く、京子はその場から離れる気配がない

マリア「あ・・・あの・・・」

    「パンドラに頼まれてて・・・

     ずっと言いそびれてたことがあるの・・・」

京子は初めて空からマリアに視線を移し不思議そうな顔をしている

逆にマリアは空を見上げながら言う

マリア「パンドラのフルネーム」

    「京子に教えとけって、ずいぶん前に言われてたの」

京子「・・・・・・・」

マリア「パンドラ・デロルレ」

京子は再び空を見上げ、さびしそうな顔をしながら

   「そう・・・」とだけ答えた

白昼夢2 -おわりー 白昼夢3へ続く~

   

シーン● 直後の出来事

パンドラは、しのぶの家の庭から、「しのぶの母親はいるかー」とママを呼んでいる

ママは、何やら声がするのに気づき

ママ「しのぶ?」といいながら庭の方へやってきた

庭に出る勝手口を開けるとそこにはパンドラが立っていた

ママ「あ、あの…」

パンドラ「わたしは、しのぶの友人だ」

ママはどうみても高校生には見えないパンドラを見てキョトンとしながら、

ママ「しのぶ今、呼びますね」と言った

パンドラ「いや、あなたに用がある」

ママ「?」と驚いた様子だ

パンドラ「しのぶが学校を早退し本を読んで倒れたことがあっただろう」

ママ「えっ?は・・・はい」

パンドラ「そして、倒れる直前に人の名前を呼んだ」

ママ「はあ ・・・」と考えている

パンドラ「何といったか思い出してみてくれ」

ママ「えーっと、パンドラが・・・なんやらとか・・・」

パンドラ「ああ、私の名前はパンドラ・デロルレだ」

ママ「はあ?」とちょっと戸惑いながら答える

パンドラ「お前なかなか鈍い奴だな、本当に学者なのか?」

ママ「ははは・・・一応ね・・・」

パンドラ「ちなみに、おまえに対してこんな口のきき方をしているが、

     わたしのほうが歳上だから気にするな」

ママ「へ?」と、ますます困惑している

パンドラ「しのぶは倒れる前に私の名前パンドラ・デロルレといったのだ。」

     「覚えてないのか?」

ママ「ああ、確かにそんな感じのことを言ってました」

パンドラ「そうだ」

     「しのぶ自信から聞いていると思うがあの子は普通の子ではない。」

ママ「…」

パンドラ「しのぶは魔力を持っている」

     「それに加えて第6チャクラが全開で開いている」

ママ「…」

パンドラ「私と同じた」

ママ「はぁ」

パンドラ「しのぶと私は共に非日常を生き固く結ばれている」

ママ「えっと・・・しのぶ 呼びましょうか?」

パンドラ「しのぶとはさっきまで一緒にいた」

   「訳がありお前に伝えなければならないことがあり、お前を呼んだ」

ママ「はあ」

パンドラ「しのぶは今精神的ショックでひどく落ち込んでいる」

ママ「え?さっき元気に学校から帰って来てましたけど」

パンドラ「ああ、その後にだ」

     「さっき窓から飛び降りたんだ」

ママ「あなたちょっと何言っているんですか?」ちょっと怒ったふうにいった

パンドラは今迄と打って変わって恐い顔して

     「お前はしのぶのことを何もわかっていない!」と強く言った

ママは動揺している

パンドラ「しのぶは凡人ではない」

     「そのことには、お前も気が付いていたはずだ」

     「ただ、しのぶは手のかからない利口でいい子だった」

     「そのことで、お前はしのぶに甘えたんだ」

ママ「・・・・・」少し動揺している

パンドラ「しのぶがお前達にあわせていたのだ」

ママは確信をつかれひどく動揺している

パンドラ「故にしのぶは、お前たちに甘える事が出来なかった」

     「子供が然るべき時に受けるべき両親からの

     愛情を受けることが出来なかったのだ」

ママは、今にも泣き出しそうになっている

パンドラ「私はしのぶと同じ能力を持っている、だからしのぶの言うこと

     すべてが真実であることを理解できる」

     「初めて何の説明もなく信じてもらえたのは私だけだったのだろう」

     「しのぶは、私が胸に抱くとうれしそうに甘え、よく眠る」

ママは下を向き涙をこらえている

パンドラ「おい、泣くなよ」

     「しのぶに私が怒られる」と言いすぎたことを反省した

     「お前たちを責めている訳じゃない」

     「私がしのぶの友人だと言うことを説明したかっただけだ」

     「すまん」

     「しのぶは、お前たちのことを愛している、心配するな」

ママは目を潤ませながらパンドラの方を見た

パンドラ「お前に伝えたかったことを言う」

     「しのぶは地球の生命の誕生の秘密を知ってしまった」

ママ「生命の誕生の秘密・・・?」

パンドラ「これは、しのぶの様なタイプの人間には、ちょっと、キツイ内容だ」

     「私やお前なら、そんなに気にしないような事だが・・・」

ママ「それは・・・一体・・・?」

パンドラ「お前には知る権利はない」

     「この事について書かれた書物を読めるのは

     第六チャクラが開いたものだけだ」

     「もしも伝え聞いても到底理解できん」

ママ「・・・・」唖然としている

パンドラ「しのぶの精神的ショックを癒すために」

     「しのぶを私が預かる」

     「それを伝えに来た」

ママ「な・・・なにいってるんですか?駄目です!」

パンドラ「お前らでは癒せない」

     「私としのぶの言う事は理解できないだろうが」

     「間違いなく事実だと付け加えた上でこう言おう」

     「私は1000年以上生きている」

     「誇り高き千年魔女パンドラ・デロルレだ」

     「しのぶは『かわいいピアニスト 沖斗しのぶ』だ」

     「私が名前を授けた」

ママ「・・・・・・・」なにやらわからないがパンドラの言葉には

やけに説得力があると感じていた

パンドラ「心配するな3日後に一旦連れて帰ってくる」

     「今はどのみち、お前たちに会っても関心を示さない」

     「それほど、病んでいる・・・」と悲しそうな顔をしてママに背中を向けた

京子とパンドラ笑い合うシーン

しのぶがミカエルに勝つシーン

ミカエル「さぁ、もうお遊びは終わりだサタン」

     「最後にもう一度だけチャンスをやろう」

     「諦めて元の世界へ戻れ」

     「アークを私に渡せ」

しのぶが何をしたのかの答えは「ないのにあるの問答」

普通の実をミカエルの喉にぶつける

ないはずのダアト、ないけどある

ダアトと言う名前が存在する

だからある

ないけどある

生命の実は生命の木にある

生命の実などない

ないけどある

ダアトと同じ

ダアトは生命の木を人の体の関係で表すと

のどの場所

第五チャクラと同じ

だからダアトに生命の実がある

それが喉

それをミカエルに仕込んだ

だからミカエルは生命を生み出す

しのぶが消滅させられても

ミカエルがしのぶのことを頭に浮かべると復活する

仕掛け

だからミカエルはしのぶを消滅させることができない

消滅させてもミカエルの頭の中に存在するから

何度でも復活する

メモまとめへのリンク

マギ→マギファスコミオ

教会の名前 セルバンテス

前半部分に京子の物真似名人の仕込み

        パンドラがいつも日傘を持っているの追記

◎ゆきと洋介 ゆきへ感謝の気持ち伝える

 

◎心配かけるのを嫌がる京子

 マリア逆の立場ならあなたならどう思うのか?

 勝手に心配しているだけ

 だから大丈夫

◎ジブリールにしのぶが課した問題の答え

 サタンに服従できないのなら服従する演技をし

 時を待つことを大義とせよ

 あまんじてそれを受けようと言うこと

ジョルジュ「あ・・・あの」

パンドラ「ん?」

ジョルジュ「言うのが遅くなったんだが」

パンドラ「?」

ジョルジュ「君が来ないから、こちらから行くと」

パンドラ「こちら?」

ジョルジュ「彼女は君に会いたがっている」

パンドラ「へ?」

ジョルジュ「産声が響いたとき君が近くにいたことが

       ばれている」

パンドラ「う・・・・」

     「ペタローザが来るのか?」

ジョルジュ「そ・・そうだ」

パンドラ「い・・いつだ?」

ペタローザ「もういますよ」

マリア「わーーーー!」と驚く

その視線の先には漆黒の長い美しい髪をした少女が立っていた

パンドラ「お・・・お前いつの間に」

ペタローザ「ひどいですねイカレてるだなんて」

パンドラ「あ・・・すまん」

ペタローザ「お久しぶりです。パンドラさん」

パンドラ「ああ、久しぶりだな」

ペタローザ「世間話は苦手なので

       さっそく本台で悪いんですが」

パンドラ「・・・・・・」

ペタローザ「サタンを知ってますね?」

パンドラ「ああ」

ペタローザ「会うことはできますか?」

パンドラ「会ってどうする?」

ペタローザ「場合によっては殺します」

パンドラ「場合?」

ペタローザ「改心しないようであれば・・・」

パンドラ「改心はしないな」

     「100%言いきれる」

     「ミカエルたちが動いている

      そっちに任せておけ」

ペタローザ「アークエンジェルが動いていると?」

パンドラ「ああ、ジブ・・いや、ガブリエルも動いている」

ペタローザ「・・・・・」少し考えてから

       「では、サタンにあることは可能かどうかだけ

        聞かせていただけますか?」

パンドラ「う~ん」

     「絶対とは言い切れないが

      多分可能だな」

ペタローザ「そうですか」と満足そうな顔をして言い

       「サタンがどういう人物なのか知っておきたい」

パンドラ「普通の16歳の女の子だ」

     「人には危害を加えない」

     「ただ神のことが許せないだけだ」

         「気にするな」

ペタローザ「16歳の女の子?」

パンドラ「ああ」

     「ついこの間まで普通に高校に行っていた子だ」

     「サタンが許せないと考えている神とは

      信仰の対象としての神ではない」

     「この件についてはマギのグリモワールを読んだものと

      マギの下僕である天使にしか分からないものがある」

     「事情を知っている私からすればミカエルたちがサタンを

      敵視するのは当然だが、お前たちが敵視するのは

      少し間違っている」

ペタローザ「尚更あってみたくなりました」

       「可能なんですよね?」

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