目次

第1章 ◎起 何のこともない幸せな日々

 

シーン0 秘密の出来事     

シーン①主人公:沖斗しのぶ家

シーン②友人関係

シーン③ 楽しい日々

シーン④家族関係

シーン☆ 信じてもらえていない私①拓也編

シーン♤ 信じてもらえていない私②家族編

シーン◎洋介としのぶ

シーン○ 友情関係の亀裂 拓也編

シーン●ぎこちない二人

シーン☆3重の絶対結界魔法

シーン★町にみんなでおでか

第2章 ◎承 壊れかけの友愛

シーン○パンドラとの出会い

シーン●友情関係の亀裂 ゆき編

シーン★アストラルイニシエーション マギの草原 創造魔法バース

シーン☆ジョルジュとしのぶの接触 教皇登場千里眼で観察

シーン☆パンドラとしのぶ

シーン♦二人の増えた同級生

シーン◎パンドラの部屋

シーン♤別の魔法絡みの怪奇事件

シーン◎パンドラがくれた服

シーン●拓也が魔方陣を見たことを知るジョルジュ どんなの物だったか聞くが拓也教えない    

シーン♤改ざんされた記憶

シーン×第六チャクラ アージュニャー

シーン☆怪奇事件解決

シーン@パンドラ包囲網の完成

シーン●戦闘開始

シーン◎破られる第一結界ユニバース・第二結界太陽と月への攻撃

シーン●教皇登場 最後の戦い

第3章 ◎転 どんでん

シーン◎洋介召喚

シーン◎パンドラ召喚

◎第四章 千年魔女  結

シーン★背徳のデスアズワエルワンド開眼 

シーン▼教会解体 問題解決 取り戻した平穏な日々

シーン△マギのグリモワールの真実 意外な結末

ж白昼夢ж

第一章 ◎起 問題はあるが幸せな日々

シーン0 秘密の出来事

自分の部屋で古いランプに火をともすしのぶ

もちろん電気はあるんだが古いものが好きだしなにより

本物の火の光を見るとなんだか落ちつく

炎はいつもゆらゆら揺れていてそれにあわせて光と影が動く

暖かい光と影

その頼りない光の中で読書をすることがしのぶの楽しみだ

そんな光の中で読書していると、すぐにまどろみにとらわれて

現実とも夢とも・・・・過去とも未来とも・・・わからない世界に

幼いころの私

私の周りには沢山の綺麗な光の玉が漂っていて

それは私にとって取り立ててたいしたことではなかったのだけれど

たまにすごく大きく美しい光が現れます

それを見つけたらうれしくなってお友達に教えてあげようとしました

「こいつまたこんなこと言ってる」

「うそつき!」

「気持ち悪い」

『私はみんなと遊ばない』

『嘘つきだって言われるから』

『本当のことを言ったのに嘘つきだって言われるの』

『どうすればいいのか』

『私は知っている』

『話さなければいいの』

『感情を押し殺し』

『黙っていれば』

『みんな何も言わないの』

『だから、みんなとは遊べない』

『私は本をたくさん読むの』

『本が私のお友達』

『でも他にも少しだけ』

『お友達がいるの』

『おないどしの隣の拓ちゃんとすぐ近所のゆきちゃん』

拓ちゃんとの記憶

『秋の夕日がきれいな日』

『拓ちゃんは私の手を引いて』

『高台にある大きな大きな公園に

連れて行ってくれたの』

『すれ違う拓ちゃんのお友達にひやかされて

とても恥ずかしかったことを覚えている』

『大きな公園の一番高い木』

『そこは勇気のある子だけが登れる

特別な場所』

『私を抱き抱え拓ちゃんはその木に

登らせてくれた』

『とても怖くて

ずっと目を閉じていたのを覚えている』

『秋の冷たく心地よい風が

私の頬をなでてくれたの』

『ギュッとしがみついていた拓ちゃんの横顔を

少し目をあけ見てみたの』

『拓ちゃんの瞳が夕焼け色に輝いて

とても奇麗だったことを忘れない』

『一番高い木の一番上の枝に腰をかけ』

『夕日に染まる遠くの街を見ているの』

『街ゆく電車がおもちゃのように見えたのを

今でもはっきり覚えているの』

ゆきちゃんとの記憶

幼少時代のゆきの家

ベットから這い出し歩こうとするゆき

だがゆきの足は動かないので、その場に倒れこむ

その音を聞きつけてお母さんがやってくる「なにやってるの!」

ゆき「お外に行きたいの!こんなところでずっと寝ているなんていや!」

お母さん「それなら松葉杖の練習をちゃんとしないと」

ゆき「ちがーう、自分の足で歩きたいの!」とだだをこねる

お母さん「しのぶちゃんが遊びに来てくれてるよ」

ゆき「やだ、お外で遊びたい帰ってもらって」

お母さん「とにかく今日はお外に行けないのよ・・・しのぶちゃん入って」

ゆきは駄々をこねているのを観られてばつが悪そうに向こうを向いている

お母さん「ママちょっと郵便局にいってくるから仲良く遊ぶのよ」

    「じゃあ、しのぶちゃんゆっくりしていってね」

しのぶはコクリとうなずいた

しのぶはゆっくりとゆきの方に近づく、小脇に古い本を抱えている

しのぶ「ゆきちゃん」とゆきの前に座り細々と初めて声を出す

ゆき「やだ!」としのぶの本を叩き落とす

ゆき「本なんてつまんない!」

しのぶはゆっくりと立ち上がり本を拾いにいく「この本は違うの」

ゆき「本なんてぜーんぶつまんないわ!!」

しのぶ「今日は無理だけど・・もう少ししたらお外で一緒に遊びましょ」

ゆき「なにいってんのあんた、馬鹿じゃないの!?」

   「知ってるんでしょ!」

  「私一生歩けないの!!大学の偉い先生がそういったんだから!」

しのぶ「大丈夫、歩けるよ」

ゆき「はぁ、ふざけないで」

しのぶ「歩けるようになるには、それなりの対価が必要になるから、

           このことは絶対に秘密にするって約束してくれる?」

ゆき「何言ってるの・・・本当に・・・気持ち悪い・・」

しのぶ「大丈夫、歩けるようになるよ」

ゆき「うそつき!」

しのぶ「大丈夫、絶対秘密よ」

ゆき「うそつき!うそつき!うそつきー!そう!みんなそういっているわ、

       あんたは嘘つきだって・・それで気持ち悪いって」

しのぶ「すぐにでも歩けるようにしてあげたいけど不自然だから

     徐々に治って 1週間ほどで歩けるようになるよ」

金色の光に包まれるしのぶとゆき

     「絶対に秘密・・約束だよ・・・」

まだしのぶは何かを言っているが・・・意識が薄れて聞き取れない

3人の記憶

    「私の一生忘れられない記憶」

    「近所の子供達みんなで大冒険」

    「夏の星空が綺麗な夜」

    「みんなで星座を探すこと」

    「ゆきちゃんと拓ちゃんが私のことも誘ってくれたの」

    「とっても嬉しかったことを私は忘れない」

    「高台にある公園の大きな大きな芝生の広場」

    「みんなで大の字になって寝転んで」

    「星が綺麗と見ていた」

    「私は流れ星を見つけたの」

    「螺旋を描きながら2つの流れ星が流れてた」

    「私はうれしくなって、みんなに教えてあげたの」

    「ゆきちゃんと拓ちゃんは一所懸命探してくれた」

    「でもみんなは・・・」

 

    『またこんなこと言ってるこいつ』

    『気持ち悪い』

    『嘘つき』

    「嘘つきだって言われたの」

    「でもあの流れ星の思い出は綺麗な思い出」

   「楽しそうに笑っている声も聞こえたような気がするの」

しのぶ『本当のことを言ったのに嘘つきだと言われたの!』

机の上で本に覆いかぶさり寝てしまっているしのぶの目から

キラリと一粒の涙が流れ落ちた

幼いころから変わり者だといわれてきました・・・

なぜなら私・・見えるんです

本当に

シーン①主人公:沖斗しのぶ家

しのぶの両親は学者で忙しい研究のことで頭がいっぱいだ

しのぶの母は朝早くから自宅の仕事場で書類と格闘

そこにはたくさんの古書があって散らかっている

しのぶ「ママ、紅茶はいったよ」とトーストと一緒にママのところに持っていくと

ママ「あ、ありがとう」と言いながら本や書類を机から落としてママは大慌て

しのぶ「・・・」しのぶはあきれた顔をしている

しのぶ「・・・この間借りてた本、返しとくね」と本棚に入れる

しのぶ「次、こっちかりていい?」

ママ「あー、それは・・・」

   「ま、いいかっ!」

   「よごしちゃだめよー、私のじゃないから」と相当適当なことを言うざっくばらんな性格だ

しのぶ「ママねてないの?」

ママ「うん、今日書類仕上げて大学にいかないと・・・」

しのぶ「パパのとこ?」

ママ「そう、・・・んで、今日はパパつれて帰ってくるわ!」

   「きっと何日もお風呂に入ってないし!きたないったらありゃしない!ブツブツ」

しのぶ「今日かえってくるのね、聞きたいことがあったんだ」とうれしそうに言うと

しのぶ「飲み終わったら流しにおいといて、帰ったら洗うから」と部屋を出て行った

ママ「ありがとー」

    「いってらっしゃーい」とトーストをほう張りながらしのぶを見送った

シーン②友人関係

登校するための支度をすべて済ませて庭の手入れをしながら

幼馴染の拓也が通るのを待つのが日課だ

山のほうを見るしのぶ

しのぶ「今日も光っている・・・大きな光・・・パパの大学のほうだわ・・・」

榊拓也「おーい、しのぶー」

しのぶ「おはよう、拓ちゃん」「ちょっと、遅くない?」

榊拓也「わりーわりー」とちょっと申し訳なさそうに言う

しのぶ「私はいいけどゆきちゃんは、きっと怒るよ」

榊拓也「う!」「おし!しのぶが寝坊したことにしよう」

しのぶ「やだ!」

家の遠い順から誘い合って登校しているので次はゆきの家を通って行くのだ

しばらく歩いていると人の流れから逆そうしてくる人がいる

もちろんゆきだ

愛染ゆき「たーくーやー!!」

榊拓也「いや!違うんだ・・朝パンを焼いていたらトースターが故障してて

      パンが真っ黒焦げになったんだ」

  「それでも食べ物を粗末にしない俺様は涙ながらにだな・・・」

愛染ゆき「そんなこと知るかー!」と拓也を追い掛け回す

しのぶにはいつものように光の玉が見えているが普段はただ漂っているだけなのに

最近は風にでも流されているように流れている

しのぶはどこかで何かが起きている様な・・・そんな気がして、

その光が流れるほうに無意識に向いて・・・

その遠くで何が起きているのか・・・考えている

榊拓也「しのぶー!助けてくれよ!!」

ゆきはようやく拓也を捕まえ羽交い絞めにする

愛染ゆき「しのぶ!」

しのぶは気付かない

ゆきは「またか・・」といったようなため息を漏らし

拓也と目をあわせた

愛染ゆき「しのぶ!しゃんとしなさい!」と諭すように言った

しのぶはハッと気付き・・「ごめんなさい」と申し訳なさそうに言った

拓也とゆきは赤ん坊のころからのしのぶの友人で

しのぶがおかしな行動をとったりすること自体が日常だったので

他の人とかとは違いしのぶの理解者だ

ただ、行動や言動がおかしいことには変わりなく

他人からおかしいと思われる行動を取らないようにフォローや注意をしてくれている

3人は同級生 今は高校2年生だ しのぶとゆきはA組で残念ながら拓也はB組だった

シーン③ 楽しい日々

ゆきは活発でクラスのリーダー的存在だ

そのおかげもあってしのぶもみんなに仲良くしてもらっている

ちょっと変わった子だけれど成績は学年で常にトップで何かと重宝されている

「しのぶー、昨日の宿題だけどさーぜんぜんわかんなくて・・・実は白紙なの」と

宿題のプリントをぴらぴらと振るクラスメイト

ゆき「あー、難しいよねー私なんか適当に答え書いちゃった」と笑う

まさる「おー、しのぶちゃん俺も答えみせてー!」

ゆき「却下ー!」まさる「おめーにたのんでねーよ!」

ゆき「男子は私を通してもらわないと無理なの!」

まさる「なんでだよ!」ゆき「キモイから」と即答

まさる「おお、そうだモックバーガーの50%割引券もらったから何枚かあげよう!それでどうだ」

ゆき「ぼっしゅー」と割引券をとりあげる

まさる「ぎゃー!!!鬼畜ー!」

ゆき「ねぇ、帰りみんなで行こうよ」

一同「さんせー」

ゆき「まさるも特別に一緒に来てもいいわよ」

まさる「なんかそれ、おかしくないっすかー?」お調子者のまさるを中心にみんな笑顔だ

ゆき「しのぶも行くでしょ?」

しのぶ「・・でも、私拓ちゃんと・・」

ゆき「ああ、あいつは熱血で部活なんかやってるから無理だわよ」

女子A「しのぶちゃん、毎日図書室で拓也君の部活終わるの待ってるの?」

しのぶ「・・・本が読みたいから完全下校の時間まで読んでるだけ・・」

信子「へぇー?そーかなー」とゆきの親友信子もひやかす

ゆき「ふむむむ・・・まあ恋路を邪魔するのもなんだし無理にとは言わないわ!」

といった後「人ごみが嫌いなのは知ってるけど、たまには付き合わないと駄目よ」と

しのぶの耳元でささやいた

しのぶ「ゆきちゃん、ありがとう」

放課後 図書室で本を読んでいるしのぶ

拓也が図書室に入ってくる

拓也「おーい、しのぶー!」

図書室にいる生徒みんなににらみつけられる

拓也「あらま・・・すんません」と冷や汗を流す

しのぶは顔を真っ赤にしてそくささと図書室を出る準備をし拓也と図書室を後にする

拓也「ごめんな・・」

しのぶ「ううん・・拓ちゃん部活は?」

拓也「ああ、ラクビー部に急な試合が入ってなグラウンドが使えなくなったんだ、

        だから筋トレとかストレッチとかだけして終わり」

しのぶ「ふーん」

拓也「しのぶ本いいのか?読むなら付き合うぜ」

しのぶ「いつでも読めるから・・いいの」

拓也「ゆきとかもう帰っちゃったんだなー」

    「前もってわかってたらみんなで帰れたのに・・・まったく・・」

しのぶ「まさるくんがね、モックバーガーの割引券をいっぱい持ってて

           みんなモックバーガーにいったの、多分まだいるんじゃないかな?」

拓也「おお、そうなの?!じゃあ、俺らも行こうか」

しのぶ「ううん・・」と首を横に振る

拓也『一緒に行っていないってことは誘われてないのか

誘われたのなら断ったんだろうし今更行き難いわな・・・』と思う拓也

モックバーガーの前を通るとみんなが仲良く食べている姿が見える

しのぶ「あ、みんないるよ」「拓ちゃん行けば?まさるくん男の子一人で

    たかられてると思うから助けてあげて」

拓也「しのぶが行かないなら、いいや・・」と何気なくいう

しのぶはうつむいて「そういうこと言わないで・・・」と悲しそうな顔をする

拓也は悲しそうにするしのぶを見て元気に

拓也「いんや!俺はアスリートだからな、ジャンクフードはデブるしやめとく!」

  「ああ、まだまだ動き足らんわ」としのぶの手を引き「ちょっと走るぞ!」と軽く走り出す

しのぶ「ええっ!ちょっと」

店の中からしのぶ達にに気付くみんな

「あ、なんか手つないでる!」

「おおおおお、これは事件よ!」

まさる「おお、しのぶちゃんがピンチだ拓也の魔の手に!」「助けに行くぞー」と席を離れようとしたら

ゆきにぶん殴られる「邪魔すんじゃないの!!」

しのぶの家の前まで来ると

しのぶ「拓ちゃん、よっていって」

拓也「ん?」

しのぶ「よっていってほしい」拓也にとっては退屈なことかもしれないと遠慮がちに言うしのぶ

拓也「うん、お言葉に甘えて」とにっこりする

しのぶの部屋に入ると、いろいろな植物が育てられていていいにおいがする

拓也「あれ?ここにあった植木がなくなってるな」

しのぶは少し驚いて

しのぶ「へぇー、よくわかったね・・拓ちゃん植物とかに興味ないかと思ってたんだけど・・」

拓也「ああ、あの葉っぱちょっといいにおいがするやつだったから・・・」

しのぶ「ふふふ、あれはお茶にしたの・・・今それをいれるね」「座ってて」と

お茶を入れに部屋を出て行く

しのぶの勉強机の上には読みかけの分厚い古い本が置いてある

表紙には見たこともない文字が書かれている

その横にはしのぶが書いたメモのようなものがあるが

わけのわからない図形や見たこともない文字がならんでる

拓也「まったくあいつはなにやってるんだろうな・・・・聞くと嫌がるんだよな・・」とあきれた顔

しのぶ「ごめん拓ちゃん、開けてくれるー?」

拓也「おお」と扉のほうに行き扉を開けるとお茶とクッキーで両手がふさがって

もがもがしているしのぶがいる

しのぶ「ごめん」

拓也「ああ、持つよ」としのぶからお茶とクッキーを受け取り

   「こっちのテーブルでいいか?」と窓際にある小さなテーブルの方に促した

二人はその小さなテーブルを挟んで座った

拓也「お、これしのぶが焼いたクッキーだな」

しのぶ「うん・・・ちょっと今それしかなくって・・・」

拓也「いや、俺これが好物だぜ!」

しのぶ「ううん、それねお母さん用に焼いた味の薄いやつなの」

拓也「ふうん」といいながらひとつつまむ

しのぶ「お母さんね、家で仕事してるとき1日中なにかポリポリたべてるから・・・」

拓也「ふむ、なるほど」ポリポリ「確かに薄いけど素朴でおいしいよ」

しのぶ「そう、良かった」

次はお茶を飲んでみる拓也

拓也「ん!これ、うまいぞ!」

しのぶは苦笑いしながら「そんなここないよ、普通のやつの方がおいしいよ」

拓也「そうか?俺あの葉っぱのにおい好きだったから・・・」

しのぶ「そう・・ありがと。味はともかく体にはすごくいいの」

しのぶ「ごめんね、自分から誘ったのに・・・ちゃんとしたもの出せなくて」

拓也「え?別に飲み食いしにきたんじゃないから・・・それに素朴で他では味わえない」

しのぶ「今度普通のクッキー焼いとくね」

拓也「あ、クッキーもいいけど・・あれチーズのやつ」「ゆきの誕生日のときしのぶが作ったやつ」

しのぶ「レアチーズケーキ・・・うん、今度作るわ」

シーン④家族関係

 暗くなり拓也が帰り

台所で夕食の準備をしていると、玄関の方から元気な声でただいまーとママの声がする、

それに続くように優しい声でただいまとパパの声がする。

しのぶは嬉しくて急いで台所の火を消しパパの所に駆けて行く。

おかえりとパパに抱きつくしのぶ

ママは両手を広げながら「あら?ママは?」とガッカリする。

しのぶ「パパお風呂の支度できてるからさきに入って、あがる頃にはご飯の支度もできてるわ。」

パパ「おお、至れり尽くせりだな、ありがとうしのぶ」

ママ「あの…ママは」

しのぶ「はい、ママも」といいながらママの荷物を手に取り中へ促す

しのぶ「ママ紅茶でいい?」

ママ「いえ、コーヒーがいい、とびきり濃いやつ」

しのぶ「だーめ」

ママ「パパー、しのぶがいじめるー」

パパ「ははははは、濃いのはやめときなさい」

ママ「ぶー」

食事が始まる

パパ「ほう、これならいつでもお嫁さんに行けるな」

ママ「パパったら気の早いことを言って、いざとなったら猛反対しそう」と、笑う

ママ「そうだしのぶパパに聞きたい事があるって言ってなかったっけ?」

しのぶ「うん」

パパ「ほう…なんだい?」

しのぶ「大学でね、なにか変わったことなかった?」

パパ「うーん…」と少し考えるが「特にないなー…どうしてだい?」と聞き返す

しのぶ「ちょうど3日前…大学に今までなかった物が来たとか…」

パパ「うーん…思い当たらないなー」

しのぶ「皆にとっては特別な物ではなくても何か今までなかった物が中に入ったはず…」

パパ「大学にはいろんな人や物が毎日出入りするからねー…」

しのぶ「そう…」とだけ言って窓の外をボンヤリと見ている

パパ「それがどうかしたのかい?」とたずねるが返事はなかった

 お風呂に入っているしのぶ

考え事をしながらぼんやりと湯船に入っていると脱衣所から「あがったらママの所に来て」と

ママの声がする。

しのぶ「はい」

お風呂からあがりある程度髪を乾かしたしのぶはママの所へ行った。

しのぶ「ママ、なに?」

ママ「座って」とママの鏡台の前にうながす。

しのぶが鏡台の前に座ると優しくしのぶの髪をときだす

しのぶ「どうしたの、ママ」

ママ「どうもしないわよ」と優しく髪をとき続ける

「大きくなったわね…そして綺麗になったわ」

しのぶ「やめて、恥ずかしいから…」と照れ笑い

ママ「あなたが小さい頃、毎日こうやって髪をといていたのを思い出すわ」

しのぶは目を細めながら「うん」とうなづいた

シーン☆ 信じてもらえていない私①拓也編

学校からの帰り校門の近くなので疎らだが何人かの帰路につく生徒達がいる

しのぶは拓也と二人で歩いていると

『いつもと光の玉の動き方が違う

違う色の光が混ざっていて、何故だか分からないけど、

この間から気になっている大学の方で光っている大きな光を探しているんだ』と感じた

その次ぎの瞬間大きな光が目の前に

しのぶ「きゃぁ!」と目を被い崩れ落ちる

拓也「どうした?」

周りにいる生徒たちは驚いている

目をそぅっと開いてみるが「うぐっ・・・眩しくてみえない・・・」

拓也「しのぶ大丈夫か?」と肩を貸し立ち上がらせる

周りのものは怪訝そうにしのぶ達をみながら

「あの子・・また・・」

「本当に変な子・・」

「気持ち悪い・・・」

拓也は周りをにらみつけながら「しのぶ帰ろう・・・歩けるか?」

肩を抱かれながら数メートル歩くと、少し落ち着いたのか「待って・・大丈夫」

「目を閉じていたら光が和らいで見えるわ」と

拓也の肩から離れ目を閉じたまま歩き出す

拓也「しのぶ、危ないって!」

その光景を見た周りの生徒達はますます気味悪いものを見たといった表情をしている

それを察した拓也は無理やりしのぶの肩を抱き足早にそこを立ち去る

しのぶ「拓ちゃん大丈夫よ。暗闇の中で目がなれて見えてくるのに似ている」

   「大丈夫。見えるよ・・放して」

幾分学校から離れたので人気がないのを確認して拓也はしのぶを放した

赤信号でちゃんと止まり青になったら歩き出す

拓也「しのぶ・・・本当になにか・・・光がみえているのか?」と何気なくいう

しのぶ「!」

幼い頃から光の玉が見えると言っていたしのぶ

そしてその傍にいつもいた拓也

それは周知の事実のはずだった・・・・

しのぶはそう思っていた

だからしのぶはその質問には答えなかった・・・・

シーン♤ 信じてもらえていない私②家族編

しのぶ「パパ、今度はこの本借りていい?」

パパ「ん?この間の本はもう読んだのかい?」

しのぶ「うん」

   「じゃあ借りていくねと、3冊の本を持って部屋を出た」

ママ「大事な御本だから汚しちゃダメよ」

しのぶ「はい」

ママ「ねぇあなた、あの娘沢山借りていくけど読めるのかしら?」

パパ「まさか、僕でも資料片手にじゃないと読めないんだよ」

ママ「じゃあ、あの娘…」

パパ「見たこともないような文字を眺めるのは心が踊るものだよ、僕にも覚えがある」

ママ「ふぅーん」そんなものかなー・と言った風だ

自分の部屋へ登る階段の途中そんな会話が聞こえてしまい

階段の途中で立ち止まってうつむくしのぶ

「本当に読めるもん…」と力弱くつぶやく

『本当のことを言ったのに嘘つきだと言われたの!!』

昔のことを思い出して涙がこぼれた

大好きな拓ちゃんも大好きなパパも私が言っていることが嘘だと思っているのだと

シーン◎洋介としのぶ

 しのぶがいつものように図書室で読書をしていると前の席の男子生徒が消しゴムを落とし

しのぶの方に転がってくる。しのぶがそれを拾い上げると男子生徒がもう目の前に立っていて

しのぶは消しゴムをその男子生徒に返す

洋介「サンキュー」と元気に礼を言って元の席に戻り勉強を再開した

その後、洋介はしのぶのほうをちらっと見ると「あれ?!」っと声を上げた

しのぶは驚いて洋介のほうを見ると自分のほうを見ている洋介に疑問の表情を浮かべた

洋介「昨日と違う本だな」しのぶ「・・・?」洋介「あんな分厚い本もう読んじゃったの?」

しのぶ「・・・・・」洋介「お前、すごいな」

しのぶは恥ずかしそうにしながら何も答えず本を読むのを再開したが洋介はかまわず

洋介「それってさー、日本語でも英語でもないよな」

   「お前って成績学年TOPとかそういうレベルじゃない」

   「なんつーか・・・頭いいんだろうけど本当変わってるよな」と続けた

しのぶはちょっと怒った顔をして洋介のほうを黙って見ていると

洋介「あー、ごめん」

   「お前さ変わり者って言われることすげー気にしてんだろ?」

   「でもさ、お前本当に変わってるんだよ」

しのぶはますます怒った顔をしながら本を読むのを再開した

洋介「でもなー、それって悪いことなのか?」

  「関わりたくないって思われてるわけじゃないと思うぜ」

しのぶはこの人いったい何が言いたいんだろうと思い洋介のほうを再び見る

洋介「実際俺は関わりたくないとか思ったことないし」

しのぶ「・・・・」

洋介「俺、去年同じクラスだったの知ってる?」

しのぶ「・・・うん」とようやく口を開いた

洋介「でさー、俺男子だし、お前おとなしい女子だし」

  「班とかも一緒にならなかったし」

  「だから、話したことがないだけ」

  「あー」と上を向いて

  「去年一度だけ話したことあるの覚えってか?」と話したことがないわけじゃないなと思い尋ねた

しのぶ「ううん」と小さく首を振った

洋介「げー、ショック!」「ひどいなお前」と笑った

  「前から話してみたいと思っていてやっとめぐってきたチャンスで

  勇気を振り絞って話しかけたんだけどな」

それを聞いてしのぶは少し驚いている様子だった

洋介「けどなその時すぐに愛染(ゆき)がやってきて俺に蹴りを入れやがったんだ」と続けて笑う

洋介「あいつ俺がナンパしてるとでも思ったんだろうか?」

  「あんなとこでナンパするやつなんかいるかっつーの」

しのぶ「あ・・・花壇のところ・・・」と思い出した

洋介「そうそう、あの時愛染に邪魔されたから言えなかったんだけど、

   あの花さ俺がボールで折っちゃったんだ」

  「で添え木になるものを探しに行って戻ったらお前が直してくれてたんだ」

  「ありがとな」と突然お礼を言い出した

しのぶはちょっとあっけにとられてぽかんとしている

洋介「ふー、すっきりしたー。前から礼が言えてなかったのが気になってたんだ」

と笑ったあと

しのぶがポカンとしているのに気がついて

  「あのー沖斗、相槌打つとか返事とかちゃんとした方がいいぞ」

  「俺はこんなだからいいけど、話しかけた人は結構傷つくと思うぜ」とにっこりとしながら言った

しのぶ「・・ごめんなさい・・・」

洋介「あ・・いや・・・、あやまんなくていいんだおせっかいだったな・・ごめん」

しのぶは謝罪がてらこちらから話そうと考え

しのぶ「あの・・・洋介君・・部活は・・・やめたの?」と聞いた

洋介「ああ違うんだちょっとひじを痛めてて休部中なんだ」

  「でもバスケ部みんなと帰るから終わるまで図書室で宿題やって待ってるってわけ」

  「沖斗はサッカー部が終わんの待ってんだろ?」

と言われるとしのぶは少し恥ずかしそうにして顔をそむけた

洋介「榊拓也。ツケメンだよなー」とからかった

しのぶ「家がとなりだから・・・だから・・」と反論

洋介「家は愛染も近いよな確か」

  「愛染と帰ればいいんじゃね?」とさらにからかった

しのぶ「ゆきちゃんは、まっすぐ帰らないから・・・」

洋介「あー、そっかー。あいつ不良だからな」と笑った

  「あ、そろそろバスケ部のとこいってみるわー」といい勉強道具を片づけ

  「じゃあなあー」と元気に言って図書室を出て行った

次の日いつものようにしのぶ拓也ゆきが3人で登校して学校の近くまで来ると

後ろから「沖斗ーーー!」と洋介が大きな声で呼びながら小走りでかけてくる

ゆき「なに、あいつ洋介」といい、しかめっ面をしている

拓也はしのぶを呼ぶ者がいることに少し驚いているようだ

しのぶは名前を呼ばれたのでそこで立ち止まりゆきと拓也の二人から2Mほど離れたようになった

洋介はしのぶに追いつくと息を切らせながら「おはようさん」とあいさつした

しのぶも「おはよう」と返事した

拓也とゆきが2Mほど先で話が終わるのを待っていることに気づき

しのぶ「洋介君、なに?」と尋ねた

洋介「ん?なんもない」と笑いながらいい「なんで?」と聞き返した

しのぶ「急いで走ってきたから・・」

洋介「ああ、・・そうだな、沖斗のこと見かけてさ・・んで、昨日の今日で話しかけないと

   1年前みたいにまたきっかけがなくなって話しかけづらくなるかもな・・と思って」

といったか言わないかで、ゆきが「よーすけー!」と怖い顔して近づいてきた

洋介「うわ、愛染ゴリラ!」といった瞬間ゆきの蹴りが飛んできた

洋介はひらりとかわして「じゃあ、またあとでなー」としのぶにいいながら

学校に向かって再び走り始めた

それをゆきは「まてー、誰がゴリラじゃー」といいながら追いかけていった

拓也はあきれながら「朝から元気だなー、行こうぜ」といい

登校を再開した

教室の自分の席で一時間目の準備をしていると、ゆきが戻ってきて

ゆき「なにあいつ・・しのぶになんか言ってきたの?」と尋ねた

しのぶは「最近図書室でよく会うから・・話すようになっただけ」と答えた

ゆき「ふーん、なにかとあたしに絡んでくるのよね、あいつ、しのぶも気をつけなさいよ」

しのぶ「なにを?」と不思議そうに尋ねた

ゆき「ナンパよ!ナンパ!・・・あいつは絶対ナンパだわ!」とプンプン怒りながらいっている

しのぶ「・・ゆきちゃん・・・違うと思うけど・・」とちょっとあきれながら言うが

ゆきは聞いていない

しばらくするとクラス委員の女子が「そろそろチャイムが鳴るので席に着きなさいー」と仕切る

ブツブツいいながらもみんな従いそれぞれ席に着いたころ廊下の方から

「愛染ゴリラー!」と叫びながら洋介がA組の横を駆け抜けていった

クラスの男子が大笑いしている中

ゆきは「あのやろーーーーぶん殴ってやる」と怒りをあらわにしている

女子たちは「あらま・・」と冷や汗をながしながら苦笑している

放課後、しのぶがいつものように図書室で本を読んでいると廊下の方から洋介達の声がしてくる

バスケ部員「今日も図書室かー、早く治せよー」

洋介「無茶言うな」と笑う

バスケ部員「そうだお前沖斗と仲良く話してたなー、ここで知り合ったんだろ?」

洋介「ああ、まぁそうだな」

バスケ部員「なんかさ、ほとんどのテスト満点で天才らしいじゃん」

洋介「らしいなー」

バスケ部員「相当変わり者だって聞くけどどんな奴なの?」

洋介「かわいらしい普通の子だよー」

そんな声が聞こえてきて顔を赤らめていつもより本に顔を近づけるしのぶ

バスケ部員「お、やべーもう行くわ!」

洋介「おう、終わる頃行くわー」と言いながら図書室に入ってきた

洋介はいつものようにしのぶの前の席に座ると「ういーっす」としのぶに挨拶した

しのぶ「こんにちは」と返事し洋介の方を見ると洋介は痛めている肘をさすっていた

しのぶ「肘痛いの?」

洋介「あ、いや早く治んねーかなーとか思って」

しのぶ「まだまだかかりそうなの?」とさらに尋ねた

洋介「いや、普通にしてる分にはもう治ってると言っても良いほどだけど

   バスケだから・・・また悪くならないように完全に治さないと・・」

しのぶ「うん」

洋介 「まぁ、後1週間かな」

しのぶ「そう」と安心したように少し微笑んだ

洋介「こんだけ休むとバスケがしたくてしたくてたまんねーんだわ」

しのぶ「そう、もう少しね」

洋介「それでさ、土山って知ってる?」

しのぶが思い出せなくて少し考えていると

洋介「ちょっと、っていうか、すげーデブイ奴去年一緒だっただろ」

しのぶ「ああ」と思い出したようだ

洋介「あいつにさ、バスケがしてーって話したらさ」

  「お前は変わってるなっていわれて」

しのぶ「うん」と話が見えないなと思いながらも返事をした

洋介「ああいう運動嫌いな奴からしたらバスケがしたいなんて考えられないことなんだろうな」

しのぶ「うん」と困った顔をしながらも返事をした

洋介「あ、無理して相づちうたなくてもいいぜ、俺があんなこといったから・・・」

と申し訳なさそうに言った

しのぶは少し驚いて「おかしかった?」と尋ねた

洋介「へ?」

しのぶ「・・・私の相づち・・」とうつむきながら言った

洋介「いや、別に」と微笑みながら答えた

洋介が宿題の用意を出している間少し沈黙が続いたが

洋介がノートを広げ鉛筆をにぎると「俺も変わり者ってことさ」と言った

しのぶは何が言いたかったのかやっと理解し

「ううん」と微笑みながら首を横に振った

その返事が終わると二人はそれぞれの作業を始めた

その場は優しく穏やかな空気に包まれていた

シーン○ 友情関係の亀裂 拓也編

何日か経ったある日ゆき拓也しのぶの三人で下校中

ゆき「ねぇ、しのぶ考えた?」

しのぶ「えっ?」

ゆき「もう、土曜日みんなで買い物行こうって」

しのぶ「…あ…ごめん…わたし…」

ゆき「みんな楽しみにしてるよ」

しのぶ「ごめんね、また迷惑かけるといやだから」

ゆき「まだあんなこと気にしてるの?誰も迷惑だなんて思ってないよ」

しのぶ「でも、また倒れちゃったら台無しだわ」

   「街の中は汚い光がいっぱい…」

拓也「でもなぁしのぶ、これからもずっと街に出ないで生きて行くことなんてできないんだから、

   仲のいい友達とかと行ける機会に少しづつ慣れていったほうがいいぞ」

しのぶ「…」

歩きながら沈黙が続く

ゆき「わかったわ、また考えといて」

拓也「おい、ゆきあんまり甘やかすなよ!」

ゆき「いいの!しのぶ挑戦する気になったら何時でも言ってね、いつでも大歓迎だから」

しのぶ「ゆきちゃん、ありがとう」

拓也「しのぶ、お前はグループを仕切ったりしないからわからないんだろうけど

   まとめてる人からすると断わられたりしたら結構こたえるんだぞ」

ゆき「いいよ!今回のはただ遊びに行くだけなんだから」

拓也「よくない、何度もさそってもらっているのに遊びなら尚更いけるだろ」

しのぶは歩くのをやめて下を向いてしょげてしまっている

ゆき「もう!わたしが良いって言ってるんだからいいのよ!」と、拓也に肘鉄をくらわす

拓也「いてっ!」

ゆきは家が近づいたので

ゆき「じゃあ、また明日ね」と駆けていく

無言で歩く二人

ずっとうつむいているしのぶ

拓也「土曜日・・・行けよ」

立ち止まって泣き出すしのぶ

拓也「なくなよ!すぐに泣かないって約束だろ!」

まだ泣いているしのぶ

拓也「そうやって泣いて・・・「もういいよ」って言ってもらえるのを待っているのか?」

しのぶ「!」

拓也「俺はお前のそういうところが嫌・・・」

しのぶ「!」しのぶの表情が一気にこわばったのがわかり

拓也「・・好きじゃないんだ」と言葉を変えた

拓也「さあ、帰ろう・・」としのぶの手をとろうとする

しのぶ「いやっ!」といって駆け出してしまう

拓也はなぜか追いかけることができなかった・・・「くそっ!」とガードレールを蹴る

ゆき「拓也!あんた!」となんだかいやなムードだったので心配になって

戻ってきたゆきが息を切らせながら言う

ガードレールに足をかけたまま反応しない拓也

ゆき「追いかけなさいよ!」

拓也「・・・駄目だ・・・・今日はうまく謝れない」

拓也「明日、ちゃんと謝るから・・・今日は勘弁してくれ・・・」

少し沈黙が続く・・・ゆきは覚悟を決め話し出した

ゆき「拓也・・・しのぶのことで拓也は知らないことがあるの・・」

  「ていうか・・・私しか知らないこと・・」

拓也「なんだよ、それ」

ゆき「言えない・・・」「別に変なことじゃないのよ!・・」

拓也「じゃあ,言えよ」

ゆき「ただね、しのぶの場合普通の人が人ごみが嫌いとかそういうのとはぜんぜん違うの」

ゆき「例えるなら熱い炎の中に入るようなものだって言っていたわ」「それでね、それは本当なの」

拓也「ゆきには言えて俺には言えないんだな・・・」

ゆき「違う!私にだけ打ち明けてくれたとかじゃない」

拓也「わかった・・」といいながら帰り始める

ゆき「私たちが、ささえてあげなくちゃ駄目なんだよ!」

拓也「手伝いはする・・・一人でもやっていけるようになるように・・・」

さびしそうな拓也の背中をみて・・・ゆきは何もいえなくなった・・・

泣きつかれて眠ってしまっているしのぶ

「嫌いって言わないでくれたのね・・・・ありがとう・・・・優しい人」と涙がまた流れる

シーン●ぎこちない二人(しのぶと拓也)もう泣かない 強くなる

拓也がいつもとは違い足取りが重いといった感じで家を出ると

「拓ちゃん、おはよう」とぎこちないが精一杯がんばって作った笑顔でしのぶが挨拶をしてきた

いつもは自宅の庭で拓也が通るのを待っているのだが今日は拓也を迎えにきていた

拓也「おお、おはよう」少し沈黙が続くが

拓也「昨日はごめん・・・」

しのぶ「ううん」「泣かないって約束守れなかったの・・私だから」

昨日あんなことを言ってしまったので当たり前なのだろうが

なんだかよそよそしい感じがして

こうして一緒に話していても以前のようには戻れないような気がして

その思いが拓也の胸を締め付けた

しのぶ「それでね・・・土曜日連れて行ってもらうことにしたの」

拓也「ああ、そうか!・・大丈夫か?」

しのぶ「対処方法は前から大体わかっていたんだけど・・・試すのがちょっと・・怖かったから」

拓也「うん?」

しのぶ「それでね、準備にちょっと時間がかかるから、今週は図書室によらずに先に帰るね」

拓也「え?・・そんな・・そんなこというなよ・・・」

しのぶは、その意外な返答に少し驚いた様子で

しのぶ「あ・・・拓ちゃんと帰りたくないとかじゃないからね・・一緒に帰りたいんだけど」

   「今週は先に帰る」

拓也「そうか・・・」

拓也はしのぶといっぱい話をして昨日のことを打ち消したいと思っていたんだが

そういわれると承知するしかなかった

何かを決心し気を張っているしのぶを見るといつもと別人のようで心を許していないような・・・

自分から気持ちが離れてしまったようで不安でならなかった

しのぶの頭に拓也の「そうやって泣いて・・・「もういいよ」って言ってもらえるのを待っているのか?」と言う言葉がこだまする

・・・・・もう泣かない・・・・・そう決めたから

しばらく歩くとゆきが道端で待っている

ゆきは二人でちゃんと来たのを見て安心しいつもより元気に

「おはよー」と挨拶した

拓也「おっす」

しのぶ「おはよう」

しのぶ「あの・・ゆきちゃん」

ゆき「ん?」

しのぶ「土曜日ね・・・連れて行って」

ゆき「んー!」と驚くと

しのぶは申し訳なさそうに「駄目?」と尋ねた

ゆき「いや、大歓迎だけど無理しなくて良いよ」と拓也をにらんだ

拓也はばつの悪そうな顔をしながらそっぽを向いた

しのぶ「大丈夫、前から試そうと思っていた対処方法があるから・・具合悪くならないと思う」

ゆき「対処方法?・・・ふーん」と少し疑問に思ったが

しのぶが変わったことを言うのは慣れているので深くは聞かなかった

学校に近づいてくると「沖斗ー」と洋介が呼びながらかけてくる

ゆき「なんなのあいつ!」と腕をまくってとっちめてやろうって格好をすると

しのぶ「まって」とゆきを制止し、先に行っててと言った

ゆきと拓也は登校を再開する

ゆき「あの二人最近仲いいのよねー」

拓也「んー?どういう接点なんだろ?お前と追いかけあいしてるのは良く見るけど?」

ゆき「図書室仲間みたいよ・・・なんかわからんけど」

洋介がしのぶに追いつくと、今日はしのぶが先に「おはよう」と言った

洋介「ふぅー、おはよー」

しのぶ「あのね洋介君」と登校を再開しながら話し始める

しのぶ「どうでもいいことでしょうけど、今週は私、図書室にいかないの」と言う

洋介「えー、そうなんだ」とちょっとがっかり

  「俺さー、来週には部活復活するんだー」

しのぶ「ほんと!よかったね」と祝福をする

洋介「ああ、サンキュー」

  「でもちょっと残念だな」

しのぶ「?」

洋介「沖斗と図書室で話するのももう終わりかー」と言った

しのぶは今まで気にかけてもらった感謝をこめて

しのぶ「あの・・いつでも・・・話しかけて」と恥ずかしそうに言いながら続けて

   「私も話しかける」と言った

洋介「おお」とうれしそうに返事して

  「俺たち友達だな!」といって手を差し出した

しのぶ「うん」と返事したが手の意味が分からなくてちょっと困っていると

洋介はさらに手を前に出して「ん!」と言った

しのぶはようやく意味を理解して洋介と握手をした

ゆき「んんー!なんか手握ってる!」

拓也「あー?」と振り返って2人を見

  「手握ってるつーか握手だろ」と言った

ゆき「どういう成り行きがあったら握手とかになんのよ!」

  「あのナンパヤロー」

拓也はゆきがカリカリしているのを見て呆れ顔

ゆき「あんた、しのぶが他の男に手を握られてもなんとも思わないの?」と攻め立てる

拓也「だから握手だろ」

ゆき「おんなじじゃない」

拓也「違うと思うがな・・・」

ゆき「とられても知らないからね」

拓也「とられるもとられないもないだろ・・・」

ゆき「もう!好きなくせに!」

拓也「バッ・・んなこと」

ゆき「ふーん、違うんならしのぶにそういっとくね」とそっぽを向きながら言った

拓也「いや、いらんことは言うな」

ゆき「ほーら、やっぱ好きなんじゃない」

と二人でギャーギャー言いながら学校へ入っていった

シーン☆3重の絶対結界魔法

自分の部屋で大きな白い布を広げ筆で複雑な魔方陣を書いているしのぶ

いくつものペンタクルが複雑に絡み合っていてその隙間には星が書かれている

その配置やつながりが間違いがないか確認しながらブツブツ独り言を言っている

すべてを書き終えると部屋に渡されたロープに洗濯ばさみではさみ吊るす

すでに2枚が吊るされていて全部で3枚だ

しのぶは記述に間違いがないか布にそっと手を当て一つ一つ確認している

すると外から「おーい、しのぶー」と拓也の声がする

部屋の窓を開け外を見ると帰宅途中の拓也が元気に手を振っていた

しのぶ「拓ちゃんどうかしたの?」と尋ねる

拓也「最近一緒に帰ってなかったからさー、早めに部活終わったからよってみようかなと思って・・」

と、言うとしのぶが少し困ったと言うような顔をしているのにすぐに気づいた

拓也・しのぶ『あ・・あの』とほぼ同時に言った・・・

拓也「えっと・・・思いつきでよっただけだから・・用事があるだろし・・帰るよ」

しのぶ「いや、ちがうの・・」「ちょっと散らかってるんだけど・・・良かったらよっていって」

家の中に招き入れるしのぶ

「あの、散らかっていると言うか・・変なものがあるけど気にしないでね・・」

「あと・・まだ乾いてないから・・触らないようにしてほしい」と言いながら部屋の方に進んでいく

拓也「ああ、ごめんな急にきて」

しのぶが部屋を開けると拓也の目に大きく複雑な魔法陣が書かれた布が飛び込んでくる

拓也「おおお・・・」言葉を失う

しのぶ「さぁ、入って座って」とせかすしのぶ

拓也はさっきしのぶが困った顔をしたのは、これを見られたくなかったのだろうと思い

拓也「すげー迫力だなーなんか・・・言葉にはあらわせない迫力」

   「こっちのは、しのぶらしいかわいい絵だな」とだけ言いすぐに話題を変えた

   「今日まさるのやつ遅刻してきただろ!あれってさー・・・」と取り留めのないようなバカ話

しのぶにはその気遣いが痛いほどわかっていた

今日あったことなどをお互い話しながら一緒に宿題をした

それは二人にとってとても幸せな時間だった

みんなで町にお買い物にでかける前夜

しのぶは月の明かりしかない自分の部屋で服を脱ぎ

用意していた3枚の魔方陣の布を

頭から重ねてかぶり床に就いた

時折ビシビシ光を放ち痛みを伴うのに耐え何とか眠りについた

しのぶは夢を見た

宇宙の中で漂っていて体が星屑のようにバラバラになり散っていく

大きな太陽と月の前でもう一度ひとつになり今自分が漂っているマクロコスモスの中で

自分がミクロコスモスを形成しているのがわかる

そこに拓也・ゆき・洋介・パパ・ママ・まさる・信子の顔が浮かび体の中に入って、

ハートの形の淡い光の周りを小さなビー玉のようになって回っているのを感じる

その胸の中に光る暖かいハートの光を抱きかかえ、やがて穏やかな眠りが訪れる

シーン★町にみんなでおでかけ

朝しのぶが家を出ると、よほど楽しみだったのか興奮した顔で

ゆきが「しのぶー」とこちらに走ってくる

しのぶ「おはよう、ゆきちゃん。迎えに行くのに」

ゆき「いやー、じっとしてられなくて」

しのぶは笑いながら「駅と反対」

ゆき「いいの、いいの」と言いながらガードレールの上に上りくるりと180度まわり

しのぶに背中を見せて歩き始める

ゆき「うわわ・・」とバランスを崩しそうになるがもちこたえる

しのぶはひやひやしながら「あぶないよ」と注意するがゆきは平然と

「だいじょうぶー」といいながらガードレールの上を歩き続ける

ゆき「具合が悪くなったらガマンしないでいいなさいよー」と

こちらを向かずおっとっととバランスを一生懸命とりながら言う

駅に着くとクラスメートの女子が2人もう待っていて

「ゆきー、しのぶちゃーんこっちー」と手を振っている

ゆき「あれー信子はー?」

女子「んー、次のバスでくるんじゃない?」

しのぶはゆきが離れたうちに小さな声で「ユニバース」と唱えると

足元に大きな魔方陣が現れる

ゆっくり歩いているしのぶがみんなのところに到着するころ

バスがやってきて信子が手を振っている

町に到着するとみんなは大はしゃぎで「あの店みていいー?」とか走り回っている

みんなの行く方に少し遅れて歩いていくしのぶに黒い光がぶつかるが

ユニバースにすべてはじかれていく

それを見ながらしのぶは良かったと安心した様子だ

しのぶ「それにしても、黒い光がなんて多いのかしら」

   「はじめてじっくり見たけど・・」

   「こういう大きな町には雑念みたいな

   悪い気が集まってきて充満しているんだわ・・」と考えている

ゆき「しのぶー、しのぶにこれどう?」と自分の体に服をあて見せてくる

その服はすごく短いスカートで胸元も広く開いている

しのぶ「それはちょっと私・・・」

信子「かわいいよそれ、絶対似合うって」

女子「一回着て見せてー」

困惑しているしのぶをみんなが試着室に押し込む

服を着替えて恥ずかしそうに試着室のカーテンを開けるしのぶ

一同「おーーー、かわいいー」

しのぶはスカートがあまりにも短いので一生懸命押さえつけている

信子「50%offだから絶対買いだよ!」

ゆき「これで拓也もイチコロだー」

とか好きなことをワイワイ言っている

いろんな店に行き「これかわいい」「これ安い」だのいいながら

それぞれほしい物を買って

カフェで食事をして映画に行って

しのぶはクタクタになるまで引きずり回されたが本当に楽しいって感じていた

夕方になって自分たちの駅に帰ってきて

「じゃあまたねー」と各自満足げに帰っていく

ゆきと二人になると

ゆき「大丈夫だった?」

しのぶ「うん」

ゆき「本当に?」

しのぶ「うん、すごく楽しかったよ」

ゆき「これからもいけそう?」

しのぶ「うん、連れてって」

ゆき「そっか。よかった」と満足そうに笑ったあと

ゆき「対処法って・・・魔法?」と聞きにくそうに聞きき

答えがなくても良いように家路の方に体を回して歩き始めた

しのぶ「・・・そう・・結界魔法」

   「うまく使えるかわからなかったから・・」と

今まで何故使わなかったのかと思われないように付け加えた

ゆきは攻めてるわけじゃないよと言わんばかりに優しく「うん、わかってる」と答えた

ゆき「次はさ、拓也に連れて行ってもらいなさい・・・」

  「今日買った服着てデート」と意地悪そうに言った

しのぶ「これ・・・スカート短すぎる・・」

ゆき「それ普通だから、しのぶのが丈がながいのよ」

しのぶ「う・・・うん」と困っている

ゆき「気になるならレギンス下にはけば?」

しのぶ「うん・・・」とまだ困っているので

ゆきは強めに「絶対に拓也にその服着てるの見せなさいね」と念を押した

「どんな顔するか私も見てみたいわー」と笑う

しのぶ「ちょっと・・・なんか・・からかってない?」

ゆき「ちょっとねー」とにんまりと笑う

しのぶ「もう!」

ゆき「でもねー、いい方向に進むと思う。これは本当」

しのぶはそうかなーという表情を浮かべながらも、着てみようかなと思い始めていた。

拓ちゃんよろこぶのかな?と少し想像していると

『お前のそういうところがきら・・・』

拓也に言われた言葉がまた思い出されてくる

拓也がそこで言葉を止めたのは知っているが

その続きは間違いなく

『嫌い』

『お前のそういうところが嫌い』

しのぶは悲しくなって目を細めた

第2章 ◎承 壊れかけの友愛

シーン○パンドラとの出会い

ゆき「しーのーぶー」

   「どうしたの?今日は授業中も休み時間もずーーーーーっっと外見てボーっとしてるじゃない」

女子「そうそう、どうしたの?」

まさる「でもさー先生もそのことに気がついていてもしのぶちゃんには注意しないんだよなー」

   「それってえこひいきじゃない?」

信子「ははは、そうだったね・・まぁ、成績がいいからちょっと聞いてなくても大丈夫ってことでしょ!」

ゆき「そうそう、あんたはバカだから一瞬でもよそ向いたら駄目だけどね!」

まさる「人のこと言えんのかー!」と言いみんなで大笑い

しのぶは自分の手に絶対結界のペンタクルが浮き出ているのに気づく

全身に書きめぐらされているので顔にも浮かんでいるのでは?と

しのぶ「ゆきちゃん!」

ゆき「ん?」とちょっとびっくりする

しのぶ「おかしくない?」

ゆき「えっと・・・・なにが?」

しのぶ「私の顔」と言ったとたんみんなきょとんとし

そのあと目を見合わせていっせいに大笑いした

しのぶ「私今日は帰るわね」と言って席を立つ

みんな「あああ、笑ったりしてごめんごめん」

ゆき「突然変なこと言い出すんだもん」と申し訳なさそうに言う

しのぶ「ああ・・違うの・・あの大事な用事を思い出したの・・・」と、帰り始める

教室を出て行くしのぶをみながら

まさる「あ・・・学生が学校の授業より・・大事な用事って・・・」とポカンとしている

女子「ほんと・・しのぶって変わってるよねー」

ゆきは、またやらかしたなーといった表情でため息をつく

しのぶは足早に学校を去り高台にある公園を目指した

見晴らしがいいところまで来ると、それはすぐにわかった

しのぶ「大学の方にあった大きな光がない・・・・」

きょろきょろと周りを見回してみるとその大きな光を別の場所ですぐに発見できた

「あそこ・・・うちの辺だわ・・・」と慌てて帰路に着く

あまり活発ではないしのぶはよろよろと走り時には人にぶつかり

「すいません、すいません」と何度もお辞儀をしながらそれでも一生懸命走った

「私のうちの辺・・・大学に関係あるのって・・・うちくらい・・・」

「きっと、あの光は家に来ている」そう思った

絶対結界が反応しているのが全身を通してわかる

家に近づくと光はいっそう輝きまぶしくて辺りが見えなくなってくるが

そういう時どうすればいいかしのぶは知っていた

そうっとめを閉じると光がやわらぎ程よく周りが見える

しのぶは目を閉じたまま早足で歩き家に入った

建物の壁や扉すべてを透して光の核があるところがわかる

そこに向かって迷わず進む

そこは自宅の両親の仕事場で、その扉を開けると

パパとママが驚いた顔でこちらを向いている

ママ「しのぶ!学校は?」

その言葉にはまったくかまわず部屋の中に入ってくる

目を閉じたまま机や椅子をよけて棚の方に歩いていく姿は異様そのもので

パパは驚きのあまり言葉を失っていた

それでも肝っ玉の据わっているママは「目どうかしたの?・・大丈夫なの?」としのぶに歩み寄る

しのぶは棚の上に置かれたパパのかばんの前まで来ると立ち止まり

しのぶ「パパこれだよ・・・この間私が言ってた・・大学に来た物は・・・」と言った

パパはまだきょとんとしている

パパ「それは・・その本はとても貴重なものだから触ってはいけないよ」

  「まだ発掘されたばかりで写しも取っていない物なんだ」

しのぶ「大丈夫、これは確かに貴重なものだけど普通の人には読めないわ」

パパ「普通?・・の人?」

しのぶ「綺麗に韻がふまれていてとても綺麗な詩」

しのぶ「だけどそれは本当のこの本の内容とは違うの」と言うと

かばんから取り出しもせず目を閉じたままその本を読み始めた

 私はとある方法で何でも造ることができます

それでも私は満たされません

なぜなら、それは本物ではないから

 ある日私は王の持つ素晴らしい宝石を見せていただきました

私はそれがほしくて ほしくてたまりません

私はとある方法でその宝石を作り出すことに成功しました

それは宝石商が見ても見分けがつかない素晴らしいできです

それでも私は満たされません

なぜなら、それは本物ではないから

 ある日私は優しい殿方に会いました

すぐに私は恋に落ちました

しかしその人には意中の方がおられて

優しくはしていただきましたが、相手にはしてもらえません

私はそれがほしくて ほしくてたまりません

私はとある方法でその殿方とまったく同じものを作ることに成功しました

新しく生まれたその方は私のところにしか居られる場所がありません

やがてその方は私を愛して下さいました

それでも私は満たされません

なぜなら、それは・・・

『これ以上読んではいけない!!』と、しのぶは感じ

目を見開いた瞬間、後ろに居たママの方に倒れる

ママ「大丈夫!?汗だくよ」

その先にはとてつもない悲しい記憶が見える

きっと耐え切れない

違う・・・本当のこの本の存在理由はこの内容とは違う

目を開いていると回りは金色の光に包まれていて

その奥に人影が見える

とても遠くに

光の中の人「わが名を呼べ・・・」

汗だくでガクガクしているしのぶを見て両親は大慌てしている

しのぶ「貴方の名前は・・・・」

頭の中に文字がひとつずつ浮かぶ

その文字は見たこともない文字だが

しのぶは読むことができる

しのぶ「パ・ン・ド・ラ・・・デ・ロ・・・ル・レ・・・・」

光の中の人「わたくしに会いたければ、もう一度、はっきりと名を呼べ」

しのぶは両親に抱かれていたが

それを振りほどきしっかりとかばんの前に立ち

しのぶ「パンドラ・デロルレ」とはっきりと唱えた

全面に放射されていた光は一点にかたまり天高く貫く一筋の光になりやがて天に消えていった

それと同時にしのぶはその場に倒れた

両親に運ばれ自分の部屋で眠っている

絶対結界の衣だけを着たしのぶは見たこともない草原で一人で座っている

そこはとてもさわやかな風が吹いていて、ずっとここにいたいと思っていた

後ろから人が歩いてくる音がして振り返ってみると

濃紺の服に鮮やかな金と濃い紫の刺繍が施された、いかにも高貴そうな女性が立っていた

パンドラ「目覚めさせてくれてありがとう、手放しで感謝するぞ」

    「私の名前はもう知っていよう」

しのぶ「パンドラ・・・・千年の時を生きた悪魔のような大魔女・・パンドラ・デロルレ」

パンドラ「ほう・・・」と目を細めるパンドラ

    「私のことを会う前から知っていたようだな」

しのぶ「いくつかの本に出てくるわ・・・・」

パンドラ「ふーん」

    「名前を教えろ」と言葉はきついが優しい口調で尋ねた

しのぶ「しのぶ」

パンドラ「全部言え」

しのぶ「沖斗・・しのぶ」

パンドラは「よし」と言うとしのぶの前に周りしのぶに顔を近付け

「私に会いたかったか?」と子供のような目をしていった

しのぶ「・・・・あなたのことは本で知っていたけど、あの光が貴方だとは知らなかったわ」

パンドラ「だから?」

しのぶ「貴方に会いたいと思ったことはない・・・」としのぶが答えるとがっかりした顔をしながら

パンドラ「そんなことを聞いているのではない」

    「光の正体が私だとわかるはずないことはわかっている」

    「私がそんな間抜けな封印をするはずがなかろう」と言った

しのぶ「違う形でだけど、同じようなことが書かれていた、国も立場も違う人たちに書かれていた」

   「だから・・・多少誤解があったにせよ本当のことだと思う」

パンドラ「ん?・・フエルトの戦いのことか?」

しのぶ「そう・・・貴方はあの戦いに出るべきではなかった」

   「いかに王の命令でも、あなたならそれにそむき、そこを離れる力があったはずよ・・・」

パンドラ「そうだな・・」と優しく答えた

しのぶ「王のことを・・・愛していたの?」

パンドラ「・・・・」パンドラは少し黙っていたが仕方がないなあと、いった感じで

   「王はフエルトは自分の信じる正義のために戦っていた」

   「正義とは不安定なもので時には今まで正義とされてきたものが

   敗北によって悪とされることもある」

   「正義を正義として成り立たすために必ず勝たなければならなかったのだ」

   「気がつけば勝っても尚、私は悪魔と呼ばれるようになっていた」

    しばらく沈黙が続いた後、さっきまでとは違う弱い口調で

   「王など愛しておらん・・ただそれだけだ」と答えた

しのぶには最後の言葉が嘘だと言うことがすぐにわかった

だからそれ以上問い詰めるのをやめた

パンドラ「で、答えを聞いておらんぞ」

しのぶ「?」

パンドラは顔をもっと近づけて「もう、じれったいやつだな」

     「私に会いたかったか?」とわくわくしながら聞きなおした

しのぶは小さい子におねだりをされているような気がして

本当はそうでもなかったのだけど「会いたかったわ」と答えた

パンドラは「そうか!」と言いながら立ち上がり

首から提げていた大きな赤い宝石がついたネックレスをはずし、しのぶにつけてあげた

しのぶ「綺麗」とネックレスについた宝石を手に取り顔を赤らめた

パンドラ「それは私のだぞ!だが、気に入ったのなら貸してやろう・・・

     ただはずさず、ずっと付けていろ」と言った

しのぶ「いいの?」パンドラ「似合ってるぞ」と笑い

うれしそうにくるくると辺りを歩き始めた

しのぶは「まるで小さな子供みたい」と思いながら仕方がないなーといった顔でパンドラを見ていた

シーン●友情関係の亀裂 ゆき編

ゆきは、庭に干してある洗濯物を取り入れている

ゆき「おかぁさん、タオルまだ乾いてないー」

おかあさん「じゃあ、そのままにしといてー」と家の中から声がする

ゆきが顔を上げると、こちらの方をずっと見ている若い男に気がつく

その男は西洋の僧衣のような服を着ていて、明らかにこの場から浮いていた

ゆき「あのー、何か家に御用ですか?」と、きつめに問いかけた

男「ああ、このあたりで人を探していてね・・・」と、こちらの方に歩いてくる

ゆきは少し後ずさり身構えながら

  「名前とか住所とかわかれば・・・お答えできるかもしれませんが?」と言った

男は「名前はわからないんだが・・」と言いながらゆきの方に近寄りずっとゆきの足を見ている

ゆきは太ももを見られていることに気づき

  「何ですか!?人を呼びますよ!」と威嚇した

男「ああ、これは失敬。私は君の足に魔法をかけた人を探しているんだ」と言った

ゆきは誰も知らない事実を突きつけられ驚きながら

  「何のことかわかりません!」と答えた

男「君の足にかけられているのは不安定で幼稚な対価魔法だ・・・

  その魔法をかけた者には特に興味はない」

 「つい最近この地に強力な魔力を持った古の魔術師が召喚された・・・そちらの方に用があるんだ」

 「巨大な魔力を捕捉していたんだが、僕たちが到着する前にぷっつりと痕跡を消したんだ」

 「そしてこの辺りを捜索していたら君の足に魔法の痕跡を見つけたと言うわけだ・・わかるかい?」

ゆき「何を言ってるのか、まったくわかりません」とその男をにらみつける

男「うーん」と困ったような顔をしている

その顔を見ると悪い人にはみえず、ゆきはにらみつけるのをやめ

ゆき「あの・・・仮にですけど・・・その子に会ってどうするんですか?」

男「ん?古の魔術師かい?」

ゆき「いいえ、あの・・」

男「ああ、君の足に魔法をかけた人ね・・・」

 「おそらくその二人は接触している、この地に確かにあった魔力が

  消えてしまっていることがその証拠だ」

ゆき「・・・・よくわかりません・・・」と、しかめっ面をする

男「召喚魔法というものはそういうものだからだよ、

 封印されていた古の魔術師を誰かが召喚した・・・すなわちもう一人魔法を使えるものがいる」

 「にもかかわらず・・・この地には魔法使いの魔力が感じ取れない」

 「僕たちがくるのがわかっていて・・・結界を張っているからだ」

ゆき「もうどこか遠くにいってしまったのでは?」

男「それもありえる」

  「ただ、君の足に魔法をかけた者がまだこの地にいるのなら一緒にいるのだろう」

 「だから僕はその人の居場所を聞いている・・・」

ゆき「・・・・・まだ、何のために探しているのか、聞いていません・・・」

男「取って食おうっていうのじゃない、管理するんだよ。大きな力と言うのはそれだけで危険なんだ」

 「君くらいの歳ならもう説明しなくてもわかるよね・・」

ゆき「急にそんなこと言われても・・・信用できません・・・」

男「そりゃぁあ、そうだね。」

 「急に現れたのに真剣に話を聞いてくれてありがとう」

 「お礼に君の足を治してあげよう」

ゆき「えっ?・・私の足は悪くありません!」

男「うーん・・・言っちゃ悪いが君の足は治ってないよ」

 「その魔法は対価魔法といって、とても不安定なものなんだ」

 「君の足を動かすために君は何か対価を払い続けなければならない」

 「そうだな火が燃えるときに木を食い尽くすようなものかな・・」

 「木が燃え尽きれば火は消えるよね・・・・・・魔法と言うよりは呪いに似ている」

ゆきは動揺を隠せない「・・・うそ・・・」

男「動かなくなった足を動かしているくらいだから、相当大きな対価が必要だ」

 「何を支払ったんだい?」

ゆき「そんなの・・何も払ってないわ!」

男「そんなはずはない」

男「君は何を対価にしたのか聞いていないのかい?」

ゆき「・・・・・いえ・・・」

男「・・そうか・・・どういうつもりなのか・・よくわからないが・・・」

 「君は足が治るのと吊り合うほどの何か大きなものを失っているはずだ」

 「心当たりがないのなら、もしくは今も徐々に蝕まれていっているのかもしれない

それが、この魔法が呪いに似ていると言われる所以だよ」

 「君がその対価を払えなくなったら君の足はまた動かなくなる」

 呪いと言う響きがゆきの心に重くのしかかる

 「さあ、どこかに腰掛けなさい、その魔法をはずすから一旦足が動かなくなる」

 「私の使う本当の魔法も仕組みは対価魔法と同じだが対価としてマナを使う」

 「マナはこの大気中に光の玉としてあふれていて対価として払い続けても無くなりはしない」

ゆき「光の玉・・・」しのぶがいつも光の玉が見えると言っていることを思い出す

足にかけられた魔法が解かれ・・足が動かなくなる

ゆき「ああああ・・・・」足が動かなくて体を震わせながら動揺するゆき

男「さぁ、これで永遠に解けることはない・・・」

暖かい光に包まれゆきの足に感覚が戻ってくる

男「さあ、立ってごらん」

そうっと立ち上がるゆき

男「心配しなくてもさっきまでと同じように歩ける」

ゆっくり足をいろいろと動かした後、ぴょんぴょんと飛び跳ねてみせる

男「これで本当に治ったんだ」とにこりと微笑む

 「僕の名前はジョルジュ、しばらくこの町にいる、気が変わったらまた話しておくれ」

ゆき「わたしは・・ゆき」

ジョルジュ「うむ、じゃあ、ゆきさん・・また!」と背を向けて歩き出す

ゆき「あの・・・ありがとう」と言うとジョルジュはニコッリ笑い手を振りながら去っていった

翌朝、いつもと同じように拓也としのぶがゆきと合流する

しのぶはすぐに足のことに気付きゆきの足を黙って見ている

ゆきはそのことにすぐに気付き、その視線に呪いの言葉が重なりゾッとする

しのぶはゆきに何も言わない・・それがまた不気味だった

拓也がいるからだろうと自分自身に言い聞かせた。

別のクラスの拓也と分かれるとしのぶは口を開いた

しのぶ「ゆきちゃん・・ちょっと」

ゆき「な・・なに?」

しのぶ「ここではちょっと・・・」と辺りを見回し

   「屋上に行かない?話したいことがあるから」と言った

ゆき「・・・なに?・・ここで言って」と伏目がちに答えた

しのぶ「ここでは・・ちょっと・・人がいるわ」

ゆき「駄目・・・なんていったらいいのかわからないけど・・・私」

と言って少し黙りこくり考えている

やっと覚悟を決めて「怖いの・・・・ごめん」

ゆき「二人きりは無理だわ・・」といいまた教室に向かって歩き始めた

それについて歩いてくるしのぶに気付き

ゆきは振り返り「ごめん・・後ろを歩かないで・・・」

いい辛そうに「前を歩いて」と言った

シーン★アストラルイニシエーション マギファスコミオの草原 創造魔法バース

しのぶが眠りにつくと、またこの間来たパンドラとあった草原に立っている

さわやかな風の音しかしない とても穏やかなところだ

辺りを見回すと丘の上の方で座り込んで何かをしているパンドラが見える

しのぶはパンドラの方に歩み寄りもう声が届くであろう距離までくると「パンドラさん」と話しかけた

パンドラは振り返りとても驚いている様子だ

その手には摘み上げた花で編まれたリースが持ったれている

しのぶ「パンドラさん、お花をそんなに摘んでは駄目よ」というが

パンドラはあっけに取られていて返事がない

少し時間を置いて

パンドラ「しのぶ・・・お前どうやってここに入ってきた?」と驚いた顔をしたまま問うた

しのぶ「ごめん・・勝手に入ってきちゃったら駄目だった?」

パンドラ「いや・・そうじゃない」

    「よくこの場所が分かったな・・・」

しのぶ「?」

   「この間一度来てるけど?」

パンドラ「あれは私がお前を招きいれたのだ」

しのぶ「?」「どういうこと?」

パンドラ「今日はどうやってここに入ってきたか?と聞いている」

しのぶ「眠ったらここにきていたわ・・・この間もそう」

パンドラ「それは違うな」

    「自分の服を見てみろ」

しのぶ「?」何のことだろうかと思いながらも自分の服を見るが

別段変わった所はないいつもの寝巻きだった

パンドラ「私が招きいれたときはお前は裸だっただろう」

しのぶは顔を赤らめながら「服着てたよ」と反論した

パンドラ「ああ・・あれは結界魔法を着ていただけで服は着ていなかったんだ」

しのぶは確かにそうだったなあと思いながらも「それがなにか?」と尋ねる

パンドラ「服を着ているということはおまえ自身がここを探し出し入ってきたという証なんだ」

しのぶは困りながら「本当に眠ったらここに立っていただけなんだけど・・・」とうつむきながら言った

するとパンドラは「あはははははは」と天を見上げて高らかに笑い始めた

しのぶ「なに?何で笑うのパンドラさん」と困った顔をしている

パンドラ「おい、パンドラさんって言うのはやめろ」

しのぶ「え?・・パンドラ・・さま?」

パンドラ「あははははははは」と再び大笑いをする

しのぶ「ねぇ、何がおかしいの?」とパンドラが何故笑っているのか本当に分からない様子だ

パンドラ「呼び捨てでいい」

しのぶ「でも・・それはちょっと・・」

パンドラ「じゃあ、パンと呼べ、私の仲間はみんなそう呼んでくれた」

しのぶ「う・・うん、じゃあパン」

パンドラ「ああ、なんだ?しのぶ」と嬉しそうに言う

しのぶ「一度目に笑ったのは、なんでなの?」

パンドラ「ああ・・こんなにも簡単にここに到達できる奴がいるんだなぁーと思って」

しのぶはまだ分からないわ、という顔をしている

パンドラ「ここはマギファスコミオの草原と呼ばれている場所だ」

    「名だたる魔術師たちが血眼になって探しても見つけられない

    マギファスコミオのグリモワールが保管されている隠された場所なんだ」

しのぶ「パンが作ったの?」

パンドラ「まさか」と笑う

    「私はここに到達できた数少ない魔女」

しのぶ「・・・・」

パンドラ「さっき花を摘んではいけないと言ったな」

しのぶ「・・うん・・そんなに摘んだら、かわいそうよ」

パンドラ「見ろ」といい自分が立っている辺りの地面を指差した

しのぶ「?」

パンドラ「花が咲いているのはここだけだろう」

しのぶ「うん・・・じゃあ、尚更摘んじゃ駄目よ」

パンドラ「ん?案外勘が働かないんだな?」

しのぶは困った顔をしている

パンドラ「私の本を読んだだろう?」

しのぶは「あ・・」というとなんだか勘付いた様子だ

パンドラはにこりと微笑みながらリースをしのぶの首にかけ

「ある時私は花で編まれたとても綺麗なリースを見かけました

 私はそのリースがほしくて ほしくてたまりません

 私はとある方法でそれとまったく同じものを作ることに成功しました」

パンドラ「そのとある方法ってやつだ」といい、続けて

    「バース」と唱えながら手を横に大きく振ると

あたり一面に花が咲きほこった

しのぶはあまりの美しさに言葉を失ってしまった

しのぶはしゃがんでかわいらしい花に顔を近づける

しのぶ「本物の花だわ・・・」

    「命を感じる」

パンドラ「ああ、当たり前だ」

しのぶ「それでも私は満たされません・・・なぜならそれは本物ではないから・・・」

パンドラ「ああ、それはその個体に名前がついた時もう一つ作ったとしても

     それは本物ではないということだ」

     「例えは王が使っていた伝説の剣があったとしよう、それは数々の戦で勝利を導いた

     それを作った鍛冶屋がまったく同じ素材でまったく同じものを作れたとしてもそれは

     その王が使っていた伝説の剣ではないな、切れ味も何もかもが同じでもだ」

     「そうだろ?」

しのぶ「そうね・・わかるわ」

    「じゃあ、やっぱり摘んでは駄目よ・・・どんなに沢山生み出すことができても」

パンドラ「そうか・・・しのぶは優しいんだな」

    「じゃあ、これからはそうするようにする」と優しい目でしのぶを見ている

少し間をおいてパンドラは続けた

パンドラ「この創造魔法バースを筆頭に名だたる失われた魔術が

     マギファスコミオのグリモワールには記されている」

    「ここに到達出来た者だけが、そのグリモワールを手にし読むことが出来るんだ」

    「きっと、ここに到達出来た者が自分の得た知識を書き足していって

    膨大な量の魔術書となったのだろう」

    「それほどここは特別で憧れの場所なのだ・・・」

    「それなのにお前は寝てたらきていたと言ったので笑ったんだ」

しのぶ「でも・・本当だもん・・」

パンドラ「ふふ、寝てもここにはこれない」

    「ここはアストラルイニシエーションが出来るものしかこれないからな」

    「多分感覚的にアストラルイニシエーションが出来るのだろう」といい

しのぶのことを誇らしげに見ていた

パンドラ「ああ、ところで何をしに来た?」

    「私に会いたかったのか?」と、この間と同じように目をキラキラさせながら尋ねてくる

しのぶは「う・・うん」とちょっと無理やり気味に返事をさせられたが

パンドラは嬉しそうにクルクル回りながら社交ダンスのような格好をしている

しのぶ「パンお迎えが来ているようよ」と本題に入った

パンドラ「ん?私を探しているやつのことか?」と一人で社交ダンスの練習をしながら答える

    「あれは、別に知り合いではない、お前ごと結界を張ってあるから

    見つかることはないほっとけ」

しのぶ「なぜ探されてるの?」

パンドラ「さあね。セルバンテスと言う教会のやつらだろう、

     魔法使いが暴走しないように首輪をつけて回っているんだ」

    「まだそんなことしていることに驚いたわ」とダンスを続ける

しのぶ「そうなんだ・・」と少し考え

   「ねぇ、たぶん私はもう見つかっているわ」

パンドラ「んー?お前が魔力持ちだというのは結界でわからないはずだぞ」と

興味なさそうにダンスを続ける

しのぶ「私が昔にかけた魔法をたどって・・・私の存在を知ったはず」

パンドラ「そうか。」と踊りをやめしのぶの方に近づき

     「で?怖いのか?」と優しく尋ねた

しのぶ「ううん」と首を横に振った

   「どうしたらいいかわからないだけ・・」

   「パンはどうしたらいいと思う?・・・どうして・・ほしい?」と自信なさそうに尋ねた

パンドラ「あいつらが私に首輪をつけるのは不可能。だからしのぶのしたいようにすればいい」と

しのぶの頬を両手で優しく包んだ

しのぶ「うん」とうなずき、しのぶは質問を続けた

しのぶ「それでね・・・パンはどうしてここに居るの?」

パンドラは突拍子もない質問にちょっとびっくりした様子だったが

パンドラ「しのぶ、お前は自分が何のためにここにいるのか?

     だとか生きていることに意味があるのか?とか考えるタイプか?」と少し笑って見せた

パンドラ「私は生きている・・・もう人の姿は失ったが・・・こうしてここに存在している」

    「だから誰かとかかわりたい・・・そうだ、お前だ・・・ただ、それだけだ」

しのぶの困惑している顔を見て続けて

    「とりたてて今のところ目的はない!ただ存在しているだけ・・」

    「それが悪いか?」と意地悪に尋ねた

しのぶ「いいえ・・それならいいわ・・」と無理やり納得させられた

パンドラ「お前が言いたいことはわかる」

     「私は悪魔と呼ばれた魔女だ」

    「なにかを企んでやらかそうと思われても仕方がない」

しのぶ「私はそんなことは思ってないわ・・・」

パンドラ「ああ、それもわかってる」

    「教会のやつらはそう思ってないだろうから何も企んでないのなら

    従った方がいいのでは?と思ってるんだろう」

しのぶ「う・・・うん・・・」

パンドラ「気が向いたらそうするさ」と言いまじめな顔をして

    「もっともらしい御託を並べてくるだろうが私を縛れるほどの力を持っているのなら、

     その力を誰が制するのか?」

    「結局己らが一番でいたいだけだろうに」と続けた

普段小さな子供のように無邪気に踊っている顔と、こういう時に時折見せる怖い顔

どちらが本当のパンドラなのか しのぶにはまだ分からなかった

しのぶ「・・・・」

考えこんでいるしのぶをみてパンドラは

「さあ、お前も踊れ」としのぶの手をとり、しのぶの腰に腕を回し

「社交ダンスはレディーのたしなみだぞ」といいしのぶを振り回した

しのぶは「社交ダンスなんて・・・今はそんなにしないのよ」と戸惑いながら答えた

パンドラは「そうなのか?」といいながらも

     「足はそうじゃない」としのぶの足を蹴りあげ無理やり踊り続ける

しのぶはパンドラがあまりにも楽しそうなので付き合ってあげることにした

シーン☆ジョルジュとしのぶの接触

ゆきが帰路を一人で歩いていると壁にもたれて立っているジョルジュに出会う

ゆきはおそらく自分が通るのを待っていたのだろうと思い

ゆき「なにか?」と尋ねた

ジョウルジュ「君の足に魔法をかけた人、大体見当がついたよ」

ゆき「・・・・」

ジョルジュ「君のクラスメイトの沖斗しのぶって子だね」

ゆき「・・・・ち・・違うわ」とうつむきながら答えた

ジョルジュ「そうかな?状況証拠を突き合わせると彼女に打ち当たる」

     「君の周りで変わり者扱いされている子・・・それだけで十分だ」

     「しかるべきところで教育を受けていない魔術師は

     その地域で変わり者扱いされているものなんだ」

     「彼女がとっている言動・・光の玉が見えるってやつね・・・あれはマナのことだから」

     「彼女は少なからず魔力を持っている、なのに今はその魔力を隠している」

     「それが証拠だ」

     「別に彼女をどうにかしようということじゃない」

     「問題は古の魔術師のほうなんだ」

ゆき「・・・・」

ジョルジュ「君に僕が彼女に接触することを止めることはできない」

     「わかるね」

ゆき「・・・」

ジョルジュ「君のおかげで彼女を見つけられたようなものだから感謝している」

     「だから君にも立ち会ってほしい」

     「その方が君も安心だろ?」

ゆき「でも・・私・・・秘密だって約束したから・・・」

  「しのぶのこと・・裏切れない・・・」

ジョルジュ「君は何も話していない」

     「裏切ってなんかない」

     「僕が彼女と接触することを君は止められない」

     「なら・・・来た方がいいと思う」

     「ただ、どちらでもいい。勝手に会うのは悪いなと思って伝えに来ただけだから」

ゆき「・・・そうね・・・」

  「わかったわ・・・ありがとう」

二人でしのぶの家に向かう

ゆきはジョルジュの後ろをうつむいて歩いてゆく

しのぶが庭の手入れをしていると絶対結界がざわめき何かが来るのを感じ取る

そこにジョルジュとゆきがやってくる

ジョルジュ「先に話すかい?」とゆきに優しく尋ねた

ゆき「はい」といい、しのぶの方にうつむきながら歩み寄ったが言葉が出ない

それを察してしのぶは

   「何があったのかはお話できなかったからよくわからないけど

   巻き込んでしまってごめんね」と優しく声をかけた

ゆき「ごめんなさい・・・つれてきちゃった・・・」と泣きそうになりながら言った

しのぶ「ううん」と首を横に振り

    「原因はこっちにあるんだからゆきちゃんは何も悪くないよ」

ゆきは泣いてしまってもう言葉が出ない

それを見かねてジョルジュは「なぜ僕がここに来たか分かるね?」と尋ねた

しのぶ「来た理由は分かるけど、なにがしたいのかよくわからないわ」

ジョルジュ「では、示そう」

       「古の・・いや、魔女をこちらに引き渡してもらいたい」

しのぶ「なぜ」

ジョルジュ「我々の教会セルバンテスでは強力な魔力を持ったものたちを管理しているんだよ」

     「強力な魔力は危険だからね」

しのぶ「分かりました、ここに私と居ます、もしもここを離れるようであれば連絡しましょう」

   「それで管理できるでしょう?」

ジョルジュ「うーん・・・君はよくわかってないようだね・・・」

しのぶ「いいえ、分かっていて言っています」

普段は自信なさそうにしているしのぶがハキハキと力強く話している姿を見て

ゆきは泣くのをやめて驚いている

ジョルジュ「一旦教会の方にきてもらって魔力に制限をかけさせてもらいたいんだ」

     「その後はここに戻るなり好きなようにしてもらっていいんだが・・・・」

しのぶ「私も一度従った方がいいのでは?といったのですが

     『気が向いたらこちらから行く』と言う返事でした」

   「それでは、駄目ですか?」

ジョルジュ「それは駄目だね・・・もしも彼女がそれまでに暴走でもしたら君は責任をとれるのかい?」

しのぶ「とれません。そもそも責任を取る必要があるんですか?」

ジョルジュ「ふふふ、そうか・・・君はわざとそう言ってこちらがどういう態度をとるか見ているんだね」

     「本当に彼女が暴走したらどうする?」

     「君が彼女のことを今どう思っているのか知らないが彼女は悪魔だ」

     「千年を生きた大魔女 パンドラ・デロルレ 悪魔と呼ばれた魔女だ」

     「じゃあ、今日はこれだけでいいよ」

     「君のところに居る魔女はパンドラ・・・・そうだね?」

しのぶ「そうよ」

ジョルジュ「わかった・・・今日は帰るよ」

     「悪魔をかくまうのか」さっきまでよりは小さな声だが、わざとゆきに聞こえるように言った

ジョルジュ「ゆきさん、帰ろう」

ゆきはいつもと違うしのぶと悪魔・・そして呪い・・の言葉で

なんだかわけが分からない怖さでジョルジュに従いしのぶから離れ家路についた

その様子を教会で水晶玉を通して見ている教皇ルクツアーノ「・・・やはり・・・パンドラか・・・」

教皇「アリア!・・マリアをここに」とマリアを呼びつける

しばらくしてマリアがやってきて

マリア「教皇様 およびでしょうか」

教皇はなにやらマリアに指示をしている

教皇「できるだけジョルジュ君の顔に泥を塗らないようにやってくださいね」とマリアに言う

マリア「わかりました」と頭を下げる

シーン☆パンドラとしのぶ

夜 しのぶが自分の部屋で本を読んでいると「しのぶー」と呼ぶ声が頭の中で聞こえる

パンドラ「しのぶー」

しのぶ「パン?・・・なに?」

パンドラ「そっちに行ってもいいかー?」

しのぶ「こっちにくるの?」

パンドラ「ん?嫌ならやめとくぞ」

しのぶ「いいえ」と返事すると

パンドラが目の前に現れた

手にはマナを変形させた薄い板のようなものを山済みに持っている

それを床に置き

手を前に突き出すと、その手に薄桃色の半透明な槍が表れた

しのぶ「なに?」

パンドラは構わず床に置いた山済みの板から床まで槍を突き立てた

しのぶ「だめよ!床が傷ついちゃう」と慌てている

パンドラ「大丈夫だ物理じゃない魔法だ」

     「違いはわかるか?」といい

     「バース」と大きな声で唱えた瞬間

辺りはまばゆい光に包まれた

パンドラ「ほら、見て」といつものようにクルクル回る

しのぶ「?」「なに?」

パンドラ「んー?」

     「ほら、実体を作ったんだ」

しのぶ「へ?」

パンドラ「ほら、触れるぞ」といいながらしのぶの胸をつかんだ

しのぶ「きゃあ!」

パンドラ「はははは、女同士だ恥ずかしがるな」

しのぶ「もうっ!」

パンドラ「あはははは、しのぶは、かわいいな」

しのぶ「前から触れるじゃない」

パンドラ「あそことここでは違う」

     「こちらで霊体のままでは触れない」

     「あちらでは霊体同士だから触れたんだ」

しのぶ「え?あれは私も霊体だったの?」

パンドラ「え?・・・もしかして気づいてなかったのか・・・」

しのぶ「う・・うん」

パンドラ「見ろ、私が一番美しかった頃の姿だ」

     「どうだ?」

しのぶ「私はその姿しか見たことがないわ」

パンドラ「もー、ノリの悪い奴だなー」

     「お前友達いないだろ」

そういわれるとしのぶは悲しそうな顔をしてうつむいた

パンドラ「あら・・・冗談なんだけどな」

     「心配するなわたしが友達になってやるからな」

しのぶ「そう・・・ありがと・・」とうつむいたまま答えた

パンドラ「遺体を焼いた灰を使って再生してあるから本物だぞ」

     「胸も本当にこれだけあって腰は本当にこんなにくびれてたんだ」

しのぶ「そうね、綺麗よ」と気のない返事をした

パンドラ「もっと感動しろ」

     「バースはな、とっても、とっても!とっても!とーーーても難しい魔法なんだぞ!」

しのぶはパンドラが無理に明るく接してくれているのを察してにこりと笑って

しのぶ「だって、興味ないんだもん」と言って見せた

しのぶ「遺体の灰って自分の?」

パンドラ「当たり前だろ」

しのぶ「それで最近いなかったのね」

パンドラ「ああ」

しのぶ「どこかに隠してある・・ってこと?」

パンドラ「教えないぞ」

しのぶは呆れながら「いらないけど」

しのぶ「でもどうして実体が必要なの?」と続けた

パンドラ「んー?お前を触るためだ」

しのぶ「もう!」

パンドラ「んー?本当にそのために作ったんだぞ」

     「霊体同士で触ったときとではぜんぜん違う」

     「ほら、触ってみろ」

しのぶはパンドラの手を少しだけ触り「そうかな?私には分からないわ」と答えた

パンドラはじれったさに自分からしのぶの手を引いてベットに倒れこみ

しのぶを自分の胸にギュっと抱きしめた

パンドラ「どうだ?暖かいだろ?」

しのぶの顔を見ると泣いているようだった

しのぶ「パンの鼓動がきこえる・・・」

パンドラ「ああ」

しばらくそのままでいるとしのぶはうとうとしてきているようで

パンドラはこのまま眠らせてあげることにした

しのぶの記憶がどんどんパンドラに流れ込んでくる

パンドラ「しのぶ、しのぶの記憶が流れ込んでくる」

しのぶ「うん」

パンドラ「私が覗いたんじゃないぞ」

しのぶ「うん」

     「いいの、パンの記憶も全部じゃないけど私読んだから」

そういい終わると、またしのぶは目を閉じた

パンドラは友達がいないとか言ったのは本当に失敗だったなーと思いながら

パンドラ「お前は特別な力を持っている」

     「だから誰からも理解はされない」

     「私もそうだった」

     「だが、それを打ち破る力も兼ね備えている」

     「道は自分で開け」

     「私はなにもしない」

     「自分で決めたことでなければ後悔することになる」と言った

パンドラの胸に抱かれしのぶは久しぶりに深い眠りについた

シーン♦二人の増えた同級生

朝、学校にいき教室に入るとジョルジュがいて信子達と話をしている、

しのぶとゆきは驚いているがあまりにも自然に溶け込んでいるので、何も言葉がでてこなかった。

しばらくすると、ジョルジュはこちらに気付きおはようと何事もなかったかのように話しかけてくる。

ゆき「どうしてあなたがここに?」とジョルジュにしか聞こえないくらいの声で尋ねた。

ジョルジュ「しのぶさんに断られて、はいそうですか。と帰るわけにはいかないんだよ」と

しのぶの方を見ながら答え、

続けて「かといって手荒な事をするわけにもいかない・・・だからさ」と答えた。

ゆき「みんな貴方のことを前から知っていたかの様に接しているけど・・・」

ジョルジュ「ああ、僕は魔術師だからね」と微笑む

 一方、拓也のクラスB組では、拓也に馴れ馴れしく話しかけてくる女子がいる

マリア「拓也くーん」と腕に抱きついてくる

拓也「うわ、何だお前?」と

誰だったっけ?知っているような知らないような変な違和感を覚え

拓也「マリア離せよ!」と名前を呼んでいる自分に驚きながらも

   『…そうだ…こいつマリアだ』と確認するように頭の中で考え

   「離せってば」と言った

 するともう一人女の子がやってきて

敬子「拓也君」とこちらはおとなしく恥ずかしがりながら話しかけてくる

拓也はこいつは『宮澤敬子』だ、すんなりと頭に名前が浮かんでき

『あんまり喋ったことないんだけどなんだろう?』と過去の関わりまで思い出される。

マリアに関しては昨日のことも思い出せないような・・・

でも前から知っていたようなモヤモヤした感じがしていた。

敬子「あの…今日放課後一緒に帰っていただけませんか?」

拓也「えっ?」と驚く

周りにいたクラスメイトも驚いている

拓也「いや、部活あるから」

敬子「はい、終わるまで待ってます」

拓也「いや、それからしのぶ・・・沖斗と帰るから」

敬子「沖斗さんと付き合ってるんですか?」

拓也「いや、そう言う訳じゃないんだが」と答えると

すかさずマリアが「じゃあ、一緒に帰ってあげなよ!」と口を挟む

それにつられて周りにいたクラスメイトたちも、「そーだそーだ帰ってやれよー」と声を上げる。

拓也「うっせーぞ!お前ら」とみんなに応戦する

敬子「今日一度だけでいいんです」と少し泣きそうになっている

マリア「女の子がここまで言ってるのに帰ってあげないなんて言わないよね?」

クラスメイト「そーだそーだ帰ってやらないならカスだー」「 昼飯おごれー」

       「俺の鞄持てー」と好きなことを言っている

拓也「おい、どさくさにまぎれて好きな事いうな!」

マリア「拓也君、私からしのぶにはちゃんと説明しておくから」

拓也「あ?しのぶに説明ってなにを」

マリア「しのぶと私が仲がいいの知ってるわよね?」と大きく目を開いて拓也を見つめる

マリアの目を見ていると『そうだマリアはしのぶの親友だった』と思えてくる

マリア「ちゃんと しのぶには話しておくから帰ってあげなよ」

拓也「でもなー」

マリア「でも、なに?優柔不断な態度を取るなんて拓也君らしくないよ」と大きな目で見つめられると拓也は「わかったよ」と返事してしまっていた。

敬子は顔を赤らめながら「ありがとう、校門の所で待ってるね」と言った

クラスメイトはヒューヒュー口笛を吹いて冷やかしている

拓也は『なんでこうなったかなー』と魔法にでもかけられたみたいだと感じていた

マリア「しのぶのとこに行ってくるねー」とマリアは教室を出てA組の方へ駆けていった

マリア「しのぶー」と呼ばれしのぶは声のする方に振る向くが、

しのぶには呼んでいる子がこの学校の生徒で無いことがすぐに分かっり

黙ってマリアの方を観察している

信子「ほらマリアちゃんが呼んでるよ。」

信子が『マリア』と、その見知らぬ生徒の名前を呼んだことに少し驚きながらも

教会の者なのだろうと想像し、みんなにおかしく思われないようにとマリアの方に歩み寄った

しのぶ「あなたも、教会の人?」と尋ねると同時にしのぶの頭に『マリア』の名前が浮かぶ

続けて『誰からも愛される、ちょっとキュートな女の子』とイメージが沸いてくる

しのぶは直感的に『いけない!これは私の体験からくるイメージじゃない』と思い

そのイメージをかきけす。

マリアはその質問に返事をしなかったが不敵に微笑む笑顔がYESと答えているように感じた

マリア「拓也君ね、今日貴方と帰らないって!」

    「他の女の子と帰るの」

    「だから図書室で待っていても無駄よ」

しのぶは目を細めながら「貴方が仕組んだの?」と尋ねた

マリア「そんなー、せっかく教えに来てあげたのに」と急にかわい子ぶる

しのぶ「あなたはこの学校の生徒じゃないわ」

マリア「えー?なにいってるのー?」

    「しのぶったらまた訳の分からないこと言い出してー、もぅ!」とみんなに聞こえるように

かわい子振りながら言い出した。

そして小さな声で「貴方の言うことなんか誰も信じないわ」

「嘘つきさん」とにやりと笑いしのぶの肩に手をやった

マリアの手がしのぶに触れようとした瞬間、しのぶの第一結界によって

バチリと音を立ててはじかれる

マリア「痛い!」

    「もうしのぶの意地悪ー!ばかー」とかわいく言いながら自分のクラスの方に帰っていった

信子「しのぶ!マリアちゃんをいじめちゃ駄目よ」

しのぶ「あの・・・私なにもしてない」

信子「あの子は泣き虫だから気をつけてあげないと・・」

しのぶは困ったことになったと思いながらも対処方法が分からなかった

学年全部を覆うほどの大きな魔法の痕跡が感じられない

全員に2人の記憶を植えつけるのにはどこかに術を維持するための何かがあるはずなのに

それを取り除ければ・・・と考えている

 授業が始まる時間が近づきみんなが自分の席に戻ろうとしている

しのぶはもう一度「信子ちゃん、私本当に何もしてないの」と下を向きながら言った

信子「え?なに?」

しのぶ「マリアさんに私何もしてないの・・・」

信子「マリア?」「マリアって誰だっけ?」

しのぶは少し驚きながら信子に「さっき私と話していた子」と答えた

信子「え?・・えーっとB組になんかそんな子がいたような・・いなかったような」と

さっき自ら『マリア』と呼んでいたとは思えないようなことを言っている

しのぶはマリアたちが使っている術がどういうものなのか少し察しがついてきた

『近くにいる人たちだけに自分を知り合いだと思わせる記憶を放っているのかしら・・』

『それなら・・大きな仕掛けは要らないわ・・・』

それは対処方法が二人を追い払うしかないことを意味していた

マリア『ほんと、痛いわねー!あんなに強い結界をはれるような子だって聞いてないわよ』と

ご立腹の様子だ

シーン◎パンドラの部屋

 しのぶは学校から帰り自分の部屋に入るとパンドラが勉強机のの上でなにやら作業をしていた

パンドラ「机・・・借りてるぞ」

しのぶ「パンただいま」

パンドラ「ああ、おかえり」とこちらの方を振り向かず一生懸命なにかをしている

しのぶ「パン?」

パンドラ「今日はどうだった?問題なかったか?」

しのぶ「う・・・うん」

    「一生懸命何してるの?」と覗き込むとなにやら裁縫をしているようだ

パンドラ「あ痛っ!」

しのぶ「ふ~ん」

パンドラ「あの服は品がない」

しのぶ「ん?」

パンドラ「スカートが短すぎる」

しのぶ「?」

パンドラはこちらを向かず一生懸命作業をしている

しのぶ「・・・・」

パンドラ「この間買った服のことだ」

しのぶ「なんだっけ?」

パンドラ「お前の記憶の中で見た」

しのぶ「ああ、ゆきちゃんたちに薦められた服のことね?」

パンドラ「あれは、はしたない」

しのぶ「最近はあれくらいの長さがはやっているの」

パンドラ「・・・・・」

     「あ痛っ」とまた指を針で刺してしまっている

     「もうちょっとキレのいい針はないのか!?」とちょっと怒っている

しのぶ「・・・・あの・・・それはちょっと古い方・・・待ってて」

パンドラ「あー、勝手に使ってすまん」

しのぶ「んー、いいよー」と言いながら新しい方の裁縫箱をとりに奥にいき

絆創膏と消毒液も持ってきた

しのぶ「パン指出して」

パンドラ「ん?・・・なんだそれは」と言いながら指を出した

しのぶ「あーあー、いっぱい怪我をしてるじゃない」

パンドラ「再生できる、気にするな」と言ったがしのぶは消毒液をパンドラの指にかけた

しのぶ「絆創膏はやめとく?」「作業しにくくなるから」

パンドラ「ああ、なんだか知らないが再生できるから大丈夫だ」と言いながら

新しい方の裁縫箱から針を取り出し作業を再開した

しのぶ「何作ってるの?」

パンドラ「しのぶに似合う服だ」

しのぶ「え?」

    「どうして?」

パンドラ「私は裁縫が好きなだけだ」「特に理由はない」と言うがしのぶには

どう見ても慣れている手つきには見えなかった

しのぶ「バースで作れるのに」

パンドラ「バースで作ったものは本物の私の手作りの服にはならない」

     「だから意味がない」と言い糸を結び歯で糸を噛み切った

しのぶ「・・・・」とちょっと戸惑っている

パンドラはその服を大きく振りながら立ち上がり

しのぶに向かって「脱げ」と言った

しのぶ「え?」

パンドラ「・・・・・」脱ぐのを待っている

しのぶ「着るの?」

パンドラ「そうだサイズを調整する」

しのぶは「うん」と言うと上着とスカートを脱いだ

パンドラ「んー?しのぶ!」

     「胸が・・・ないんだな」

しのぶはちょっと怒った顔をして「これから大きくなるの!」

パンドラ「16だったな?」

しのぶ「う・・・うん」

パンドラ「・・・・・」と、それはどうだろうかと首をかしげている

しのぶ「なによ」と言いながらその服を着てみると全体的にゆるい感じだった

パンドラ「うーん」と難しい顔をしている

その服は足のすねまで丈のある落ち着いた紺色のワンピースだった

パンドラはしのぶの周りを回りながらウエストのところを背中の方で締め付けサイズを確認し

胸のところを見ながら頭を抱えていた

しのぶ「なによ」と口を尖らせながらいう

パンドラ肩甲骨のところで服を締め付けながら胸の方を見て「うーん」とうなっている

しのぶは口を尖らせたまま黙っている

パンドラ「良しわかった、脱げ」といった。

しのぶは指示に従い服を脱ぎさっき脱いだ制服を拾い上げ「着替えてくるね」と言って奥に行った

しのぶの部屋は拓也が来るので着替えたり下着を干したり出来るように

奥の方が後付の間仕切りとカーテンで仕切られている

パンドラ「しのぶー、この裁縫箱このまま借りてていいか?」

しのぶ「うーん」と奥から返事をし

    「どうして服をー?」

パンドラ「裁縫が好きだからだ」

しのぶ「ふふふふ、慣れてないみたいだけど」と笑う

パンドラ「久しぶりなだけだ」と顔を赤くする

しのぶは着替えを済ませ戻ってくると

しのぶ「パン」

パンドラ「ん?」

しのぶ「パンが体の中にいるときは安心なんだけど・・・」

    「ベットに体を置いて霊体でたまにでていくでしょ?」

パンドラ「ああ、そういう時は体は見られないようにちゃんと細工してある心配するな」

しのぶ「あの・・・ママは勝手に入ってこないからいいんだけど」

    「教会の人たちが・・・ちょっと心配」

パンドラ「はははははは」

     「私の魔法はそんなにやわじゃない、心配するな」

     「拓也とも存分にいちゃいちゃするがいい」

しのぶ「う~ん・・・・」

    「あの・・・」

パンドラ「別の場所におくことも出来るがしのぶの傍においておきたい」

しのぶ「私・・・・せまいの」

パンドラ「はぁ~?そうならはっきりそう言え!」と笑う

     「私はお前と違ってグラマーだからな」

     「わかった、出来るだけベットの端に寄せ壁に

     顔を押し付けていじけたように置いておこう」と笑う

しのぶ「そんな・・・」と苦笑い

パンドラ「はははははは、冗談だ」

     「しのぶがいつも着替えている下着とか干している部屋を仮ていいか?」

     「あそこにベットを自分で作る」

しのぶ「あんなところでいいの?」

パンドラ「しのぶの傍じゃなくなるくらいなら、あそこがいい」

    「魔法でどこかにフィールドを作って瞬間移動の魔方陣をリンクさせ、

    そちらに置くことも出来るが、私は瞬間移動の魔法陣が好きじゃない」

    「仕組みを知らない奴らは気軽に使っているが、知ってしまうと・・・ちょっとな」

しのぶ「ふーん・・・・でもちょっと・・あそこでは・・申し訳ないわ」

パンドラ「いや、居候だから気にするな」

     「でもたまに一緒に寝てくれ」

しのぶ「うん」

シーン♤別の魔法絡みの怪奇事件

   

チャイムが鳴り昼食の時間になると

敬子が拓也のところにやってきて

敬子「拓也君、拓也君の分もお弁当作ってきました」と言ってくる

拓也「いや、俺弁当持ってきてるから」というが

敬子「迷惑でしたか・・・?」と悲しそうにしている

そこにすかさずマリアがやってきて

マリア「昨日、敬子ちゃんがお弁当作ってきますって言ってたじゃない」といってくる

拓也「いや、いらないって言ったはずだけど」と反論すると敬子は泣きそうになっている

マリア「ひどーい!」

それにつられてクラスメイトたちも「ひでー、サイテーだなオメー」と好き勝手言ってくる

マリア「一緒に食べてあげなさいよー」

クラスメイト「そーだ、そーだ」「うらやましいぞコンチキショー」

拓也「まいったな・・・」と困りながらも敬子と一緒に食べることになった

弁当を食べ終わって敬子にお礼をいって、拓也は友達たちの元に戻っていく

その間敬子は大きく深々とお辞儀をしている

拓也の友達「かー、うらやましいねー」

拓也「んー」と困った顔をしている

友達「敬子ちゃん、かわいいじゃん」

   「しのぶちゃんと付き合ってないって言うんなら敬子ちゃんと付き合っちゃえばいいじゃん」

拓也「は?なんでそうなんだよ」

そんな話をしながらグランドに出て、みんなでサッカーをして遊んでいる

敬子たちもマリアに誘われてグラウンドでバレーをして遊んでいると

空から植木鉢が降ってきて敬子の肩に当たり敬子は悲鳴を上げて倒れこむ

マリア「なに?どうしたの?」と驚いて敬子に駆け寄る

一緒にバレーをしていた女子やサッカーをしていた拓也たちも駆け寄る

女子「空から植木鉢がおちてきたの!」と慌てふためいている

「はあ?」と男子たちは上を見上げるがグラウンドの真ん中なので上に何かがあるはずはない

マリア「うん、私も見た!空から降ってきたわ」

拓也「そんなことより早く保健室に連れて行こう」

当たったところが肩の端の方だったため大事に至らなかったが

頭に当たっていたらどうなっていたことかと、その事件は瞬く間に学校中の話題になった

まさる「空から植木鉢が降ってきたってさー、僕はしんじられないなー」

信子「でも、私の友達が現場に居合わせていて本当に見たっていってたわ」

ゆき「見間違いじゃないのー?」

ジョルジュ「なんだか魔法みたいな話だね」

まさる「ぶっ!魔法ってジョルジュらしくないこと言うんだなー」

信子「ジョルジュ君って意外と子供?」と二人で笑う

しかし、ゆきはうつむき、しのぶはジョルジュの方をじっと見ていた

ゆきは突然立ち上がり「ジョルジュちょっときて」とジョルジュを連れ出した

まさると信子はきょとんとしている

二人はしのぶの方を向いて「どうしたのかしら?」と言った

しのぶ「ん?わかんない」

ゆきはジョルジュと二人きりになると「どういうこと?」と尋ねた

ジョルジュ「言葉の意味そのままだよ」

ゆき「あなたが、かかわっているの?」

ジョルジュ「まさか、神に誓って関係ないと言おう」

ゆき「・・・・・・」

ジョルジュは困った顔をして「あのね、僕は教会に属しているから

    神に誓ってなんてそうやすやす言えないんだよ」と苦笑いを浮かべる

ゆき「・・そう」

ジョルジュ「それに、言い方は悪いがそんなことして僕に何の得があるんだい?」

ゆき「そ・・・そうね」と何とか納得した様子だった

 翌日 B組では昨日保健室で手当てをしてもらい肩を痛がっていたものの元気だったが

念のためにと病院にいっただけの敬子が休んでいた

それからしばらく敬子が学校に来ることはなかった

パンドラがくれた服

ここのところパンドラはしのぶの部屋でずっと裁縫をしていた

指は怪我だらけになっていた

しのぶ「ただいまー」

パンドラ「ああ、お帰り」と言いながら裁縫を続けている

しのぶ「パンお茶か何がいい?」と着替えながら

パンドラ「昨日の奴は苦い、おとといの紅茶がが良い」

     「ミルクは限界まで入れてくれ」

しのぶ「・・・・そうなの?限界がちょっとわからないけど・・・」

   「昨日のは私が作ったお茶、おいしくないけど体にいいの」

パンドラ「健康など、どうでもいい」

     「しのぶもあまり気にしなくて良い」

     「精々今のうちにおいしいものを飲み食べることだ」

しのぶ「じゃあ、入れてくるね」

パンドラ「あ、すまない」

     「あの味の薄いクッキー」

しのぶ「今はあれしかないの」

パンドラ「いや・・・全部食べてしまった」

しのぶ「えー!」

パンドラ「・・・・・」と申し訳なさそうな顔をして「あれはうまかった」

しのぶ「うん・・・・」とちょっと困った顔をしている

パンドラ「あ・・・バースで作ろうか?」

しのぶ「ああ、いいわ、宿題が終わったら作る」

    「あれはママ用なの、今日は遅くなるみたいだから大丈夫」

パンドラ「じゃあ、私の分も焼いてくれ」と照れながらいう

しのぶ「普通のも作れるけど・・・薄い方がいいの?」

パンドラ「焼いてくれるのか?」と嬉しそうにいいながら

     「甘いのは苦手だ、あれが良い」と言った

     「侘びとお礼に後でいいことを教えてやろう」

しのぶは着替え終わり「ふーん」と言いながら紅茶を入れに下に降りていった

パンドラは嬉しそうな顔をしながら布の切れ端を四角にに切っている

やがてしのぶが戻ってきて「おまたせー、こっちに置くね」と窓の傍のテーブルの方に置いた

しのぶ「今はお菓子なしよ」

パンドラは四角に切った布を手に持ちながらテーブルの方に移動した

パンドラは紅茶を見ながら「ミルクがもうちょっと多い方がいいな・・・」と言いしのぶの方を見ると

しのぶは細い眼をして何もいわずパンドラを見ている

パンドラ「いや・・・これでいい」としのぶの顔を見てミルクを足してもらうのをあきらめた

     「しのぶは良く働くな。私は働き者が好きだ」

     「のろいのがたまに傷だが・・」

しのぶ「えー、わたしのろい?」と不満そうな顔をして聞く

パンドラ「手はそんなにのろくない・・・歩くのが遅い」

しのぶ「う・・・うん」「そうかもしれない・・・」

パンドラ「問題なほどではない」とちょっと傷ついているようなので

紅茶を一口飲んだ後「さあ、良いことを教えてやろう」と胸をはり

パンドラ「格好良いペンタクルの出し方だ」

しのぶは興味なさそうな顔をしながらパンドラの方を見ている

パンドラ「魔術師ならいざと言うときのためにペンタクルを

      何種類かいつでも取り出せるところに忍ばせておく」

先ほどの四角に切った布を袖の中に入れるのをしのぶに見せる

パンドラ「こうやっておいて」と言いながら続けて

     「こうだ」と手を突き出すと四角い布がパンドラの手に抓まれて

     四角い形をしっかり出している ちょうど影絵の狐のときのような手の形

しのぶ「・・・・・」ちょっとあきれた顔をしている

パンドラ「この状態から・・・・」

     「こうだ!」といい手のひらを広げパーの状態にすると四角く広がった布の後ろにやった

     するとその四角い布は抓んでいないのにパーにした手に引っ付いているようになった

しのぶ「・・・・」

パンドラ「どうだ!」と自慢げにいう

しのぶ「・・・・」

パンドラ「これを一瞬でやるからもう一度見ていろ」とすばやく布を袖にしまい

     「よく見ておけよ」

     「いくぞ」

     「終わりだ!」と言ってさっきの動作を一瞬でやって見せた

しのぶ「・・・・」

パンドラ「どうだ!格好いいだろう」

しのぶ「それは威力がますの?」

パンドラ「いいや・・・・格好いいだけだ」

しのぶ「えー」

パンドラ「さあ、やってみろ」と四角い布をしのぶに渡した

しのぶ「格好いいだけなら、いいわ・・・」と布をテーブルに置いた

パンドラ「格好いいかどうかが重要だろ」

     「敵もこの格好良さに戦意を喪失する」

しのぶ「そうなかぁー」と苦笑いをしながら一連の動作を確認しながらやってみる

2.3回確認してから試しにすばやくやると成功した

パンドラ「うーん・・・」

しのぶ「今の成功じゃないの?」

パンドラ「台詞がないと迫力がない」

     「終わりだ!っていってみろ」

しのぶ「うう・・・それは、格好悪いと思う・・・」

パンドラ「ああ・・・そうか・・・私くらいの迫力がないと格好良くないかもしれない」

しのぶはあきれながら「パンも・・・さっきのはそんなに・・・」

パンドラ「おまえなー」とがっくりしている

     「まあ、いいわとりあえず覚えておけ」

しのぶ「うーん」と気のない返事をした

パンドラ「しのぶ、ちょっとあの服を着てみてくれ」

しのぶ「うん」と言いながら立ち上がり服の置いてある勉強机の方に向かい

    「胸のこと言ったら怒るからね」といい着替え始めた

パンドラ「姿見はあるのか?」

しのぶは服を着て乱れを直しながら「うん、下にあるー」

しのぶ「あ、ぴったし」「下に見に行ってきていい?」と尋ねる

パンドラ「ああ」と返事をし紅茶を口にする

しのぶは玄関の壁にかけられた姿見の前で一周ゆっくりと回りながら姿を確認すると

しのぶ「わあ、かわいい」

   「パンーこれかわいいー」とパンドラに聞こえるように言う

パンドラは部屋の中から「当たり前だ、私の才能は桁違いだ」

パンドラ「かわいくないはずがない」

しのぶ「でもこれは、外には着ていけないー」といいながら階段を上ってくる

パンドラ「なにー」と驚いている

しのぶ「だって、今の時代にはあわないんですものー」と部屋に帰ってきた

パンドラ「そうなのか?」と目を向いてしのぶの方を見る

しのぶ「みて」と言ってパンドラの前で一周くるりと回る

しのぶはとても嬉しそうにしている

それを見てパンドラは「かわいいな」「さすが私が作った服だ」

しのぶ「えー、そういう時は私をほめるものなのよ」と笑う

パンドラ「似合ってるぞ」「「お前は地味だからそういうのが似合う」と微笑む

しのぶ「もう」と膨れたあと満面の笑みにもどり

    「寝巻きにするね!」と言う

パンドラは笑いながらだが、がっかりするしぐさをし「おまえなー」と言った

パンドラ「寝巻きは駄目だ、これから腰の後ろにリボンをつける」

     「寝転んだらそれがつぶれる」

しのぶは、またゆっくり腰の後ろの方を見ながら回りながら「このままがいいー」

パンドラ「あの・・・・おまえ・・」と苦笑いしている

     「それとその服に合う髪の結い方もある、ちょっとこっちに座れ」と言いながら

椅子を面と向かうようにセットした

しのぶは言われたところに座り「んー?」と言う

パンドラ「この耳より前の横髪を三つ編みにする」と言いながらしのぶの髪をとる

しのぶ「あ、だめ」

    「くりんくりんの癖がついちゃう」

パンドラ「洗えば治る」

しのぶ「駄目」といいながらパンドラの胸に飛び込んだ

パンドラ「おまえなー」と苦笑い

しのぶはパンドラの胸の暖みを感じながら「ありがと、パン」「とってもうれしいわ」

パンドラ「あの・・・髪を・・・」

しのぶ「駄目」「こんなに手を怪我して作ってくれた・・・」「うれしい・・・」

パンドラ「わたしが鈍臭いみたいじゃないか!」と苦笑

     「さぁ、髪を結うぞ」

しのぶ「駄目」

パンドラ「はははははは」と高らかに笑う

     「おまえは手ごわいな」

     「さすがの私もお前には勝てない」

     「はははははははは」

数日経つと敬子の事件は噂は形を変えていた

「最近拓也にちょっかい出していたから、それを嫉妬した者の仕業じゃないか」というものだ

まさる「なんかさー、あの植木鉢の事件の被害者の子あれ以来ずっと休んでんだってなー」

    「でさー、植木鉢をぶつけた犯人って拓也のことが好きや奴で

    やきもち焼いてやったんじゃないかって」

ゆき「拓也も災難よねー、こんな事件に名前が出て」

信子「でも敬子って子最近本当に拓也君に付きまとってたらしいわよ」

   「勝手にお弁当作ってきたり」

   「無理やり一緒に帰ったり」

ジョルジュ「その噂には大きな欠点がありますよ、空から降ってきたって・・」

      「それはどう説明するんでしょうかね?」

信子「魔法!・・・でしょ」と笑う

ジョルジュ「ひどいなー」とからかわれている振りをしながら一緒に笑った

しのぶはその場では黙っていたが放課後ジョルジュとゆきに声をかける

ゆきとは表面上今までのように話をしているが自分の事を怖がっていて

二人きりで話せないため込み入った話は最近できていなかった

しのぶ「ジョルジュ君」

ジョルジュ「なんだい?」

しのぶ「植木鉢の事件のことはマリアさんがやってるんでしょ?」

ゆき「マリア?」

ジョルジュ「なぜそう思うんだい?」

しのぶ「なぜ答えないの?」

ゆき「マリアって・・・誰?」

ジョルジュ「僕は本当に何も関与していない」

しのぶ「答えて」

ジョルジュ「マリアが何をしているか本当に知らないし」

      「彼女が僕に報告する義務もないんだ」

しのぶ「まだ敬子さんは学校を休んでいるわ、まだ何かが起きているはず。やめさせて」

ジョルジュ「彼女がやっているのか僕は知らないと言っている」

しのぶ「マリアさんを問い詰めて、やめるように言って!」

ジョルジュ「乱暴な話だね」

      「マリアがやっているのかもしれないと思っているのと同じくらい

       君がやっているのかもしれないと思っている」

しのぶ「私はやっていないわ!」

ジョルジュ「マリアも、そう言うだろうね」

      「そういうことだよ」

しのぶ「・・・・」

    「貴方たちはあれ以来パンドラのことは何も言ってこない」

    「なにがしたいの?」

ジョルジュ「ん?パンドラを引き渡してくれるなら大歓迎だよ」

      「それが済めば僕たちはここからいなくなるだろう」

しのぶ「大体分かったわ・・・私を困らせてパンドラを引き渡さそうとしているのね」

ゆき「・・・しのぶ・・・この事件は貴方が起こしただなんて私は思わないわ」

   「でもね・・・何故魔女を引き渡さないのか・・・私には分からない」

ジョルジュ「そうだね、僕も何故パンドラを引き渡さないのか分からないよ」

しのぶ「パンにはそれとなくジョルジュ達に会ってみたら?って話しているわ」

ジョルジュ「そうかい、では私もマリアの方をそれとなく探ってみよう」

      「パンドラのことを是非説得してくださいね」

と言うとジョルジュは帰る支度をしに自分の席に戻った

それと一緒にゆきは「・・・私、しのぶのことが分からない・・」

   「あんなに知っていたはずなのに・・分からなくなってしまった」

   「・・・だから・・・怖いの・・・ごめん」と言いながらしのぶから離れていった

シーン●拓也が魔方陣を見たことを知るジョルジュ どんなの物だったか聞くが拓也教えない

 いつものように教室でみんなで話をしていると

マリア「しのぶー」

しのぶはまた何かを企んでいるのだろうと思いながらも呼びかけに応じる他ない

教室の入り口で待つマリアの方に行くとマリアは

マリア「今日も拓也君は貴方と帰らないわ、私と帰るの」

しのぶ「そう・・」とだけ答えた

マリア「だからね、今日図書室で待っていても拓也君はこないんだよ」とかわいく言った

しのぶ「わかったわ」と返事する

マリアはわざと少し間を空けて「しのぶそんなに怒らないで!」と大きな声で言い出す

マリア「私は拓也くんと一緒に敬子ちゃんのお見舞いに行くだけなの!」

マリア「しのぶが拓也君のこと好きなのは知ってるけど、そんなに怒らないで」

しのぶ「なにいってるの!やめて!」

クラスのみんなが驚いてこっちの方を見ている

マリアは小さな声で「私はマリアみんなに愛されるちょっとキュートな女の子」とつぶやく

しのぶはやられてしまったと思うが何もすることが出来ない

マリア「敬子ちゃんもね、拓也君のことが好きだからお見舞いに連れて行ったら

    喜ぶかなっと思っただけなの!」

マリア「だから、そんなにやきもち焼かないで!」

しのぶ「私何も言ってない!」と自分の席に戻り机に顔を伏せてしまう。

マリア「ごめんね、しのぶ。私悪気はなかったの・・・」と言って自分の教室に戻っていった

ゆきはこの間ジョルジュとしのぶと3人でした会話の中でマリアが何かを企んでるかもしれないと言うことを聞いていたので

ゆき「ちょっとマリアちゃん、オーバーにしゃべるところあるから

   しのぶはひどいことは言っていないと思う」とクラスのみんなに聞こえるように話し

しのぶをフォローした

 放課後、拓也はなんでこんなことになったかなーと困惑した顔をしながらもマリアと下校し

敬子の家に向かった

マリア「ねぇ、拓也君、私のことどう思う?」

拓也「はぁ?」

マリア「ねぇ?」

拓也「みんなから愛されるちょっとキュートな女の子」って感じかな

マリア「ふふふふふ」と喜びながら確実に術が効いていることを確認した

 敬子の家に着きチャイムを鳴らすと敬子のおかあさんが出てくる

玄関先でお母さんは困った顔をして「マリアちゃんはいいんだけどそちらの男の子は・・」

「ごめんなさいね、傷の方が少しおかしなことになっていて男の子には見られたくないみたいで」

マリア「ああ、この子は拓也君、サプライズで連れてきたんです。敬子もきっと喜ぶと思います」

と元気に答える

敬子の母はそのハツラツとした元気さに圧倒されて二人とも部屋に行くことを許可した

敬子の部屋のドアを開けると敬子はベットで布団を頭までかぶって横になっている

マリア「敬子ーマリアだよー」と元気に声をかける

敬子は布団から顔を出さないまま

敬子「うん、お見舞いありがとう。適当なところに座って」と意外と元気そうな感じで話して来る

マリア「よかったー元気そうだねー。」

敬子「うん、ぜんぜん元気。心配かけてごめんね」

拓也「そうかー、元気でよかったよ」

敬子「えーーーーーー!なになに?拓也君??」

   「やだ!駄目」

拓也「ごめんな、急に来ておばさんも男の子は・・ちょっとって感じだったんだけど」

マリアは敬子のほうに「敬子ー会いたかったよー」といいながら近寄り布団をめくりあげた

敬子「だめー!」と布団をつかみ返そうとするが

敬子の怪我をした方の肩から顔にかけて大きな青黒いあざが出来ているのが見てとれた

敬子は布団を取り返しまた頭から布団をかぶった

マリア「ご・・ごめんね敬子」

敬子「・・・・」

しばらく沈黙が続くが

敬子「ううん、いいのお見舞い来てくれてありがとうね」

   「でも、やっぱり見られたくないから、このままでごめんね」

拓也は、下手に声をかけても傷つけるだけかもしれないと思い何もいえなかった

マリアは布団の中に手をいれ敬子の手を探り握り締めた

マリア「痛みはだいじょうぶなの?」と心配そうに尋ねる

敬子「痛みは全然ないの・・・ただ、アザが・・・」

   「こんなのでは学校へはいけないわ・・」と寂しそうに言った

マリアは少しの間黙っていたが覚悟を決めたように

マリア「わかったわ、私が治してあげる」

敬子「え?」

拓也「はぁ?」

マリア「アザに文字のようなものが見えたわ」

    「敬子そうじゃない?」

敬子「う・・・うん、文字みたいなのがいっぱい・・」

マリア「そう・・・」

マリア「拓也君ちょっとドアの方向いていて」

拓也「はぁ?」

マリア「はやく!!」とせかす

拓也「ああ、わかった」とドアの方に向いた

マリア「拓也君はこっち向いてないから、ちょっと見せてくれる?」

敬子「う・・・うん」と言いゆっくりと拓也の方を確認しながら布団から出てくる

マリア「やっぱりそうだわ」

拓也「へ?なにが?」とこっちを向こうとするが

マリア・敬子「こっち向いちゃ駄目!」と叱られて

拓也「わかったよ!」とドアの方に向きなおす

マリア「これは呪いの魔方陣だわ」

拓也は「はあ?」と言い敬子は困惑の顔をしている

マリア「よく見て敬子、薄くだけど、ここが円になっていて、ほら外側にも」とアザをなぞる

    「文字や数字もある」

敬子「う・・うん・・・漫画とかで見たことがある魔方陣みたい・・・」

マリア「ううん、これは本物の魔方陣よ」

    「驚かないでね」と言い少し間を空けて

    「私、魔法使いなの」と言い出した

拓也「はぁああ?」とあきれたような声を出す

敬子もちょっと戸惑っているようだ

マリア「そういう反応だと思っていたわ」と苦笑いしながら

    「だから秘密にしてるの説明するの面倒だから」

    「信じなくてもいいわ、ここだけの話しにしといて」

    「とにかくこのアザを消すから」

    「論より証拠ね、エヘッ」と舌を出してかわいい顔をした

マリアは敬子の顔のアザに手を当てて「ちょっとだけ痛むけどガマンしてね」といって

なにやらブツブツと呪文と様なものを唱えている

痛みが伴い敬子は「うっ」と声を出す

マリア「痛い?大丈夫?」

敬子「大丈夫・・なんだかピリピリするだけ」

マリア「鏡ある?」

敬子は「うん」と答えベットの脇の引き出しから手鏡を取り出した

マリア「見て」

マリアに促され敬子が鏡を見るとマリアが手を当てた辺りのアザが消えている

敬子「あ、消えている!」

拓也「ええーーー!」と言いながらこちらを向こうとするが

マリア・敬子「まだ、向いちゃ駄目」と叱られてまたドアの方に向きなおし

頭をポリポリかいている

マリア「ちょっと痛いけどがんばって消そうね」と敬子に優しく言った

敬子「マリア」と涙目になりながらマリアの手を握り言った

マリアは再び敬子の顔に手を当ててブツブツ呪文を唱えている

敬子はピリピリするなかにも時折大きな痛みが走り「ううっ」と声を上げる

拓也「敬子大丈夫かー?」

敬子「うん・・・大丈夫」

拓也「がんばれー」

敬子「ありがとう」

拓也「マリアもがんばれー」

と言うと

呪文を唱えながら顔だけを縦に振った、拓也にはその仕草が見えていないので

敬子「マリアちゃんもがんばってくれてる」と代わりに返事した

敬子の顔のアザをとり終えるとマリアは汗だくになって敬子の上に倒れこんだ

マリア「ふぅー、拓也君もうこっち向いていいよー」

拓也は振り向き敬子のほうを見て「おおお、綺麗になくなってる」

敬子は手鏡に自分を映しだし「本当だ、全部消えている」と言ったが

「でも、髪がぐちゃぐちゃだわ」と言ってまた布団にもぐりこんだ

拓也「ははは、そんなの気にすんなよ」

   「それにしてもマリア汗だくだぞ大丈夫か?」

マリア「大丈夫じゃない」

拓也「えー」と言いながら敬子の上に倒れこんでいるマリアの方に歩いていくと

マリアはお尻の方のスカートを押さえて「パンツ見ないでね」と言った

拓也が「見るか!」と言うと敬子は布団の中で笑っている

それを聞いて拓也もマリアも笑い出した。

敬子の家を後にして拓也とマリア二人で家路を歩んでいる

拓也「それにしても敬子のアザ取れてよかったなー」

マリア「う・・うん、顔は取れたけど、まだまだ手は肘の方まであったし

    背中や脇・胸の方まであったわ」

    「まだまだ1週間くらいかかりそう」

    「服で隠れるから学校にはこれると思うけど」

拓也「そっかー」「汗だくになってたな、マリアすげー疲れんのか?」

マリア「んー?」

    「まさかとは思うけど魔法のこと知らないの?」

拓也「まさかも何も知るわけねーだろ」と苦笑い

マリア「そうなんだ・・・聞いてないんだ」

拓也「はぁ?」

マリア「しのぶも魔法使いなんだよ」

拓也「はぁああ?」

マリア「ふーん、聞いてなかったんだ・・・」

拓也「嘘付け」と笑う

マリア「嘘じゃないよ!」

    「ゆきちゃんも知ってるから聞いてみたら?」

拓也「本気で言ってんのか?」

マリア「何で私がそんな突拍子もない嘘言うのよ」と苦笑

マリアは拓也の方をまじまじと見て

「ゆきちゃんには話して、なんで拓也君には内緒にしてたんだろうね?」と言った

拓也は以前ゆきがしのぶの言えない秘密があると言っていたのを思い出して

そのことだったのかと考えていた

拓也「そういえば、しのぶの部屋で大きな魔方陣みたいなのを見たことあるなー」と言った

マリア「へぇー、どんなのだった?」

拓也「どんなのっていわれても、すんげー複雑なものが描いてあったからなー」

   「まぁ、あいついろんなこと研究してるから魔法陣なのかも良く俺には分からんけど」

マリア「へぇー」と、あのしのぶの結界の正体が知りたくてもっと聞きたかったが

あまりしつこいとおかしく思われそうなので、今日はそれ以上聞くことをあきらめた

シーン♤改ざんされた記憶

 次の日 昼休みになると

「しのぶー」と元気にゆきがしのぶに抱きついてくる

しのぶは昨日までと違うゆきに驚いたように

しのぶ「ゆきちゃん、どうしたの?」と尋ねる

ゆき「へ?なにが?」ときょとんとしている

しのぶ「・・・・」

ゆき「ねえ、今日天気がいいから外でお弁当食べない?」と誘う

しのぶ「うん・・・みんなは?」と尋ねると

ゆき「ん?そうだね・・・みんなも誘う?」と逆に尋ねてきた

しのぶ「う・・うん」

ゆき「じゃあ、一緒に誘いに行こう」と言って先に歩き始めた

しのぶがきょとんとしていると

ゆきは「はやく、おいでよー」と言う

しのぶ「うん」とゆきの後ろを歩くがゆきが自分を怖がる素振りがないことに違和感を感じた

ゆきは元気にジョルジュ・女子A・信子・まさるを誘い「さあ、行こう」とはしゃいで教室を出る

みんなも続いて出て行こうとするがしのぶは、その時すれ違いざまに

しのぶ「ジョルジュ君」と呼び止める

ジョルジュ「なんだい?」と言ったか言わないタイミングで

「はやくー置いていくぞー」とまさるが元気に言う

ジョルジュ「ああ、先に行っておいてくれ、すぐに追いかける」

まさる「おー」と返事をして出て行った

しのぶ「あなたがしたの?」

ジョルジュ「ん?」

しのぶ「ゆきちゃんの記憶を・・・書き換えた・・・」

ジョルジュ「君たち最近うまくいってない様だったからね・・」

     「その原因は僕にもある・・・」

しのぶ「戻して」

ジョルジュ「足は完全に治っている・・・不必要な記憶だ」

     「ただ君たちを不幸にする不必要な・・・」

しのぶ「いいえ、例え不幸であったとしても私たちの大切な記憶よ」

   「誰にも触られたくないわ」

ジョルジュ「君はそう思ってるのかもしれない」

     「でも、ゆきさんは本当にそれを望むといいきれるのかい?」

     「みただろ、いつもより溌剌としていたろう?」

しのぶ「事実を隠すことをわたしは許さない」

ジョルジュ「それは君のわがままだ」

     「パンドラのこともそうだが君は自分の思ったようにならないと気がすまない」

     「おとなしそうな顔をしてエゴイストなんだね」

     「君は個を重んじる傾向があるが僕は全体のことを考えている」

     「さあ、行こうあまり遅いとおかしく思われる」とみんなの行ったほうに歩いていった

 屋上でみんなでわいわいお弁当を食べている間もしのぶはずっと考え込んでいる

ゆき「しのぶ、どうしたの?」しのぶ「ちょっと話したいことがあるの、後で聞いてくれる?」

まさる「相談事なら何でも僕におまかせをー」と陽気に言う

しのぶ「ありがと、でもゆきちゃんに話したいことがあるの」

まさる「げー、ふられたー」ジョルジュ以外はみんな笑っている

まさる「じゃあ、そろそろ僕らは教室に戻るかー」といってゆきとしのぶを置いて帰り始める

ジョルジュ「トイレに行くから先に行くよ」と言ってみんなより先に屋上を後にした

ジョルジュは拓也のクラスに行き拓也に話しかける

誰にも聞かれないように小さな声で「ゆきさんとしのぶさんの様子がおかしいんだ」

「僕たちは席をはずすようにと言われて降りてきたんだが・・」

「最近あの二人はなんだかうまくいってないのは君も感じているだろ?・・・やっぱり心配だ」

「二人は屋上に居る行って見てきてあげてほしい」とささやいた

拓也はあわてて教室を飛び出し屋上に向かった

マリア「なに?・・なんか面白いことやってんの?」とジョルジュに聞く

ジョルジュ「・・・そうなるだろうね」と無表情に言った

 屋上で二人きりになるとゆきは「で、なに?」と、にこやかに尋ねた

しのぶ「そのまま座ってて」といいながらゆきの真正面に回りおでこをひっつけた

ゆきは赤くなりながら「なになに?」と少し慌てている

ゆきのおでこは熱くなり徐々に記憶を取り戻していく

ゆき「きゃーーーーーー!」

本当の記憶を取り戻した矢先しのぶが前に居ることに恐怖がよみがえり叫びだす

そこに拓也がやってきて「ゆきーーー!どうした!!」

ゆきは腰を抜かしたようにガクガクしている

ゆき「拓也助けてーーー!」と思わず声を出す

しのぶを押しのけゆきの肩ををつかみ「大丈夫か?」と尋ねるがゆきはまだ怯えている

しのぶ「ゆきちゃん」と悲しそうな顔をするが

ゆきは震えながら首を横に振る

拓也「しのぶ!ゆきになにをした?」

普段のゆきを知っている拓也にはゆきのこの怯えようは尋常じゃないものに思えた

しのぶ「拓ちゃん違うのこれは・・・」

拓也「なんだ、言えよ!」

いつもと違う怖い顔をした拓也を前にしてしのぶは口を小さくパクパクさせるものの言葉が出なかった

ひどく怯えるゆきをみて拓也はゆきの肩を抱きながら屋上から去っていった

一人屋上に残されたしのぶは座り込みおでこに手を当て

「ジョルジュが・・・ジョルジュの判断の方が正しかったの?」とつぶやき

ゆきと拓也との友情関係の亀裂が決定的なものになったと感じた

 あくる朝 しのぶは家の庭から道に出て拓也が来るのを待っていると

拓也がやってくる

しのぶ「拓ちゃんおはよう」とうつむきながら挨拶した

拓也は挨拶はせず「しのぶ・・・昨日のことを説明してくれ」と言ってきた

しのぶは「うん」と返事して学校の方に向かって歩きながら話そうとしたが

拓也がついてこないのに気づき拓也の方をもう一度見る

拓也「納得のいく説明がなければ、お前をゆきに近づけることは出来ない」

   「一緒に登校できない」

しのぶ「うん」

    「昨日屋上で何があったかと言うと」

    「ジョルジュ君に記憶を消されていたゆきちゃんの記憶を元に戻したの」

拓也は意味が分からないと言う顔をしている

しのぶ「あの・・・私・・・魔法が使えるの」

拓也「・・・やっぱりそうなのか・・・マリアがそう言っていた」

しのぶ「それでね、ゆきちゃんは私のことを少し怖がっていて」

    「記憶が戻った瞬間、私が目の前にいたから悲鳴を上げたんだと思うわ」

拓也「よくわからない、ジョルジュが記憶を消したとか・・ゆきがお前を怖がっているとか・・・」

   「理由が分からない」

しのぶ「今私のところにパンドラと言う魔女が来ているの」

    「その魔女を教会の人たちが捕まえようとしていて」

    「その教会の人たちって言うのがジョルジュとマリアなの」

拓也「ジョルジュとマリアって昔からここにいるだろう」

しのぶ「ううん、それはみんなが魔法をかけられて、そう思わされているだけ」

拓也「・・・にわかに信じられるような内容じゃない・・・・続けてくれ」

しのぶ「ジョルジュは多分ゆきちゃんの足に私がかけた魔法を見つけて」

    「ゆきちゃんに知り合ったの」「あの・・これはジョルジュ君達が学校に来る前」

    「ジョルジュ君達が学校に入ってきたのは本当は一ヶ月前ほどよ」

    「みんなは前から二人がいたかのように魔法で思わされているだけ」

拓也「おい!全然分からないぞ!」

しのぶ「ごめんなさい!」

    「わたし・・・話すのが下手だから・・・・」

拓也「いや・・・いい、ゆきが待っている・・・歩きながら話してくれ」

しのぶ「順番に話し直すわ・・・」

    「小学校3年生の時にゆきちゃんの足が動かなくなって」

    「お医者さんにもう治らないって言われて」

    「歩けなくなっていたのを覚えている?」

拓也「ああ」と歩きながら会話しているが拓也が自分と距離をとっているのが

しのぶはすごく気になっていた

しのぶ「それで、どこかで読んだ本の中に何でも治せる魔法のことが書いてあったのを思い出して」

    「それでゆきちゃんの足が治せないだろうかと、いっぱい調べて治す方法を見つけたの」

    「ゆきちゃんの足は私の魔法で治したの」

拓也「あれは医者の誤診だったってきいているが・・・・」

しのぶ「それは、このことは秘密にしてってゆきちゃんに頼んだから」

拓也「何故秘密にした」

しのぶ「・・・・誰も私のことを信じてくれない・・・また嘘つきっていわれるのが嫌だったから」

拓也「俺は・・・何故俺にも秘密にした」

しのぶ「拓ちゃんには話しても良かったんだけど、対価魔法は、足を治す代わりに

    何かを差し出さなければならないの・・・・」

拓也はゆきの待つところにつくまでに真相を聞きたかったので

「そうか、まぁそれはいい続けてくれ」と話をせかした

しのぶ「話は一ヶ月ほど前のことに戻るけど」

    「パパが大学から持って帰ってきた発掘されたばかりの本の中にパンドラが封印されていて」

    「それを私が呼び起こしたの」

拓也は本当にわけが分からないと言う顔をしているが、話を早く進めさせるため黙って聞くことにした

しのぶ「ジョルジュ君達が属している教会は大きな魔力を持った魔術師たちがおかしなことを

    しないように管理していてパンドラの大きな魔力を見つけてパンドラを探しにこの町に来たの」

    「パンドラは私と会ってすぐに結界を張って魔力を隠したから、

     そこらじゅうを探し回っていたんだと思う」

    「その時、ゆきちゃんの足に魔法の痕跡を見つけて、パンドラと関係あるんじゃないかと思った    んだと思う」

    「その後ゆきちゃんとジョルジュが私のところに来て

     パンドラを引き渡してくれって言ってきたの」

    「パンドラは昔、悪魔のような魔女と呼ばれていたから」

    「そのパンドラを私がジョルジュに渡さなかったから」

    「ゆきちゃんは私が悪魔と一緒にいると思って怖がっているんだと思うわ」

    「それでジョルジュはゆきちゃんが私のことを怖がっていて

    関係がおかしなことになってきているから、二人が元に戻れるようにって記憶を消したの」

    「でも、私は・・・人の記憶を魔法で操作することが許せなくて・・・」

    「昨日屋上でゆきちゃんの記憶を戻したの・・・」と言うとしのぶは話すのをやめた

拓也はしのぶの後ろを少し離れて歩きながら続きを待っていたが
しのぶが何も言わないので

拓也「終わりなのか?」

拓也「ならば駄目だ・・・お前が正しいとは考えられない」

   「本当にそれで終わりなのか?」と言った

しのぶは慌てて「パンドラは悪い人ではないのよ!」と付け加えた

拓也「ジョルジュが正しいと俺には思える」

しのぶ「私もジョルジュが正しかったのかもしれないと思っているわ・・・」

    「あの人は従順な教徒で誠実な人・・・」

    「私は立派な人じゃないわ・・・」

    「でも、ゆきちゃんが私のことを怖がっているのは誤解なの」

拓也「ああ・・そうかもしれないが、誤解を解く方法が思い当たらない」

   「だから・・・駄目だ」

しのぶは下を向いて歩くのをやめてしまう

拓也もしのぶの後ろで同じだけの距離をとったまま止まる

しのぶ「私の傍にきてくれないの?」

拓也は返事が出来ない

しのぶは「私の横を歩いてほしい」と拓也にねだった

拓也は額に手を当て苦悩の表情を浮かべながら

「行こう・・・遅刻する」としのぶを追い抜かして早足で歩き始めた

しのぶは一生懸命歩くがのろまなのでついて行くのに一苦労している

ゆきが待っている場所に到着すると

ゆき「おはよー、拓也しのぶー」と元気に挨拶してくる

拓也はゆきの背中を押し「すまん遅くなってしまった、急ごう遅刻する」とせかした

ゆき「えっ、ちょっとしのぶが・・・」

拓也「ゆき、お前はしのぶのことが怖いんじゃないのか?」

   「怖くないのなら怖くないと言ってくれ」と言いながらぐいぐいゆきを引っ張って歩いていく

   「ただ、本当のことを言ってくれ!」と念を押した

ゆき「昨日あんなに取り乱していたのは急だったから驚いただけ」

   「ただ・・・私分からないの・・・しのぶの事が・・・」

   「だから・・・二人きりになるのは怖い・・・」

   「でも、みんなと一緒なら大丈夫よ」

拓也「怖いんだな!」

ゆき「・・そんな・・・」

拓也「怖くないって言ってくれ!」

ゆき「・・・・・」

拓也「俺もしのぶのことが分からない!」

しのぶは息を切らせながら一生懸命歩き涙をためながら

しのぶ「いやだ」とつぶやき

    「やだー!」と大きな声で叫び

そこにしゃがみ込んで泣き出してしまった

ゆき「しのぶ!」と言ってしのぶの方に駆け寄ろうとするが

拓也「行くな!」と言ってゆきの腕をつかんだ

ゆき「そんなきついことを言っちゃだめよ!」

拓也「しのぶ、泣くな!約束だろう!」

しのぶ「う・・・うん」と涙をぬぐいながら立ち上がる

拓也「俺もジョルジュやマリアのことをお前が言ったことを前提として出来るだけ考えてみる

   だが、俺たちには魔法なんてわけが分からない、どうすることも出来ない。

   実際に感じて見て聞いたこと以外どうやったら信じることが出来る?」

   

   「だから、しのぶお前が証明しろ・・・お前は魔法が使えると言うなら、

   俺たちと違うことが出来るはず、お前に押し付けてるわけじゃない」

   「お前しかその術を持っていないんだ」

   「本当のことが分かるまで・・・一緒に登校したり帰るのはやめよう」

しのぶ「!」

拓也「また喧嘩になるのは嫌だから・・・」

ゆき「拓也!」

拓也はゆきの手を引いて再び早足で歩き始めた

しのぶと二人の距離はどんどん離れていった

ゆき「拓也、なんてひどいこと言うのよ!」

   「私は、しのぶが怖いのか・・・なんだか分からないだけなの」

   「しのぶの事が好きなの」

   「でも・・・分からないの!!」

拓也「俺もそうだ!」ときつい口調でいい

   「俺もしのぶのことが好きだ!」

   「信じてやりたい!」

   「でも分からない!!!」

   「考えるのは苦手だが、いっぱい考えるから時間をくれ!」

そういわれて、ゆきは拓也に従うことにした。

パンドラ「さあ、しっかり歩け」とパンドラの声がする

しのぶ「パン?」「どこ?」

パンドラ「今は霊体だ」「さあ、しっかり歩いて学校に行こう」

     「今日行かなければ明日もいけなくなる」

しのぶ「うん・・・」

パンドラ「よし、帰ったらいっぱい話そう」

     「じゃあ、帰ってくるのを待ってるぞ」

しのぶ「いや」

パンドラ「ん?」

しのぶ「傍にいて」

パンドラ「人のプライベートを覗くのは好きじゃない」

しのぶ「傍にいてほしいの」

パンドラ「そうか、なら今日は一緒にいてやろう」

しのぶが教室に到着し席に着くとゆきがやってきた

ゆき「ごめんね、しのぶ」

   「拓也も私も・・・少し考える時間がほしいの」

   「だから・・・本当にごめんね」・・と悲しそうにそして優しく言った

しのぶ「ううん・・ありがとうゆきちゃん」と答え、少しだけ元気を取り戻し

『がんばらないと駄目・・・』と自分に言い聞かせた

一方、拓也のクラスでは敬子が久々に登校してきていた

拓也「敬子、こられて良かったな」

敬子「ありがとう、拓也君」

マリア「今日も続きしにいくね、大丈夫?」

敬子「うん、マリアちゃんのほうこそ大丈夫?」

マリア「うむ、友達のために一肌脱ぐって決めたんだから」

    「拓也君もくるでしょ?」

拓也「え?俺部活昨日もサボったしな」

   「それに大勢で押しかけたら迷惑だろ・・・俺何も出来ないし」

マリア「そんな、冷たいこと言うの?」と大きく目を開いて拓也の方を見ながら

    「そんな冷たい人じゃないよね?」と言う

拓也「ええ、行くのは良いけど敬子迷惑だろ?」

敬子「ううん、ぜんぜん迷惑じゃないよ、ただドアの方向いといてもらうけど」と笑う

拓也「えー」

マリアはさらに顔を近づけ大きな眼を開いて「じゃあ、決まりね」と言う

拓也「わかったよ!」と返事した

 授業が始まり何時間かが経ったがパンドラの話しかけてこないので

パンドラが本当に傍にいてくれているのか心配になって頭の中で

「パンー」「パンーいるのー?」と呼びかけるが返事がない

どこかに行ってしまったのかもしれないと思い

強く「パン返事をして」と念じると

自分の心が体から外れたのを感じた

『あ・・・』

下を見ると机に座っている自分が見える

霊体になって少し透けている自分の姿を見てしのぶは驚いている

ジョルジュはしのぶの席の方から何かが揺れるのを感じとって

『なにか・・・きている』しのぶの席の方をじっと見ている

『魂が抜けている』『パンドラが来ているのか?』と勘付いた

しのぶが霊体になり辺りを見回していると校舎上のほうで

大の字になって寝ているパンドラを発見する

しのぶ「パン」「起きて!」

パンドラ「・・んん・・・」

     「ああ、寝てしまってたか・・・」

     「授業は終わったのか?」

しのぶ「ううん」

パンドラ「こらっ!ちゃんと授業を受けなきゃ駄目じゃないか」

     「私らの頃は勉強なんてしたくてもできなかったんだぞ!」

しのぶ「なに?やだ・・・おばあちゃんみたいなこと言わないで!」

パンドラ「なに!おばあちゃんだと!」

しのぶ「うふふふふふ」

パンドラ「笑うな」

     「それにしてもつまらない授業だったなー」

     「寝てしまったわ」

     「あんなの聞いてて面白いのか?」

しのぶ「ううん、面白くない」

パンドラ「ははははは、そうか」

ジョルジュ「やっと会えたね」と霊体のジョルジュがやって来て言う

しのぶ「!」

パンドラ「んーと、お前はジョルジュだったかな?」

ジョルジュ「ふーん、僕の名前を知っているんだ、光栄だよ」

パンドラ「しのぶと記憶を共有しているからな」

ジョルジュ「そうやって君は他人の知識を喰らって生きてきたんだろ」

パンドラ「人聞きの悪い言い方をするな」と笑う

     「そういわれているのはどんな文字で書かれた書物でも

     その内容を瞬時に読み取れるところから来ている」

ジョルジュ「さあ、どうだかな」

パンドラ「お前はそうやって、人の心を揺さぶる」

     「大方しのぶに私に対する不信感を抱かそうとしているのだろう」

     「だが、無駄だ。」

     「しのぶも私と同じ力を持っているからな」

     「チャクラの創りがお前たちとは違うんだよ」

しのぶ「??」

ジョルジュ「貴方のせいでしのぶさんが困ったことになっていますよ」

      「どうします?」

パンドラ「私のせいではなくお前たちのせいだろ!間違えるな!」

ジョルジュ「貴方を捕らえに来た私たちに・・・ですから貴方です」

パンドラ「頭の悪い発想だな」

            「教皇はルクツアーノがまだやっているのか?」

ジョルジュ「はい、知っているのですか?」

パンドラ「ああ、だから奴に来させろ」

     「お前たちと話をしても折り合いがつかない」

ジョルジュ「教皇から命を受けて私たちが来ているんですよ」

      「教皇様はお忙しいのです」

パンドラ「はははは、そうか。私にかまっていられないか」

     「ならもう放っておいてくれ、と伝えてくれ」

ジョルジュ「教皇様にお会いしたいのであれば、貴方をお連れしますが?」

パンドラ「誰が会いたいと言った」

     「わたしはあいつに用などない、用があるならそちらからこいと言っているのだ」

ジョルジュ「だから私がここに来ている」

パンドラ「ああ、もういい、もういい」

     「最初にお前と話をしても折り合いは着かないと言っただろう」

     「私が何かを企んでいたとしても」と言いかけ一旦やめ

     「ああ、しのぶ私は何も企んでないぞ」と念を押し

しのぶ「うん」

パンドラ「それなりの準備が必要になる」

     「それだけの組織を持っているんだから」

     「それから対応しても間に合うだろう!」と続けた

ジョルジュ「それより前に防ぎたいものですがね」

パンドラ「今お前たちがこの町に仕掛けを準備しているのと同じように」

     「時間がかかるだろ?」といい

     「はははははっ」と大笑いした

しのぶ「どういうこと!」

パンドラ「こいつらはそれが完成するまでの時間稼ぎと監視役さ」

ジョルジュ「違う!あれを発動させる前に説得したいと思っているんだ」

パンドラ「そうかい」

     「お前は本気でそう思ってるのかもしれない、だがルクツアーノはどう思っているのかな?」

     「ははははは」と笑いながら姿を消した

     「じゃあ、しのぶこいつに付きまとわれるといやだから、悪いけど帰るぞ」と声だけがする

ジョルジュ「逃げるのか!」と言うが返事はない

しのぶ「どういうことなの?」

ジョルジュ「とりあえず早く投降するように説得してくれ!」

しのぶ「ああいう感じの人なの」

    「悪い人じゃないでしょ?」

ジョルジュ「どこがだ!」

      「僕の一番嫌いなタイプだ」

シーン×第六チャクラ アージュニャー

しのぶは家に帰ると自分の部屋に駆けて入っていって

「パンー」とパンドラを呼んだ

するとパンドラが奥の自分の寝床から姿を現しいつもより静かな感じで

パンドラ「しのぶ、今日は早めに就寝しよう」

     「だから出来るだけ早く夕飯を済ませてお風呂に入り寝る準備をしなさい」

     「その準備が出来たら私を呼んでくれ」

     「私はそれまでの間休ませてもらう」

しのぶはパンドラと話がしたくて急いで帰ってきたので

少ししょんぼりしながら「どうしたの?・・疲れたの?」と聞いた

パンドラ「いや、これから疲れるんだ」と言って優しく両手でしのぶの頬を包み

自分の寝床のある奥の仕切りに戻っていった

しのぶ「?」「・・・これからって・・・?」

しのぶはパンドラに会いたくて出来るだけ早くすべてのことを済ませて寝巻きに着替え

しのぶ「パンー」と呼んだ

するとパンドラが現れてしのぶの髪をなでながら「ちゃんと乾かしたか?」

「風邪を引くぞ」と優しく言った

パンドラ「さあ、寝よう」としのぶを胸に抱き寄せてベットに倒れこんだ

しのぶ「え?パン寝てたんじゃないの?」

パンドラ「ああ、寝てたよ」

しのぶ「・・・・・また・・・寝るの?」

パンドラ「話をしながら寝よう・・・ヘビーな夜になる」

しのぶ「?」

パンドラ「私が話しをするから好きなときに寝ればいい」

しのぶはパンドラの温かい胸に抱かれながら「うん」と答え目をつぶった

パンドラ「じゃあ、まずお前は今チャクラが見えるか?」

しのぶ「?・・・見えないわ」

パンドラ「そうか・・・私は見える」

     「だから、お前にもきっと見える」

しのぶ「そうなの?」

パンドラ「ああ」

     「お前がどんな文字で書かれた本も読めるのは魔法とはまったく別のもう一つの力」

     「第六チャクラ アージュニャーの力なんだ」

     「第六チャクラはここにある」としのぶの額を指差した

しのぶ「ええ、本で読んだことがあるわ」

パンドラ「生まれたときから全開で開いていたのだろう」

     「それは私と同じだ」

しのぶ「そうなの?」

パンドラ「私もお前と同じようにどんな文字でも読むことが出来る」

     「まあ、読めると言うよりは内容が流れ込んでくるのだ」

しのぶ「うん」

パンドラ「例えば誰かに規制をかけられて内容が書き換えられていても」

     「それが書き換えられていること、そして真に書こうとされていたことまで分かる」

しのぶ「うん」

パンドラ「ここまでは私と同じだ」

     「ただ、しのぶの場合は異常に発達した第六チャクラが

     表現力を司る第五チャクラ ヴィシュダを圧迫し いびつに変形させられている」

     「だから、お前は人とうまく話せない」

パンドラ「第五チャクラは喉のところだ良く見ろ」

     「目で見るんじゃないぞ、目を閉じたままでいい」

しのぶ「見えないわ」

パンドラ「見えなければ治せない」

     「チャクラは自分でしか開けない」

     「本当は見えているはずだ」

     「目の近くの第六チャクラが明るすぎて見えなくなっているだけだ」

しのぶ「・・・・・」

パンドラ「しのぶ、自分の特異な能力で不幸を呼ぶだけではなく」

     「力を発揮してすべてを解決に導くべきだ」

     「そうでなければ悲しすぎる」

     「ゆきも拓也もお前を信じたい」

     「だけど今はお前のことが分からなくなっている」

     「それはお前に原因がある」

     「苦しんでいるのはお前だけではない」

しのぶ「ありがとう・・・でも・・・本当にそうなの?」と自信なさげに言う

パンドラ「お前を信じ愛したいという気持ちがあるから、あのように過剰な反応を示すのだ」

     「そうでなければ、他の人たちと同じようにお前にかかわらなければ良いだけだ」

     「お前のことを信じたいが他から入ってくる膨大な情報と

      お前から出てくる少なくいびつな情報を摺り合わせた時

      お前のことが分からなくなり苦しんでいる」

     「お前の両親もそうだ、愛してやまないお前をどう扱っていいのか分からなくて苦しんでいる」

     「お前は優等生だから 家の家事を手伝い学校の成績も優秀だ」

     「だから両親はお前にかける言葉を見つけられない」

     「例えお前が奇妙な行動をとっても なんて言葉をかけていいのか分からないんだ」

     「お前を取り巻く お前を愛する者たちが苦しんでいる」

     「その苦しみの原因はお前を核にして広がっている」

     「第六チャクラ アージュニャーそれは真実を見抜く力だ」

     「そのアージュニャーの力を持って真実を切り開き」

     「第五チャクラ ヴィシュダを使って、みんなに伝えなければならない」

     「例えお前の放った言葉に対してどんなに冷たい態度を示されてもだ」

     「真実を語れ」

     「伝えるんだ」

     「開きかけている」

     「はじめて出会ったときよりもお前はハキハキとものを言えるようになっている」

     「お前は変われる」

     「第五チャクラを開放し生まれ変われる」

     「私は今のお前のことが好きだ」

     「ぜんぜん違うお前に変わってしまうのは嫌だ」

     「しかし、これは成長だ」

     「成長し生まれ変わったお前は、きっと私の愛するしのぶなのだろう」

     「会いたい!」

     「成長したお前に!」

     「さあ、開け第五チャクラ ヴィシュダ」

パンドラはしのぶに寄り添い以前しのぶに預けたしのぶの胸にある宝石の上に手を当てて

しのぶの胸に押し当て優しく力をこめた

しのぶ「どうすればいいのか分からない・・・」

パンドラ「わかるさ・・・私は7つのチャクラすべてを開放している」

     「同じ力を持ったお前なら出来る」

     「でも今は5番目だけでいい」

しのぶ「これ・・・・これかしら・・・・」

パンドラ「お前が見つけたのなら、それなのだろう」

     「真実を見抜けるお前が見まごうことはない」

しのぶ「でもこれは・・・・硬くなってしまっていて開かないわ」

    「それにこんなにいびつな形をしている」

パンドラ「だから時にはお前の言葉や態度が人を傷つける」

しのぶは少し心当たりがあると考えていた

パンドラ「実はチャクラを開くのは簡単だ」

     「先生に『みんなに優しくしましょう。』と言われたとしよう」

     「今すぐにでも出来るような簡単なことだ」

     「だが、ほとんどの者はそれが出来ない」

     「それに似ている」

しのぶ『どういうこと!?』

    『簡単なのに出来ない・・・それは・・』

    『私がチャクラを開こうとしていないということなの?・・・』

    『そうなの?』『私が自分で閉じているっていうことなの?』

   『わかったわ!』『パンドラが言いたいこと』

   『第五チャクラは確かに第六チャクラに圧迫されて開きにくくなっているけど』

   『開かないわけではない』『開きにくいだけ』

   『だけどそのことをパンドラが言葉で私に伝えないことに意味があるのなら』

   『私の無意識の領域でそのことを行わなければならないからだわ!』

   『しまった!気づいてしまった』

   『無意識の領域を出てしまった!』

しのぶ「パン!」

    「駄目!失敗した」

パンドラ「慌てるな」

     「すまん、お前は頭がいい」

     「ちょっとヒントを与えすぎた」

     「だが、大丈夫だ」

     「私はそのことを知っていながら7つとも開けた」

しのぶ「望めばいいのかな・・・・」

パンドラ『聞くな・・・答えを知ってしまうと無意識の領域に入れない』とグッとしのぶを抱きしめる

しのぶ『パンが返事をしない・・・』『答えを知ってしまっては開くチャンスが減ってしまうんだわ』

    『考えたら駄目なのね!』『心の奥底からそれを願わなくてはならない』

    『簡単だけど難しい!』『考えてはいけないと思えば思うほど考えてしまう』

パンドラ「しのぶとこうしていると、とても幸せだ」

しのぶ「うん」

    「こうしてこのまま眠りたいわ」

パンドラ「ああ、好きなときに寝ればいい」

しのぶは考えてはいけないのだからと寝る事にした

パンドラ「では、ヒントを出すのはやめて」

     「違う話をしよう」

     「さっきの話と似ているが少し意味合いが違う」

     「例えばひどい猫背で格好悪い奴がいたとしよう」

     「がんばって背筋を伸ばせばちょっと疲れるだろうがいい姿勢を保つことも出来る」

     「みんなから背筋をちゃんと伸ばせよと言われている」

     「だけど当の本人はそれが恥ずかしくて出来ない」

     「なぜか」

     「普段やっていない背筋を伸ばすと言う行為を急に始めたら

     『何こいつ張り切ってんだろう』と思われるんじゃないかと思っているからだ」

     「だが実際にやってみたらその方が格好が良くて見苦しくないからほとんどのものは

     その方が良いじゃないかと、すんなり受け入れてくれる」

     「もしも、『なにこいつ急に張り切ってるんだ気持ち悪い』だとか言う奴がいたら

     そいつはもともとそいつのことが嫌いなんだ」

     「だから元の猫背になったからと言ってそいつに評価されることはない」

しのぶ「うん」

パンドラ「ああ、返事しなくて良いぞ。眠ればいい」

しのぶ「ううん」と首を横に振り

    「ちゃんと返事しなさいって注意されたの」と目をつむりながらだが微笑んだ

パンドラ「そうか・・・しのぶ・・・がんばってるんだな」と優しくしのぶの髪をなでた

     「でも、今日は返事しなくていい。好きなときに眠ればいいのだから・・・」

しのぶ「うん・・・」

    「パンが話すとパンの体が振動している・・・とてもいい音を放ちながら・・・」

パンドラは微笑みながら話を続けた

パンドラ「おとなしすぎて挨拶が出来ない子がいた」

     「その子はいつも挨拶しても『返事がなかったらどうしよう』だとか

     『聞き取ってもらえなければどうすればいいのだろうか』とか自信を持っていなかった」

     「いつもちゃんと挨拶をしなさいと怒られていた」

     「もしも、その子が勇気を振り絞って挨拶をし始めたらみんなはどう思うだろうか?」

     「例えばそれが声が震えていてとても立派なものとはいえないものでも」

     「こんなにおとなしそうな子が、がんばって挨拶をしてくれているんだ、と分かるはずだ」

     「誰も嫌な気はしない」

     「むしろ嬉しいくらいだ・・・」

     「簡単だけど難しい・・・・」

     「次は難しいけど簡単・・・・・」

     「ピアノのコンクールでいつも緊張してしまって実力がぜんぜん出せない子がいた」

    「肝心なときにいつも失敗して悲しい思いをしている女の子」

    「次のコンクールののチャンスがあってもまた失敗してしまうのかと怯えている」

    「緊張しないようにするのは難しいことだ」

    「緊張しないようしよう 考えれば考えるほど緊張する」

    「難しいけど簡単」

    「やらなければならないことは日々怠らず練習することだ」

    「練習することのみが自信を産む」

    「考えならなければならないのは、どうすれば緊張しないかではなく」

    「如何に練習することが大切か、と言うことだ」

    「すぐに結果は出ないだろうが」

    「それ以外に方法はない」

    「それでも尚あがり症で治らなくても」

    「コンクールで頭が真っ白になり本当に演奏したのか覚えていなくても」

    「演奏終了後 観客席から拍手をもらえるだろう」

    「もう体が覚えてしまっている」

と話している間にしのぶはすーすー寝息を立てて本当に寝てしまったようだ

パンドラ「無意識の領域で・・・演奏していたのだから・・・」と小さな声で言う

パンドラは寝ることはせずしのぶの第五チャクラを見つめながら

それが開くことを心のそこから願い

しのぶの胸の宝石に重ねた手に祈りを込めていた

それは何の効果もないことだと分かっていたが・・・・・・・

朝になりしのぶが目覚めるとまだパンドラはしのぶを胸に抱き

うつろではあるが起きていた

しのぶ「パン・・・おはよう」

パンドラ「おはよう、よく眠れたか?」

しのぶ「パン寝てないの?」

パンドラ「ああ、問題ない、どうせ何の用もない」

しのぶ「・・そう・・・ありがと」とうつむき自分の第五チャクラを見た

    「ごめんね・・・開かなかったわ」と寂しそうに言う

パンドラ「気にするな、少しだが大きくなっている」

しのぶ「・・・うん」

    「でも、パンドラが話してくれた意味と理由が全部分かった」

パンドラ「そうか」と優しくしのぶを見つめる

しのぶ「・・・・・・」

パンドラはしのぶの唇が動きそうになるのを見てしのぶの口に優しく手を当てた

何故唇に手を当てられたのかしのぶは分かっていたのでそれに従った

パンドラ「寝る!」

しのぶは起き上がりながら「今日はママがいるからここで寝ちゃ駄目よ」と言う

パンドラ「えー!ひどいなしのぶ」

しのぶは制服に着替えて部屋のドアを開けながら「じゃあ、行ってくる。示すね」と言う

パンドラ「バカ!言葉にするな、開くのが遅くなるぞ」と呆れ顔

     『そう示すんだ、それが無意識の領域を動かす』と満足げな顔をした

しのぶはママがいる仕事部屋にママの大好きな濃いコーヒーを入れて持っていく

しのぶ「ママ、おはよう」

ママ「あら、早いのね」

しのぶ「はい、濃いコーヒー」

ママ「わ、ありがと」

しのぶ「今日はそれ一杯だけね」

ママ「ぶー」

しのぶ「話があるの」「時間大丈夫?」

ママはコーヒーカップを口に当てたまましのぶの方を見て、いつもと違うと感じていた

ママ「時間は大丈夫だけど、なに?」と少し目が泳いでいる

しのぶはそのことに気づき『またわけの分からないこと言い出したら、

  どう返事したら言いのだろうか?』と思って困っているのだろうと申し訳なく感じていた

しのぶ「ママ最後まで聞いてね・・・それで返事はしなくてもいい」

ママ「なに?」とまだ目が泳いでいる

しのぶ「私変な子でしょ、変なこと言い出すし」

    「変わった子なの」

ママはきょとんとしている

しのぶ「だからね、この子は変な子だって思ってくれていいの」

ママ「そんなこと思ってないわ」

しのぶ「違うの、実際に変な子なの」

ママ「しのぶ!そんなこと言っちゃいけません」と珍しくしのぶのことを叱った

しのぶ「あの・・・最後まで聞いて」とちょっと困った顔をしながら言っう

    「ママを困らせようとして言ってるんじゃなくて本当のことを全部話したいから」

ママ「本当のこと?」

しのぶ「私のこと変な子だけど、どういう風に扱ったら良いのかパパもママの困ってる」

ママ「そんなことないわ」

しのぶは黙って首を振った

しのぶ「それはパパとママが悪いんじゃないの」

    「原因は間違いなく私にあって普通に考えたら間違いなく私がおかしいわ」

ママ「しのぶ!」とそれ以上言わせないように口を挟む

しのぶ「認めなければならない」「ママは学者さんでしょ、頭が良いんだから・・・・」

ママ「・・・・」

しのぶ「この間、学校から急に帰ってきて目を瞑ったまま部屋を歩き、

    手も触れず本を読み急に倒れた」

    「おかしくないはずがない」

    「でも、その行動にはちゃんとした理由があって・・・普通信じられない話だけど」

ママ「・・・・・」

しのぶ「だから、今までは・・・信じてもらえないだろうからって誰にも話してなかったの」

    「だけどね・・・本当のことを話すことにしたの」

    「そうでないと、パパとママを困らせ続けることになるから・・・・」

ママ「しのぶ・・・・」

しのぶ「これは本当のこと・・・・信じて貰うしかない・・・それ以外私には出来ない」

    「小さい頃から私は『光の玉』が見えるって言ってたでしょ、

    それはねマナが見えているってことなの」

    「マナは・・・大体分かるよね?」

ママ「え・・ええ」

しのぶ「それからね、読めるはずもない本を、私は読めるって言ってったでしょ」

    「それはね、私の第六チャクラが生まれつき大きく開いているからなの」

    「字を読むと言うよりは本の内容が流れ込んでくるの」

    「その大きく開いた6番目のチャクラの影響で

    人と話したりするために必要な5番目のチャクラがいびつに変形して上手にしゃべれない」

ママは、あまりにも突拍子のない話に唖然としている

しのぶ「何が言いたいかって言うと・・・一つは信じてほしいって言うことと」

    「もう一つは私を、私を変わり者として扱ってほしいの」

ママ「やめなさい!しのぶ」

しのぶは悲しそうな顔をしながら「ママどうしてそんなに困った顔をするの?」

「私の話すことで困らないで」

「私は本当に変わり者だからそれでいいのよ」

ママ「いい加減にしなさい!」

しのぶ「ママ、違うの!私は変わり者として立派に生きるっていっているのよ!」

    「変わり者なのに、変わり者じゃないように扱われても、どうにもできないのよ!」

パチンとママがしのぶの頬をたたく音がした後、二人はそのままの姿でしばらく動けなかった

ママに叩かれたのは初めてだった

しのぶはママの方にゆっくり向き直り悲しそうな顔をしながら歯を食いしばり

    「私話をするのが下手だから・・・余計に困らせてしまったのね・・」

    「信じてもらうしかないの・・・」

    「今のは嘘でしたって言って、今までどおりの生活に戻ったとしても

     ママたちは私の扱いに困るだけだわ」

   

    「困らせたくないから、話したの・・・・ごめんなさい・・・」

と言い泣きそうになるのをこらえながら部屋を出て行った。

ママはしのぶが子供の頃『本当のことを言ったのに噓つきだと言われたの!」と言って

大泣きしながら胸に飛び込んできた時のことを思い出していた

叩いてしまった自分の手を引っ込めもう片方の手でぎゅっと握りながら「ごめんなさい」

「パパもママもしのぶと話すとき困った顔をして貴方を傷つけてしまっていたのね」とつぶやき

その場に崩れ落ちた

しのぶはいつものように庭に出て椅子に腰掛け頭を抱え込んだ

『怖い』

『人と話すのが怖いわ』

『私が話すとみんな怒ってしまう』

『拓ちゃんにマリアのことだけでも伝えておこうと思っていたけど』

『きっと拓ちゃんは怒ってしまうわ』

『だって、私がマリアの悪口を言っているようにしか聞こえないはずだもの』

『駄目!話せない』

「例えお前の放った言葉に対してどんなに冷たい態度を示されてもだ」と

パンドラの言葉を思い出すが

『それが正しいって分かるけど・・・できないよ』と震えている

『きっとこの恐怖心が第5チャクラを閉ざしてるんだわ・・・・』

そう考えているうちに拓也が歩いてくるのが見える

『どうしよう!』

『今日話さなければ、きっと明日も話せない』

「元の猫背になったからと言ってそいつに評価されることはない」パンドラの言葉が浮かぶ

『パンドラにがっかりされたくない!』と思った瞬間

しのぶ「拓ちゃん」と声を出していた

『話さなければ』『もっと上手に』『どうするの?』『なんていえばいい?』

拓也は呼ばれてこちらの方を向いている

しのぶ「拓ちゃん1つだけ伝えたいことがあるの」

     『マリアの悪口に聞こえないように・・・・言葉を選んで』

    「マリアさんが使う魔法は」

拓也は黙ってこちらを見ている

しのぶ『そう・・・・伝えなければならない最小限で良いわ・・・』と考えながら

    「私はマリア みんなから愛されるちょっとキュートな女の子」

拓也は「え?」と眉をしかめながら『聞いたことがあるフレーズだ・・・』と考えている

しのぶはしかめっ面になっている拓也を見て声が出なくなってしまった

拓也は怖い顔をしてしまっていることに気づき表情を戻し「それで?」と優しめに言った

しのぶ「マリアさんは、人の気持ちと行動を操れる魔法を使える・・・・

     それを前提にして注意してみていてほしい」

拓也「ああ、分かった、そうしてみる」

   「じゃあ、先に行くけど気をつけて来いよ」と言って歩いていった

シーン☆怪奇事件の解決

拓也が教室に着くとマリアがやってきて

マリア「今日も敬子のとこ行くことになってるから拓也君もよろしくね」とかわいく言う

拓也「駄目!さすがにやばい」

   「部活3日も休んだらやばすぎる」

マリア「えー、1週間くらい休部届けだしてよー」

拓也「バカそんなの無理だし」

マリアは大きな目を開き敬子の方に顔を近づけ「敬子も来てほしいよね?」と尋ねると

敬子「うん、来てくれると嬉しい」

拓也「俺、ドアの方向いてるだけじゃん」

マリア「それでも拓也君がいると敬子は痛いのガマンできるしマリアも疲れるのがんばれる」

    「応援してほしいの!」と駄々をこねながら顔を近づけ大きく目を開く

拓也「あーあー、わかったよ」と返事してしまう

授業が始まると拓也は『まったくマリアは悪い奴じゃないんだけど、強引なんだよなー』と考えている

拓也『部活を3日も休むなんて熱が出ててもないわー』

   『・・・・・』

   『おかしい・・・・なんで俺は3日も休む・・・』

しのぶの『注意して観察してほしい』と言う言葉が思い出される

   『人の気持ちと行動を操れる・・・魔法』

   『魔法? 魔法なんて本当にある?ありえねー』

   『誰からも愛されるちょっとキュートな女の子・・・・』

   『あれはマリアに聞かれて俺が答えた台詞・・・しのぶが知っているはずがないんだが・・・』

   『まて・・・・分からない・・・・』

   『あーーー、俺って超バカだ・・・』

   『マリアは自ら魔法が使えるって言ったな・・・そういえば・・・』

   『うそだろ????』

   『なんだ!?おかしいぞ・・・・こんがらがる・・・』

授業が終わり休み時間になると拓也は敬子のところに行き

拓也「あー、ごめんやっぱり今日は行けないわ」

敬子「うん、大丈夫。部活そんなに休んでもらうの悪いし」

敬子が意外とあっさり承諾したので少し驚いていると

少し離れたところでそれを聞いていたマリアは『しのぶが何か入れ知恵したんだわ・・』

『あまり強引にやるとまずいわね』と思い、拓也と敬子の方に歩み寄り

マリア「そーなのー、拓也君、もう!がっかり」

    「だけど、仕方ないわ・・・部活がんばってね」とかわいく笑顔を作っていった

拓也『・・・やっぱ・・・俺の思い過ごしか・・・・』とマリアの笑顔を見ていると良い人にしか見えない

別の休み時間にしのぶが一人で廊下を歩いているとマリアが立っている

しのぶはマリアをやり過ごそうと下を向きながらマリアをよけて通ろうとした瞬間

マリアは力いっぱいしのぶの頬に平手を入れた

パチンと大きな音を立てた後しのぶはよろめいて その場に倒れた

マリア「やっぱりね」

しのぶは驚いてたたかれた頬を押さえながらマリアの方を見上げた

マリア「貴方の結界は魔法にしか効かないのね」

    「この間私の手がはじかれたのは貴方に暗示の魔法をかけようとしたから・・・」

    「なに?その目は・・・文句ある?」

しのぶは口をパクパクしているが言葉が出てこない

マリア「何貴方まともにしゃべれないの?」

しのぶ「・・・・・」

マリア「みっともない」

    「ひょろひょろじゃない」

    「貴方拓也に入れ知恵したでしょ」

    「私の魔法が一回やぶられたわ」

しのぶ「・・・・・」

マリア「しゃべりなさよ!」としのぶの足を蹴り上げた

しのぶ「やめて!」と恐怖にぶるぶると震えている

マリア「人でも呼べば?」

    「人払いの魔法をかけてあるから誰も来ないけどね」

しのぶ「なんで怒っているの?」と震えながら言う

マリア「ばっかじゃないの!」

    「今頃拓也に入れ知恵したからよ!」

    「なまいきなのよ!」

    「敬子の事件を起こしたら貴方はすぐ動くと思っていたのにほったらかしにして」

    「それで直接何もしないくせに今頃入れ知恵だなんて」

    「姑息なのよ」

しのぶ「わたしは・・・」

    「どうしたらいいのか分からなくて」

そういわれるとマリアはさらに激高してしのぶのスカートで隠れて見えないであろう太ももを

何度も踏みつけた

しのぶ「いやあああああ」

マリア「そのせいで敬子は1週間も休むはめになったのよ」

    「あなたのせい!」

しのぶ「私のせいじゃない・・・あなたがやったんでしょ・・」と小さな声で言う

マリア「ふん!昨日パンドラもそんな風に言ったらしいわね」

    「違うわ あ・な・た・のせい」

    「原因は私たちじゃない」

    「私たちはさっさとこの仕事を終えて帰りたいの!」

    「貴方たちのわがままでこんなことが起きているのよ!」

しのぶ『私がしゃべるとみんな怒るの・・・』

    『私が拓ちゃんにしゃべったから、この人はこんなに怒っている』

    『怖いわ・・・』

    『どうすればいいの?』

    『助けてパンドラ』

パンドラ『駄目だ!』

    『パン・・・いるの?』と言いながらゆっくり立ち上がりまわりを見渡し始めるしのぶ

マリア「なに?・・・あなた・・」と怪訝そうにしのぶの事を見る

しのぶ『私はこんなにも、弱い』

    『この人はとても危険だわ』

    『パン居るなら出てきて』と周りをみまわし手探りをしだす

マリア「気持ち悪い」

    「あなた本当に気持ち悪い子ね」

パンドラ『私はそこには居ない』

     『よく考えろしのぶ、私がそいつらを力で追い払うことはそんなに難しいことじゃない』

     『だが、それをしたら私の言っていることの正当性が失われる』

     『もしも私が力でそいつらに立ち向かうのなら、それは教会をつぶす迄終わらない』

しのぶ『それは・・・そう・・・』

    『でも、こんなに恐ろしい人と私一人で戦えと言うの?』

パンドラ『それは自分で決めなさい』

     『戦わないで済む方法もきっと見つかる』

     『ただ、身はちゃんと守れ、3重結界を持っているから安心していたんだが』

     『一般生活に支障をきたさないために魔力以外をはじかないようにしているのはわかるが』

     『一発目のビンタは仕方がないとしても2発目以降は発動すれば はじけたはずだ』

しのぶ『この人は抵抗すればきっともっと怒るわ』

パンドラ『だが、全部防げる』

     『ユニバースを破ることはそいつでは無理だ』

しのぶ『他の人に・・・きっと何かする』

パンドラ『しのぶ・・・』

しのぶ『?』

パンドラ『とりあえず今そいつをやり過ごせ』

     『お前はいま勘違いをしている』

     『原因はこちらにあると錯覚している』

     『原因はこっちではない教会の活動だ』

     『それが大前提だ』

     『真実を導く力で考えろ』

     『ユニバースを展開しろ』

     『これ以上お前が傷つけられたら私はそいつと戦わなくてはならなくなる!』

しのぶ『!』

マリア「本当みんなが言うとおり、魔法使いの私が見てもあなたはおかしいわ」

    「聞いての!あんた」とまたビンタをしようとした瞬間

マリアはしのぶのユニバースによって弾き飛ばされた

すぐに起き上がり怒りをあらわにして

マリア「おまえーーー!戦う気かーーー!」

    「この野良のできそこない魔女がーーー!」と魔法弾をいくつか放つが

ユニバースにすべてはじかれる

そこに魔力を感じ取ったジョルジュが慌ててやってきて「やめろマリア!」とマリアを抱きかかえ

ジョルジュ「しのぶさん教室に戻りなさい」と言う

しのぶはジョルジュが押さえ込んでいるうちに教室に向けて駆けていった

マリア「必ずめちゃくちゃにしてやるからなー!」と罵声を浴びせる

ジョルジュ「落ち着けマリア」「お前の方が強いのは分かっている、相手は袋のねずみだ」

そういわれるとマリアは少し落ち着きを取り戻し

マリア「あいつの結界の正体さえ分かれば」

ジョルジュ「ああ・・・硬い結界のようだ」

マリア「拓也があいつの大きな魔方陣を家で見たと言っていた・・・」

ジョルジュ「そうなのか?」

マリア「それを絶対に聞き出して、打ち破ってやる」

ジョルジュ「是非聞き出してもらいたいね」

教室に戻り授業が始まるとパンドラはまたしのぶに優しく語り掛けてきた

パンドラ『すまなかった、しのぶ・・・』

しのぶ『えっ?』

パンドラ『私は千年以上生きている、だからお前たちと時間の感じ方が違う』

しのぶ『・・・・うん』

パンドラ『お前にとっては一日一日が燃えるように激しい』

     『そのことを私は忘れてしまっていた』

しのぶ『ううん』

パンドラ『ただ、答えは自分で導き出してほしい』

     『私は私の言葉で人の心を操作するのが嫌なんだ』

しのぶ『え?』

パンドラ『そういいながらも、昨日お前の心を操作してしまっている』

しのぶ『私が第五チャクラを開きたいと思わせること?』

パンドラ『そうだ、すまない』

しのぶ『それは正しいことよ、謝らないで』

パンドラ『正しいことと思わせるように私が操作したのかもしれない』

しのぶ『違うわ私も正しいと思うもの』

パンドラ『ああ、そうであることを願っている』

     『私が正しいと思っていても結果が必ず良くなるとは限らない』

     『あの場合はもう拓也達と最悪の状態だったから・・・・これ以上悪くならないと判断した』

     『それなのに、またお前を苦しめてしまった』

しのぶ『パンが悪いんじゃないわ』

    『私が上手に出来ていないだけ』

パンドラ『母親に話せば母親にしかられ、拓也に話せばマリアを怒らせた』

しのぶ『私が・・・怖がって・・・ちゃんとできていないだけ・・・パンの判断はあっているわ』

パンドラ『必ずいい方向には進む・・・・だがそれがいつなのかは分からない』

     『はたして、その何時かを待つために今やるべきだったか、正直私には分からない』

     『だから私が操作するべきではなかった』

     『大きく間違っていれば助言はしよう』

     『しかし私は答えを教えない』

     『私の出した答えはお前の心を操作してしまう』

     『私はそれを好まない』

しのぶ『なぜ!パンのことは信頼しているわ!』

    『教えてほしいわ!』

    『パンお願いだから私を導いて』

パンドラ『駄目だ』

しのぶ『分からなくてつぶれてしまいそうなほど苦しいのに・・・なぜ?』

パンドラ『ああ、苦しいだろう』

     『私も若い頃の燃えるような日々を今思い出している』

   『苦しくて悲しくて・・・だが、最も輝いていた』

   『これからお前が千年の時を生きる魔女になったとしても

   今以上に苦しみと悲しみと、そして喜びをこんなにも感じられる時は二度と訪れない』

   『だから苦しくても自分で導き出す価値がある』

しのぶ『わからない・・・・・』

    『喜びだけを与えてくれとは言わないけど、導いてくれたら嬉しいわ、それでは駄目なの?』

パンドラ『その答えは私の本の詩の中に隠されている』

しのぶ『それも答えを教えてくれないの?』

パンドラ『答えを教えたらすべてが消えてしまう・・・これが私の導きだと考えてくれ』

しのぶ『答えを導き出したら聞いてくれる?』

パンドラ『ああ』

しのぶ『正解かどうか・・教えてくれるの?』

パンドラ『大きく外れていたら、それは違うとだけ言うだろう』

     『それ以外はお前の正解だ、私の正解とは違うかもしれない』

     『ただ、それは当たり前のことだ』

     『これが操作しないと言うことだ』

しのぶ『わかったわ。考える』

学校が終わりマリアは敬子の家で治療を行っていた

マリア「大丈夫、痛かったら遠慮なく言ってね」

敬子「本当にありがとうマリアちゃん」

マリア「アザは敬子ちゃんが、がんばってくれてるからもう2.3日で消せるよ」

敬子「本当にありがとうマリアがいなかったらどうなっていたことか」

マリア「でもこれで終わりじゃないわ」

敬子「え?」

マリア「犯人を突き止めないと、またいつ呪いをかけられるか分ったもんじゃない」

敬子「・・・・・」敬子はひどく不安な顔をしている

マリア「大丈夫、私がずっと敬子を守る、そして犯人を突き止めて見せるわ」

少し安心した顔で敬子は「ありがとう、マリア」と感謝でいっぱいだ

マリア「少ないけど、手がかりはあるの」

敬子「・・・そうなの?」と小さな声で言う

マリア「学校の中に私以外に魔法使いがいる、それは誰だか分からないけど」

    「私なりに考えて3つの手がかりを見つけたわ」

    「魔法使いは成績が優秀なはず、魔導書は学校の授業なんかよりずっと難しいから」

    「私も成績そこそこでしょ?」

敬子「うん、マリアちゃんクラスで一番だもんね」

マリア「そして変わり者扱いされていることが多い」

    「私は持ち前の明るさで何とかごまかしてるけど」

敬子「どういうこと?」

マリア「みんなが見えないものが見えるの・・・マナなんだけどね」

    「マナが見えない人には魔法は使えないわ」

    「マナがぶつかってきたり急に出てきたりしてびっくりしたりするから」

    「変わった行動をしてしまう」

敬子「ふーん」納得したような顔をしている

マリア「後は噂で拓也君のことが好きな人が敬子に嫉妬してやったんじゃないかって言われてる」

敬子「え?そうなの?」

マリア「あー、これは噂だけどね・・・・」

敬子「・・・・・・」と考えている

敬子「・・・・あの子は・・・そんなことしない・・・・」

マリア「ん?・・・何?」

    「心当たりでもあるの?」

敬子「いいえ・・・なんでもない・・・」と俯く

マリア『言え!私の口からでなくお前の口からその名が出ることに意味がある!』と思いながら

マリア「何でも話して・・・・手がかりが少しでも多く必要なの!」

敬子「ごめん!・・・私・・・・疑っちゃうなんて・・・きっと、私が嫉妬してるんだわ」と顔を背ける

マリア『いえ!』とさらに強く思いながら

    「その条件に当てはまる人がいるのね?」

    「教えて!・・・犯人と決め付けるわけじゃないから」

    「ただ、何か行動を起こさないと解決の糸口が見えてこない」と強く最後は優しく言った

敬子「じゃあ、・・・条件に当てはまるってだけよ・・・・絶対犯人じゃないと思う・・・おとなしい子だし」

マリア「うん」

敬子「マリアちゃんのお友達だから・・・本当に・・・条件に当てはまってるだけだから・・・」

マリア「ええ、分かってるわ」と優しく言う

敬子「沖斗さん・・・・・」

マリア『よっしゃー!』と心で叫びその嬉しさが顔に出ないように顔を作り

    「しのぶは・・・・しのぶは・・違うわ」と悲しそうな顔をしてみせる

敬子「ごめんなさい!私も違うと思う・・・私がやきもちを焼いているんだわ・・・・」

マリアは下を向いて考え込んでいるような真剣な顔をしながら黙っている

少し震えているようにも見える。だが実は

マリアは笑いそうになっている口を必死で敬子に見えないように下を向いて隠していた

マリア『チェックメイトよ・・・』『あなたは詰んだわ・・・・』『小生意気な野良の魔女が!』

    『明日、高らかにチェックメイトを告げてあげるわ!』

    『結界など破らずとも貴方を破滅に導くわ』

と笑うのをこらえて震えている

 しのぶが家に着きドアを開け「ただいま」と小さな声で言う

するとママがやってきて「お帰りしのぶ」と迎えに来てくれた

ママの目を見るとずっと泣いていたことがすぐにしのぶには分かった

ママは両手を弱弱しくしのぶの方に伸ばしてくるが

しのぶを触っても良いのか自信がない様子が読み取れた

ママ「朝は叩いたりしてごめんなさい」

しのぶは悲しそうな顔をしていつもとはまったく違うママを見て『また傷つけてしまっている』と

自分の言葉に恐怖感じている

しのぶは言葉を選ばなければならないと一生懸命考え

「謝らないで」と言ったが、間が開いてしまったため、よそよそしく感じられてしまう

ママのこちらに伸ばしていた手が力を失い下りていってしまう

『だめ・・・・どうして・・・どうして傷つけてしまうの』しのぶは苦悩している

「ママに叩かれたの初めてだったから・・・嬉しかったよ」と言う

ママは返事をせず固まったまま こちらを見ている

「ママ・・・叩いたりしてくれなかったから・・・叩いてもらえって嬉しかった」と

嬉しかったと言うことを念を押した

しかし、その思いは伝わらず

ママはその場に崩れ落ちるようにひざを着き泣き出してしまった

しのぶ「なぜ!?何故泣くの?」

    『なぜ泣いてしまったの?』『こんなに嬉しかったって伝えているのに!?』

    『叩いたりしてくれなかった・・・・・・がいけなかったの!?』

    「私の扱いで困らないで」

    「ママお願い!」

    「泣かないで!」

    「それは・・・・」『駄目言ってはいけない!』

    「私の言ったことを信じていないということなのよ」

    『だめ!感情に負けてはいけないのに』

    『これ以上話すともっと傷つけてしまう』と思い

しのぶは走って自分の部屋に駆け込んだ

ママはえんえん泣いていた

しのぶはベットに倒れこみ

抜け殻のパンドラの体にしがみつき

『本当に第5チャクラを開きたい』それが本当の私の答え

「パンの操作じゃない」

「本当の私の答え」と声を上げて苦悩する

パンドラ『私は今マギファスコミオの草原にいる』

     『慣れない肉体が重くて少々疲れてる』

     『しのぶ用事が済んだら来てほしい』

しのぶ『う・・・うん』 と返事をしたが

出来るだけ早く第5チャクラを開きたくて

沢山の問題解くため自問自答をはじめた

『どうやって解決に導くか』

『こんなに沢山考えなければならないことがあったのに』

『私は今まで何もしてこなかった』

『こんなに沢山やらなければならないことがあったのに』

『戦いを選べば何人いるとも分からない教会の者たちと戦い勝利し続けなければならない』

『それは不可能』

『パンドラが教皇に会いに行くのが最善の策』

『しかしそれはパンドラに頼ることになる 駄目だわ』

『あの魔法はマリアたち自身が放ち続けるタイプ』

『そうでなければ対応策があるのだが』

『放ち続けるタイプは追い払うしかない』

『しかし、放ち続けなくすれば良いのでは?』

『黒い光を弾き飛ばしたようにユニバースの中に入れればマナを中に入れないように出来る』

『マナを取り入れられなければ放ち続けることは出来ない』

『しかしそれでは私が傍にいるときしか出来ない』

『他人にかぶせるタイプは沢山あるが移動してそこから出られなくなるのが通常』

『かぶせたままで他人が動けるようにする結界・・・聞いたことがない』

『しかし、パンドラは私にも結界をかけてあると言っていた』

『パンドラと私を包んでいる結界・・・こんなに離れたりしているのに』

『どんな結界か知りたい』

『しかし、パンドラは教えてくれないはず』

『そもそも自分の結界の術式を教えるのはタブー』

『聞くこと自体がおこがましい』

『マナも遮断されていない』

『どうすればいい・・・・』

『そう・・・・コロンブスの卵・・・・』

『私がいつも疑問に思っていた・・・・』

『だから・・・できる・・・・・』

『探し回っている時間がない・・・』

『やるしかない・・・・』

と机に向かってなにやら調べものをしたりメモを取ったりしている

いつまで経ってもしのぶがこないのでパンドラは「しのぶー」「はやくこいー」と呼ぶ

しのぶ「パンがたくさん問題出すから・・・まだ一つも解けてないの」

パンドラ「そんなに根をつめてもよくないぞー」

しのぶ「パンが遊びたいだけでしょー」

パンドラ「子供みたいにいうな!」

しのぶ「とにかくちょっと待ってー」とカリカリと魔方陣を書き出した

しばらく集中して書いていると

パンドラ「へぇー」としのぶの真後ろから声がする

しのぶ「パン」

パンドラ「良いから続けろ」

しのぶ「人のプライベートを覗くのは趣味じゃないんじゃないの!」

パンドラ「だって、来てくれないから」

しのぶ「考えなければいけないことが沢山ある・・・パンの出した問題でしょ?」

パンドラ「かまってくれなかったらもう問題も出してやらないぞ」

しのぶ「今日はとりあえずこれだけは書かせて」

パンドラ「いや、先に・・・」

     「キスしてくれ!」

しのぶ「え?」「何言ってるの」

パンドラ「キス!」

しのぶ「パンってひょっとして女の人が好きなの?」

パンドラ「ああそうか・・・この国ではあまりしないのか・・・文化が違うんだな・・・」

しのぶ「そうね、パンは男の人が好きだった」

   「パンの彼氏2人知ってるから」と笑う

パンドラ「お前なー・・・恥ずかしいことを思い出させるな」と言いながら しのぶの紙をまた覗き込む

     「良いな・・・それでとりあえず動く」

     「陽数をもっと意識すればもっと強くなる」

しのぶ「陽数って奇数のことね」

パンドラ「ただ陽数を入れれば良いんじゃない」

     「陽数と陽数が2つ重なれば陰になってしまう」

     「混ざってしまうと動作はするが弱まる」「全部が陰になったらとまってしまう」

     「一箇所たりとも手をぬくな」

しのぶ「3ね・・・・3を3つ」

パンドラ「そうだ・・・3が3つで9・・・これが最大の陽数だ」

     「9一つよりも強力になる」

しのぶ「教えてくれるのね嬉しいわ」

パンドラ「私が答えを教えないと言った理由が分かれば

     何を答えないのかわかる・・・私の詩にヒントがある」

     「まぁ、今はそれをやれ」

しのぶ「読むのは得意だけど・・・書くのは難しいわ・・・」

パンドラ「魔方陣の本当の構造を理解している奴なんてほとんどいない」

     「ましてや自分でつくろうだなんて奴は・・・・」

しのぶ「コロンブスの卵・・・・誰がコロンブスなのかって・・・・そんな感じ」

    「昔からそう考えていた・・・」

パンドラ「だから・・・・できるはずと」「ははははは」

     「その魔法に私が名前をつけてやろう!」と格好良くポーズをとる

しのぶ「ん?いらない」

パンドラ「・・・・・。おまえなー、本当に第五チャクラ早く開けよ」

     「傷つくわ」

しのぶ「ふふふふ。で、なに?」

パンドラ「え?」

しのぶ「名前」

パンドラ「コールドジェイルだ」

しのぶ「・・・・・・・」

パンドラ「なんか言えよ」

しのぶ「コールドジェイル。覚えました」

パンドラ「問題よりチャクラを何とかしてくれ・・・・」

     

 次の朝、マリアは教室の自分の席に座り悲しそうな顔をして俯いている

マリア『さぁ、誰か来い!かわいいマリアがこんなにしょんぼりしてるんだぞ!』

    『さぁ、早く』と考えていると

クラスメイトが二人やってきて女子「マリアどうしたの?」

男子「お前がしょげてるなんてめずらしいなー」

マリア『まだだ!もっと集まって来い、かわいいマリアちゃんが泣きそうになっているぞ!』

それを見て敬子と拓也もやってきて

敬子は少し心当たりがあったのでマリアの方にそっと手をやり「ごめんね・・」と小さな声で言った

拓也「あ?・・・なんかあったのか?」

マリアは首を横に振り涙をこぼしている

何も話さないマリアを見て近くにいたクラスメイトが集まってきた

女子「具合悪いの?」男子「誰か保健室に連れっててやれよ」

マリアは声を振り絞って「大丈夫・・・体調は・・・大丈夫・・・」と言いながら泣いている

拓也「どうしたんだ・・・いわないと分からないぞ?」

敬子はマリアに顔を近づけ「ごめんね・・・・あんなことを言ったから・・・」

マリアは強く首を横に振りながら「違うの!」と少し大きめの声でいい

「敬子が悪いんじゃないの・・・」とさびしそうな顔をしていった

女子「どうしたの?なにかあったの・・・・」

敬子「違うから!・・・絶対に違うから・・・私・・・」と励ますように言う

マリア「私もそう思いたい!」と敬子が下手なことを言わないように遮った

    「敬子ちゃんが条件にあっているって言っていた・・・・」

    『聞いとけよ間抜けども、ここがミソな!』と考えながら

    「それよりも、もう一つ知ってしまったの・・・」

敬子「・・・・え・・・?」と愕然としている

拓也「条件にあってる?・・・なんだ?・・・」とマリアを見るが何も言わないので敬子に

   「何だ・・言えよ」といった

敬子は首を横に振りながら後ずさり「・・・だめ・・・・」と言い

後ろの椅子に足が絡まり倒れてしまう

クラスメイト「だいじょうぶ!?」「二人ともどうしちゃったんだ!!?」と騒ぎ始めている

拓也「マリア!ちゃんといえ・・・・言わないと何も分からない」とせきたてる

マリア「だめ・・・・私は・・・・・」

    「私は友達だから・・・だめ・・・・」

   「言えない!」といって両手で顔を抑え机に倒れこみ泣き出す

   『私は一抜け言えないよ、ふふふふ』『敬子貴方が言ってね』『それが重要』

と思いながら、エンエン泣いている

敬子はクラスメイトみんなが自分の方を見て「どうしたんだ言えよ」と言っているような錯覚を覚え

過呼吸になって、ハァハァ言っている

女子たちは敬子に駆け寄り「大丈夫!?」と声をかけているのだが敬子には分からない

そこにダメ押しで男子が「敬子、言えよ」という

敬子「・・・犯人の・・・・犯人の・・・」

男子が「んー?」と言っただけなのだが、みんなが迫ってきているような錯覚が敬子を襲う

敬子「・・・犯人の・・・条件・・・」

クラスメイト全員が口々に「犯人の条件?」「敬子を怪我させた犯人?」と口々に話す

普段おとなしい敬子はみんなに一斉に見られてパニックになっている

敬子「・・違う・・・違う・・・ごめんなさい・・・あんなに・・・・・おとなしい子が・・・そんなこと・・・」と

途切れ途切れに言っている

敬子「・・・ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・」と疑ってしまったことを誤っている

しかしみんなには怯えて謝っているようにしか見えない

クラスメイト「犯人がわかったの?」「誰なの?」「みんながついてるよ、そんなに怯えないで」

       「大丈夫よ!」

拓也「敬子!しっかりしろ」と敬子に近づく

敬子「だめ!」と拓也にだけはそのことを聞かれたくなくて拒絶した

拓也「ど・・・どうしたんだ!」

クラスメイト「おとなしい子・・・」「マリアの友達・・・」

       「敬子に嫉妬していた子・・・・」「拓也のことが好きな奴」

        「沖斗」と誰かが言ったとたん

敬子は「いやーーーーー!」と耳をふさいで体を縮めて丸くなった

    それは疑ってしまったことを拓也に知られたくなかったと言う感情だったのだが

みんなにはその名前を聞いて恐怖しているようにしか見えない

クラスメイト「・・・あんなおとなしい奴が?」「あの子はそんなことしないでしょ・・」

       「いや、おとなしいからこういうことしたんじゃね?」

       「元気な奴なら直接くるだろ」

       「おとなしい奴はキレると怖いからなー」

       「あいつちょっと変わってるし」「やりかねないな」と好きなことを言っている

拓也「バカヤロー!」「しのぶがそんなことするわけねーだろー!」と力いっぱい怒鳴った

それはクラスメイトに対してのものだったのだが

敬子は怒られたと思って泣き出してしまった

マリアは顔を伏せて泣いているように体を震わせていたが本当は笑っていた。

噂は瞬く間に学校中に広がった

「この間の植木鉢の犯人 沖斗なんだって!」「うそだろ!あんなおとなしい奴が」

「敬子が沖斗の名前を聞いて、腰をぬかしてぶるぶる震えだしたんだってよ」

「しのぶちゃんかわいそうに変な噂になって」

「証拠でもあんのかよ?」

「証拠はマリアが持っているらしい」「でも友達だから言えないって・・・」

「沖斗が犯人!」

一方洋介のクラスC組でもこの噂で持ちきりだ

C組クラスメイト「沖斗が犯人だって・・・」

          「マジかよー」

          「あいつ変わってるからなー、こえー」と好き勝手なことを言っている

洋介「はははははは」

   「馬鹿馬鹿しい」

   「デマだぜー」と笑い飛ばす

クラスメイト「でもなー、マリアって言う子が証拠持ってるんだってよ」

洋介「はははははは」

   「マリアってだれ?」

クラスメイト「いや・・・しらね」

洋介「あんなにおとなしい沖斗のことでもみんな知ってるのに」

   「マリアなんてみんな知らんっていうしな」

クラスメイト「・・・ああ、そんな気もする・・・」

洋介「それに証拠ってなによ?」

   「誰に聞いても知らない」

   「ばかばかしー」と大笑いする

   「沖斗はかわいくて優しい子だよー」

   「絶対ないわー」とクラスみんなに聞こえるような大きな声で宣言した

 いろんなひそひそ話が聞こえてくるが、しのぶは下を向いてやり過ごすしかなかった

マリアがしのぶのクラスに泣きそうな顔をしてやってくる

男子「おい・・・マリアだ・・・」

   「なんだ?・・・」とひそひそと話している

ゆきたちもどうしたらいいのかわからずマリアの方を見て観察している

マリアはしのぶの近くには誰もいないことを確認してしのぶの席に近寄り

しのぶの耳元で泣きそうな顔をしながら しのぶにしか聞こえないように話す

クラスメイトのほとんどが「何が起きるんだ?」と関心を寄せて見ている

マリア泣きそうな顔をしているが言葉の内容はまったく違うものだった

マリア「チェックメイト」

しのぶはマリアの方を向かない

マリア「あなたは詰んだわ、終わりよ」

しのぶ「・・・・・・」

マリア「何澄ました顔をしているの」

    「本当は泣きそうなくせに」

    「がんばってみんなに言い訳でもしなさい」

    「嫉妬に狂ってわめき散らしてるようにしか見えないでしょうけど」

    「それに、貴方嘘つきですもんね」

    「誰も貴方の言うことなんか信じない」

    「私の勝ちよ」

    「ざまあみろ!」

しのぶはやっとマリアの方を向いて「それでもパンドラはでてこない」

    「貴方たちはいつまでここにいるの?」

マリア「なにそれ?反撃したつもりなの?」

    「おもわず吹いちゃいそうになったじゃない」

    「せっかく悲しそうな顔の演技をしているのに」

    「貴方は一生、犯人なの」

    「たとえ私達がいなくなったとしてもね」

    「もう一度言うわよ」

    「貴方の言うことを誰も信じない」

    「貴方は嘘つきだから」

しのぶ「貴方は分かって言ってるのか、本当に知らないのか分からないけど」

   「その術は放ち続けなければ消えてしまうのよ」

マリア「知ってるに決まってるでしょ野良の魔女が!」

    「それくらいの細工が出来ないと思ってんの?大バカが」と言いながら

悲しい顔を作るのが限界に近づいていた

しのぶ「あなたにそれは出来ないわ」

マリア「はぁ?」と言うか言わないかでマリアは気が付いた

    『マナが見えない!』

    「お前何をした」

しのぶ「私は何もしていない」

    「あなたが私に近づいてしまっただけ」

    「直にみんなあなたのことを忘れるわ」

マリア「毎日話したクラスの奴らは私のことを覚えている」

    「この事件のことも」

しのぶ「・・・・・」

    「あなた・・・やっぱり呪文を読んでいるだけなのね」

    「意味を理解していない」

    「陽と陽が重なって陰になって打ち消されるように仕込まれているのよ」

    「そうでなければ、いなくなった時の教会がしなければならない後始末が大変でしょ?」

マリア「嘘をつくな!嘘つきが!」

しのぶ「そう言っている事が、貴方が術の記述方法を理解していない証拠だわ」

    「貴方は作られた術を使っているだけなの」

マリア「誰だってそうだろうが!」

しのぶ「では、誰が術を作ったの?」

マリア「・・・・・!」

しのぶ「貴方は使われていただけなのよ」

マリア「!!!!」

しのぶ「早く出て行った方がいい」

    「知らない人が家の制服を着てうろうろしてるって噂になるわ」

マリア『まだだ!ジョルジュに引き継げばいい』と思いながら

    「しのぶ!どうしてなの!・・どうしてなのー!」と泣きながら教室を出て行った

マリアは走りながら『ジョルジュ!早く!屋上に来てくれ!』と念話でジョルジュに助けを呼ぶ

しのぶとマリアの会話をずっと見ていたジョルジュは何かあったとすぐ分かり

席を立って屋上に向かった

ジョルジュは屋上に上がってきてマリアには構わずきょろきょろと辺りを探っている

マリア「ジョルジュ!やられた」

ジョルジュは屋上にすえられたプランターを持ち上げ、その裏に魔方陣を張りながら「そのようだね」

      「君からまったく魔力を感じない」

マリア「なにを私はされた?」

ジョルジュ「まあ、待て」

      「マリアが今まで放っていた魔法を維持する魔方陣を貼った」

      「しかし これは見つけられ破られてしまえばすぐに無効になる」

      「しのぶさんと私は同じクラスだ出来るだけ監視はするが」

      「マリアもこれを死守するんだ」

マリア「ええ、分かったわ」

ジョルジュ「しのぶさんはすぐにこれを見つけるだろう」

      「だが魔方陣は何枚もある・・・・破られたらすぐに報告してくれ」

マリア「ええ」

ジョルジュ「あと、拓也君からしのぶさんの魔方陣に何が描かれていたか聞き出すんだ」

マリア「・・・・やってみるわ・・・ただ、少し難しい」

    「一度魔法を破られている」

ジョルジュ「どの道、君は新たに魔法を使えない」

      「友達として接して聞き出すしかない」

マリア「わかったけど・・・あいつがかけた魔法を解いて!」

ジョルジュ「ああ・・・・そうしてやりたいが」

      「うっすらとしか見えない」

      「マリアの周りで・・・・マナが凍っているように見える・・・」

      「見たこともない魔法だ・・・・」

      「調べてみるが・・・とにかく今は無理だ・・・・」

パンドラ「はははははははは」と笑いながら空をクルクルと霊体で飛んでいる

ジョルジュ「パンドラ!」

マリア「あの女!パンドラは出てこないって言っていたのに

    早速おでましかい!」と怒りをあらわにする

パンドラ「しのぶに呼ばれてきたんじゃないぞー」

     「私は自由だ」

     「しのぶは私を縛るようなことはしない」

マリア「同じことだろうが!」

パンドラ「全然ちがうだろ・・・もしかして馬鹿なの?」とマリアにいいジョルジュに向かって

     「しのぶがそいつにかけた魔法は調べても無駄だぞ」

     「どのグリモワールにも記されていない」

     「昨晩しのぶが作ったものだからな」

     「名前はコールドジェイル・・・私が名前をつけてあげた」と自慢げにいい

     「今それを説く方法など存在しない」

ジョルジュ「そんなことが出来るわけがないだろう!」

パンドラ「本当のことだ、私の目の前で描いていた」

ジョルジュ「お前が教えたのか!?」

パンドラ「いいや、私も驚いた」

     「これはしのぶが言っていたことだけどコロンブスの卵だ」

     「しのぶがコロンブスでお前たちは招かれた間抜けな客だ」

ジョルジュ「だれが、魔法を作ったのか・・と言うことが言いたいのか?」

パンドラ「そうだ、お前たちが今使っている魔法は誰が作った?」

     「すなわち、作れると言うことだ」

ジョルジュ「昔はあったのかもしれないがそんな資料はもうどこにも残ってなどいない!」

パンドラ「では、その資料は誰が作った?」

     「すべての理を理解していれば簡単ではないが作ることは出来る」

     「だが、しのぶの場合はそうではない」

     「すべての理を理解するためには7つのチャクラをすべて開かなければならない」

     「あいつの場合は逆からやっているのだ」

     「そのことに私は驚いている」

     「想像の中で作り上げたものの中に理を突っ込んでいっていた」

     「尋常じゃない頭をしている」

ジョルジュ「お前が教えたに違いない」

パンドラ「いいや、陽の使い方だけは教えた」

     「だから、恐ろしく強力になっている」と笑う

     「だがそれを教えなくてもちゃんと動くものを作っていた」

     「下手に陽を入れると打ち消してしまう」

     「だが、しのぶなら出来ると思った」

     「あいつの頭の中を覗いてみたくなって教えた」

     「間違えて弱くなってしまっても教えないつもりだった」

     「私が教えた理由はその魔法を強くするためではなく」

     「しのぶの頭の中が見たかったからなだけだ」

     「何も教えてなくても十分お前たちでははずせない魔法だ」

     「私を恨むなよ」

マリア「・・・陽・・ってなに?・・・あいつもそんなことを言っていた・・・

    陰になって打ち消すように仕込まれているって」

ジョルジュ「数字だ・・奇数の3とか5とかのことだ、縁起がいいとされている」

パンドラ「縁起とか言うそんなつまらないものではない、もっと神聖で無限なる物だ」

     「あと数字ではない数だ」

ジョルジュ「同じことだ」

パンドラ「数字は字だ、3と一つ書けばそれは1だ これ以上お前には教えない」

ジョルジュ「そんなことを教えてほしいなどと思っていない」

      「君はしのぶさんが大変なことになっているのは知ってるね?」

パンドラ「さあ、知らないな」

     「私はしのぶに頼まれもせずにつけ回したりするほど野暮じゃない」

     「お前たちの仲間が一生懸命仕掛けている魔法を見に行ってきた帰りさ」

     「あれは確かメビウスとかいうやつだなー」

ジョルジュ「彼女は孤立した!一生敬子さんを怪我させた犯人として生きることになる」

      「君が投降すれば、私がしのぶさんの潔白を証明し事件を闇に葬り去ることもできるが」

      「どうする?」

パンドラ「私もお前たちをボコボコにぶっ潰し、お前たちが犯人だったって証明できる」

     「だが、そんなことはしない」

ジョルジュ「しのぶさんが苦しんでも構わないというのか?」

パンドラ「私が苦しめてるんじゃない」「お前たちがやっている」

ジョルジュ「君がしのぶさんの前に現れたからだろうが!」

      「しのぶさんは投降を進めた、だが君はそれを断った、だからこうなっている!」

パンドラ「全然違う」

     「私がしのぶの前に現れ、しのぶと楽しく暮らすはずだった」

     「そこにお前たちがやってきてしのぶをでっち上げの事件の犯人に仕立て上げ

     苦しめている・・・が正しい」と言いながらクルクル回って楽しそうに空を飛んでいる

ジョルジュ「勝手な言い分だ!悪魔と呼ばれた魔女を野放しになど出来るはずないだろう」

パンドラ「そうだろうなー、だからお前たち教会の活動を正義なのかもしれないと

      ある一定の理解を示している」

     「だから私はお前たちに攻撃をしない、気づいてなかったのか?」

ジョルジュ「では、何故投降しない!?」

パンドラ「なぜ投降しなければならない!?」

ジョルジュ「つまらない問答はやめろ!」と珍しく声を荒げる

パンドラは優しく「落ち着け」

     「ジョルジュ、私はお前をまともだと思っている」

     「だからお前に話しかける」

     「その女とは話さない」

ジョルジュ「言い分を言え!いつまでものらりくらりとされていては、話が進まない!」

パンドラ「お前たちは大変なことをしてしまった」

ジョルジュ「・・・」

パンドラ「私を捉えるために一人の少女の人生を台無しにしてしまった」

     「それが・・・正義なのか?」

ジョルジュ「君がごてていたからだ!」

パンドラ「違うだろ・・・お前は本当は分かっているはず」

     「お前たちは私を直接捕まえに来ていない」

     「理由は簡単だ、私を捉えられるものなど誰もいないからだ」

ジョルジュ「君を見つけることが出来なかったからだ」

パンドラ「常にではないが私の居る場所は大方分かっていた」

     「なのに接触してこなかった」

     「怖いからだ」

     「だからしのぶに説得させる一番安全な方法をとった」

     「しのぶがあまりにも動かないので、しのぶを追い詰めた」

     「その方法は正義なのか」

     「0だった犠牲者が1になった」

     「それが教会の正義なのか」

ジョルジュ「犠牲者を・・・・最小限に抑えたんだ・・・」

パンドラ「お前たちが来なければ0だった」

ジョルジュ「お前が大暴れでもしたら何1000人もの犠牲者が出る!」

パンドラ「過去に私は何千人もの生き死にに介入した故に悪魔と呼ばれた」

    「しかし、あれは戦争だ」「それくらい分かれ!」

    「私が何の理由もなく虐殺したとなどどこに書いてあった?」

ジョルジュ「フエルトの戦いだ!」

      「お前はフエルト王をそそのかし和平交渉を持ちかけてきた敵国を

      和平調印式の時に襲わせ全滅させた!」「相手は武器も持っていなかったと聞く!」

      「それがお前が悪魔と言われる所以だ」

パンドラ「戦争だと言ったはずだ」

     「フエルトにもたらされた和平交渉は偽物で敵国は武器を持たない私達を

     調印式のときに殺す予定だった」「それに気づいた私が王に助言して先に手をうった」

     「それが正しい」

ジョルジュ「でたらめだ!仲間たちからも悪魔と呼ばれていた」

パンドラ「最初は兵士を鼓舞するために悪魔のように強い魔女がこちらにはいると

      フエルトが言ったのが変化したものだ」「あくまでも鼓舞するためのな」

     「わたしは皆から愛されていたぞ」

ジョルジュ「そんなことが信じられるか!」

パンドラ「その通りだ」「私自身がそのことを言っても誰も信じやしない」

     「当時の私を知るものなど誰も生きていない」

     「それらの本が書かれたのも」

     「お前たちにとっては同じ時期に感じられるのだろうが」

     「100年以上後のことだ」

     「調べてみるがいい」

ジョルジュ「・・・・・・」

      「しのぶさんを、助けないのはお前が冷徹な心を持っているからだ」

パンドラ「しのぶには答えは教えない」

     「答えを教えれば本物のしのぶの答えではなくなるからだ」

     「冷徹だからではない、暖かく見守っている」

ジョルジュ「わけの分からないことを言って誤魔化すな」

パンドラ  「だが、お前たちには答えを与えよう」

     「何故、私がしのぶに答えを教えないかと言う理由の答えを」

マリア「ババ臭い講釈は勘弁してよ」と怪訝そうな顔をする

パンドラ「こらっ!ババァとか化け物とか禁句だぞ」

     「一番傷つく」

ジョルジュ『こいつは一体何なんだ・・・・こんな奴が悪魔と呼ばれていたのか?』

パンドラ「私としのぶはチャクラを操れる数少ない人間だ」

     「チャクラを操れる最初の条件は第三の目が開いていること」

     「他のチャクラがいくつ開いていても無理だ」

     「なぜならチャクラを見ることが出来ないからだ」

     「第3の目とは第6チャクラ アージュニャー」

     「真実を見抜く力を司るチャクラだ」

ジョルジュ「お前は一体何を言ってるんだ」

パンドラ「それは一般の人間がお前たち魔術師たちにそう言うのと同じこと」

     「理解など出来ない信じるしかない」

     「だが強要はしない」

     「わたしが、しのぶを助けない理由を説明しているのだが、やめようか?」

ジョルジュ「・・・・・・」

パンドラ「真実を見抜く力を持った私達は真実を見抜き行動する」

     「だから私は今までやってきたことに悲しみはあれど後悔はない」

     「それはそれ時々の正義だったと信じている」

     「時代は変わりそれは正義ではなくなっているかもしれないが」

     「私達は一般の者たちとは桁違いの情報を手に入れることが出来る

     どんな時代・どんな国でも・・・・ありとあらゆる文字を読むことが出来るからだ」

     「その膨大な情報量と第三の目で得た真実は一般のものとは一線を画す」

     「ただ、答えは一つとは限らない」

     「どれかを選ばなければならない」

     「いくつも出てきた答えはしのぶと私とではほぼ同じものになるだろう」

     「だがそれを選んだ時、同じものとは限らない」

     「私が勧めればしのぶは私と同じ答えを選んでくれることだろう」

     「だが、私はそれを好まない」

     「なぜなら、それは本物のしのぶの選んだ答えではないからだ」

     「それが理由だ」

ジョルジュ「到底理解できない、お前は頭がおかしいんじゃないか?」

パンドラ「ははははははははは」

     「私がしのぶを助けない理由は間違いなく今のだ」

     「冷徹にしのぶがいたぶられているのを見ているんじゃない暖かく見守っている」

     「だからお前たちがいくらしのぶを追い込もうと私が投降することなどない」

     「あきらめてとっとと帰れ」

     「私はお前たちに攻撃など一度も行っていない、しのぶもだ」

     「それどころか、やられても辛抱している」

     「0の犠牲者の私達か」

     「1の犠牲者・・・いや、怪我をさせられた子、ゆき・拓也・・・・もっともっといる」

     「正義はどっちだジョルジュ」

ジョルジュ「・・・・・」

パンドラ「あ、すまん。長く話しすぎた・・・授業始まってるぞ、お前ら」

     「ささっといけ!」といって消えていった

マリアたちは急いで教室にも向かって走り出す

マリア「しのぶには近づいちゃ駄目よ」

    「近づくとコールドジェイルがかかるようになっているみたい」

ジョルジュ「わかった」

授業に戻ったジョルジュは苦悩していた

ジョルジュ『まったく分からない・・・』

      『パンドラはあのマリアの魔法を持続させる魔方陣に気づいていたはず』

      『なのに何もしない』

      『しのぶさんをいくら追い詰めてもあいつは投降しない』

      『それは確かなような気がする』

      『町に仕掛けてある魔法陣にも気が付いているにもかかわらず何もしない』

      『破る自信があるのか?』

      『いや・・・絶対に無理だ』

      『コンクリートの壁を素手で破るようなものだ・・・・』

      『あいつは本当にしのぶさんにすべてを託したと言うことなのか?』

      『無理だ、こんな弱弱しい少女に耐えられるようなことじゃない』

      『しのぶさんが自殺してしまうぞ!どうするんだパンドラ!』

      『そのことに罪の意識を感じるのならば、自分たちが退けということなのか?』

      『あいつの頭の中がまったく分からない』

      『ただ、あいつはとてつもなく澄んでいるように感じる』

      『なぜだ!・・・・何故そう感じてしまう』

      『これは奴の術にでもかけられているのか?』

      『・・・・・あいつは多分本物だ』

      『僕はそれを全身で感じ取った』

      『だが澄みすぎた水の中では生物が生きていけないのと同じように』

      『パンドラおまえが話した理想の中では誰も生きていけない』

      『反転して悪魔のようになっている』

      『恐ろしい・・・・こんなに恐ろしいと思ったことは初めてだ』

      『何故そう感じるんだろう、話している時は恐怖など何も感じなかったのに』

      『恐ろしいのに僕はあいつのことが嫌いじゃなくなっている』

      『きっとパンドラが正しい』

      『そう思えるが・・・駄目だ、それは私個人の感情だ』

      『浅はかに個人の感情で動いてはいけない』

      『パンドラの魔力にはやはり制限をかけなければならない』

      『いかに正しい心を持っていてもパンドラ個人の自由にはさせてはいけない』

      『個人は不安定だ・・・・いつ心を乱すやもしれない』

      『そうだ・・・・パンドラは捕らえなければならない』

      『間違えるなジョルジュ・・・・』

      『聞こえるだろうか・・・しのぶさん』

しのぶ『・・・・何?』

ジョルジュ『マリアがやりすぎているのをとめられなくてすまないと思う』

      『ただあの子は教皇直属で今は僕の部下ではあるが、私の言うことを聞く義務はないんだ』

しのぶ『そう』

    『私はあなたのことを従順な教徒だと思っているわ』

    『だから悪い人だとは思っていない』

    『マリアさんにかけた魔法コールドジェイルは貴方にはかけない』

    『でも、もう帰ってほしいの』

ジョルジュ『それはできない』

      『今僕が君に話しかけたのは、君が自殺してしまうんじゃないかと』

      『パンドラを捉えた後必ずちゃんとするからこらえてほしい』

しのぶ『・・・・』

    『なぜ?それは貴方たちが罪を負いたくないから?』

ジョルジュ『ちがう!君に死んでほしくないからに決まっているだろう』

      『さっきパンドラと話をした』

      『僕個人はあいつの言っていることは正しいと思う』

      『だがやはり個人があんなに大きな力を持っているのは危険なんだ』

      『君にもそれはわかるだろう?』

しのぶ『ええ、魔力を制限されても何も困らないはず』

    『なのに何故それを拒むのか』

    『それをパンドラに尋ねても答えは教えてもらえない』

    『パンドラは私に答えを与えない』

    『なぜならそれは本物ではないから』

    『パンドラの千年の詩の中にその答えを導くヒントがある』

    『それは本物ではないから満たされないと言うこと』

ジョルジュ『同じようなことをさっき彼女から聞いた』

      『あいつは純粋すぎる』

      『そんな世界では誰も生きていけない』

      『君も例外ではないぞ!』

しのぶ『その答えは私が導く』

    『貴方の操作は受けない』

    『なぜならそれは本物ではないから』

ジョルジュ『ただでさえ傷ついた君からパンドラを奪いたくない』

      『投降すれば魔力に制限をかけて君のところに返すことが出来る』

      『しかし、町の魔方陣を発動させて捉えた場合、彼女は消滅するまで閉じ込められる』

      『彼女は多分つかまってもいいと思っている』

      『君を少しでも導けたのならそれでいいのだと思っている』

      『投降させるべきだ』

しのぶ『その答えは私が導く』

    『貴方の操作は受けない』

    『これはパンドラとの約束』

    『そうでなければすべて消えてしまう』

    『悪気はないと思うけど私を操作しないで、それはマリアが私にしたことよりもひどいことなの』

    『でも、ありがとう』

ジョルジュ『パンドラはこの事件の原因はこちら側だと言う』

      『だがそれは、違うパンドラがここにいることが原因だ』

      『わかるね?』

しのぶ『その答えはもう出ているわ』

    『パンドラがここにいることが原因ならパンドラを生んだ母親が原因よ』

    『パンドラがここにいるのは母親がパンドラを生んだからなの』

ジョルジュ『だからと言って私たちが原因だと言う理由にならない』

      『君はパンドラに毒されているあいつと同じようなことを言う』

しのぶ『私は貴方を操作しない、だから濁しているのよ』

    『今パンドラが何故ああいう話し方をするのか良くわかるわ』

    『私もあなた自身に答えを見つけてもらいたい』

しのぶは「ヒントをちゃんと読み取ってジョルジュ貴方ならわかるはずだわ」と念話を中断し願っている

ジョルジュ『個人の意見で団体の総意を覆すことは出来ない』

      『もしも君たちに賛同しても、僕は教会を離れ個人としてしか活動できない』

      『代わりの者が来るだけだ』

      『もう駄目だ・・・・君を追い込み過ぎる』

      『私たちはここから去ろう』

      『ただ、パンドラを見逃すと言う意味ではない』

      『町の魔方陣を発動させパンドラを捕らえる』

      『あの魔方陣はパンドラがいかに強くても破れない』

      『例え破れるのだとしても必ず時間がかかる』

      『破られる可能性が0じゃないのは想定内だ』

      『だから、上からどんどん魔法をかぶせていき』

      『破っても破っても出られない』

      『私たちには数と言う力がある』

      『そしてそれはパンドラが消えてしまうまで行われる』

      『何世代に引き継いででもだ!』

      『それが教会の存在理由を確かなものにする』

      『君からパンドラを奪いたくないから』

      『投降する事を薦めてほしい』

      『だがもう私はそれを待たない』

      『答えは君たちにゆだねる』

      『君たちと僕の意見は合い合間見えることはない』

チャイムが鳴リ授業が終わるとジョルジュはしのぶの席に歩いていく

ジョルジュ「明日の朝、もう一度だけ会うことになるだろう」

      「お別れだ」といい手を差し伸べた

しのぶ「私に触れては駄目よ」

ジョルジュ「いいんだ」というジョルジュに対し

しのぶは「握手には応じられない・・・・あなたにコールドジェイルはかけたくない」と言う

そういわれるとジョルジュはゆきの方に行き何やら伝えて教室を出て行った

シーン@パンドラ包囲網の完成

     

  しのぶは急いで学校から家に帰りパンドラにこのことを伝えようとパンドラを呼んだ

しのぶ「パンー」

パンドラ「どうした?慌てて」

しのぶ「ジョルジュ達は学校から出て行った」

パンドラ「そうか、よかったな」

しのぶ「駄目、あなたを捕まえ消してしまうつもり」

    「パンに拘束魔法をかけて破られる前にどんどんそれをかぶせていくって言っていたわ」

パンドラ「ああ、あいつらもバカではない一つ目は町全体を被う大きな魔方陣だった」

     「相当強力に違いない」

     「もしも破れても、もうすでに次の魔法が沢山かかっているだろう」

しのぶ「パン逃げて!」

    「マギの草原にいれば安全よ」

パンドラ「いいや、私は何もしない」

     「つまり逃げることもしない」

しのぶ「いや!」

パンドラ「私はあいつらが仕掛けてくるのを待っていた」

     「といっても、来てほしいと思っていたわけではないぞ」

     「つまり来なければ何もしないという意味だ」

     「逆に言うと来るなら私は何かをするかもしれない」

     「来ると宣言されただけでは、私は何もしない」

     「逃げることもだ」

しのぶ「戦うの?」

    「パンが戦うと言うことは教会すべてをつぶすと言う意味」

パンドラ「それはあいつらと話してみないとわからない」

しのぶ「・・・・・」

    「それはパンがつかまることを受け入れる可能性もあると言うこと?」

パンドラ「当然そうなる」

しのぶ「いやいや」と首を横に振る

    「明日の朝、教会の人たちがきたら力の制限を承諾して・・・」

    「それが一番いい」

    「向こうから接触してきているんだから、それならいいよね?」と願うようにいう

パンドラ「その可能性もある」

しのぶ「約束してほしい」

   「そうでなければ、心配で心配で胸が張り裂けそうよ」

パンドラ「すまないが、その答えを出すのにお前の操作を好まない」

     「だから約束は出来ない」

     「私はそういう女だ・・・もう知っているはずだ」

しのぶ「どうしてそんなに頑なに制限されることを拒むの?」

パンドラ「私がいつ拒んだか覚えがない」

しのぶ「ジョルジュが直接聞いたとき・・・拒んだわ」

パンドラ「ジョルジュは命を受けてきただけだ」

     「私に制限を掛けろと命を架したのはルクツアーノだ」

     「お前の母親に私が殴られたのを、お前に私が文句を言う」

     「それくらいに違う」

     「もうやめにしよう」

     「私を信じろ」

しのぶ「信じてるわ!でも」

    「でも・・・」

パンドラは先ほどとは違う真剣な顔でしのぶの目を見ている

しのぶ『でも・・・でも何・・・・!?』

    『パンが私の心を覗いているような気がする』

パンドラ「人に信じてもらいたいと願うならば・・・まずお前が私を信じろ」

しのぶ「信じてる」

パンドラ「いや、お前は私を信じていない」

しのぶ「本当に信じてるのに!」

パンドラは悲しそうに顔を背け

パンドラ「やめろ!」と少し強めにいい続けて

     「私は偽りの答えを好まない」

しのぶ「嘘じゃないのに・・・・・・・」と泣いてしまいそうになっている

パンドラ「信じているのなら、私の選択を妨げる必要はない」

     「私を信じろと言ったのは、そういう意味だ」

     「私の行動をとめようと、声を出せば出すほど」

     「信じていない」

     「信じていないと言っている」

     「私はそれが悲しい」

     「だからもうやめてほしい」

しのぶは泣いてしまった

パンドラ「ただ、お前を責めているのではない」

     「これはただの私のわがままなのだから」

     「友達として本当に好意を持ってくれている人に

     『愛している』と言われないと気がすまないと、言っているに過ぎない」

パンドラは最後にしのぶの頭をなで「私はお前を愛している」といい

預けてある胸の宝石に手を当て「これが私の本物の答え」

     「この言葉を胸に抱き、明日私を見守ってほしい」

     「明日はヘビーな一日になる今日はもう休ませて貰う」と言って自分の寝床に帰っていった

シーン●戦闘開始

 

 朝になり制服に着替えパンドラを起こしに行こうとすると大きな振動と光で目がくらんだ

もう一度しっかりと周りを見るとそこはもう部屋の中ではなかった

空中に展開された大きなフィールド魔法の上だった

パンドラも、もう起きていたようで横に立っていた

向こうの方にはジョルジュとゆきと拓也がいた

しのぶ『パン・・・・実体から離れて!霊体ならなんとかなるかもしれないのに!』

と思うが、その言葉はパンドラを心配しているのと同時に信じていないことになる

だから、口には出来なかった

ジョルジュはゆきと拓也に「君たちからも説得してくれ」と言う

ゆき「しのぶー!その魔女を渡して、こっちに帰ってきてー」

拓也「しのぶー、ジョルジュに任せて一旦こっちに来るんだ!」

それはまったく選択肢に入っていない呼びかけだったのでしのぶは返事しなかった

100M以上離れていたのでパンドラは

「私に用があるのならそちらからこちらに歩いて来い」と言う

ジョルジュ「それは出来ない」

      「こちらにも仕掛けと言うものがある」

      「そこからも見えるだろう」

フィールドには大きな魔方陣が2つ書かれている

パンドラ「私はこちらから何もしないということを体現している」

     「仕掛けが怖いから行かないのではない」

ジョルジュ「それは出来ないこの場所には意味があるからね」

パンドラ「左の魔方陣は教会とつながっている瞬間移動の魔法陣」

     「教会から援軍が来るための道」

     「もしくは私が投降した時、教会に連れて行く道」

     「右の魔方陣は町とつながっている しのぶ達を返す道」

     「町全体を使って作られた拘束魔法の通る道」

ジョルジュ「その通りだ、だからどの道こちらに来てもらわないと仕方がない」

      「行くのが面倒だから言っているんじゃない」

パンドラ「ルクツアーノをここに呼べ」

     「それからでないと話は進まない」

     「これだけの大掛かりなことをしている日だ」

     「今日ルクツアーノが忙しく違うことをしているとは言わせない」

     「ルクツアーノはその瞬間移動の魔法陣で今すぐにでも来れるはず」

     「ルクツアーノがその魔法陣の前に立てば、私もそこまで歩くことにしよう」

ジョルジュ「教皇様は来ない」

      「話し合いなどもう持たない」

      「答えだけを聞きに来た」

パンドラは今までに見たことのないような怖い顔をしているがじっと耐えているようだった

しのぶ「ジョルジュ!ひどい!ひどいわ!教皇を連れてきて!」

    「今すぐ連れてきて!パンドラはきっといい答えを出してくれるわ!」

ジョルジュ「話し合いなどもう持たない」

      「君に昨日、答えを託したはずだぞ」

ゆき「しのぶー、その魔女から離れてこっちに来て!」

   「その魔女はとっても怖い顔をしているわ!」

しのぶ「パンドラは怖い人なんかじゃない!」と怒った

ゆきは生まれて初めてしのぶに怒られて愕然としている

ゆき『どうして・・・・』『どうして私たちの心はこんなに離れてしまったの?』と苦悩の表情を浮かべた

パンドラ「・・・なんてくだらないやつらだ・・・・・」

     「くだらない・・・・」

ジョルジュ「答えは一度しか聞かない」

パンドラ「お前たちは本当にくだらない奴らだ」と怒りと悔しさのこもった声で言う

     「私が国より沢山の金を持っていたとしよう」

     「国は私の財力を恐れ取り上げようとする」

ジョルジュ「くだらない例え話はやめろ」

パンドラ「国の使いのものが私に払いに来いと言ってくる」

    「私は話を聞いてやろうと言ってみるが」

    「払いにこいという」

    「だから私は放っておく事にした」

    「そしたら払わなければ殺すと言ってきた」

    「私は頭にきた」

    「だが我慢した」

    「だから話を聞いてやろうと言った」

    「話し合いは持たないと言われた」

    「こういう話だジョルジュ」

    「しかも過去に私は3回 お前たちに私の魔力に制限を掛けさせることを許可している」

    「そのことを覚えているのか忘れているのかだけを確認したい」

    「そのために教皇を呼べといっている」

ジョルジュ「!」

      「嘘をつくな!なら何故今そんなに大きな魔力を持っている」

パンドラ「お前たちのかける制限魔法が弱いからだ」

     「私が自ら破ったのではない」

     「勝手に破れた」

     「そもそも破れるようなもの意味がない」

     「年数が経ち制限魔法の効き目がうすれるなら、ちゃんと管理しろ」

     「お前たちにそもそも私を管理することなど出来なかったのだ!」

ジョルジュ「何故今頃になってそんなことを言う!」

      「お前は、ここに教皇様をお引きだし、お前は教皇様と戦おうとしていると思っている!」

パンドラ「私が私自身の弁護をしても誰も信じない!」

     「だから言わなかったのだ!」

   

     「当時の私を知るものなどみんな死んでいない」

     「フエルトの戦いの時と同じように!」

     「ただ今回はルクツアーノが生きている」

     「2度目に制限を掛けることを持ちかけられた時も」

     「お前たちの活動をある一定の理解を示し認めていた」

     「時間が経って制限魔法が弱くなってしまっていただけだと」

     「私は折れて制限をもう一度掛けることを受け入れた」

     「1度目も・・・2度目も私がルクツアーノのところに出向いた」

     「謝罪も何もなかった」

ジョルジュ「謝罪など、何故必要がある」

パンドラ「そうだな」

    「私は、そう自分に言い聞かせ我慢したぞ」

    「私には一度しか会っていなかったのだから覚えていなかったのだろうと」

    「3度目もまったく同じだった!」

    「もう4度目はないと伝えた」

    「私は確かに伝えた」

    「はらわたが煮えくり返るほど私は怒っていた」

    「教皇の前にひざまずかされ頭を押さえつけられた」

    「悔しくてかみ締めた奥歯から血がにじむほどに」

    「そして私はこう言った」

    「4度目はないと」

    「私も最後の質問をする」

    「答えは一度だけだ」

    「教皇ルクツアーノをここに呼べ」

ジョルジュ「・・・・」

      「私個人がお前に共感しても・・・!」

      「教会の総意には逆らえない!」

      「個人の感情は不安定すぎる」

      「教皇様はここには来ない」

      「答えは1度しか聴いてやれない」

      「よく考えて答えるんだパンドラ」

      「僕も君を死なせたくない」

      「よく考えて・・・・・答えてくれ」

パンドラ「今の話が命乞いにでも聞こえたのなら心外だ」

     「ゴミのような教会の総意に従うのは今日で最後にしておけ」

     「ことが済み教会に帰ったら、一生をかけて教会を解体すると良い」

     「私はとっくに答えを言っている」

     「何度も同じことを言わすな」

     「お前が私の答えを言え、もうとうの昔に伝えてあることを証明するために」

ジョルジュ「おまえの答えは『なにもしない』だ」

パンドラ「そうだ」

しのぶ「いやー!!」

    「駄目駄目駄目よー!」

パンドラ「私の選択を否定するのはやめてくれ」

     「信じていないと何度も言われると」

     「さすがの私も参ってしまう」

     「この選択は3度目の制限を与えられた何百年も前から決まっていた」

     「ルクツアーノ以外にこの選択を変えることは出来ない」

しのぶ「信じてないんじゃない」と泣きじゃくる

    「パンに死んでほしくないだけ」

パンドラ「それは私の選択を否定していると言うことに他ならない」

     「昨日も言ったはずだ」

     「信じてないと何度も言うのはやめてくれ」

     「真実の答えは一つしかない『なにもしない』それが答えだ』

     「変えてしまえば、それは偽者になる」

     「私は偽者を好まない」

     「本物の千年魔女パンドラ・デロルレではなくなる」

     「だが偽者の千年魔女パンドラ・デロルレなど絶対に生まれることなどない」

     「私は誇り高き千年魔女パンドラ・デロルレ みまごうな!」

     「どうしたジョルジュ!ささっとやれ!私は仕事が遅い奴は嫌いだ」

ジョルジュは歯を食いしばりながら「メビウス!」と唱えると

右の魔方陣から鎖が何本もパンドラに向かってくる

パンドラはなにもしない

しのぶ「いやーーーーー!」

    「ジョルジュやめて」

    「やめさせて」

ジョルジュ「もう、とめられやしない・・・・」

しのぶ「わたしは貴方を許さない!」

    「私は教会を許さない!」

    「パンドラを私は取り戻す!」と見たこともない怖い顔をしている

ゆき『しのぶ!どうしてしまったの!?』

拓也『どうして、しのぶはあんなことになってしまったんだ!!』

パンドラの体に鎖が巻きつき破れた肌から血が飛び散りしのぶにかかる

しのぶ「うわああああああぁぁっぁあああああ」と叫ぶと

ユニバースが見る見る大きく膨らんでいく

ジョルジュ「やめろ!しのぶさんパンドラの言っていることは正しい!!」

      「ただ彼女は澄みすぎて私たちとは一緒に生きていけないんだ!」

しのぶ「ああああああああああ」

パンドラ「やめろ!しのぶ!」

     「個の不安定さを証明してしまっているようなものだ!」

     「それは、私の選択の真逆」

     「私の選択を汚すな」

     「お前を罪人にして生き残った私は」

     「誇りを失った偽者のパンドラ・デロルレだ」

しのぶ「ああああああああああああ」

パンドラ「もう偽者は沢山だ」

     「私は本物がほしいんだ!!!!」

     「偽者などいらない!」

     「偽者などそこらじゅうに転がっている石ころと同じだ」

     「私は本物がほしい」

     「ほしくてほしくて たまらない」

     「そうでなければ千年も彷徨う苦痛の代償になどならない」

     「偽者なんかいらないんだ!!!」

と大声で叫びながら教会に続く魔法陣の中に引きずられていく

パンドラの言葉にしのぶのユニバースはしぼんでいくが

しのぶは目を見開いたまま呆然としている

    「いや・・・」

    「いらないなんていわないで・・・・」

    「私のことを・・・・いらないなんて・・・いわないで」とその場に崩れ落ち

    「私はパンに失望された・・・・」

    「いっぱい・・・いっぱい考えたけど・・・」魔方陣に引きずり込まれていくパンドラに

手を伸ばしながらはいつくばっている

しのぶ「本物になれなかった・・・」

    「それでも私はパンが好き・・」と涙をぼろぼろこぼし始めた

    「私をいらないなんていわないで・・・・」とつぶやき

    「私をいらないだなんていわないでーーーー!」と大きな声で叫んだ後、大泣きし始めた

パンドラは完全に魔法陣の中に入れられてしまいその場から姿を消した

     

教皇は千里眼でパンドラが罠にかかったのを見て「おろかな!おろかなパンドラ」と笑っている

シーン◎破られる第一結界ユニバース・第二結界太陽と月への攻撃

 

  パンドラから預かっている赤い宝石が強く輝いている、

やがてその光は赤から澄んだ黒色に変化して杖を形成する

その杖は黒光していてカラスのように黒い小さな羽根が生えている

先端には球体の漆黒だがそれでいて澄んだ色をした宝石が付いている

しのぶが我に返ると、その手にはその杖が握られていた

しのぶ「パンドラをここに戻して!」

ジョルジュ「あれは・・・パンドラ最大の武器「背徳のデスアズラエルワンド」・・・」とおびえを隠せない

ジョルジュ「危険だ」といってゆきと拓也に球状の結界を張り

      「そこから出てはいけないよ」と言った

しのぶ「どうしてあの時パンドラが私にこの宝石を預けたのか考えなかったんだろう・・・」

   「何の意味もないはず・・・・なかったのに!」

ジョルジュ「さあ、それをこちらに渡すんだ・・安心しなさい

      パンドラほどの魔女が他人には扱えないように細工していないはずはない」

     「すらわち僕らはそれを奪っても使うことはできないんだ」

     「だから・・・安心してそれを僕に預けなさい」と言いながらゆっくりしのぶに近づいていった

しのぶ「これはパンドラのもの貴方には渡さない」

ジョルジュ「君に扱えるものじゃない・・・・危険なんだ」とにじりよる

しのぶ「パンドラにかえすわ・・・パンドラをここに戻して・・」

ジョルジュ「そんなことできるわけないだろう!」と強く言うと

デスアズラエルワンドが反応してジョルジュを吹き飛ばす

しのぶは驚いてデスアズラエルワンドを抱きかかえ制しようとする

絶対結界と干渉してビシビシと火花を散らしている

しのぶ「駄目・・・攻撃しては・・だめなのよ・・・」

倒れたジョルジュに駆け寄るゆきと拓也

ジョルジュはよろよろと立ち上がりながら「君たちは結界の中に戻りなさい」と言う

ゆき「しのぶー!やめてー」

拓也「しのぶー!やめるんだ・・・・どうしちまったんだよ!」

しのぶ「駄目・・・攻撃しては駄目・・・」と杖を制することで手一杯で返事ができない

ジョルジュ「こちらならその杖を沈める術がある・・・早く渡さないと主を探して暴走し始めるぞ!」

しのぶ「私は・・・パンドラと他人じゃない・・・」

ジョルジュ「・・・?」「杖をあつかえるとでも・・?」

しのぶ「・・たしか・・・間柄と・・名前をおしえて・・・意思をはっきりと示す・・・」と

どこかで読んだ本のことを思い出している

しのぶ「私は、パンドラ・デロルレの第一弟子・沖斗しのぶ パンドラの願いを叶える者」と

唱えると杖の光り方が変わり落ち着きを取り戻したようだった

ジョルジュ「無理やり従わすつもりか!」

      「拓也君、彼女が描いた魔方陣に何が描かれていたのか

       何でもいいから教えてくれ!」

     「この状況を見て何をためらう!間に合わなくなるぞ!」

しのぶ「主パンドラの願いをここに示す、

    主の願いは第六チャクラ アージュニャーの力を持って真実の答えを導き出すこと」

    「戦うことにあらず」

拓也「星だ・・・沢山の星が散りばめられていた」

ジョルジュ「星・・・そうか・・・なるほど・・」と服の中からペンタクルと宝石を取り出

し天に向かって投げ上げた

すると辺りを真っ白にするほどの光が放たれた

次の瞬間ジョルジュはしのぶの両肩に光の矢を投げつけた

その矢は第一結界ユニバースを破りしのぶに突き刺さった「きゃあ」としのぶは悲鳴を上げた

拓也「しのぶー!」

ジョルジュ「大丈夫だ、物理攻撃じゃない・・怪我はしていない」

ジョルジュ「どうりで硬いはずだ絶対結界ユニバースか・・・」

      「そんな大きな魔法を君が使えるとは思ってなかったよ・・」

ジョルジュ「だが、この光の中で君の星たちは打ち消された」

ジョルジュ「術式が分かれば僕たちにとって打ち消すことは簡単だ・・・」

       「それが仕事だからね・・・ありがとう拓也君」

拓也「・・・・!」

   「しのぶは、あの魔方陣を見られたくなかったのに・・・俺には隠さずみせてくれた・・・・」

   「それなのに・・・」

ジョルジュ「ん?・・・しぶといね・・・まだ・・・別の結界がはってあるようだ・・」

      「拓也くん魔方陣は一枚じゃなかったのかい・・・」

拓也「・・・俺は!駄目だ・・・教えられない!」

ジョルジュ「彼女を罪人にする気かい?この件は僕に預けられている、

       彼女にとっていいように取り計らうこともできるんだよ」

     「教えてくれ!」

拓也「くっ!」

しのぶ「デスアズラエルワンド・・・私に力を貸して・・」

ジョルジュ「はやく!」

拓也「太陽だ!太陽と月が描かれていた!」

ジョルジュ「そうか!光で星が打ち消されることは織り込み済みだったというわけか!」と

言いながら違うペンタクルを取り出し

ペンタクルにナイフを突き立てそれをしのぶに目掛けて投げつけた

そのナイフはしのぶの胸に突き刺さる「あああああ」としのぶが悲鳴を上げる

ジョルジュ「わが同士!教会の術師達よ、わが意思に従い太陽をも凍らす氷刀となれ」と唱えると

ナイフはさらに力を得 しのぶの体を凍らせ始めた

ジョルジュは少しの間しのぶを見ているが全身が凍りつかない様子を見て

ジョルジュ「拓也君まだあるね!教えるんだ!」

拓也「ない」

ジョルジュ「そんなはずはない!教会にいる精鋭たちが力を送り続けているのに

      一人の魔術師を凍らさせられないはずがない」

     「まだあるね!?」

拓也「もう一枚あったけど・・・」「あれは・・・」「魔方陣じゃない」

ジョルジュ「何が描かれていた!?」

拓也「あれは絵だ・・しのぶらしい かわいらしい絵だった」

ジョルジュ「絵・・?・・・」

シーン●教皇登場 最後の戦い

教皇ルクツアーノ「背徳のデスアズラエルワンド」

ジョルジュ「教皇様」と驚く

教皇「それをこちらにお渡しいただければパンドラさんの力の制限には

   十分なものになりますからパンドラさんをそちらにお返ししますよ」

  「さあ」としのぶに手を差し伸べた

しのぶ「あなたが教皇・・・・」

   「そう・・・よかったわ・・・」

教皇「はい、安心してお渡しなさい」

しのぶ「どうして今ごろ現れたの?」

教皇「・・・・・」

しのぶ「これが・・・」

教皇「さあ」とさらに手を伸ばしてくる

しのぶ「これがほしくてほしくてたまらないって顔に書いてあるわ」

教皇「そうですか?」

しのぶ「本当に良かった貴方たちに、従わなくて」

教皇「あまり困らせるものではありませんよ」

しのぶ「くさいわ・・・近寄らないで」

教皇「ん?」

しのぶ「くさいから近寄らないで」

教皇「困った子だね」としのぶの手をつかむと

最後の結界 友愛が発動して教皇の手ははじかれ ただれる

教皇「ふふふふふ、幼稚な魔法だ」

  「見えますよ最後の結界が・・・」

  「最後の最後にそんな結界に頼るなんて本当に子供なんですね」

人が手をつないで輪になっていて真ん中に大きなハートマークが書かれている

  「これは友達や両親の友愛によって守られたいと言うただの願望でしょう」

  「魔法は願望とは違うものなのですよ」

  「ずっと経緯は千里眼をもって見させていただいてました」

  「貴方は誰からも愛されてなど居ませんよね?」

  「ですからこの結界は幼稚で弱弱しいものです」

と言って無理やり杖を奪い取った

しのぶが「返して!」と教皇に駆け寄ると教皇の結界に弾き飛ばされる

教皇「すべての結界を剥ぎ取られた君はただの人間です、私に近づくと大怪我しますよ」

と言い杖を振りかざし

教皇「我の名は教皇ルクツアーノ パンドラを従えし真の主」と杖に告げた

杖は少し暴れているが、教皇に強く押さえ込まれ従わされているようだった

しのぶ「ジョルジュ君・・・教皇は・・・そいつは人間じゃないわ」

ジョルジュ「何を言ってるんだ・・・処遇が悪くなるだけだぞ!」

しのぶ「この人は自分の本当の体をとうの昔に失っている」

   「にもかかわらず、人の血肉を喰らい体を再生している化け物よ!」

教皇「何を根拠に・・」と笑う

しのぶ「臭いから・・・分かるわ」

ジョルジュ「教皇様が何百年も生きておられる方だと言うことは知っている!

      それを忌み嫌うならパンドラと何が違うと言うんだ!」

しのぶ「ぜんぜん違うわ・・・」

    「返して!」と教皇に飛びつくと、またはじかれてコロコロ転がりながら倒れた

華奢なしのぶはもう立てないほどのダメージを受けた

第3章 ◎転 どんでん

シーン◎洋介召喚

友愛の結界であるハートのマークの光がゆらゆら揺れて今にも消えそうになっている

「消えそう・・・もう駄目なのね・・・」さびしそうな顔をしながらあきらめかける

ハートの核の周りを回っているビー玉のような光がひとつだけ強く暖かく輝いている

しのぶはそのひとつを握り締め「暖かい・・」

と、その時

友愛の魔方陣が地面に広がり 洋介が召喚される

洋介「ああ、なんじゃこりゃ!」とすごく驚きながら周りを見る

教皇「関係のない男まで召喚して、とんだあばずれ女だね」

  「そんなにしてまで友愛にすがりたいのかい」

  「迷惑をかけることしかできない子だよ」

洋介「なんかよくわかんねーけど」

  「俺は関係ない男じゃねー」と教皇に食い下がる

  「沖斗大丈夫か?」としのぶを抱きかかえゆきと拓也に向かって

  「お前らなにやってんだよ!」

  「倒れてる沖斗の傍にいないなんて!信じらねーよ」

動揺するゆきと拓也

ジョルジュ「君は事情が分かっていない!しのぶさんから離れて君もこちらに来なさい」

洋介「事情なんか関係あるか!」

  「倒れてる友達をほったらかしになんかできるかー!」

その言葉にゆき『そう・・・なんで私はしのぶの傍にいないんだろう』

『なぜ拓也もしのぶのところにいかないのだろう・・・』

『こうなった原因はなんだったの?』

『大切なことを忘れているような気がする』

『思い出せ!・・・思い出せ!』

『拓也が行かないのは私がしのぶのことを怖がっているから・・』

『私について私を守っていてくれているから』

『では、私は何故しのぶを怖がっているの?』

『呪い・・・』

『対価は何だったのか・・・』『それが問題』

『思い出して・・・』と祈るような格好をしながら自問自答を繰り返す

何度も何度も繰り返す

しのぶがゆきの足に魔法をかけたとき何かをしのぶは言っていた

意識が薄れて聞き取れない・・・

もう一度繰り返し思い出そうとする

しのぶ『このことは絶対に秘密・・・』

   『絶対に秘密にすることを・・・・対価と・・します』

ゆき「!」

ゆきは遠いところを見つめるような目をしながら

「拓也・・・思い出した」

拓也「どうしたゆき?」と様子がおかしいゆきを心配そうに見る

ゆき「しのぶは私に呪いなんか、かけていない・・・」

  「当たり前よね・・・」

  「何で今まで、そんな当たり前のことに気がつかなかったんだろう」

拓也「どういうことだ?」

しのぶの友愛のビー玉がもう一つ大きく光を放つ

ゆき「私の払っていた対価、それはその魔法のことを秘密にすることだったの!」

  「呪いなんていうものとは程遠い・・・」

ジョルジュ「バカな、その程度のものが足が動くようになる対価になどなるものか!」

さらに3つ目のビー玉が輝きだし しのぶの顔の血色が見る見る良くなってくる

拓也「いや・・」と少し考え続ける

  「いや・・・十分なる」

  「しのぶがみんなから気味悪がられ誤解され続けている時」

  「ゆきは、その誤解を解ける唯一の方法を封じられていた」

  「そのことでゆきは心を痛め続けていたに違いない」

  「対価として十分過ぎるほどにな!」

  『なんで俺は・・・・・』

  『しのぶ』『しのぶ』

  『なんで俺はしのぶのそばにいてやれなかったんだ!』

  『しのぶ』『しのぶ』

 

    『しのぶ「私の傍にきてくれないの?」』

    『「私の横を歩いてほしい」』

  『あんなに俺に傍にいてほしいって言ってくれていたのに』

  『話すのがあんなに苦手なしのぶが・・・』

  『一生懸命 話していてくれたのに!』

  『俺はバカだ!』

  『ちくしょー!』

拓也「しのぶーーーーーーー!」と涙を目に浮かべしのぶの方に駆け寄っていった

それと同じ位の速さでゆきも

ゆき「しのぶーーーーー!」と叫びながらしのぶの方へ駆けていく

そして洋介・拓也・ゆきは倒れているしのぶを抱きかかえていた

ジョルジュ「・・・!」『自分が魔法使いであるという秘密を守り通しながら人を救う』

     『この子は・・・なんて頭がいい・・・』と自分の過ちに動揺を隠せない

教皇「さあ、ジョルジュ仕事は済みました長居は無用です」

  「その子を連れてきなさい」

ジョルジュ「この子は・・この子は見逃していただけませんか!?」

4つ目のビー玉が輝く

教皇「ユニバースを使えるほどの教会にはむかう魔女を見逃すことはできませんね」

ゆき「ジョルジュ!その人に従ってはいけないわ!」

ジョルジュ「・・くっ!」

ゆき「しのぶの言ったことを思い出して」

  「しのぶを信じてあげて!」

ジョルジュはしのぶの言葉を思い出す

『この人は自分の本当の体をとうの昔に失っている』

『にもかかわらず、人の血肉を喰らい体を再生している化け物よ!』

ジョルジュ『何のためにそんなことをする必要がある!?』

     『逆に何百年、何千年も生きる魔術師は肉体を足かせとなる邪魔なものとしていると聞く』

     『では、パンドラは違うのか?』

教皇「君がやらないのなら他のものに運ばせるだけだ」

  「彼女のことを想うなら君が運んであげたほうがいいのではないかい?」と優しく言った

シーン◎パンドラ召喚

パンドラは教会に運び込まれていて

全身を鎖状の結界で何重にも縛られている

もう姿は外から見えない

直径3メートルくらいの球状になっている

その前で10人ほどの術師が鎖に力を注ぎ続けている

術師A「おい、動いたぞ」

術師B「集中しろ」

術師C「こいつは恐ろしい魔女だと聞く、私たちだけで押さえ込めるのか?」

術師B「そう思うなら尚、集中しろ」

術師AC「そ・・そうだな・・・」

パンドラはアストラルイニシエーションしていて、あのマギの草原にいる

じっと目を閉じて下を向いて座り誰かが来るのを待っているようだ

そこに「パンー」と呼びながらしのぶがやってくる

パンドラはしのぶの方を向くこともなく返事もない

「パン返事して」と言いながらパンドラの前にかがむしのぶ

パンドラに反応はない

しのぶ「怒ってるの?」と涙を目に浮かべ

   「ごめんなさい」と言いパンドラに抱きついた

パンドラが目をゆっくりと開けると

全身に鎖の拘束結界が浮かび上がり

その鎖はどんどん上から重なり

パンドラの姿は完全に見えなくなった

しのぶ「!・・・なに!・・・ひどい!」

   「今はずしてあげるからね!」と鎖をむしろうとするが

   手に電流のようなものが走り激痛が走る

   「ううう!」といいながらも泣きながら必死にはずそうとする

教会ではパンドラにかけられた鎖がビシビシと音を立てはずされようとしているさまに

術師A「おいっ!・・・鎖が動かされているぞ!」

術師B「黙って集中しろ!」と汗だくになっている

術師達は動揺を抑えきれない

術師B「もっと人を呼んで来い!もたないぞ!」

しのぶ「パン・・・戻ってきて・・」と必死に鎖をはずそうとするが

外れそうになっては元に戻るを繰り返して鎖をはずせない

しのぶ『ジョルジュ』

ジョルジュ『!!どうした・・・・』

しのぶ『今私はパンドラといる』

ジョルジュ『馬鹿なことを言うな、そんなことは不可能だ』

しのぶ『本当よマギの草原で霊体部分のパンドラを見つけたわ』

ジョルジュ『それが本当だとしてもその拘束魔法からパンドラを出す方法などない』

      『私は何か頼まれても何も出来ない』

しのぶ『そんなことは頼まないわ』

しのぶ「パン パン」と鎖をむしりとろうと必死やればやるほど

しのぶの霊体が削れて行く

しのぶ『この鎖を私は外からはずそうとむしっている』

    『私の霊体が削られていく』

ジョルジュ『やめろ霊体がなくなれば本当の死が訪れるぞ!』

      『復活することはかなわない!』

しのぶ『わかっているわ』

    『だから私は話しかけている』

ジョルジュ『なに?』

しのぶ『霊体を支えているのは考えること』

    『考えることをやめれば やがて消えてなくなる』

ジョルジュ『そうだ』

しのぶ『鎖をむしることに夢中になれば霊体は削られるばかり』

    『思考していれば霊体が消えることはない』

ジョルジュ『・・・・』

しのぶ『貴方には伝えたいことがある』

ジョルジュ『なんだ』

しのぶ『マリアのコールドジェイルを解く方法』

    『それは今から私が話したことをマリアに伝えること』

ジョルジュ『マリアの方はこちらで何とかする』

      『危険だから早く肉体の方に帰って来い』

しのぶ「パン パンお願い」

    『それは出来ない』

    『パンドラが選択を変更できる条件が来た』

    『私はパンドラに教皇を合わせる』

ジョルジュ『・・・・!』

しのぶ『マリアのコールドジェイルをはずすことはマリアにしか出来ない』

    『そういう仕掛けになっている』

    『マリアの無意識の領域を動かすことでしかとめることができない』

    『その方法のヒントを提示する』

ジョルジュ『何を言っている答えを言わないなら、こちらで何とかする』

しのぶ『そもそも私は答えを知らない』

    『彼女のあの2面性の原因になっている無意識の領域にあるものが

    何なのか私には到底理解できない』

    『だから教会の者がいくら考えてもコールドジェイルは解けない』

ジョルジュ『君はパンドラに毒されている魔女になりかけている』

      『その淡々とした話し方はパンドラに似てきている!』

 しのぶ『私の頭の中はもともとこう』

     『私は第5チャクラがいびつに変形した奇形の子』

     『話せるけど書けないそれに似ている』

     『考えられるけどうまく話せない』

     『念話は話しているのとは違う』

     『淡々としている理由は冷たい心になったのではなく正確に情報を伝えるため』

  『情報を伝えるために感情など意味がない』

  『なぜなら第三の目で集めた膨大な情報を整理してそこから真実の答えを見つけ』

  『正確に伝えなければならないから』

  『感情など邪魔にしかならない』

  『ただ感情が不必要だと思っているわけではない』

  『真実の答えを見つけ伝える時には邪魔だと言う意味だ』

 

  『パンドラの話し方が淡々としていると感じるのは感情の部分を削除し』

  『正確に情報を伝えるため』

  『パンドラが私と違うのは彼女は第五チャクラを開いているところ』

   『第5チャクラは表現力と正しく伝える力を司る』

 

   『パンドラがどんなに厳しい内容を話していてもその優しい笑顔で私に暖かさを与えてくれる』

   『だから私も貴方もパンドラのことを好きになる』

ジョルジュ『それはもはや洗脳ではないのか!』

しのぶ『そう、それが答え』

ジョルジュ『洗脳されていると言うことを認めるのか?』

しのぶ『いいえ、それは入り口』

    『入り口にはパンドラが操作しなければ入れない』

ジョルジュ『パンドラが洗脳するための力を持ち合わせ使うことを肯定したいのか?』

      『個人がそんな力を持っているのは独裁と同じだ』

      『危険だ!』

しのぶ『まったく違う、落ち着いてジョルジュ。順番を間違えると堂々巡りになり抜け出せなくなる』

    『同じ問答を私やパンドラと永遠としなければならなくなる』

ジョルジュ『くだらない問答をしても話は進まない』

しのぶ『そう、それがパンドラが私を操作して入り口に導いた理由』

    『堂々巡りにならないようにするため』

ジョルジュ『問答はやめろ・・・・お前たちは頭がおかしい!壊れてしまっている』

しのぶ『落ち着いてっていったはず、ここで堂々巡りになるのは時間の無駄でしかない』

ジョルジュ 『こんなわけのわからない問答をしろと言うのか!』

しのぶ『そう、入り口に入らなければ出口は見つけられない』

    『出口と言うのが真実の答え』

    『出口を見つければ入り口から開放される』

    『つまり、洗脳から抜け出すことができると言うこと』

    『だから私が真実の答えを見つければ洗脳から抜け出せる』

    『真実の答えを私に見つけさせるためにパンドラは私を洗脳し』

    『早く答えを見つけ洗脳から抜け出してほしいと願っている』

    『パンドラは洗脳してしまうことが大嫌い』

    『だから早く終わらせたいはず』

    『私もそう、貴方に早く出口を見つけ出してほしいわ』

ジョルジュ『私はお前に洗脳などされていない!』

しのぶ『ごめんなさい、貴方が洗脳と言う言葉を使ったから流用した』

    『洗脳ではなく操作だわ』

    『あなたはもう考え始めてしまった』

    『私の言葉で貴方が考えはじめるように私が操作したからよ』

ジョルジュ『何故そんな勝手なまねをした、お前たちは自分たちを理解してほしいと

      わがままを言っているだけだ』

しのぶ『コールドジェイルの解き方を教えると言ったはず』

    『それに貴方も私を操作しようとしたわ』

    『パンドラを説得させようとした』

ジョルジュ『君は縁と言うものを知っているか?人が人と話せばそれが影響を及ぼし結果が変わる』

      『君が行っている操作とはそのことで、君は誰とも話すなといっているのか?』

しのぶ『縁があるから真実の答えが見つけにくくなる』

    『でも縁は断ち切れない』

    『生まれた時にすでにある』

    『自分の親との縁よ』

    『自分が母親から生まれてきたことを打ち消す必要などないし、不可能だわ』

    『生まれたときから真実の答えが見つけにくい足かせをかけられている』

    『洗脳されたままの人と・洗脳されていたが洗脳から解放された人は違うという意味』

    『洗脳されたと言う事実は消えない』

    『それは縁と同じ縁は断ち切れない、当たり前の話』

    『最初は貴方に答えを与え、ヒントを与える』

    『それはこの問答が「簡単だけど難しい」』

    『「簡単だけど難しい」は「普通の難しい」よりとても難しいから』

    『考え方のパターンを提示するため』

    『その提示が終われば、私は貴方に答えを与えない』

    『答えを与えてしまうとその答えは私の刷り込んでしまった操作されたものと変わる』

    『あなたが本当にそれが答えとして正しいと思ってもよ』

    『だから答えを見つけたのに消えてしまう』

    『すべて消えてしまうと言うのはそういう意味』

    『もうすぐ私は答えとヒントを提示しなくなる』

    『すべての言葉に意味があると思い注意深く聞いてもらいたい』

    『そうでなければ堂々巡りにはまってしまう』

    『出口を見つけられない』

    『質問はしないほうがいい』

    『答えが消えてしまう』

    『数少ない出口にたどり着く道が一本消えてしまう』

    『チャンスが減る』

    『洗脳から抜け出した真実の答えを導き出せる貴方になるための道が』

しのぶの鎖を解く手は消えては再生するを繰り返していた

    「パン私は私の意志で、罪を犯さず貴方を助ける」

    「それならパンの誇りは汚されないでしょ」

    「お願いパン返事だけでもして、心が壊れてしまいそうよ!」

ジョルジュ『僕はそんなものになどなりたいと思っていない!』

      『なのに何故!』

しのぶ『その答えも貴方が導き出さなければならない』

ジョルジュ『じゃあ、僕の答えはこうだ!僕はそんなことには興味はない!』

      『考えるのをやめることにする』

しのぶ『感情は邪魔になると言ったはず』

    『今の答えは感情から来た物よ』

    『だから落ち着いてと言った』

    『すべてに意味がある』

    『道が減らないように注意してほしい』

ジョルジュ『僕はそんな道など見つけたくない減っても何の問題もない』

しのぶ『感情は邪魔になると言ったはず』

    『今の答えは感情から来た物よ』

    『だから落ち着いてと言った』

    『すべてに意味がある』

    『道が減らないように注意してほしい』

ジョルジュ『同じことを何度も言うな!頭がおかしくなる!』

しのぶ 『堂々巡りに入ったと言うことを伝えるために同じことを言った』

      『すべてに意味があると言ったはず』

      『道がまた一つ減った』

      『もうそろそろ答えは提示できなくなる』

      『危険よ・・・』

      『私に洗脳されてしまう』

      『永遠に』

     「パン」「パン」「パン」「返事して」

     『真実の答えとは、宗教的な漠然としたものじゃない』

     『自分の本当の考え 縁によって生まれた答えも踏まえたうえで』

     『その外に出て 得た自分の本当の答え』

     『それが出口』

     『その答えが正しいと言う意味じゃない』

     『真実と言う言葉に惑わされてはいけない』

     『ただし真実の答えを見つけたものは後悔など絶対にしない』

     『そのために真実の答えを探すのだから』

     『感情や縁から作られた偽りの答えは後悔を生む』

     『ただ満足する場合もある』

     『真実の答えは常に満足を与える』

     『終わりよ』

     『道が消えてしまう』

     『後は貴方が考えなければ』

     『お願いジョルジュ!』

     『あなたはピアノが弾けない女の子』

      『出口がなくなってしまう』

ジョルジュ『君はもう魔女になってしまっている』

      『もう人間じゃない』

      『人間の僕たちには到底理解できない』

      『いや、もしも理解できても』

      『そんな澄んだところでは生きられない』

      『君たちのことなど到底誰も理解できない』

しのぶ『理解してほしいから問題を提示しているのではない』

    『理解するか、しないかの真実の答えを貴方が考えなければならない』

    『コールドジェイルを解くヒント』

    『もう終わりよ』

    『もう二度と答えとヒントは提示しない』

ジョルジュ『君は人間じゃなくなってしまったんだ』

      『パンドラと同じように・・・・・』

しのぶは答えを与えず

念話を終わろうとしていた

しのぶ「!」

    「わかった!」と鎖をむしりながら叫ぶ

    「ごめんなさいジョルジュ、私は貴方を犠牲にして出口を見つけたわ」

    「そういうつもりではなかったの」

しのぶは痛みはあれど晴れ晴れとした顔をしていた

  『パンドラ貴方はなんてややこしい人なの・・・・』と笑う

  『私は今完全にパンドラの中から出た

  外からパンドラの考えていることを見ている

  出口から外に出た

  外から中を見ている

  この問題を解くには経験が必要

  考えながら経験することでしかわからない

  今までの私に解けるはずがなかったのよ

  なぜ真実の答えを導かなければならないのか

  それはパンドラが満足できないからよ

  自分のために真実の答えを見つけるのではない

  他人のために答えを見つける

  しかも二人とも満たされなければならない

  私が今ジョルジュの答えが私が刷り込んでしまったものになることに満足できないのと同じ

  操作すると偽りになりやすい

  縁で出来た答えは感情で出来たもの同じように偽りになりやすい』

  『縁から抜け出す方法は

  縁から作られた無意識の感情などを

  意識の領域で観察し

  意識の領域で考え、正し

  無意識の領域に戻すこと』

  『これはチャクラを開く方法と同じ

  つまり示していかなければ出来ない』

 『 経験が必要

  ピアニストの話と同じ』

 『 私は猫背で挨拶が出来ない男の子』

 『 ピアノが弾けない女の子』

 『 だから示さなければならなかったのね』

『パンドラがここに召喚された理由と目的 答えは一言で言うと貴方が私に愛されたいだけ!』

『わがままね・・・・パンドラ』と微笑む

『本当に本当に愛されたいだけ』

『真実の私自身が導き出した答えでそれを伝えてもらいたがっている』

『千年の時を生き続けても』

『その答えをパンドラに見せて上げられた人が何人いたことだろうか?

千年の時を生き、ほしいものをすべて手に入れられる力を持ったパンドラは

その力によりすべてのものを偽者と感じてしまうようになってしまった』

『体を失えばほとんどの欲を失うはず

食べることが必要なくなり食欲が消え 食べ物を作らなくても良いから働かなくて良くなる

お金なんて何の意味もなさない 美しい花や宝石もいつでも作り出すことが出来る

だから今手に持っていなくても もう、持ってしまっていることになる

欲がないことのなんて辛い事!』

『ほしくて ほしくて 千年さまよい続けた』

『パンドラは自分が他人に与えるための真実の答えを持っていながら

それを与えても気づいてもらえない

誰からも真実の答えをもらえない』

『こんなにほしくて ほしくてたまらないのに』

『どんなことをしても満たされない』

しのぶは大きな涙をぽろぽろと流し始めた

『真実の答えは交換しなければ輝きを放たない』

『でも・・・・わたしが・・・・これを渡せば・・・・・』

『パンドラは・・・・消えてしまう』

『パンドラは満たされたくてさまよい続け』

『満たされることで消えてしまう』

『それはとても幸せなこと』

『そのために第六チャクラが開いたものを探していた』

『それが私・・・・・・』

しのぶ「どうすればパンドラをここから出すことができるの!」

    「こんなに真実の答えを渡したいのに」

    『考えなければ答えは見つからない』

    『考えなければ』

『わたくしに会いたければ、わが名を呼べ』

と、はじめてパンドラにあった時のことを思い出している

しのぶ『パン・・そうなの?・・会いにきてくれるの?』としばらく考え

    「パンドラの行動は出会ったその日からすべてに意味があったのね・・・

   「・・うん・・会いたいわ」

   「パンドラ・デロルレ!とってもとっても会いたいわー!」と力いっぱい叫んだ

ものすごい音を立てながら鎖が中から破壊される音がするがどんどん上からかぶさっていく

そしてしばらくすると音は消え鎖はまた元に戻ってしまう

しのぶ「・・・・パンドラは何もしないを体現している」

    「だけど私の召喚には応じるということね!」

    「ありがとうパンドラ」

    「パンドラ・デロルレとってもとってもあいたいわー!!」とまた力いっぱい叫んだ

先ほどより大きな音がし鎖をものすごい勢いで破壊するが

上からかぶさるスピードには勝てない

やがて音はなくなり鎖は元に戻ってしまった

しのぶ「わかった・・・・今一瞬陰が生まれて魔法が弱まった」

    「しかしさらなる攻撃で陽に戻る」

    「一撃目で陽が一つ壊れ全体の陽の中に一つだけ陰が生まれる」

    「さらに2撃目を入れるとまた生まれた陰とさっきの陰がくっつき陽に転じる」

    「だからこの魔法を破る方法は一つ」

    「一撃目で陰を生み魔法を弱らせ」

    「2撃目で破壊しなければならない」

    「2撃目をパンドラ召喚のエネルギーにする」

    「それしかない!」

    「お願いパンドラ全力で召喚されて!」

    「手加減はなしよー!」

    「貴方の力が見たいわ」

    「私はこんなにも弱い」と言って削り消える覚悟でこぶしを打ちつけ

    「パンドラ・デロルレとってもとっても会いたいわー!」と今迄で一番大きな声で唱えた

ピューと嵐の風のようなものすごい大きな音をたててパンドラは鎖を打ち破り一筋の光となって

天高く上っていった

「お前が命をかけたその一撃」  

「例えどんなに弱弱しくても!」

「真実の答えでないはずがない!」

「私は本物を見つけた」

「しのぶ!」

「お前の真実の答え確かに受け取った!」

と天高くからパンドラの声が聞こえてくる

それと同時にしのぶはアストラルイニシエーションから覚め

目をパッチリと開く

拓也・洋介・ゆき「気がついたかしのぶ!」

        「大丈夫!!?」

ゆき「拓也」と拓也の方を見て言う

洋介「榊お前の役目だわ」と笑って3人で抱えていたしのぶを拓也に託す

拓也はしのぶをしっかりと支え起き上がらせる

しのぶ「ありがとう」と拓也にいい

ゆきと洋介の方を交互に見て「本当にありがとう」と言った

教皇「早くその子を捕らえなさい」と教徒たちに指示をだすと

教会に通じる魔法陣から出てきた教徒たちはしのぶを捕らえようと駆け寄ってくる

ジョルジュ「やめるんだ!」と教徒たちの前に立ちはだかる

教皇「ジョルジュ君!」と言いながら魔法弾をジョルジュに向かって発射してくる

ジョルジュは覚悟を決めたようによけようとしない

しかしその魔法弾はしのぶの絶対結界友愛に難なくはじかれ教徒たちも

弾き飛ばされる

ジョルジュ「しのぶくん・・・君は・・・」

しのぶ「力を貸してくれてありがとう」とジョルジュに言った

ジョルジュ「だが・・・教会はきみたちが思っているより大きな組織だ」

     「悪いことは言わない・・・投降したほうがいい・・・」

とうつむきながら申し訳なさそうに言った

しのぶはしっかりとジョルジュの方を向き目を閉じ

胸の前で両手5本の指先を対になるように引っ付け

人差し指を上下したり開いたり閉じたりし始めた

ジョルジュ「何をしている・・・・・」

しのぶ「問題は多い方がいい」

ジョルジュ『それが問題だということか・・・・』と質問はしないほうがいいといわれたことを守り

自分で考えた

しばらく沈黙が続き

しのぶはジョルジュが質問せずに考えていることに満足し教皇の方を力強く見ながら

しのぶ「大丈夫、パンが力を貸してくれるわ」

と言った

その次の瞬間しのぶの足元に巨大な魔方陣が現れる

その魔方陣からパンドラが召喚された

ジョルジュ「・・・バカな・・・教会の精鋭たちの拘束魔法をやぶったのか・・」

とパンドラの魔力に驚きを隠せない

教皇「パンドラ!」

パンドラは教皇を無視して

しのぶの方に歩み寄り

しのぶの肩を抱いている拓也の手を払い

パンドラ「放せ馬鹿が!」と今までの拓也のしのぶに対する態度に幾分ご立腹のようだ

しのぶ「パン駄目よ!」と言うがパンドラは何の返事もせず

しのぶに抱きつきしのぶの唇にキスをした

しのぶ「いやん、なに!」

パンドラ「ファーストキッスは私がいただいた」

    「これが罰だ」と拓也にニヤニヤしながらいった

拓也はなんなんだこいつは?という顔をして頭をポリポリかいている

パンドラ「そうか!私に会いたかったか!」と目をきらきら輝かせながら言う

しのぶ「うん、会いたかったよ」というとパンドラはうれしそうにしのぶのことを強く強く抱きしめた

しのぶ「パン・・痛いよ・・」

パンドラ「私も会いたかったぞ!」とかまわず抱きしめつづけ頬をすりすりしてくる

教皇「杖を失ったお前が現れたところで、どうにもなりませんよ」と笑う

パンドラ「うるさい!感動の再会シーンが台無しになるだろ!」と教皇の方に向き直り

    「ルクツアーノ・・・まだこんなことをやっているなんてあきれて物も言えんわ」と続けた

教皇「私には力の均衡を保ち世界平和を守るという大きな使命がありますからね」

パンドラ「ぶっ!」とびっくりして噴出してしまうパンドラ

    「あはははははははは」と大笑い

    「聞いたかしのぶ・・・・世界平和だってさ」

    「人の血肉を喰らい体を保っているお前が・・・笑わすな」

教皇「デスアズラエルワンド 死と呪いを司るアズラエルの力を持って・・・」と唱え始める

パンドラ「お前は創造魔法バースを捜し求めていたらしいが、

     とうとうマギの草原にたどり着けなかったようだな」

    「しのぶはあっさりとマギの草原にたどり着いたぞ」とさらに笑う

教皇はパンドラをにらみつけながら「・・・パンドラに永遠の死をあたえよ!」と続けると

杖から口を大きく開けたしゃれこうべがパンドラに向けて放たれた

しかし、しのぶの友愛結界に難なくはじかれる

教皇「そんな・・バカな」

パンドラ「今の話聞いてなかったのか?」

    「お前はしのぶより格下なんだよ!」とニヤリとする

教皇「しかし、杖を持たないお前に何ができるか!」と食い下がる

パンドラ「はぁ?」

    「何でもできるぞ」

    「お前、私がバースを使えるのを知らないのか?」と呆れ顔

教皇「バースなど存在しない!あれだけ探しても・・・見つからなかったのだから・・」

パンドラ「背徳のデスアズワエルワンド 本当の主は誰だ!」と問うと大きな音と光を放ち

教皇の手をもぎ取りながらパンドラの手に戻ってくる

教皇「うおおおおぉおお」ともぎ取れた手を押さえつけ小さな声で呪文を唱え手を再生した

パンドラは戻ってきた杖に引っ付いていた教皇の手を振り払い

「あーあー、汚すなよ」と言い

「私の前から姿を消して教会を解散したら見逃してやろう」と杖を教皇に向けて言い放った

教皇「なめるなよ!」

パンドラ「もしも、私に立ち向かうというのであればお前の肉体だけではなく魂も消し去る!」

教皇「ほざけ!」といいながら一番上に羽織っていた僧衣を肩からはずし地面に広がるように投げた

すると僧衣の内側に大きな魔方陣が施されていてそれが発動する

教皇「さあ、本当に私を消せるのかな!やってみろ!」

パンドラ「これは・・・・・アナールモストス天秤のフィールド魔法・・・」

    「複雑にうまく作ってあるな・・・ごくろーさん」と笑い

    「しのぶ、教会の者たちもみんなお前の友愛結界の中に入れてやれ」

しのぶ「うん」「みんなこっちへ、危ないわ!」

パンドラ「『月と太陽』と『ユニバース』も もう一度発動できるな?」

しのぶ「うん、できる」

パンドラ「ほうら、優秀だろ」と教皇に言う

シーン★背徳のデスアズワエルワンド開眼 (切り札による逆転勝利)

教皇「このフィールドに入った時点で私の勝ちが確定している」

パンドラ「はいはい」

教皇「アナールモストスの天秤は不釣合いな天秤」

パンドラ「私が強ければ強いほどお前が強くなる」

     「つまりお前は私より弱いと言うことをすでに知っている」

教皇「そんなことで悔しがるとでも思ったか!」

と言うとパンドラの足元とのフィールドがパンドラを突き上げた

パンドラ「わわわ」と言いながらこけてしまった

しのぶが駆け寄り「パン大丈夫!?」

パンドラ「ああ、あまり近づかないほうがいい」

     「みんなを守ることに集中しなさい」

     「先にしのぶに言っておく」

     「私は今から姿を変える」

     「ただ、それは自分の意思で行い自分の意思で元に戻すことができる」

     「だから心配しないでほしい」

しのぶ「え?」

    「パンは3がすき」

    「だから武器が一つなのはおかしいと思っていた」

    「何かまだあるのね?」

パンドラ「・・・まぁ、そういうことになる」

教皇「おまえは大ばか者だな!まさかまた肉体を持って召喚されているとは思っていなかった」

   「自ら足かせをかけるとはバカにもほどがある!」

パンドラ「お前もだろうが!」と言うと

     パンドラは結っていた髪を解き首を振って整えた

     次に杖をまっすぐと前に突き出すとデスアズワエルワンドの小さな羽根が消え

     パンドラの背中にカラスのように大きな黒い羽を生やした

     それと同時にパンドラの髪は黒くなり

     杖の先端の宝石が一瞬光って消えてしまった

しのぶ「パン本当に大丈夫?」と言いながらパンドラに抱きつく

パンドラ「この姿の私のことを抱いてくれたのはお前が始めてだ」と言ったパンドラの

左目は閉じられており いつものように美しいパンドラではなかった

しのぶ「パンは黒が嫌い」

    「だから宝石にしているとき赤にしている」

    「なぜならパンは綺麗じゃないといやだから」

    「その杖のその黒さは陰」

    「だからもう一つ陰が必要」

    「陰が中に仕掛けてあるはず」

    「陰と陰で陽になる」

    「でもそれはでは2つになるから数と言う意味では陰になる」

    「数と言う別の階層でもう一つ足して3にしなければならない」

    「それがパン自身を杖に取り込んだ理由」

   「不安定な2で出来た陽がクルクル暴れる」

   「それが更なる力を生む」

   「どうやっても陰には転じないパンらしい綺麗な仕掛け」

   「だからとても綺麗」

パンドラ「はははははははははははは」と高らかに笑う

教皇「何だお前たちは本当に気味の悪い奴らだ!」

   「頭のイカれ具合が尋常じゃない!」

パンドラ「ありがとう」

     「ただ離れていた方がいい私は今とても危険な状態だ」

     「私の真後ろが一番安全だ」

     「前にいるものは全員死ぬ」

     「私はこの姿が嫌いだ」

     「なぜなら美しくないからだ」

     「だから早めに終わらせよう」

教皇「なんだそれは!幼稚な脅しだ」

   「変身したら強くなるのか?そんなのは興ざめだ」

   「しかも、それで強くなればますます私が強くなる」

パンドラ「ただ、それは魔力での話し」

教皇「好きなだけ殴ってみるか?」

   「体は再生できる」

   「霊体は物理攻撃では壊せない」

パンドラ「物理でも魔法でもない攻撃がある」

教皇「そんなことはお前の妄想でしかない」

   「お前たちは頭の中で生きている」

   「わけのわからない御託を並べて」

   「自分たちの頭の中の世界を肯定させようとする」

   「バカなものたちはお前のイカれた妄想力とでたらめを吐くその口の速さでお前を崇拝し始める」

   「お前たち二人が勝手に作った夢のような御伽噺」

   「たった二人のちっぽけなお前たちの頭の中での大きな大きな夢物語」

   「現実の全世界中の人たちの中のたった二人が作った頭の中の物語」

   「お前たちは頭の中で大きな世界を作り出し」

   「大きな世界の頂点に立っていると勘違いしている」

   「まったくくだらないと言うことに今気づけ」

   「たった今だ!」

   「夢を見るのはかまわないが」

   「夢の中と現実を混ぜてしまうのはやめろ!」

   「お前たちは白昼夢を見ているようなものだ」

教皇「お前のその薄気味悪い姿はいったいなんだ?変身したら目がつぶれたのか?」

   「なんてみすぼらしい姿だ」

   「カラスよりも気味が悪い」

   「頭のイカれたたった二人の人間にこれほど多くの人を巻き込ませるな!」

パンドラ「お前たち教会は管理がなってない」

     「管理できていないことのほかにもう一つお前に対して気に入らないことがある」

     「それはお前が血肉を喰らっていることだ」

     「バース以外に体を作る方法はいくつかあるが」

     「血肉を喰らわない方法はない」

教皇「お前が知らないだけだ」

パンドラ「バースにしか出来ないからバースが特別な魔法だと言われているのだ」

     「それ以外で何故特別視される」

     「お前も探していたんだろ?」

教皇「別のものを見つけたのだ」

パンドラ「いや、それは」

     「不可能なのだ」

     「お前に説明しても意味は理解できない」

教皇「お前が知らないだけだ」

パンドラ「・・・・・もしも仮に別のところで別の書物の中に」

     「別の名前でそのことが可能な魔法が書かれていても」

     「その魔法の本当の名前はバースだ」

     「ところどころ腐りかけている」

     「だからお前は臭い」

     「香水か何かでごまかしているが」

     「私にはよりいっそう臭く感じる」

     「バースはそんなに安っぽい魔法じゃない」

教皇「お前が知らないだけだ、お前のように気まぐれで寝たり起きたりしていない」

   「私はありとあらゆる魔法を知り尽くしている」

パンドラ「ここからは私が一方的に話す」

     「お前の話はつまらない」

     「なぜなら大嘘だからだ」

     「嘘を聞く耳は持ち合わせていない」

     「私は誇り高き千年魔女パンドラ・デロルレであるぞ みまごうな」

教皇「くだらないファンタジーはいい加減にやめろ!」

パンドラ「何百年も生きながらえながらも肉体を持つことは苦痛でしかない

     霊体でいきれば欲が減り苦痛が減る」

     「体の管理も必要ない」

     「通常のものは肉体を何百年も欲さない」

     「だから霊体で生きていたこともあるのだろうが」

     「欲のないこの退屈さ」

     「それを私も良く知っている」

     「必要なものはほとんどすぐに手に入る」

     「だからすぐに満足して思考をやめ」

     「やがて消えていく」

     「私はほしいものがあった、だから今も生きている」

     「それは私に対する私の愛するものからの真実の答え」

     「この条件を満たすのは非常に難しい」

     「だから千年たっても、たった一度しか手にした事がない」

しのぶ『いいえ、貴方はもう与えられているこれは二つ目の真実の答え』

    『でも交換がまだ出来ていない、遠いところから』

    『時空を超えてやってくる』

    『フエルトの戦いのことが載っている二番目に古い本』

    『それの付録のようについていた違う人が書いたページ』

    『そこに真実の答えがある』

    『それを私が貴方に届ける』

パンドラ「お前が欲しかったものそれは欲そのもの」

            「欲を持っている自分になり燃えるような激しい日々を取り戻したかった」

            「世界を守ると言う大きな目的に向かい奮闘する自分に興奮を覚えわくわくしている」

     「集まってきたものはお前を崇拝し尊敬する従順な教徒となる」

     「しかも正義を実行する」

     「嘘から出た真だ」

     「だから私はお前を容認した」

     「だがもう消えろ」

     「お前はこれにもあきかけていて破綻している」

     「飽きてしまうようなつまらない目的で何百年も生きるのはやめろ」

     「見苦しい」

     「背徳のデスアズワエルワンドと対峙して生きていたものなどいない」

     「こんな天秤など何の意味もなさない」

     「瞬殺する」

     「お前は私が瞬きしただけで死ぬ」

     「陰の子がこの眼の中にいるからだ」

教皇は陰の子の名を聞いて表情が一転した

教皇「陰の子はお前が始末したと聞いている・・・・」と慌てる

   「いや・・・そもそもそんなものはいない、でたらめのファンタジーだ」

パンドラ「デスアズラエルワンドはアズラエルの死体から作ったものだ」

     「アズラエルとは友人だった」

教皇「お前は何を言っている天使と友人だったとかファンタジーにもほどがある」

パンドラ「陰の子が本当にいると言うことを説明している、黙って聞け」

     「アズラエルは自分が死んだら杖にして使ってほしいと私に願った」

     「悲しかったが私は従うことにした」

     「その悲しみがこの澄んだ黒さの理由だ」

     「黒く澄んだ光には陰の力が宿っていた」

     「だから私は陰の子をこの中に封印し陰と陰をぶつからせ陽に変える必要があった」

     「これはアズラエルが私を最強の魔女にするために仕組んだことだと気づいた」

     「私はそれを仕組まれたことだと嫌い」

     「陰の子を封印せずその杖をその場に捨てることにした」

     「アズラエルの目的はただ恐怖としてしか存在しない陰の子に別の存在理由を与え」

     「私に力を与える」

     「アズラエルの優しい気持ちから来ているものだった」

     「そしてその後考え直し実行することにした」

     「これはアズラエルから操作された答えではないと言う証だ」

     「私は真実の答え以外を好まない」

教皇「お前は気がふれている」

   「イカレている・・・」

   「お前が消えろ」

   「いや、私が消す」

『ママー』と悲しそうに呼ぶ声がする

教皇「何だこの声は」

パンドラ「陰の子は私のことを母親だと思っている」

『ママーあそぼー』

パンドラ「陰の子はお前のことに気づいた」

     「お前の死が確定した」

教皇「やれば良いだろうがこのほら吹きがー!」

バシュッ

と何か音がしたような気がしたが教皇がいなくなっている以外何の変化もない

みんなは何が起きたかわからない

天秤魔法は片方の錘がなくなり崩壊していく

パンドラは元の姿に戻り杖を宝石に戻しそのままみんなに背を向けたっている

ジョルジュ「な・・・・なにがおきた!」

パンドラ「そう聞かれるだろうと思って、聞かれる前に説明していた」

     「その時間が命乞いをするチャンスだったことにあいつは気付けなかった」

しのぶ「パンー」とパンドラの方に駆け寄ろうとすると

パンドラ「来るな」と大きな声で言った

しのぶ「パン?」

パンドラ「顔に傷がついた、見られたくない」

しのぶ「そんなのはぜんぜん平気、パンはパンだもの」

パンドラ「私がいやなのだ!」

     「私は綺麗でないといやなのだ」

     「今再生しているから、少し待て」

しのぶ「う・・うん」と寂しそうにいう

パンドラ「わたしはわがままなのだ」

     「すまない」

しのぶ「ううん」と首を横に振った

シーン▼教会解体 問題解決 取り戻した平穏な日々

ジョルジュはすべてが終わったと悟り

しのぶの方にやってきた

ジョルジュ「指の問題の答えを聞いてくれるか」

しのぶ「え?・・・・うん」

ジョルジュ「何故指を動かしているのだろうかと考えさせるため」

      「考えなければ始まらないから」

      「問題は多い方がいい」

      「沢山考えた方がいい」

      「訓練した方がいいということ」

      「常に考えろ」

      「それが自信につながり」

      「自信を持って出した答えには後悔がないということ」

      「ピアノを弾けない女の子」

      「その場で自分のもてるすべてを発揮できるようになるために」

      「練習が最善の策」

      「それが答えだ」

      「私自身の真実の答え」

しのぶは満足そうな顔をしながら

しのぶ「ありがとう」

   「あなたは大丈夫」

   「あなたもまたパンドラの意思を告ぐもの」

   「教会を解体・再生できる」

   「パンドラの操作ではなく貴方の答えで貴方はする」

ジョルジュ「ぼくを操作するのはやめてくれ」と笑う

しのぶ「あなたは出口を見つけられるから大丈夫」と微笑み返す

しのぶは「もういらない!」とパンドラに教えてもらったペンタクルの出し方を素早くして

コールドジェイルのペンタクルを手のひらで消滅させジョルジュに向かって手を差し出した

二人はがっちりと握手を交わした

ジョルジュに別れを告げるとしのぶはパンドラのところにかけよる

パンドラ「どうした早く学校へ行かないと遅れるぞ」

     「みんながまっている」

     「しのぶの大切な友達だ」

しのぶは下を向きながら

    「私が学校から帰ってくるまでまってて」

パンドラ「 ?」

しのぶ「まだ伝えてない大切な答えがあるの」

といい泣いてしまわないように

背を向け拓也たちの方に駆けていった

町への魔方陣をくぐり仲良く学校へ行った

魔法は解けすべてが元に戻っており

みんなしのぶを温かく迎えてくれた

信子「ゆきーしのぶちゃーんどうしてそんな方からきたのー」

拓也 「まーいろいろあってなー」

まさる 「拓也ーしのぶちゃんとの交際を認めてくれー」

ゆき 「手当たり次第ナンパするのはやめろ!」とまさるをぶん殴った

洋介「ゆきはなんでもナンパに結びつけるんだな」と笑う

ゆき 「あんたなに、いつゆきと呼ぶことを許可したー」と洋介を追いかけ始めた

洋介は「今すぐ許可をくださいー愛染ゴリラさまー」といいなからのらりくらり逃げ回る

みんなは笑顔に包まれていた

元の平凡な生活が戻りしのぶゆき拓也はそれが如何に幸せなことだったのかと言うことをかみしめながら一日を過ごした

放課後拓也が部活をしているとしのぶは「拓ちゃーん」と顔を恥ずかしさで真っ赤にしながら呼んだ

サッカー部員「おー沖斗があんなでっかい声出してるの初めて聞いたぜ」

        「拓也ーじょーかのが読んでるぞ」

拓也「じょーかのって」と顔をしかめながらしのぶに手を振った

しのぶ「先に帰るねー」と一生懸命拓也に伝えた

拓也は「帰りによるわー」といいながらもっともっと大きく手を振った

しのぶは家に帰ると真っ先にママのところに行き

しのぶ「ママー」と元気にママの仕事場に入り

しのぶ「ママ、ただいま」とハツラツとした顔をしながら言う

ママ「おかえり」と言いながら少し困った顔をしていた

しのぶ「ママ私ね・・・・」少し言おうかいわないか迷いながら

    「私は変わり者だって言うことを恥じていないの」

    「だから安心して」といった

ママは立ち上がりこの間と同じように困った顔をしながら恐る恐るしのぶの方に手を伸ばす

なんと言えばいいのか考えているようだった

しのぶは自分からママの手の中に入り

ママに抱きついき「だから心配しないで」と言った

   

ママ「そう・・・成長したのね・・・嬉しいわ」

   「だからしのぶはあの朝私に話してくれたのね」

   「でも、変わった子は嫌よ。すごい子なの」

   「ママはしのぶは本当に本を読めてるんじゃないだろうか?ってずっと思ってた」

   「そうでなければ、あんなに夢中で本にかじりつくはずないもの」

   「でも、読めるはずないんだけどなーって思ってたの」

   「信じてなかったんじゃないわ、理解できなかったの」

   「ママはバカだなー、あんなに貴方が本当だって言っていたのに」

   「でももう分かったわ、すべて本当だって信じれる」

   「話してくれてありがとう」

しのぶ「ママ好きよ」

    「晩御飯何がいいか考えといてね」といい自分の部屋に帰っていった

シーン△マギファスコミオのグリモワールの真実 意外な結末

しのぶは部屋に帰ると、少し迷いながらパンドラを呼んだ

    「パン」

    「パンいる?」

パンドラの返事はなかった

「いや」と言いしのぶの顔は曇っていった

パンドラが消えてしまったのかもしれないと怖くなっていた

勉強机の上に腰の後ろ側にリボンがつけられ

完成したばかりのパンドラが作ってくれた服がかけられていた

しのぶはその服に着替えパンドラが考えてくれたように横髪を三つ編みにしながら考えていた

「『待ってて』て頼んだから待っていてくれるはず」と思い

体をベットに寝かせアストラルイニシエーションしマギファスコミオの草原に向かった

 マギファスコミオの草原につくといつものように優しいかぜが吹きその音だけが響いていた

   「パーン」

しのぶは不安になって走り回ってパンドラを探した

マギファスコミオの草原は果てが見えないほど広かった

あたりを探しているとさして珍しくもないがとても気になるバレーボールくらいの石を見つけた

表面が強い熱で焼かれたようにただれていた

それほど変わった見た目をしているわけではなかったがどうしても気になる石だった

パンドラ「しのぶー」と歩いてくるパンドラをやっと見つけた

しのぶは「よかった」「パンー」と大きく手を振りながらパンドラの方に走っていった

しのぶ「よかった、どこかに行ってしまったのかと思った」

パンドラ「約束は破らない」

パンドラ・しのぶ「私は誇り高き千年魔女パンドラ・デロルレ」と同時に言い

笑いそうになるのをこらえながら

          「みまごうな」と二人で言って笑った

パンドラ「私の作った服を着てくれたんだな」

     「回ってみてくれ」

しのぶ「え?・・うん」と恥ずかしながら回ってみる

パンドラ「もっとクルクルまわれ」

     「私のように美しく」

しのぶ「うーん、気持ち悪くなっちゃう」

パンドラ「はははははは」と高らかにわらう

しのぶ『パンドラのこの笑い方は訓練されて出来たもの』

    『練習しなければあんなに美しく高らかに笑えない』

    『パンドラはうつくしいピアニスト』

    『クルクル回るのもいつも練習している』

    『パンドラが美しいパンドラであるために』と考えていた

パンドラ「似合ってるな」

     「さすが私だ」

     「才能の桁が違う」

しのぶ「こういう時は私の方をほめるものなのよ」と笑う

パンドラ「しのぶ」

しのぶ「・・・・」別れを切り出されるのではと不安の顔を隠せない

パンドラ「誇り高き千年魔女と言う名は私が仲間達から貰った一番お気に入りの名前だ」

     「名前と言うのは自分でつけるものではない」

しのぶ「・・・・・そうね・・・・・」

パンドラ「デスアズワエルワンドも名前を貰った」

     「背徳のデスアズワエルワンドの『背徳』はいつしか人々がつけたものだ」

     「名前は称号に似ている」

     「だから私がしのぶに名前を与えよう」

しのぶ「・・・・・・」とまじめな顔でパンドラの目を見ている

パンドラ「お前の名前は・・・・」

    「かわいいピアニスト 沖斗しのぶだ」

しのぶ「・・・・・・」

パンドラ「気に入ってくれるとうれしい」

しのぶ「ええ、嬉しいわ」と目を潤ませながらパンドラに微笑みかけた

パンドラ「だが、お前はこれから成長する」

     「やがてその名は忘れられる」

しのぶ「・・・え?」

パンドラ「お前はコロンブス 希望に満ちた大航海に出るのだろう」

     「そしてお前はこう呼ばれる」

     「美しいピアニスト 沖斗しのぶ」

     「そう呼ばれると私は信じている」

しのぶ「パン・・・・」

     『それは私がパンに与えたかった名前』

      『それを私にくれるのね』

パンドラに抱きつきたかったが、それをすると泣いてしまいそうなので

それをこらえ「あのねパン」と語りだした

パンドラ「ん?」

しのぶ「もう一つの真実の答えをパンに渡しに来たの」

パンドラ「私はもうしのぶから真実の答えを貰った、だからとても満たされている」

と優しい目でしのぶの事を見つめている

しのぶ「あれはパンが手にした1番目の答え」

    「2番目の答えは時空を超え私を介して貴方にもたらされる答え」

    「もっと早く気づいてあげられなくて、ごめんなさい」

パンドラ「私は十分満たされている気を使わなくて良いぞ、しのぶ」と優しく見る

しのぶ「私も偽者は嫌い」

    「それはパンドラと同じ」

    「これはフエルトの戦いについて書かれている2番目の本」

    「その本の中には当時の資料として名もなき囚人の手紙がのっている」

    「本の内容とはまったく関係ない当時の貴重な資料として載っている」

    「だから見つけるのがおそくなってしまったの・・・・」と申し訳なさそうに言う

    「その内容はこう」

    「自分の人生に後悔はない、ただ一つだけ侘びなければならないことがある

    それはお前に愛していると伝えてやれなかったこと、この一言を書くためだけに

    私はこの手紙を書いている「私はお前を愛している、今も昔もこれからも」」

パンドラはしのぶが偽りの答えを告げるはずはないがどういうことなのかわからず

まじめな顔をしてしのぶを見ている

しのぶ「それは誇りも名前も失ってしまった幽閉された王からの手紙」

    「フエルトからの真実の答え」

パンドラは顔を背け歯を食いしばり「ありがとう!しかしそれは憶測に過ぎない」

しのぶ「第六チャクラ アージュニャー、その大きさはパンドラをもしのぐ」

    「真実を見抜く力を持った 沖斗しのぶ みまごうな!」と少し強めにいった

    「私の確信は100% 一転の曇りもない だからこれを伝えた」

    「憶測による偽りの答えは、私は大嫌い」

    「確信が99%でも私は許さない!そんなものは伝えるどころか揉み消す!」

パンドラは見せたことのない力の抜けた顔をしながら「本当なのか」

しのぶ「パンドラは千年魔女 これからもずっと生きてくれているのなら」

    「いつかどこかで届くかもしれない」

    「誰か気づいて届けてほしいと」

    「願いながらこの手紙を書いたのを私は読み取った!」

    「名前を書くことは許されなかった」

    「だから最後に日付を入れた」

    「それはフエルトが処刑される前の日だった」

    「これがパンに届けられた1番目の真実の答え」

    「時空を超えて2番目に届いた」

パンドラ「うわ~ん」とパンドラは泣き出したが

すぐに後ろを向いて泣き顔を隠した

しのぶ「駄目!」

    「感情を押し殺しちゃ」

    「千年に一度とないこの嬉しさと切なさを」

    「押し殺しては駄目よ」

    「もう二度と手に入れられないかもしれない」

    「燃えるような日々を取り戻した瞬間」

それを聞くと再びパンドラは大きな声を出して「うわ~ん」と子供のように泣いていた

しのぶはしばらく泣かせておいてあげようと、その場から少し離れることにした

しのぶは満たされていたパンドラがあんなに嬉しがっている

パンドラが私に泣き顔を見せてくれた

それも小さな子供のような顔をして

そんなことを考えながら散歩のように歩いていると

先ほどの石をまた見つけた どうしても気になる石だった

しのぶはその石に近づき 石の前で屈み触ってみた

しのぶ「はうっ!」と息が止まるように声を出し

しのぶは目を見開いた

『これは!マギファスコミオのグリモワールなの?!』

「ああああああああ」と声ともならない声を出す

「いや!いやよ!」

「そんなことは!」

「ああああああああああ」とその内容に息が止まりそうになる

そのうめき声にも似た声を聞きつけ慌ててパンドラがやってきた

パンドラ「それに触るな、すぐはなせ!」とパンドラの声がする

しのぶは石から手を離しうしろにお尻をついて腰を抜かしたような姿になった

パンドラ「大丈夫かしのぶ?」

しのぶ「いやよ」と愕然としている

パンドラ「一度にあまり読んではいけない」

しのぶ「いやなの・・そんなの・・・・」

パンドラ「事実だから受け入れるしかない・・・」

しのぶ「・・・そんなの・・・どこかの水溜りの微生物と同じだわ・・・・」

パンドラ「それでいいんだ」と優しく言う

しのぶ「うそよ・・・これは物語だわ・・・」

パンドラ「そうでないのは一番わかっているはずだ」

しのぶ「私たちは・・・・マギファスコミオに飽きられて捨てられたおもちゃのようなもの・・・」

パンドラ「私たちは、私たちの世界で幸せになればいい・・・」

     「満足できれば何の問題もない」

しのぶ「いやよ・・・」

パンドラ「自分が満足できればマギファスコミオなど関係ない」

     「だから私は千年さまよい満たされることを求めた・・・」

     「しのぶもそうした方がいい」

     「事実を受け入れろ、これがバースの秘密だ・・・」

しのぶ「わたしは・・・マギファスコミオを見たことがあるわ・・・」

パンドラ「!?」

しのぶ「流れ星だと思っていた・・・・」

    「子供のときに見た・・・・」

    「私の一生忘れられない記憶」

    「夏の星空が綺麗な夜」

    「野原でみんなで大の字になり寝転んで」

    「星が綺麗と見ていた」

    「そのとき螺旋を描きながら2つの流れ星が流れた」

    「みんなに教えてあげたら」

    「嘘つきだって言われたの」

    「でもあの流れ星の思い出は綺麗な思い出」

   「今思えばあれはDNAの螺旋と同じだったと思える」

   「楽しそうに笑っている声も聞こえたような気がするの」と言い終わると

マギファスコミオのグリモワールに抱きついた

パンドラ「やめておけ一日にたくさん読んでは気が触れてしまうぞ!」と言いながら

しのぶをグリモワールから引き剥がした

パンドラの胸に抱かれたしのぶは「私に1000年さまよえと言うの!!私はこの人達を許さない!」

パンドラ「誰も強要などしない!マギファスコミオはとうの昔に私たちに関心を失っている」

     「今は違うところで遊んでいるだろうマギファスコミオは人間ではないんだ!」

     「落ち着くんだしのぶ」

しのぶ「いやーーーーーーーーーー」と発狂したように叫んだ

ベットの上のしのぶの体が起き上がり

窓を大きく開けた次の瞬間 ドンという鈍い音が響いた

しのぶが窓から飛び降りた音だった

おわり

おまけ

白昼夢2の内容

 ◎田舎娘パンドラの生い立ち

 ◎優しい殿方の話し

 ◎アズラエルと陰の子などなどです←これを今回入れられなかったのでパンドラがカラスのようになるシーンが・・・なんか・・・・どうなんですか?これって感じになってしまいました・・・・

白昼夢2を描かない場合このシーンは削除したいところです。

@@@@@@意外な結末の別の案@@@@@@@@

最後の三行のところ

その頃、マリアは何かにまたがり気が狂ったようにナイフを何度も何度も突き立てています。

マリアはしのぶの体を壊してしまいました。 おわり

本当は結末にマリアを出そうと思っていましたが・・・・

ver1.0 脱稿 2012・02・07

ver1.5 追記 2012・05・19